雪道を走行するためにはスタッドレスタイヤの装着が法律で義務付けられています。
車検の時期とスタッドレスを履いている時期が重なった場合や、交換せずに夏に車検を実施する場合は、スタッドレスタイヤのまま受けても問題はないのでしょうか。
この記事では、車検時にスタッドレスタイヤの交換が必要なのかについて解説しています。
正しいスタッドレスタイヤの交換時期や交換しないままのリスクについても解説しているので、参考にしてください。
スタッドレスタイヤで車検を受けることはできるのか
スタッドレスタイヤを装着したままでも、車検を受けることは可能なのでしょうか。
車検でチェックされるタイヤの状態について解説します。
スタッドレスのまま車検を受けることは可能
車検の際にスタッドレスタイヤを履いたままでも問題はありません。
スタッドレスタイヤでも車検に通るので、車検のためにノーマルタイヤに交換する必要はないです。
仮に前輪がノーマルタイヤ、後輪がスタッドレスタイヤの場合でも車検には通ります。
車検の際に重視されるのはタイヤの種類ではなく、タイヤの状態です。
タイヤには安全に走行するための基準が設定されていて、タイヤの状態が基準をクリアできていれば合格できます。
車検に合格するためのタイヤの保安基準
タイヤは重要なパーツのため、以下のような厳しい保安基準が定められています。
- ・溝の深さが1.6mm異常
・劣化していない
・フェンダーとタイヤの間に適切な間隔がある
車検で確認される3つの基準について詳しく見ていきましょう。
溝の深さが1.6mm以上
タイヤには溝がありますが、深さが1.6mm以上ないと車検に合格することはできません。
残りの溝が1.6mmであることを示すスリップサインが出ている場合は、整備不良となり車検が不合格になります。
タイヤの溝が1.6mm以下になるとハンドルやブレーキが効きにくくなるため大変危険です。
特にスタッドレスタイヤは溝の深さが50%減り、プラットフォームが露出すると冬用タイヤとして使用できなくなるので注意しましょう。
劣化していない
タイヤにヒビや亀裂、偏摩耗がないかもチェックされます。
偏摩耗とはタイヤのトレッドの減りに偏りがある状態のことです。
劣化が認められた場合は、新品のタイヤに交換しないと車検に通ることはできません。
ひび割れが軽度であれば車検に合格することができますが、タイヤの内部が露出していると不合格になります。
劣化を放置したまま走行するとバーストを起こす可能性もあるので、タイヤの状態は日頃から確認しておくことが大切です。
フェンダーとタイヤの間に適切な間隔がある
タイヤとフェンダーの間には指2本分の間隔が必要です。
タイヤのサイズに決まりはありませんが、フェンダーからはみ出してしまうサイズのタイヤを装着すると走行に影響があります。
タイヤがフェンダーから10mm以上はみ出してしまった場合も車検には通りません。
ドレスアップする場合は、タイヤの大きさに注意しましょう。
夏場にスタッドレスタイヤで走行するリスク
夏までスタッドレスタイヤを履いていても、車検に通らなかったり、法律違反になったりすることはありません。
冬が終わってもスタッドレスタイヤを交換しない場合のリスクについて解説します。
バーストが起こる
スタッドレスタイヤには雪道や凍結した道路で固くなりにくいゴムが使用されていますが、高温には弱い性質があります。
夏場に使用すると柔らかくなりすぎてゴムが変形してしまい、タイヤのバースト(パンクや破裂)が起こりやすくなるでしょう。
走行中にバーストが起こると、重大な事故につながる恐れがあるため大変危険です。
寿命が短くなる
熱によって柔らかくなってしまったスタッドレスタイヤのゴムは、道路との設置面積も大きくなるため通常よりも早く摩耗してしまいます。
また、紫外線や水にも弱いため、駐車場が屋外にある場合は、さらに寿命が短くなってしまうでしょう。
タイヤが劣化して車検に通らなくなってしまった場合は、新品への買い替えが必要です。
雨降りのときスリップしやすい
スタッドレスタイヤは雨天時の走行にも適していません。
水を排出する機能がないため、スピードを上げて走行してしまうとハイドロプレーニング現象が起こりやすくなります。
ハイドロプレーニングとはタイヤと路面の間に水の膜ができてしまい、ハンドルやブレーキが制御できなくなってしまう現象のことです。
夏に限らず、水たまりや高速道路で発生しやすくなっているので十分に注意しましょう。
燃費が悪くなる
スタッドレスタイヤは雪上や氷上でのグリップ力を高めるために接地面積が広くなっているため、夏の乾いた路面では抵抗が大きくなりノーマルタイヤよりも多くのエネルギーを消費してしまいます。
スタッドレスタイヤのまま夏を過ごしてしまうと、ガソリン代の負担が多くなってしまうでしょう。
止まりにくく事故に発展するリスクがある
スタッドレスタイヤは雪道の走行安定性に優れていますが、制動機能は低いです。
乾いた路面や濡れた路面では、ブレーキを踏んでから停止するまでの距離が長くなってしまいます。
急ブレーキを踏むような場面に遭遇した場合、追突や衝突などの事故が発生しやすいです。
ノーマルタイヤと同じような感覚でブレーキを踏んでしまうと間に合わない可能性があります。
ノーマルタイヤとスタッドレスタイヤの違い
サマータイヤとよばれることもあるノーマルタイヤとスタッドレスタイヤにはどのような違いがあるのでしょうか。
ノーマルタイヤとスタッドレスタイヤの特徴を比較します。
ゴムの質感
スタッドレスタイヤは雪や氷の上を安定して走行するために、気温が低くても固くなりにくい柔らかなゴムが使用されています。
柔軟性があるタイヤが路面と密着することにより、グリップ力が発揮できる仕組みです。
ノーマルタイヤは高温の乾いた路面でも走行に影響が出ないように、溶けにくい硬めのゴムが使用されています。
ゴムの材質が異なるため、タイヤの種類は硬さで見分けることが可能です。
溝の数や深さ
スタッドレスタイヤは溝が深くて細かいのが特徴です。
溝の深さはノーマルタイヤが8mmなのに対し、スタッドレスタイヤは10mmほどあります。
雪道でスリップするのを防ぐために、ノーマルタイヤよりも溝の数が多いです。
さらにサイプと呼ばれる無数の小さな切れ込みが入っているため、雪道でも滑りにくくなっています。
側面の表示
スタッドレスタイヤの表面には「STUDLESS」または「SNOW」と表示されているため、どちらのタイヤなのかは見るだけで判断できます。
ただしタイヤの摩耗や劣化により、表示が消えてしまっている場合もあるので注意しましょう。
運転するときの感覚
スタッドレスタイヤの方が柔らかいので、ノーマルタイヤよりもコントロールしにくいと感じる方が多いです。
雪道向けのタイヤなので、乾いた道路を走るときは独特のロードノイズが聞こえてきます。
高速道路を走った場合音がさらに大きくなるのでわかりやすいです。
ブレーキも効きにくいため、乗り心地が悪く感じるでしょう。
スタッドレスタイヤの履き替え・交換のタイミング
スタッドレスタイヤを装着したまま車検を受けることは可能ですが、夏場の走行にはさまざまなリスクがあることがわかりました。
ここでは、スタッドレスを履き替えや交換をする適切な時期について解説します。
天候や季節に合わせる
ノーマルタイヤからスタッドレスタイヤに変更するタイミングは、降雪予測や気温を参考にして決めましょう。
早すぎるタイミングで交換してしまうとタイヤが摩耗してしまうため、雪が降り始める2週間〜3週間前から慣らしていくのが理想です。
そして雪が降らなくなる春先のタイミングでノーマルタイヤに戻します。
雪の初終日は住んでいる地域によって異なるので、ニュースや気象庁の発表をチェックしておきましょう。
劣化しているなら買い替える
スタッドレスタイヤが劣化している場合は、すぐに買い替えることをおすすめします。
タイヤに次のような問題が発生している場合は、すぐに新しいタイヤに替えましょう。
- ・溝が浅くなっている
・摩耗している
・ひび割れや傷がある
溝が購入時と比較して50%減っているかを確認してください。
プラットフォームがタイヤの溝と同じ高さになっているのが交換のサインとなります。
溝の深さが十分に確保できている状態でも、摩耗やひび割れなどの異常が確認できる時点でアウトです。
スタッドレスタイヤの性能を十分に発揮できない状態にあるため、迷わずに買い替えを選択しましょう。
正しいスタッドレスタイヤのメンテナンス方法
スタッドレスタイヤを長持ちさせるためには正しいメンテナンスが必要です。
寿命を伸ばす方法を詳しく解説します。
空気圧をこまめに調整する
車の空気圧が適正であれば、バーストなどのトラブルからスタッドレスタイヤを守ることができます。
空気圧チェックは1か月に一度の頻度が目安です。
高速道路の走行や長距離運転を予定している場合は事前にチェックしておきましょう。
空気圧は車両ごとに適正な値が設定されています。
高すぎたり低すぎたりしないように、タイヤの空気圧チェックはこまめに行うことが大切です。
シーズンごとにタイヤをローテーションさせる
スタッドレスタイヤの摩耗を防止するためには、シーズンごとにタイヤをローテーションしながら履き替えることが効果的です。
タイヤの摩耗箇所は前輪と後輪では異なります。
位置を交換することで均一に摩耗させることが可能です。
ローテーションの方法は、車の種類や駆動方法によって異なります。
方法がわからない場合は、プロに相談する方が良いでしょう。
室内で保管する
スタッドレスタイヤは使用していない期間でも劣化が進行していきます。
紫外線や雨の影響を受けやすい屋外で保管するのはできるだけ避けましょう。
保管するスペースが確保できない場合は、タイヤの保管サービスの利用がおすすめです。
自宅や物置で保管する場合は、タイヤカバーやタイヤラックを用意するとタイヤへの負担を最小限にできます。
立てたままや横向きに保管すると重みでタイヤにダメージがかかるので注意が必要です。
湿気や高温に弱いので、風通しがよくて直射日光が当たらない場所に保管しましょう。
水洗いで汚れを落とす
タイヤは保管する前に水でしっかり洗って汚れを落としてください。
スタッドレスタイヤは柔らかい材質のため、泥やほこりがついたまま保管すると化学物質などのダメージにより劣化を早めてしまう可能性があります。
洗浄には水のみを使用するのが基本です。
洗剤には界面活性剤が含まれているため、タイヤの表面に傷がついてしまうおそれがあります。
ブラシを使って細かい部分の汚れまで落としましょう。
洗い終わった後はしっかりと乾かしてから保管するのが鉄則です。
スタッドレスタイヤは水に弱いので、水分をしっかり拭き取りましょう。
まとめ
今回は、スタッドレスタイヤを履いたまま車検に出すのは問題がないかについて解説しました。
スタッドレスタイヤを履いているからといって車検で落とされることはありません。
車検ではタイヤの状態がチェックされるため、溝の深さや傷がないかなどの保安基準を満たしているかを確認しましょう。
安全性の観点から、スタッドレスタイヤを交換せずに夏まで履き続けることはおすすめできません。
寿命を縮めてしまうことになるので、正しい時期に使用し、適切な保管方法でタイヤが劣化するのを防ぎましょう。