愛車をローダウンしている方にとって気になるのが、車検における最低地上高の検査ではないでしょうか?
最低地上高が基準に足りていない場合、車検は通らずに公道を走ることも不可能になります。
そこで本記事では、車検を通すために知っておきたい最低地上高の知識について解説していきます。
事前に最低地上高をチェックする方法や、足りない場合の対処法も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
車検に必要な最低地上高は9cm以上
まずは車検に必要な最低地上高の基礎知識から解説していきます。
車検で求められる最低地上高は9cm以上ですが、数値以外にも知っておくべきポイントがあるため確実に理解しておきましょう。
車検に必要な最低地上高の定義
最低地上高の値は、前輪と後輪の間で地面からの間隔がもっとも狭い箇所の垂直距離を計測したものです。
地面からの間隔がもっとも狭い箇所を計測するため、それぞれの車に応じて計測場所が変化します。
保安基準に定められている数値は9cm以上
「道路運送車両保安基準の細目を定める告示第163条」にて、「自動車の地上高は9cm以上であること」と規定されています。
9cm以上の地上高とは、自動車の一般的な走行で底辺を擦らないための必要最低限と言える高さです。
したがって普通自動車や軽自動車は車種に関係なく、最低地上高は9cm以上であること求められます。
必要な最低地上高は車体の大きさによって変化する
車検で求められる最低地上高は、車体の寸法によっても変動します。
保安基準に定められている9cm以上とは別に、以下のような計算式によって満たすべき値も算出されるからです。
H=Wb・1/2・sin2°20′+4 | H :自動車の地上高(cm)
Wb :ホイールベース(cm) Sin2°20′=0.04 |
H=Ob・sin6°20′+2 | H :自動車の地上高(cm)
Ob :オーバーハング Sin6°20′=0.11 |
輪の中心から後輪の中心までを指すホイールベースと、タイヤの中心から前後にはみ出た距離を指すオーバーハングの数値を使用します。
例としてホイールベースが300cmを超える車に必要な最低地上高は10cm以上となり、オーバーハングが82cmを超える車に必要な最低地上高は11cm以上になります。
最低地上高の計測方法と計測に使用する道具
ここでは最低地上高の計測方法と、自身で計測する場合の道具について解説していきます。
最低地上高の計測方法
車検における最低地上高の計測方法を紹介します。
対象となる部位についても解説しているので、車検前に自身で確認しておきたい方はチェックしておいてください。
車検では計測場所を目視で確認
車検では最低地上高の計測ポイントを検査員が目視で確認します。
ポイントを見定めた後にメジャーやゲージなどを使用して、正確な最低地上高を計測する方法が一般的です。
車検を受ける車ごとに最低地上高の計測ポイントは異なりますが、検査員の豊富な経験によりすぐさま判断されます。
固定されて動かない部位が対象
最低地上高の計測ポイントは、固定されて動かない部位が対象です。
固定されて動かない部位とは、自動車の構造も含めて接触等の衝撃に十分耐えうるものを指します。
具体的な例で挙げると、マフラーやデフケース、サスペンションメンバーにオイルパンなどが該当します。
アーム・ロッド類は対象外
最低地上高の対象は固定されて動かない部位になるため、足回りにあるアーム・ロッド類は含まれません。
愚弟的には緩衝装置の一部であるロアアームや、タイヤのアライメントを調整するトーコントロールロッドなどがあります。
可動する部分は最低地上高の対象外であり、タイヤが計測ポイントにならないのも同様の理由です。
タイヤと連動するパーツや泥除けも除外
タイヤと連動して上下するパーツや、自由度を持つ樹脂製・ゴム製部品も、最低地上高の対象から除外されます。
タイヤと一緒に回転するブレーキドラム、タイヤの泥除けといった部品が該当します。
最低地上高の計測に使用する道具
車検前に自身で最低地上高を確認するには、計測用の道具を準備する必要があります。
計測自体は一般的な巻き尺でも可能ですが、手間をかけずに最低地上高を計測するなら以下で紹介している方法がおすすめです。
インターネットで計測器を購入する
最低地上高を計測する機器がインターネットで購入できます。
購入費用は発生しますが、最低地上高を手軽にチェックできる点がおすすめです。
実際に購入する際には、機器を使って地上高の計測ができる環境かどうかの確認も忘れずに行いましょう。
身の回りにあるもので計測器を自作する
最低地上高の計測に使用する道具を自作する方法もあります。
身の回りにあるものを材料として作成できるため、あまり費用をかけたくない方におすすめの方法です。
インターネットで検索すれば、さまざまな自作の計測器が閲覧できるので、それらを参考にアイデアを練ってみましょう。
最低地上高を計測する際のルール
ここからは、最低地上高を計測する際のルールについて解説していきます。
自身で最低地上高をチェックする場合も同様の条件で行う必要があるため、以下の計測ルールをしっかり理解しておきましょう。
- ・人や荷物が乗っていない状態で計測する
・タイヤの空気圧は適正値にする
・舗装された平坦な場所で計測する
・車高調整装置は所定の位置に設定する
・1cm未満の数値は切り捨てて計測値を決定する
それぞれの項目を詳しく解説していきます。
人や荷物が乗っていない状態で計測する
最低地上高は、人や荷物を乗せていない状態で計測します。
人や荷物が乗った状態だと車高が変動してしまうため、正確な値とは見なされません。
トランクルームに荷物がある場合は、計測前に降ろしておきましょう。
タイヤの空気圧は適正値にする
最低地上高の計測時は、タイヤの空気圧を適正値にしておきます。
空気圧が適正値に足りていない場合、車高が下がってしまうこともあるので注意しましょう。
空気圧の適正値は、運転席のドアを開けて見える箇所に表示されています。
車種により表示されていないこともありますが、その場合は取扱説明書で確認してみましょう。
舗装された平坦な場所で計測する
「道路運送車両保安基準の細目を定める告示第163条」において、測定する自動車は舗装された平面に置くと規定されています。
自身で最低地上高をチェックする際も、できるだけ平坦な場所を選んで測定しましょう。
車高調整装置は所定の位置に設定する
車高調整装置を組んでいる場合は、事前に所定の位置へと設定します。
ハイ・ノーマル・ローのような段階的な切り替え式は、どちらにも偏らない標準の位置が所定の位置です。
自由に車高を調整できる無段階式は、最高位置と最低位置の中間が所定の位置になります。
1cm未満の数値は切り捨てて計測値を決定する
最低地上高は、1cm未満の数値を切り捨てて計測します。
保安基準に0.1cm足りない8.9cmであっても、計測値は8cmと見なされて車検には合格できません。
事前に最低地上高をチェックする際のポイント
事前に最低地上高をチェックする際のポイントを解説します。
どこを計測すればいいかよく分からないという方は、以下の部分を意識しておくと安心です。
マフラーやデフ部分は優先的に計測
事前に最低地上高をチェックする際は、マフラーやデフ部分を優先的に計測しましょう。
地面との距離がもっとも近くなりやすいのは、マフラーやデフ部分です。
最低地上高がクリアできるか分からないという場合は、マフラーとデフ部分を計測して判断してみるのがおすすめです。
サスペンションメンバーやオイルパンもチェック
サスペンションメンバーやオイルパンも、最低地上高の対象になるケースがあります。
サスペンションメンバーとは、サスペンション関連の部品を支持する土台のパーツです。
地面方向に突出したボルト類が、最低地上高の計測ポイントになる場合があるので注意しましょう。
オイルを溜めておくオイルパンも、蓋のような形をして地面側に張り出しているため要チェックです。
車高調やダウンサスの場合はへたりに注意
車高調整装置やダウンサスを装着して、すでに最低地上高をクリアできるよう調整しているという場合は、スプリングのへたりに注意してください。
スプリングがへたることにより、イメージした位置よりも車高が下がっていることがあります。
たった0.1cm下がっただけでも、端数の切り捨てにより基準に届かない恐れがあるのでチェックは必要です。
可能ならスプリングのへたりも加味して調整しておきましょう。
最低地上高が足りない場合の選択肢は2つ
最低地上高が足りない場合、対処法として2つの選択肢があります。
自身の状況に合わせて、より良い方法を選びましょう。
部品を交換して最低地上高を満たす
最低地上高が足りない場合、合格できる高さまで車高を上げる必要があります。
代表的な方法が、車高調整式サスペンションへの交換です。
すでに車高調整式サスペンションへ組み替えている場合は、調整のみで対処が終わる可能性もあります。
サスペンションを交換・調整して車高を上げると、ホイールバランスおよびアライメントの調整まで必要になる点に留意しておきましょう。
別の車に乗り換える
最低地上高が足りないこと以外にも、車検に合格するための整備・調整が必要なケースもあります。
車検にかかる費用が予想以上に増大する場合は、別の車に乗り換えることも検討してみましょう。
また、定額で新車に乗れる車のサブスクを利用する方法もあります。
車のサブスクは費用を抑えて車を利用できるというメリットがありますが、走行距離やカスタム禁止などの制限がある点も含めて検討しましょう。
最低地上高を満たしていても注意したいポイント
車検の際は、最低地上高を満たしていても注意したいポイントがあります。
最低地上高とは別に、以下の内容も基準に達していないと車検に合格できません。
最低地上高をクリアできている状態でも車検に合格できないケースがあるため、しっかりとチェックしておきましょう。
最低地上高の基準が5cmとなる部分
以下の部分は、最低地上高の基準を9cmから5cmに読み替えて適用すると明記されています。
計測時のルールは同様ですが、それぞれ5cm以上の空間がなければ車検には合格できません。
樹脂製のエアロパーツ
空気抵抗の低減や車体のドレスアップを目的に使用されるエアロパーツですが、最低地上高は5cm以上が適用されます。
樹脂製のものであり、灯火類が組み込まれていないことが適用条件です。
金属製のものやウインカー・フォグランプと一体化しているパーツは、最低地上高9cmが適用されます。
また樹脂製のエアロパーツの中で、マッドガードやエアダムスカート、エアカットフラップなどは、最低地上高の対象外となるので測定する必要はありません。
アンダーカバー
アンダーカバーとは、車の底面に取り付けられている樹脂製のカバーです。
エンジンへの異物混入を防ぎ、空気抵抗を低減して燃費を向上させる役目があります。
アンダーカバーを装着している構造だと、アンダーカバー部分は最低地上高5cm以上で車検に合格できます。
ウインカーやフォグランプの高さ
新車の初年度登録が2006年(平成18年)以降の車は、ウインカーやフォグランプの高さにも保安基準が発生します。
フォグランプについては地上からの高さが25cm以上、ウインカーは地上からの高さが35cm以上必要です。
最低地上高9cm以上満たしていても、ウインカーやフォグランプの高さで車検に合格できない場合があるので注意しましょう。
基準値を超えるリフトアップ
車高を低くするローダウンではなく、車高を上げるリフトアップのカスタムも注意したいポイントの1つです。
車検証に記載のある車高から±4cm以上の変化は、事前に構造等変更検査を受ける必要があるという点です。
±4cmまでの軽微な変化、もしくは運輸省の定めた指定部品を使った車高変化なら、事前の手続きは必要ありません。
ただし最低地上高や灯火類の高さが基準に達していないと、車検には合格できないため注意しておきましょう。
まとめ
車検に合格するための最低地上高は9cm以上が必要です。
最低地上高の計測ポイントや合格するための正確な数値は、車ごとの状況や寸法によって異なります。
また最低地上高9cmを満たしていても、保安基準が異なる部分で不合格となる恐れもあるため、さまざまな視点からチェックしていく必要があるでしょう。
車に関する専門的知識を持っていない場合は、車検前の整備も含めてプロへの依頼を検討してみてください。