自動車の起源は1769年にまで遡り、当時のフランスに登場した、蒸気で動く三輪自動車が世界初の自動車だと言われています。
日本は、江戸時代で馬や牛が自動車の役割を果たしていた頃です。
そこからは、多くの発明家が自動車産業を支え、明治時代に入ると、海外ではガソリン車が普及していきました。
今では、自動車も1人1台が当たり前になりつつあります。
数々の困難を乗り越え、形や性能を変え進化してきた証でもあるのです。
そんな自動車は、また次の世代に向けて、役割や動向を変化してきています。
今回は、自動車業界のCASEとはどのようなものなのか、自動車産業の行方と併せて詳しく解説いたします。
CASEとは、自動車業界における戦略として掲げられた造語です。
2016年のパリモーターショーで、ダイムラーAG・CEOでメルセデス・ベンツの会長であるディエター・チェッチェ氏が、変革期にある自動車業界の中長期戦略として初めて用いました。
・Connected…つながる
・Autonomous…自律走行
・Shared…共有
・Electric…電動
これらの英単語には次世代の自動車に求められるキーワードが含まれており、単語の頭文字を繋げたCASEという言葉で表現されるようになりました。
現代では、自動運転や電気自動車など次世代に向けた自動車も次々と開発されています。
CASEの「C」Connectedの動向
Connected(コネクテッド)は、日本語に訳すと下記のような意味になります。
・連結すること、関連をもつこと
・常時コンピューターネットワークに接続していること
IT用語であるコネクテッドですが、自動車にも引用されています。
コネクテッドカーとよばれる自動車は、車両の状態や周囲の道路状況など自動車に関する細かな情報をセンサーにより取得します。
取得されたデータを基に、快適な走行や事故を起こさない自動車走行を目指しています。
また、通信機能を生かすことで、エンターテインメントをはじめとしたさまざまなサービス展開が予想できるのです。
ナビゲーションや音楽配信といった身近なツールもコネクテッドの一部と言えます。
国産車では、トヨタが先立ってコネクテッドサービス「T‐Connect」を本格スタートしてます。
近い将来、ほとんどの国産メーカーでDCM(車載通信機)を搭載してコネクテッド化を加速させる方針です。
CASEの「A」Autonomousの動向
Autonomous、すなわち自立走行とは、「自律走行車」を意味します。
自立走行とは、測域センサーやカメラ、GPSなど各種センサーによって得た位置情報や画像を基に経路を分析し、その結果得た情報から、路上にある障害物などを避けながら決められた目的地を目指すシステムです。
自律走行車を実現させたことで、舗装、未舗装道路や市街地などを人の手を借りずに安全に走行できるようになりました。
自立走行車には基準が設けられており、国外では自動運転レベル3までの搭載が実現させていますが、国内ではトヨタが開発したレベル2となっています。
将来的には、レベル5まで搭載されるようになり、高齢者や身障者の方が安全かつ気軽に移動できるツールとなる自動車の開発に繋がっていくとされています。
CASEの「S」Shared & Servicesの動向
自動車業界におけるライドシェアとは「自動車の相乗り」という意味です。
海外では早くから注目されているサービスで、提供者として、ソフトバンクが米ウーバー・テクノロジーズ、中国ディディ、シンガポールのグラブ、インドのオラなど大手のライドシェア各社に出資、筆頭株主になっています。
自動車での移動をシェアする事でガソリン代の削減や交通機関の負担を減らすといったメリットがあります。
一方で日本では、資格のない者が人を乗せて送迎をするいわゆる「白タク」行為は禁止されているのでライドシェアには消極的な面があります。
しかし最近では、東京都を拠点としたタクシー事業者5社とソニーらによる「みんなのタクシー」というアプリが登場しており、タクシー業界では、ライドシェアによる生き残り競争が激化すると考えられています。
CASEの「E」Electricの動向
CASEの最後にくるElectricは、「電気自動車」を意味します。
電気をエネルギー源として電気モーターのみで走行する電気自動車は、ガソリン車に変わる次世代自動車としてメーカーも力を入れて開発に取り組んでいます。
電気の充電は、通常充電と急速充電が一般的な方法です。
また、バッテリーの充電を維持するための発電用エンジンを搭載したレンジ・エクステンダー搭載した電気自動車なども登場しています。
もう一つの大きな利点としては、ガソリンを使わないため、二酸化炭素を一切排出しないことが挙げられます。
排気ガスを出さない自動車は環境に良く、モーターで走行するため、ガソリン車のような走行時に出るエンジン音もなく快適に走ることが可能です。
また、電源を取り出して、自動車以外の電力に変える事もできるので、災害などで電気がストップした場合には緊急の発電機としても活用できます。
CASEの進化による自動車産業への影響は?
CASEでの自動車が主流になれば、多大な影響を受けるのは自動車産業です。
まず、生産台数は減少します。
そのため、コストも減少し車両の販売価格が安くなります。
自動車産業にとっては、収益の減少は免れません。
また、自動車保険の仕組みも大きく変わってきます。
自動運転という事は、万が一、交通事故が起きた場合、製造した自動車会社が事故の責任を負うことになります。
従来の自動車保険は、自動車会社に対する補償ではないため加入することはできません。
自立運転での走行は交通事故の減少となるため、保険会社にとっては収益の面をとっても変化は避けられない事案となるでしょう。
自動車整備工場の仕事も、事故の減少によりなくなる可能性が出てきます。
また、タクシー業界やレンタカー、バスや鉄道といった交通会社や公共交通機関もライドシェアによる乗客の減少が予想されます。
既に、米国や東南アジアではタクシーやレンタカー会社が倒産の危機に立たされているのです。
当たり前のように利用していたガソリンスタンドも不要となります。
燃費の良い自動車がどんどん開発され、給油そのものが減少し、廃業するガソリンスタンドもある中、電気自動車が主流となればガソリンスタンドが街から消えることになります。
このように、何世紀にも渡る自動車産業の歴史が大きく塗り替えられようとしているのがCASEによる自動車の変化なのです。
まとめ
自動車産業に大きな変革をもたらすであろうCASEは、通信業や保険業、サービス業といった様々な業種にも変化をもたらすことがわかりました。
急激な成長をすることはなくとも、今後の自動車産業に動きがあることは間違いありません。
日本では、三菱自動車の「i-MiEV」が世界的にも有名です。
また、トヨタは国内メーカーの中でも特に力を入れており、数台のEVコンセプトカーを発表しています。
2020年には「C-HR」のEV車を中国で、インドではスズキと提携・開発新型EVを投入すると発表しました。
日本でも、CASEの全てを盛り込んだ自動車「ネットをフル装備して自立運転をする電気自動車タクシー」が当たり前のように公道を走る日が、そう遠くはないかもしれません。
そんな日がくれば、自動車産業が大きく揺さぶられることになるのは間違いないでしょう。