クーラント(冷却水)には、エンジンの熱を下げる働きがあります。
車検で交換や補充が必要と言われた場合、どのように対処するのが正解なのでしょうか。
この記事では、クーラントの役割や交換・補充の必要性について解説していきます。
交換・補充時期の目安や、漏れたり減ったりする原因についても解説していくので、メンテナンスを考える際の参考にしてください。
クーラントとは
クーラントにはどのような役割があるのでしょうか。
車検時にクーラントは検査項目になるのかについても解説していきます。
クーラントの役割
防錆効果や消泡効果、防蝕性、不凍性があることがクーラントの特徴です。
クーラントは冷却水やラジエーター液とも呼ばれていて、以下のようにさまざまな役割を持っています。
- ・エンジンを冷やす
・エンジンの腐食・凍結を防ぐ
・電気自動車のモーターを冷やす
・オートマフルードを冷やす
・ターボ車の吸入空気を冷やす
・エアコン(暖房)を動かす
冷却水が不足するとエンジンが異常高温になってしまうため、クーラントは車にとって必要不可欠なものです。
クーラントの役割はエンジンやモーターを冷やすことだけではなく、金属部品の腐食や錆びを防いでくれます。
また、クーラントは不凍液のため冬場でも凍る心配がなく、水が凍ってしまう季節でもエンジンを冷やすことができます。
クーラントの種類
クーラントには以下の2種類があります。
- ・ロングライフクーラント(LLC)
・スーパーロングライフクーラント(スーパーLLC)
それぞれの特徴について詳しく解説します。
ロングライフクーラント(LLC)
長期間使用することが可能なクーラントです。
希釈率によって不凍性に違いがあるため、ご自身の住んでいる地域に合わせた濃度を選ぶ必要があります。
日本車に使用されるLLCには赤や緑などの色がついているケースが多いですが、メーカーによって青やピンクなどのバリエーションがあります。
誤飲を防止するために色がついているため、色による性能の違いはありません。
濁って汚れの判断がつかなくなってしまうため、別の色を混ぜるのはやめましょう。
スーパーロングライフクーラント(スーパーLLC)
LLCよりもさらに長期間使用することが可能なクーラントです。
車の利用が多い方に向いてます。
溶媒や成分が異なるため、LLCとスーパーLLCを混ぜて利用することはできません。
自動車メーカーが推奨するクーラント液を選択しましょう。
クーラントは車検の検査項目?
クーラントは車検の際に補充や交換が勧められるケースが多いですが、車検を通すための検査項目には含まれていません。
つまり、クーラント液に劣化などの問題があっても車検には通ります。
しかし、車検時の点検項目に「冷却水の漏れ」という項目が設けられているため、クーラント液が漏れている場合は車検に通りません。クーラントは着色が派手なので、少量の漏れでも指摘されやすいことを把握しておきましょう。
クーラントの交換・補充の必要性
クーラントが劣化したり不足したりすると何が起こるのでしょうか。
交換や補充の必要性を解説していきます。
オーバーヒートを起こす恐れがある
クーラントはエンジンを冷却する重要な役目を持っているため、劣化や不足した状態を放置するとエンジンの熱が上がりオーバーヒートを引き起こします。
走行中にオーバーヒートが起こると、エンジンが壊れて徐々に失速するため大変危険です。
オーバーヒートによってエンジンが壊れてしまうと、車を動かすことができなくなります。
オーバーヒートは車の冷却性能が低下したときに起こるため、クーラント液の劣化や不足が起こらないように普段から点検しておくことが大切です。
オーバーヒートが起きた場合の対処法
エンジンのオーバーヒートが起こった場合は、まず車を邪魔にならない安全な場所に停車させてください。
次にボンネットを開けて内部の風通しをよくします。
ボンネット内は高温になっているので、開けるときは十分に注意しましょう。
基本的にエンジンを切る必要はありませんが、クーラントの漏れや冷却ファンが回っていない場合は直ちに停止させ自然冷却を試みてください。
そのまま専門業者へ連絡し修理工場に運んでもらいます。
オーバーヒートが起きた後も走行を続けてしまうと、エンジンがストップする可能性があり大変危険です。
エンジン交換にも高額な費用がかかるので、オーバーヒート時の正しい対処法を覚えておきましょう。
異常がある場合のサイン
クーラントの異常が原因でオーバーヒートが起こりそうな場合は、車の走行時に以下のような症状があらわれます。
- ・エンジンから異音がする
・水温計の温度がH付近になる
・エンジンの回転が不安定になる
・エンジンルームから甘い匂いがする
初期段階で気づくことができれば、事故や故障を予防することが可能です。
車へのダメージを最小限に抑えるために、運転中の違和感に気づいたらすぐに業者へ相談することをおすすめします。
クーラントの交換・補充時期の目安
クーラントはどれくらいの頻度で交換・補充するべきなのでしょうか。
交換時期の目安について解説していきます。
LCCは2〜3年おき
LCCの交換時期の目安は2〜3年です。
車検の際に交換しておけば忘れることはありません。
LCCの凍結防止や防錆の効果は2年で切れると言われています。
クーラント液の量に問題がなくとも、色が茶色に変色している場合は劣化している可能性が高いです。
水垢などの要因によって十分な効果を発揮できないこともあるので、車検を待たずに交換しましょう。
スーパーLCCは7年おき
スーパーLCCの交換時期の目安は、新車の場合で走行距離16万kmまたは7年、2回目以降は8万kmまたは4年です。
場合によっては、一度も交換や補充をすることなく車を買い換えるケースもあります。
交換時期が長いため、防錆や消泡性能を強化するといった目的で車検時にラジエターコンデショナーの添加が勧められる場合が多いです。
メーカー別の交換推奨時期
クーラントの交換推奨時期は、メーカーによって異なります。
メーカーが指定している交換時期の目安は、次のとおりです。
- ・トヨタ:7年または16万㎞
・日産:7年または16万㎞
・ホンダ:11年または20万㎞
・マツダ:9年または18万㎞
・スバル:11年または22万㎞
国産車には長寿命タイプのクーラントが使用されていることが多くなっています。
欧州車には専用のクーラントがある
欧州車の場合は、専用のクーラントを使用しなければなりません。
海外のクーラントには日本のクーラントとは異なる添加剤が使われているからです。
国産車に使用されているクーラントの主成分はエチレングリコールになります。
対して欧州車のクーラントの主成分はプロピレングリコールです。
エチレングリコールは毒性が強く環境汚染の可能性があるため、欧州では人や環境に優しいプロピレングリコールを主成分としたクーラントが使用されています。
クーラントが漏れる・減る原因
クーラントに漏れや減りが発生するのはなぜなのでしょうか。
漏れたり減ったりする理由について解説していきます。
自然に蒸発する
クーラントの入った樹脂タンクは完全に密封されているわけではないため、自然に蒸発していきます。
通常の走り方で蒸発するクーラントの量は1年で0.3リットル程度です。
極端に減っている場合は、漏れている可能性があります。
クーラントの自然蒸発量については、リザーバータンクのメモリで確認してください。
「FULL / LOW」または「MAX / MIN」と記載されていて、液が真ん中くらいにあれば問題はありません。
LOWやMINを下回っている場合は極端に減っていると判断できるので、すぐに点検を受けましょう。
冷却システムの部品が劣化している
冷却システムのゴムや樹脂が劣化してくると、亀裂や割れが発生してクーラントが漏れてしまいます。
金属部品が使用されている箇所も、時間が経てば腐食や錆により穴が空いてしまうことがあるので注意してください。
クーラントは着色してあるので、漏れている場合はすぐに気づくことが可能です。
特有の甘い匂いがする場合もあります。
水と違って蒸発することがないので、点検を怠らなければ早期に発見することが可能です。
クーラントの点検頻度
クーラントの点検頻度は1〜2か月に一度が基本で、最低でも半年に一度は点検することをおすすめします。
最近購入した車であれば長寿命のスーパーLCCが使用されているケースが多いですが、濁ってきた場合は交換が推奨されるからです。
走行後に点検する場合は、エンジンルームが高温になっている可能性があるので火傷の危険性があります。
エンジンを切った後に水温計の温度が下がったことを確認してから点検を行いましょう。
クーラントの交換・補充方法
オーバーヒートなどのトラブルが起きないように、クーラントは定期的な交換と補充が必要です。
最後にクーラントの交換・補充方法や費用について解説していきます。
漏れた場合の修理費用
クーラントが漏れる原因として、冷却システムの破損や不具合が考えられます。
各部位ごとの修理費用は、次のとおりです。
- ・ラジエーター:5万〜10万円
・ラジエーターホース:1万〜3万円
・ヒーターホース:1万〜3万円
・ウォーターポンプ:1万〜3万円
この修理費用は部品代と工賃を合わせた価格になります。
壊れている箇所が多ければ多いほど修理費用は高額になるので注意しましょう。
クーラントの交換費用
クーラントの交換費用は依頼した業者によって異なりますが、1000円〜5000円程度かかります。
ディーラーよりも修理業者やカー用品店、ガソリンスタンドで依頼した方が安いです。
自分で購入したクーラントを持ち込めば、部品代を安くすることもできます。
自分でも補充することは可能
クーラントはカー用品店やホームセンターで販売されているので、自分で補充することもできます。
選び方や交換手順をチェックしていきましょう。
クーラントの選び方
市販のクーラントには希釈タイプと原液タイプがあります。
水で薄める必要があるかないかをしっかりと確認しましょう。
さまざまな種類のクーラントが販売されていますが、冷却性能や耐久性が異なります。
価格を重視するか、性能を重視するかは人それぞれです。
どれを購入するべきか悩んだ場合は、スタッフに相談してみましょう。
クーラントの補充手順
クーラントを自分で補充する際の手順は、次のとおりです。
- 1.希釈が必要な場合は水で薄める
2.エンジンが冷えた状態であるかを確認する
3.リザーバータンクのキャップを開ける
4.クーラントを補充する
5.リザーバータンクのキャップを閉める
6.ラジエーターキャップを外してエンジンをかける
7.ラジエーターキャップを閉める
エンジンをかけたときにラジエーターの液面が泡立っているかを確認してください。
この工程で空気を抜かないとエンジンにダメージがあります。
泡がなくなってキャップを閉めたら補充は完了です。
補充だけであれば専門的な知識は必要ありませんが、交換の場合は工程が複雑になるので難易度が高くなります。
クーラントの交換が必要な場合は、無理をせずに専門業者を頼りましょう。
まとめ
今回は車を安全に走行させるために欠かせないクーラントについて解説しました。
クーラントの交換や補充は車検の項目にはありません。
交換や補充をしなくても車検に通すことは可能です。
しかし、クーラントの漏れや減りなどの問題を放置してしまうと、エンジンがオーバーヒートを起こして多額の修理費用が必要になったり、重大な事故が発生したりする可能性があります。
クーラントの量は定期的に点検を行い、必要に応じて交換や補充することが大切です。
自動車メーカーごとに推奨している適切な交換時期についても把握しておきましょう。