エアバッグは万が一の事故から命を守る重要な装置です。
しかし、エアバッグを取り外した状態で車検に通るのか、疑問に思っている方もいるでしょう。
本記事では、エアバッグが原因で車検に通らなくなる5つの理由と注意点、寿命や修理・交換にかかる費用について詳しく解説していきます。
最後までお読みいただき、車検の不安を解消しましょう。
エアバッグを取り外すと車検に影響はあるのか?
結論からお伝えすると、エアバッグを取り外しても車検に通ります。
車検は、保安基準に記載されてある点検項目に基づいて検査されますが、その点検項目の中に「エアバッグの有無」については記載されていません。
また、初めから付いていない年式の古い車に関しても、車検に影響はなく、加えて罰金や罰則もありません。
エアバッグが原因で車検に通らない5つの理由
基本的には、エアバッグが理由で車検に通らない車はありません。
しかし、以下の5つは例外とされています。
- ・警告灯が点灯している
・任意保険の内容に「エアバッグ付き」と記載がある
・タカタ製のエアバッグを取り付けている車
・操作性が悪い
・ホーンマークがない
それぞれ詳しく紹介していきます。
警告灯が点灯している
車検の検査項目の中に「エアバッグ」については記載されていませんが、警告灯については「点灯している場合異常があると判断する」と記載があります。
そのため、警告灯が点灯しているということは何らかの理由によりエアバッグが誤作動を起こす、もしくは作動しないと判断され車検に通らなくなります。
警告灯が点灯するケースとしてよくあるのは、ステアリングを交換すると同時にエアバッグを取り外したときです。
この場合は意図的であるので、エアバッグキャンセラーで消灯できます。
しかし、それでも警告灯が点灯する場合は、電子センサーの故障が考えられますので、修理が必要です。
任意保険の内容に「エアバッグ付き」と記載がある
任意保険の内容に「エアバッグ付き」の記載がある場合も、車検に通りません。
これは加入している保険会社によりますが、エアバッグ付きを条件とした保険契約もあります。
取り外したことを申告しないまま保険を使用すると、保険料が支払われないといったトラブルになる可能性があるため、必ず取り外したことを伝えましょう。
タカタ製のエアバッグを取り付けている車は車検に通らない
一方、エアバッグを取り付けているのに車検に通らないケースもあります。
それが、タカタ製のエアバッグを取り付けている場合です。
タカタ製のエアバッグとは、2000年〜2008年の間にタカタと呼ばれる会社が製造したエアバッグのことです。
このときにタカタが製造したエアバッグには、インフレーターが異常破裂を起こす欠陥品があり、当時25名以上の死亡者を出しました。
その結果、世界で4,000万円以上の車がリコールの対象となっています。
同時に、タカタ製のエアバッグを取り付けている車は、車検に通せないことがと決定しています。
タカタ製エアバッグのリコールについて
先ほど紹介した通り、タカタ製のエアバッグはリコールの対象となっています。
リコールは2009年から現在まで引き続き実施されており、未改修車は令和元年11月時点で約24万台あると言われています。
そのことから、タカタ製のエアバッグを取り付けている車は、事故を起こす可能性が高いため、車検には通らないのです。
リコール未改修車両を車検で通さない措置の拡大について
国土交通省はタカタ製エアバッグのリコールに関して、令和2年5月と令和3年11月に、車検に通さない措置の拡大を行っています。
「国土交通省:自動車のリコール・不具合情報」
具体的には、以下の場合は、車検に通せないと定められています。
- ・エアバッグの製造管理が不適切であったもの
・国内で異常破裂したエアバッグと同じタイプであって、生産から9年以上経過したもの
・リコール届出番号が「4640」もしくは「外-3271」であった場合
なお、自分の車が対象かどうかは、各自動車メーカーのウェブサイト、もしくは窓口にて確認できます。
操作性が悪い
エアバッグを取り外す際に、ステアリングを外す必要がありますが、外した後にステアリングの操作性が悪い場合は車検に通りません。
以前であれば、ステアリングの直径は350mm以上と決められていましたが、現在は決められた基準がありません。
しかし、規格以上のステアリングを取り付けた場合、操作性が悪くなったりメーターが見えなくなったりします。
その場合は、運転に危険が生じると判断され車検に通らなくなります。
ホーンマークがない
ホーンマークとは、ステアリング部分についているラッパの形をしているマークのことです。
こちらのホーンマークは、目視できなければ車検に通りません。
そのため、ステアリングを交換する際は、ホーンマークがあるものを選ぶ必要があります。
しかし、ホーンマークが付いていなくても、カー用品店などで手に入るホーンマークシールを取り付ければ、車検に通すことが可能です。
エアバッグを取り外して車検を受ける際はステアリングに注意する
エアバッグを取り外して車検を受ける際は、ステアリングにも注意が必要です。
保安基準を満たせない場合は、車検に通らなくなるため、ここで確認しておきましょう。
エアバッグとステアリングの関係
基本的にエアバッグは、ステアリング部分に取り付けられています。
そのため、見た目を変えたい理由などで、ステアリングを変えるときは、一部のケースを除き、エアバッグも取り外す必要があります。
ただし、エアバッグは取り付けられていなくても基本的に車検には通りますが、ステアリングには保安基準が設けられているため、基準を満たせるよう注意が必要です。
ステアリングの保安基準
ステアリングの保安基準は以下の通りです。
- ・ホーンマークがあること
・運転中にスピードメーターを視認できること
・ハンドル操作が確実かつスムーズに行えること
・ハンドルにガタつきなどの異常がないこと
・衝撃を受けた際に運転者の安全が保たれること
上記が満たされていれば、車検に通せます。
ステアリングを変えるときや、エアバッグを取り外すときは、こちらに注意してカスタムしましょう。
エアバッグの寿命や修理・交換にかかる費用
エアバッグの寿命はどれくらいなのか、また、修理や交換にかかる費用も気になるポイントの1つではないでしょうか。
ここでは、エアバッグの寿命や修理・交換にかかる費用を紹介していきます。
エアバッグの寿命はどのくらい?
エアバッグの寿命は、一般的に「製造後10年〜15年」と言われています。
しかし、寿命といっても事故時にエアバッグが正常に動かなくなるだけで、車検には影響ありません。
また、エアバッグの寿命よりも点火装置であるインフレーターが機能しなくなることの方が多く、インフレーター交換の処置のみで良いケースがほとんどです。
エアバッグが出た場合はどうなる?
事故などによりエアバッグが出た場合は、修理ではなく交換しなければなりません。
エアバッグは1度作動してしまうと、再び利用することができません。
また、エアバッグを交換する際には、、周辺のパーツであるコンピュータやクラッシュセンサーなども行う必要があります。
そのため、エアバッグが作動したときの交換費用は、高額となるケースが多いです。
エアバッグの修理や交換にかかる費用
エアバッグの修理や交換にかかる費用は、一般的には10万〜30万円程度です。
しかし、事故などにより作動してしまったときは、周辺のパーツの交換に加え、車両本体の修理も必要です。
そのため、事故の場合は30万円以上かかると思っておいた方が良いでしょう。
なお、高級車や輸入車などの場合は、高額なパーツや取り寄せ費用が必要なことから、50万〜100万円を超えるケースもあります。
ケースにもよりますが、あまりにも高額となる場合は、修理や交換をするよりも買い替えを選んだ方が良いでしょう。
エアバッグを取り外す方法
エアバッグの取り出しは、業者への依頼でもできますが、自力でも可能です。
以下に取り外す手順を記載しましたので、取り外しを考えている方は参考にしてください。
今回は、ステアリングを外さない方法を紹介していきます。
- 1.マイナスドライバーを用意1.
2.取り外す際にホーンが鳴るのでバッテリーのマイナスを外しておく
3.ステアリングの裏側に3つの穴があるので、そちらのネジを外す
4.ネジを外した穴に細目のマイナスドライバーを「かこっ!」と音がするまで押し込む
5.エアバッグが外れます(まだコネクターは付いたままです)
6.外した正面から右上にあるホーンのアースを外す
7.真ん中の黄色のロックを持ち上げ黒色のコネクタを外す
8.エアバッグが取り出せます
なお、取り付けは外すときと逆の手順で行います。
車検に通らない理由のところでも紹介しましたが、取り付ける際はステアリングに影響がないように、しっかり取り付けましょう。
エアバッグを売却・処分する上での注意点
エアバッグを外した際に、売却や処分を検討する方もいると思いますが、いくつかの注意点があります。
法律により処罰される対象になる可能性もあるため、しっかり確認しておきましょう。
エアバッグは個人売買できない
エアバッグの個人売買についてですが、法律により2020年からしてはいけないと決まっています。
理由は、点火装置であるインフレーターに火薬が内蔵されているからです。
火薬が使用されているものは、慎重に使用する、あるいは厳重に保管しなくてはならず、安易に売ることはできません。
また、運んでいる際に破裂すると非常に危険です。
そのため、エアバッグの個人売買はできないと覚えておきましょう。
エアバッグは取り付けられていた車と一緒でないと処理できない
エアバッグを個人売買する事はできなくても、処理ならできると思う方も多いかもしれません。
しかし、エアバッグは自動車リサイクル法において産業廃棄物と定められているにもかかわらず、引き取り基準が非常に厳格に設定されており、簡単に処分できるものではないのです。
理由は、先ほどお伝えした通り、インフレータに火薬が内蔵されているからです。
通常の産業廃棄物として処理しようとすると、破砕工程においてエアバッグが誤作動を起こし、大きな事故につながる可能性があります。
また、不適切な処理が行われた場合、廃棄物の処理を依頼した側も責任を負うことになります。
つまり、エアバッグは個人で処理できず、乗っている車に付け直して廃車にする、もしくは売却する必要があります。
一部の業者は廃棄処理ができる
とはいえ、取り外したエアバッグを自宅に保管しておいても、誤作動などのリスクがあり、不安を感じる方もいるでしょう。
実は、一部ではありますが、廃棄物として処理ができる業者があります。
その業者は、自動車リサイクル法とは別に産業廃棄物処理施設として、展開処理許可を取得しているので、エアバッグの処理が可能です。
現在、展開処理許可を取得している業者は以下のとおりです。
- ・栃木リサイクル工場
・九州リサイクル工場
・横浜(金沢)リサイクル工場
・金属事業 秋田営業所
・姫路リサイクル工場
・千葉リサイクル工場
注意点としては、費用がかかることです。
エアバッグ処理に困っているなら問い合わせしてみましょう。
まとめ
本記事では、車検に関するエアバッグの必要性と、通らない5つの理由を紹介しました。
エアバッグがなくても車検には通ります。
しかし、警告灯が点灯している、ステアリングの操作性が悪い、ホーンマークが目視できないといった理由によっては車検に通らないケースもあります。
また、加入している任意保険の内容や、タカタ製のエアバッグを付けているかどうかにも注意が必要です。
車検前にはエアバッグ周辺のパーツも再確認し、万全の準備を整えてから車検を受けましょう。