車検におけるアンダーカバーには最低地上高の保安基準があります。
しかしながら、最低地上高以外の部分がどのような基準で検査されるのかは明記されていません。
そこで本記事では、車検でアンダーカバーがどう審査されるのか解説していきます。
アンダーカバーがない状態も含めた合否の具体的なケースも紹介していくので、ぜひ最後までご覧ください。
車検におけるアンダーカバーの審査基準
車検の検査項目および合格基準は、国土交通省の「道路運送車両の保安基準」に従って定められています。
その中でも最低地上高の基準が記載された「道路運送車両保安基準の細目を定める告示〈第3節〉第163条」にアンダーカバーの内容が書かれているので見ていきましょう。
アンダーカバーとは?
アンダーカバーとは、エンジンルーム底面を覆うカバーのことで、以下のような役割を持っています。
- ・異物(ほこり・水)の侵入防止
・空力性能の向上
・放熱性の向上
・静粛性の向上
主に樹脂やスチールを素材として作られています。
アンダーカバーの審査基準
アンダーカバーの審査基準として明記されているのは、安全走行のために必要な最低地上高です。
アンダーカバーを付けた車が車検に合格するには、アンダーカバーの最低地上高と、軸距間(前輪と後輪の軸間距離)の最低地上高、2つの最低地上高をクリアする必要があります。
アンダーカバーの最低地上高は5cm以上必要
アンダーカバーに必要な最低地上高は5cm以上です。
アンダーカバーの最も低い部分から、地面までの垂直距離を計測します。
基準に満たなかった場合は、車検に合格できません。
軸距間の最低地上高は一般的に9cm以上とされますが、この部分は記事の後半で詳しく解説していくのでチェックしてみてください。
1cm未満の端数は切り捨てて計測
アンダーカバーを含めて、最低地上高の値は1cm未満の端数を切り捨てて計測します。
アンダーカバー部分の実測値が4.99cmだった場合、基準に満たないと判断されるので注意しましょう。
なお最低地上高の計測は、以下の条件下で行われます。
- ・人や荷物はすべて降ろした状態で行う
・タイヤの空気圧は規定値にしておく
・車高装置を装着している場合は、定められた位置に設定しておく
・舗装された平面の上で計測する
車高調の位置は、段階的な切り替え式なら標準位置に、無段階式なら最高位置と最低位置の中間に設定します。
車検前に自身でチェックしておきたい場合は、上記の条件を満たした上で計測しましょう。
アンダーカバーが原因で車検が不合格となる理由
アンダーカバーが原因で車検が不合格となる理由を、具体的な事例と合わせて解説していきます。
一部の破損により最低地上高を満たしていない
アンダーカバーの一部の破損により、最低地上高を満たせず車検に合格できないことがあります。
よく見られるのが車の走行中に障害物に接触してしまい、アンダーカバーが変形・破損して直下方向にはみ出してしまうケースです。
車検の際はアンダーカバーの最も低い部分を計測するため、変形や破損の状況によっては基準を満たせない恐れがあります。
固定が不完全で安全上の懸念がある
アンダーカバーの固定が不完全で安全上の懸念がある場合も、車検に合格できないケースがあります。
具体的な事例を挙げるなら、走行中にアンダーカバー脱落の恐れがあるような状態です。
最低地上高に影響しない形でアンダーカバーが変形・破損している場合であっても、放置しているとカバーの変形・破損が悪化し、後続車にアンダーカバーの一部が飛散して事故につながるなど、走行時の安全面に問題がないか注意して確認しておきましょう。
アンダーカバー以外の原因
補足事項として、アンダーカバー以外の原因で車検に合格できない事例を紹介していきます。
ヘッドライトが劣化
車検ではヘッドライトの光量や光軸を検査する項目があります。
そのためヘッドライトが劣化していると、車検に合格できない恐れがあるため注意が必要です。
ヘッドライトが劣化する主な原因としては、長年にわたって汚れが付着してしまった、車を屋外保管することが多く紫外線を浴びてしまったなどが挙げられます。
車検前にヘッドライトの明るさを確認しておくことはもちろん、定期的なクリーニングを行っておくと良いでしょう。
タイヤのすり減り
車検に合格するには、タイヤの残溝にも気をつけておく必要があります。
乗用車やトラックの場合、1.6mmの溝が基準値として定められており、1.6mm以上すり減っていることを示すスリップサインがひとつでも出ていれば、車検には合格できません。
また、タイヤ内部のワイヤーが確認できるような劣化状態の場合、スリップサインが出ていなくても車検には合格できませんので注意しておいてください。
オイル漏れ
オイル漏れがあった場合も、車検では問題ありとみなされます。
エンジンオイル・ブレーキオイル・オートマオイルなど、車両に使われているオイルの漏れはすべて不合格です。
どの程度の漏れが不合格となるのかは、検査員の判断によりますが、オイル漏れはいずれも重大事故に繋がるリスクがある状態なので、早急な対処が必要です。
マフラーに穴が空いている
車検の検査項目には、排気ガス検査も含まれます。
一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)の濃度を検査する項目ですが、マフラーに穴が空いていると排気ガスが漏れていると判断されて車検には通りません。
車内への排気ガス流入や排気音量の点でも問題ありとみなされるため、事前に穴を塞ぐ処置を実施しておきましょう。
カーフィルムの透過率
カーフィルムを貼り付けている場合は、フィルムの透過率に注意が必要です。
フィルムの透過率は「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第39条7」にて基準が定められており、可視光線透過率70%以上の確保が必要と明記されています。
貼り付けているフィルムの可視光線透過率が基準値に満たない場合は、車検に合格できませんので専門業者に依頼して確認しておきましょう。
アンダーカバーの最低地上高が足りない場合の対処法を紹介
ここからは、アンダーカバーの最低地上高が足りない場合の対処法を3つ紹介していきます。
対処法①車高調を使って最低地上高を調整する
対処法のひとつ目は、車高調(車高調整式サスペンション)を使って最低地上高を調整する方法です。
複雑な手順は必要なく、車高調サスペンションを組み込んで調整するだけで問題を解決できます。
気を付けたいのは、部品の購入・調整に費用がかかる点です。
車高調を導入した場合、車高だけでなくホイールバランスやアライメントにまで調整の範囲が及びます。
すべて合わせると20万円前後まで費用が上がる場合もあるため、事前に見積もりを確認して判断しましょう。
対処法②破損や不具合があるなら修理する
アンダーカバーの破損や不具合によって最低地上高が不足している場合、原因となる部分を修理するという方法があります。
修理にかかる時間と費用は、破損や不具合の状況・修理の依頼先によって変わるため、複数の見積もりを取って比較・検討するのがおすすめです。
対処法③車の乗り換え
最低地上高をクリアしている車に乗り換える方法もあります。
高額な費用をまとめて用意しなければならないイメージもありますが、サブスクを利用すれば初期費用を抑えて乗り換えることが可能です。
注意点として、購入ではなく貸し出しの形になるため、走行距離の制限やカスタム禁止などのルールがあります。
修理費用が想定以上に大きくなった場合は、選択肢のひとつとして検討してみましょう。
アンダーカバーの修理費用と必要な時間
ここではアンダーカバーの修理費用と必要な時間を解説していきます。
外れ・カバー交換・部分的な破損の3パターンに分類して、一般的な費用と時間を以下にまとめました。
外れているだけなら負担は低い傾向
アンダーカバーを車体に固定しているビスやクリップが外れている状態です。
このケースでアンダーカバーの破損や変形がない場合は、費用や時間の負担も低くなる傾向にあります。
一般的な費用
修理内容がビスやクリップを固定し直す作業だけのため、数千円程度に収まる場合がほとんどです。
必要な時間
修理に必要な時間も数時間程度で、依頼先のスケジュールが空いていればすぐに対応してもらえるでしょう。
交換だと時間がかかる場合もあるため注意
アンダーカバーの大部分が破損・変形していると、部品を交換するしかありません。
部品交換のケースだと、予想以上に時間がかかる場合もあるため、注意しておく必要があります。
一般的な費用
交換にかかる費用は数千円~数万円の範囲で、部品代・修理工賃も含めて依頼先で異なることがほとんどです。
たとえばディーラーに依頼すれば信頼性は高くなりますが、純正用品を使用する確率も高いため費用が高額になる傾向にあります。
一般的な修理工場に依頼した場合は、リビルト品や中古パーツも選択できるため、部品にかかる費用を抑えることができます。
必要な時間
修理に必要な時間は、部品の在庫状況によります。
取り寄せになった場合、予想以上に時間がかかる場合もあるため事前の確認が必要です。
車検の直前に修理を依頼する場合は、十分注意しておきましょう。
部分的な破損なら応急処置も可能
アンダーカバーの部分的な破損なら、応急処置で対応できるケースもあります。
補修テープや結束バンドを使用して簡易的に固定すれば、費用と時間どちらも抑えられますが、あくまでこれは応急処置です。
破損状況によってはすぐに交換が必要になる場合もあるため、早めの対処を心がけましょう。
一般的な費用
補修に使った部品代・修理工賃は依頼先で異なります。
固定しているビスやクリップの交換だけで済む場合は、数百円で収まることもあるでしょう。
必要な時間
応急処置のため、比較的短時間で修理が完了する傾向です。
アンダーカバーの取り扱いで押さえておきたいポイント
アンダーカバーの取り扱いで押さえておきたいポイントを解説していきます。
アンダーカバーがなくても車検に合格できるケースがある
知っておきたいのは、アンダーカバーがなくても車検に合格できるケースがあるということです。
アンダーカバーがなくても車の走行には支障がないため、検査員によっては問題とせず、最低地上高の基準値をクリアしていれば車検に通るケースもあるのです。
アンダーカバーがないと部品の劣化を早める恐れがある
アンダーカバーがなくても車検に合格できるなら、破損した際にわざわざ費用をかけて修理・交換する必要はないと考える方もいるでしょう。
ですが、アンダーカバーは走行中にほこりや水などの異物がエンジンルーム内に入ることを防いでくれる重要なパーツです。
特にエンジンのファンベルトは、水が原因で摩耗や劣化が早まるパーツのため、装着しておいた方が良いといえるでしょう。
アンダーカバー以外の最低地上高も注意
アンダーカバーの最低地上高を満たしておけば、必ず車検に合格できるわけではありません。
記事の前半で触れたとおり、アンダーカバー以外の最低地上高(軸距間)にも注意が必要です。
普通自動車・軽自動車の最低地上高は9cm以上
普通自動車・軽自動車に必要な軸距間の最低地上高は9cm以上です。
前輪と後輪の軸間で、もっとも低い場所と地面との距離を計測します。
対象は車体を含む固定されたパーツで、主にマフラーやデフケース、オイルパンなどが挙げられます。
ただし軸距間であっても、以下の部分は最低地上高の対象から除外されます。
- ・タイヤと連動して上下するブレーキ・ドラムの下端
・緩衝装置の一部でロア・アームの下
・自由度を持つゴム製の部品
・マッドガード、エアダムスカート、エアカットフラップなどの樹脂製パーツ
また、樹脂製でウィンカーやフォグランプなどの灯火類が埋め込まれていないエアロパーツも、アンダーカバーと同様に最低地上高が5cmあれば車検に通ることが可能です。
最低地上高の基準が変わるケースもある
軸距間における最低地上高は、車体のサイズによって基準が変わることもあるので注意が必要です。
実際に必要な最低地上高は、ホイールベースまたはオーバーハングの値を下記の計算式に当てはめて算出されます。
H=Wb・1/2・sin2°20′+4 | H :自動車の地上高(cm)
Wb :ホイールベース(cm) Sin2°20′=0.04 |
H=Ob・sin6°20′+2 | H :自動車の地上高(cm)
Ob :オーバーハング Sin6°20′=0.11 |
フォグランプの高さにも基準あり
2006年(平成18年)以降に新車登録された車両には、フォグランプとウインカーの高さにも以下のような基準があります。
- ・フォグランプの高さは地上から25cm以上
・ウインカーの高さは地上から35cm以上
アンダーカバーや軸距間の最低地上高に合格していても、灯火類の高さが不足していて車検に通らないケースも見られるので注意しておきましょう。
まとめ
車検におけるアンダーカバーの検査で必ずチェックされるのは、最低地上高の値です。
アンダーカバーの状態によっては、安全上の問題で車検に合格できないケースもあります。
アンダーカバーが基準に達していても、軸距間の最低地上高やフォグランプ・ウインカーの高さにも注意が必要です。
アンダーカバーを取り外していても車検に合格できるケースが見られますが、車にとって重要なパーツですので、車検をきっかけにしっかりメンテナンスしておきましょう。