車の魅力や個性をアップさせるために、マフラーを自分好みにカスタマイズしたいと考えている方もいるのではないでしょうか。
ただし公道を走行させるためには、法律によって定められたマフラーの厳しい基準をクリアする必要があります。
この記事では、車検に通るマフラーの基準について解説しています。
車検に通るマフラーの選び方や車検に通らない場合の対処法についても解説しているので、車検の時期が近づいている方は参考にしてください。
マフラーの役割
そもそもマフラーにはどのような役割があるのでしょうか。
マフラーの役割について解説します。
エンジン音を軽減させる
マフラーにはエンジン音を包み込んだり、鈍くしたりする効果があります。
エンジンを稼働させると高温高気圧の排気ガスが発生しますが、マフラーを通すことで膨張と干渉が繰り返され、温度と圧力を最小限に抑えることができる仕組みです。
エンジン音の抑制には膨張式、吸音式、共鳴式のいずれかが採用されています。
乗り心地を安定させる
マフラーにはエンジンの性能を向上させ、車の乗り心地を良くする効果もあります。
長さを調整することにより、トルクや出力の調整をすることが可能です。
マフラーの素材や形状によっても乗り心地が変わります。
有害物質の排出を軽減させる
マフラーにはキャタライザーと呼ばれる排気ガスの有害物質を除去するパーツが取り付けられています。
マフラー内部には白金やロジウムなどの金属加工がされているため、化学反応により排気ガスに含まれる有害物質を自然や人体に影響の少ない状態まで除去することが可能です。
マフラーは環境保護の観点からも車の運転には欠かせないパーツであるといえるでしょう。
車検に通るマフラーの保安基準
基準を満たしていないマフラーを装着している場合は、車検に合格できません。
車検に通るマフラーの3つの基準について解説します。
排気音の大きさ
排気音の大きさは車の製造時期によって規制内容が異なります。
2010年4月1日に製造された車の場合、普通車は96dB、軽自動車は97dB以下が車検の合格ラインです。
2010年3月31日以前製造の車は、車種にかかわらず96dB〜103dBが車検の合格基準値となっています。
マフラーを社外品と交換した場合は、新車購入時の排気音(近接排気騒音)に5dBをプラスした値が基準値です。
排気音(近接排気騒音)の測定は、マフラーの開口部から50cm、後方45度の位置に測定器を設置して行われます。
取り付け位置(地上高)
マフラーの取り付け位置も製造年月日によって規制内容が異なります。
1991年以降に製造された車の場合、最低地上高は9cm以上、フロアラインから10mm以上突き出ていることが基準です。
基準値を守らないと、走行中やバックの際にマフラーが破損してしまう恐れがあります。
車高を下げるカスタマイズをすると、マフラーの位置も下がってしまうので注意が必要です。
以前はマフラー開口部の向きは進行方向に対して30度という規制もありましたが、現在は廃止されています。
触媒装着の有無・性能
マフラーには排気ガスの有毒物質を除去する触媒(キャタライザー)という部品が装着されていますが、触媒がない場合は車検に通ることができません。
触媒がないと、自然や人体に影響のある有害物質が排出されてしまうからです。
ただし触媒がしっかりと装着されている場合でも、炭化水素と一酸化炭素の測定結果が基準値をクリアできなければ不合格になります。
マフラーの触媒には寿命がないのですが、エンジンのトラブルによって破損や汚損が発生する場合があります。
浄化性能が低下した場合は交換が必要です。
純正ではなく社外品のマフラーを装着している場合は、基準をクリアできないケースがあるので注意しましょう。
基準を満たしているのに車検に通らないマフラーとは
純正マフラーや基準を満たしている社外品マフラーでも車検に合格できない場合があります。
基準値なのに車検に通らないマフラーの特徴について解説します。
性能等確認済表示がない
2010年4月1日以降に製造された車には加速走行騒音に関する規則が適用されるため、性能等確認済表示のないマフラーは車検に通りません。
加速走行騒音と近接排気騒音が基準内であることを証明することは、事前認証制度とよばれています。
性能等確認済表示はマフラーのサイレンサー部分にある金属製のプレートに刻印されていることが多いので、車検に出す前に確認しておきましょう。
確認機関名や識別番号、エンジン形式などが表示されています。
マフラーが劣化している
マフラーが劣化して排気音が大きくなったり、場合も車検には合格できません。
走行距離が長くなると、内部のグラスウールがダメージを受けて劣化してしまいます。
消音効果が落ちて車検に通らなくなってしまった場合は、マフラーの交換・買い替えが必須です。
また、雪が多く降る地域では道路に散布される凍結防止剤が原因でマフラーの錆や破損が発生します。
走行中の振動で溶接箇所の剥がれが発生する場合もあるので、マフラーは消耗品であることを理解しておきましょう。
認証プレートが消えている
マフラーの認証プレートには純正であることを証明する純正刻印がありますが、消えてしまった場合はメーカー不明のマフラーとして扱われてしまうため車検に合格できません。
2010年4月1日に製造されたマフラーは、純正であることを認証する刻印がないと車検に通らないので注意しましょう。
錆などが原因で認証プレートの刻印が消えてしまった場合は、保証期間内であれば対応してくれる可能性があります。
車検の際に保証期間の確認を依頼してみましょう。
車検に通るマフラーの選び方
マフラーを交換する場合は、どのようなマフラーを選ぶのが正しいのでしょうか。
車検に通りやすいマフラーの選び方について解説します。
純正品を選択する
純正品のマフラーであれば問題なく車検に通ることができます。
マフラーにこだわりがない場合は、純正品を選んでおけば間違いありません。
純正のマフラーには、次のようなメリットもあります。
- ・消音性能が高い
・性能を長期間維持できる
なお、純正マフラーはスチール製のものが多いため、劣化による錆や破損が発生しやすいです。
マフラーは純正品でも寿命は10年前後になります。
JASMA認定品を選択する
社外品マフラーの購入を希望する場合は、JASUMAの認定を受けているものを購入してください。
基準値を満たしているマフラーには、「車検対応」や「認定品」などの表示がありますが、JASMA(日本自動車スポーツマフラー協会)認定マフラーは、国の定める「道路運送車両の保安基準」よりも厳しい基準をクリアしています。
社外品のマフラー購入を検討している場合は、JASMA認定マフラーには認証プレートが取り付けられているかを確認しましょう。
マフラーが車検に通らない場合の対処法
マフラーが原因で車検に通らない場合、再検査が必要になります。
車検に合格するための対処法をチェックしましょう。
応急処置をする
マフラーに穴が空いて破損している場合は、穴を補修する応急処置をすれば車検に合格できる可能性があります。
マフラーの穴が1cm未満であれば、耐熱用のパテを使用してふさぐことが可能です。
腐食によって大きな穴ができてしまった場合修理は不可能なので、マフラー自体の交換を検討しましょう。
応急処置で車検に通すことはできても、マフラーの寿命が伸びることはありません。
今後さらに状態が悪化する可能性が高いので、応急処置はあくまでも車検に通すためだけの手段として考えましょう。
構造変更申請をする
マフラーがフロアラインから少しだけ突出している場合は、車の構造変更申請を行うことで車検にクリアできる可能性があります。
構造変更申請では、次の項目を変更することが可能です。
- ・車のサイズ
・車の形状
・用途
・最大積載量
・乗車定員
・燃料の種類
・原動機の型式
軽微な変更であれば、構造変更審査により保安基準を満たしている車だと認定されます。
必ず申請が受理されるわけではありませんので注意が必要です。
構造変更申請のやり方
構造変更は管轄の運輸支局か、自動車検査登録事務所で申請することができます。
申請に必要な書類は、次のとおりです。
- ・交換したマフラーの車検対応証明書
・自動車検査証
・自動車検査票
・点検整備記録簿
・自動車損害賠償責任保険(共済)証明書
・手数料納付書
・自動車重量税納付書
・納税証明書
申請には書類審査のみで完了するケースと車両を持ち込む必要があるケースがあります。
認証されれば構造変更申請の手続きは完了です。
インナーサイレンサーを装着する
排気音が基準値を満たせなかった場合は、インナーサイレンサーの装着をおすすめします。
インナーサイレンサーとは、排気音を軽減できるパーツです。
インナーサイレンサーはボルトやナットで取り付けた場合取り外しが容易ですが、車検には通りません。
取り外せないように、リベットで固定するか溶接する必要があります。
またインナーサイレンサーの取り付けが可能なのは、2010年3月10日以降に製造された車のみです。
買い替えを検討する
応急処置や構造申請、インナーサイレンサーの取り付けで対応できない場合は、マフラー自体の買い替えを検討しましょう。
純正品か車検対応の社外品に交換すれば、問題なく車検に合格できます。
マフラーを買い替えるメリットは、次のとおりです。
- ・排気音が変更できる
・燃費が向上する
・ドレスアップができる
マフラーは消耗品のため、寿命を迎えてしまった場合は車検に通らなくなります。
10年前後で買い替えが必要になることを把握しておきましょう。
マフラー交換にかかる費用の目安
車検でマフラー交換が必要となった場合、どれくらいの費用が必要になるのでしょうか。
マフラー交換費用の目安を、純正品の場合と社外品の場合に分けて解説します。
純正品マフラーの場合
純正品のマフラーに交換する場合、工賃や部品代を含めた費用の総額は4万円〜7万円です。
マフラーの交換費用は、車種やマフラーの交換を依頼する業者によって変動します。
純正マフラーの本体価格は新品の場合で6万円前後、中古品の場合で3万円前後です。
マフラーの寿命は10年前後のため、新品を選んだ方が交換のサイクルが長くなります。
社外品マフラーの場合
社外品のマフラーに交換する場合、工賃や部品代を含めた費用の総額は5万円〜10万円です。
社外品マフラーの本体価格は、材質や構造によって変動します。
大型車のマフラーになると20万円以上する場合もあるので注意してください。
社外品のマフラーにはカスタマイズ性がありますが、純正マフラーよりも割高になることがあります。
希望や予算に合わせてどちらを選択するかを決めましょう。
まとめ
今回は、マフラーの役割や車検に通るための保安基準について解説しました。
環境保護や騒音問題に配慮するためだけでなく、車の安全な走行を守るためにマフラーには厳しい規制が定められています。
基準をクリアできない場合は車検に合格することができません。
車検に合格できない場合は公道を走らせることができないので、記事で紹介したマフラー交換や構造変更申請などの対策が必要となります。
純正品ではなく社外品のマフラーでカスタマイズを楽しみたい場合は、車検に対応してる製品か確認してから購入することが大切です。
マフラーは消耗品のため、寿命を迎えた場合は交換することが推奨されます。
マフラーの買い替えで得られるメリットも多くあるので、車検に通らない場合は買い替えを検討しましょう。