近年、自動車業界では業務提携・資本提携・合併など、大きな動きがあります。
トヨタや日産といった大きな会社でも、頻繁に行われているイメージがあるのではないでしょうか。
こうした動きの背景には何があり、どういった狙いがあるのでしょうか。
そこで今回は、自動車業界の提携・合併の背景についてご紹介していきます。
昨今巻き起こっている自動車業界の提携・合併には、大きく2つのパターンがあります。
・技術やノウハウなどを得るため
・資本的なスケールメリットのため
それぞれ詳しく見ていきましょう。
◯技術やノウハウなどを得るため
目的の一つは、技術やノウハウなどを得るためです。
三菱自動車の燃費表示改ざんによる経営危機などは記憶に新しいのではないでしょうか。
その危機を救うように、日産自動車が三菱自動車を子会社化したという動きがありました。
資本力のある日産自動車が、経営難に陥った三菱自動車を救う形になったわけですが、メリットがなければこのようなことはしません。
日産が三菱を子会社にしたのは、三菱自動車の軽自動車や、パジェロをはじめとした4WD、そして先進技術であるPHEVの各種技術の獲得につながると考えたためでしょう。
一見、企業イメージの低下につながりそうな提携ですが、技術やノウハウを獲得できる方がメリットが大きいと踏んだのでしょう。
また、異業種間での提携も盛んになっています。
トヨタがパナソニックと提携するなど、全く違う強みを持った企業間での提携が行われました。
パナソニックのノウハウを活かし、トヨタの発売するハイブリッド車やPHV車へのバッテリーの供給や、自動車のIT化に伴う新技術開発が狙いだと思われます。
こうした動きは今後も活発になってくるでしょう。
◯資本提携で企業価値を高めるため
もう一つの目的は、企業価値を高めるためです。
資本提携をすることで、お互いに資金の移動が行われますし、関係性が強固になるため販路拡大などのシナジー効果を発揮しやすくなります。
資本金を増やすことができれば、経営リスクが軽減されるため新規事業にチャレンジする機会が増えたり、金融機関からの融資を受けやすくなったりと、事業規模拡大や信頼性獲得につながります。
また、財政基盤が強化されることはもちろん、提携先企業の人材や固定資産の活用、製品の共同開発など、直接的な資金面以外でも恩恵を受けられることも大きなメリットと言えるでしょう。
新興国における自動車需要に備えている
業務提携が盛んになる背景としては、新興国における自動車需要への対策とも考えられます。
先進国における自動車需要は飽和状態になりつつあります。
特に日本は若者のクルマ離れ、少子高齢化による自動車需要の減少が見込まれています。
そこで今盛んなのが新興国における自動車需要です。
まだ発展段階である新興国では、小さな車が売れる傾向にあります。
主には、日本で言う軽自動車やコンパクトカーの需要が多く、セダンでも5ナンバーサイズの小さいセダンが人気です。
小さい車が売れる背景には、新興国の道路がまだ整備されていないところが多く、なるべく狭い道でも走れるような車の需要があるのです。
前述した日産と三菱の関係や、トヨタがスズキと提携した背景には、こうした新興国の需要を見込んでいるからなのかもしれません。
まとめ
車屋さんを営む立場からすれば、メーカーがどんな合併をしようが、あまり大きな影響はないとも思います。
ですが、今後販売される車種には各メーカーの意匠が中和されていき、提携各社では似たような車になってしまうのでは…と不安になってしまう方もいらっしゃるかもしれません。
「車はどれを買っても一緒」 なんて思われてしまったら、車屋さんとしての強みを持つためには扱っている車種や値段ではなく、お店のイメージアップや付加価値の提供を充実させる事が重要になるでしょう。
今後の自動車業界の動きも逐一チェックし、将来の動向を考えながら経営する事が大事とも言えます。