新しく車を買って確定申告する際、経費計上するために使用する勘定科目や注意点があります。
間違った方法で申告してしまうと、脱税を疑われて追徴課税やペナルティを課せられるかもしれません。
そこで本記事では、正確に確定申告するための計算方法もご紹介しながら、勘定科目や注意点を解説していきます。
本記事を参考に、無事に確定申告を完了させましょう。
車の購入費用を確定申告で経費申告できる?
車の購入費用を確定申告で経費申告することは可能です。
しかし、車の購入費用を確定申告で経費申告するには条件があります。
ここでは、経費申告できる条件とローンやカーリースによる購入の場合はどうするのかを解説していきます。
経費計上はできるが仕事の使用が目的の場合のみ
経費とは、仕事で使う費用のことです。
車の購入費用は経費申告することは可能ですが、使用目的が仕事である場合に限られています。
旅行や食料品の買い物など、プライベートで使用するのが目的の場合は経費申告することはできません。
仕事で使用するデスクやパソコン、棚や食材などを買ったり、会場を借りたりなどが該当します。
ただし、プライベートで使用が目的に含まれていたとしても、仕事用としても使用するなら経費にすることは可能です。
ローン・カーリースによる購入はどうなる?
車を買う手段に、ローンやカーリースを検討する方も多いでしょう。
実は、一括購入ではなくても経費にすることは可能です。
ローンまたはファイナンス・リース(資産購入と同等扱いになるリース)の場合、一般的な減価償却のみの計上ではなく、資産計上と合わせて計算する形となります。
オペレーティング・リース(ファイナンス・リース以外に該当するリース)は減価償却はしません。
なお、ファイナンス・リースに該当する要件は以下の2つです。
- ・契約期間中の途中で解約できないリース契約
・リースにかかる金利や取得価格などのほとんどの項目が自己負担となるリース契約
オペレーティング・リースは、上記の要件を両方該当しない契約や、片方のみが要件を満たす契約が該当します。
勘定科目は「リース料」と「リース負債」の2つです。
リース料は、オペレーティング・リース契約を結んだ場合、リース負債は、所有権移転ファイナンス・リース契約(リース契約が終了したあと車をもらえる契約)を結んだ場合に該当します。
なお、所有権移転ファイナンス・リース契約(リース契約が終了しても車をもらえない契約)は、リース料またはリース負債で会計処理をします。
車の購入代金・諸費用を経費計上するときの勘定科目
車の購入代金・諸費用を経費計上する際に使用する勘定科目について解説していきます。
注意点も併せて紹介していますので、しっかり目を通しておきましょう。
車両運搬具
車両運搬具とは、人や物を運搬する車両を買うのにかかった費用を勘定する項目です。
具体的にいうと、営業で使用する社用車やフォークリフト、電車の車両やトラックなどが該当します。
加えて、一緒に経費にできるのが付随するカーナビや座席シートカバーなどのオプション費用です。
取得時にオプションでつけた費用も車両運搬具として一緒に計上できます。
さらにいうと、自動車保険や自賠責保険も経費にできます。
【注意!間違えやすい計上できないもの】
建設会社や農業をしている方は、ブルドーザーやショベルカーや、トラクターなどは、運搬車両ではないため計上できません。
これらは、「機械装置」の勘定科目に該当するため間違えないようにしましょう。
車両扱いにできるのか、または機械扱いになるのかを考えると、勘定科目に迷うことはないでしょう。
リサイクル預託金
そもそもリサイクル預託金とは、廃車にして部品を解体しリサイクルするために必要な費用です。
「リサイクル法」によって新車購入時に前もって支払うことが決まっています。
相場は、6,000円〜18,000円です。
具体的な内訳には「リサイクル費用」と「自動車リサイクルシステムの運営費用」が含まれています。
リサイクル費用はシュレッダーダストやフロン類、エアバッグの料金の3つです。
運営費用は、情報管理料金と資金管理料金の2つです。
リサイクル預託金の仕訳は「長期前払費用」+「支払手数料」の組み合わせと「リサイクル預託金」の大きく2つあります。
どちらの方法を採用しても構いません。
「長期前払費用」+「支払手数料」は、資金管理料以外の費用を「長期前払費用」としてまとめて計上し、資金管理料は「支払手数料」として計上する方法です。
「リサイクル預託金」は、勘定科目を細分化して計上したい場合に有効な方法で、自分で自由に勘定科目を設定できるソフトウェアを使用している方に向いています。
パッとみただけでわかるように分けて計上したい方におすすめの方法です。
なお、消費税がかかるため「課税取引」の対象となります。
【経費計上するタイミングに注意!】
リサイクル預託金を経費で落とす際に気をつけなければならないことがあります。
それは、廃車時にしか計上できないことです。
前もって支払うものの、買ったそのタイミングに合わせて計上はできませんので覚えておきましょう。
保険料
保険料は、仕事で使用する車両にかけている保険であれば経費に落とせます。
ちなみに、任意保険と自賠責保険のどちらも計上が可能です。
個人事業主の場合はプライベートと仕事の両方で使用する方もいらっしゃるでしょう。
そのような方は「家事按分」の処理が必要です。
「家事按分」は、青色と白色どちらで申告するかで経費にできる条件が異なるため注意してください。
なお、保険には消費税は発生しないため「非課税取引」の対象となります。
仕訳は「損害保険料」と「車両費」の2つです。
一般的に使用されるのは「損害保険料」ですが、車両購入費用にまとめたい方は「車両費」に一括りすることも可能です。
【車両費を使用する場合は消費税に注意!】
車両費を使用する場合は、消費税に気をつけなければなりません。
車両費は消費税がかかりますが、保険料には消費税がかからないためです。
会計ソフトウェアによっては「課税取引」として扱っているものがあります。
車両費を使用しても問題ないかしっかりチェックしましょう。
租税公課
租税公課とは、税金に対して使用する勘定科目です。
車購入で使用できるのは自動車税や重量税、環境性能割があります。
環境性能割とは、ディーゼル車や電気自動車を買った場合にのみ計上できるものです。
他にも、免許を取得した場合は登録免許税も租税公課として扱います。
【延滞金は経費にならないため注意!】
税金であっても落とせないものがあります。
それは「延滞金」です。
軽自動車税や普通自動車税の支払いを忘れて督促状がくると延滞金がつきます。
支払っている金額は延滞金分上がりますが、計上できるのは元々税金として請求している金額分のみです。
延滞金は自腹になるため、忘れず期限内に納めましょう。
未払金
未払金とは、支払いが完了していない費用を経費にあげる際に使用します。
例えば、該当するのはカーローンやカーリースで社用車を入手した場合です。
カーローンやカーリースは、返済期間や契約期間を設定して日割りにした金額を支払います。
よって、ローンやリースは未払金として扱われます。
【未払費用や買掛金とは別のため注意!】
勘定科目に「未払費用」や「買掛金」がありますが、これらは似て非なるものです。
未払費用とは、後払いのサービスを受けている場合に発生するものです。
例えば、保険契約を2024年4月に行い、支払いはサービスが終了する2025年5月にまとめて支払うといった契約になります。
サービスだけを受けて支払いが後回しの状態になっている費用は、未払費用として計上されます。
買掛金とは、商品仕入にかかわる未払分が発生した場合に発生するものです。
考え方としては、車という商品そのものを購入して発生した後払いは未払金ですが、車を作る材料となるネジやガラスなどの部品を購入して発生した後払いは買掛金となります。
支払利息
支払利息はそのままの意味の通り、ローンや借入金の返済でかかってくる利子を計上する際に使用する勘定項目です。
なお、元本のローンの返済金や借入金は経費に落とせませんが、利子なら可能です。
億劫に感じるかもしれませんが、節税になるため支払利息もしっかり計上することをおすすめします。
支払手数料
支払い手数料はそのままの意味の通り、支払手数料を経費に計上する際に使用する勘定項目です。
車を一括購入して販売店に振り込む場合に発生します。
【行政機関が絡んだり先方負担の場合は注意!】
収入印紙や収入証紙といった行政機関が絡む支払手数料は「租税公課」の扱いになるため注意が必要です。
また、支払手数料を販売店が持ってくれる場合は経費に落とせず、自己負担となる場合にのみ可能です。
車の購入費用の確定申告は減価償却で経費申告する
本章では、車の購入費用を経費申告する方法を、計算方法と併せて解説していきます。
わかりやすいよう、計算をした具体例も紹介していきます。
減価償却とは?
減価償却とは、経年により価値が下がる固定資産を対象としたものです。
「価値が下がっていくのであれば、固定資産税の金額も価値が減少するのに伴い下げるべき」という考え方に沿って、確定申告で申し出る項目です。
車は固定資産に該当し、なおかつ経年劣化で価値が下がるものなので減価償却の対象となります。
ちなみに、パソコンや建造物も減価償却の対象です。
減価償却の計算方法
減価償却は、国が定めた新車と中古車の法定耐用年数をもとに計算します。
新車の場合、計算方法は毎年一定の金額を減価償却する「定額法」、一定の割合を減価償却する「定率法」の2つがあり、それぞれで計算式が異なります。
定額法の計算式は「車の購入費×償却率(法定耐用年数ごとに定められている)=減価償却費」です。
定率法の計算式は「未償却残高×定率法償却率(定額法の償却率×200%で求められる) = 減価償却費」です。
中古車の場合は、今後使用できる年数を見積もった年数で計算します。
しかし、正確に使用期間を知ることはできないため「簡便法」で計算します。
【新車の法定耐用年数】
耐用年数は車両の種類と使用目的によって以下のように定められています。
使用目的 | 車両・耐用年数 |
一般用のもの | ・自転車:2年
・2輪・3輪自動車:3年 ・軽自動車:4年 ・普通自動車:6年 ・ダンプ式の貨物自動車:4年 ・ダンプ式以外の貨物自動車:5年 ・リヤカー:4年 |
運送事業用
貸自動車業用 自動車教習所用 |
・自転車・リヤカー:2年
・普通自動車(総排気量3リットル未満):4年 ・普通自動車(総排気量3リットル以上):5年 ・貨物自動車(積載量2トン以下):3年 |
新車の法定耐用年数と、それぞれの年数で定められた償却率は以下のとおりです。
耐用年数 | 償却率 |
2年 | 0.5 |
3年 | 0.334 |
4年 | 0.25 |
5年 | 0.2 |
6年 | 0.167 |
参考元:減価償却資産の償却率等表|国税庁
【中古車の法定耐用年数】
中古車の法定耐用年数は、新車の法定耐用年数からどのくらい経過しているのかで考えます。
計算の結果、答えが1年に満たない端数がある場合は端数を切り捨ててください。
その結果、もし2年に満たない場合は2年とします。
経過した年数が、法定耐用年数以上の場合、計算方法は以下のとおりです。
「新車の法定耐用年数×20%=中古の耐用年数」
例えば、法定耐用年数が4年の軽自動車の場合は「4×20%=0.8」となります。
上記で考えた場合、法定年数は2年未満のため2年として計上可能です。
経過した年数が、法定耐用年数の一部のみの場合、計算方法は以下のとおりです。
「新車の法定耐用年数-経過年数+経過年数×20%=中古の耐用年数」
例えば、法定年数が4年の軽自動車で経過年数が3年の場合は「4×3+3×20%=3」となります。
上記で考えた場合、法定年数を3年として計上可能です。
個人事業主が開業前に車を購入した場合の計算方法
個人事業主の場合、開業前に仕事で使用する車を買った方もいらっしゃるでしょう。
そのような場合でも、仕事用であれば「未償却残高」を計算してから減価償却を計算することで経費に落とせます。
未償却残高は、将来経費にする金額のことで、以下の計算式で求められます。
「車の購入費用−仕事用としての未使用期間の減価の額(耐用年数×1.5で求められる)=未償却残高」
例えば、車の購入費用が50万円で耐用年数が4年の場合を求めてみます。
「500000−(4×1.5)=499994」
計算の結果、未償却残高は499,994円です。
車の購入費用を経費計上する際の注意点7つ
車の購入費用を経費計上する際の注意点は、以下の7つです。
- 1.一括計上は30万円を満たさない場合のみ
2.プライベートも使用するなら家事按分が必須
3.個人事業主は車両名義を原則自分にしなければならない
4.購入年に全額を計上できるわけではない
5.個人事業主はリサイクル預託金ではなく事業主貸扱いになる
6.節税対策のためなら新車はおすすめしない
7.節税対策をしたいなら青色申告を選ぶ
では、一つずつ解説していきます。
注意点①一括計上は30万円を満たさない場合のみ
一括計上ができるのは、車の購入費用が30万円を満たさない場合です。
しかし、30万円未満の場合は車両の状態があまりよくないことが多く、、購入を避ける方は少なくないでしょう。
よって、多くの方は一括計上できないと考えてください。
注意点②プライベートも使用するなら家事按分が必須
仕事とプライベートの両方で使用する場合、家事按分(かじあんぶん)の処理も必要です。
家事按分は、例えば個人事業主で仕事場を兼ね備えた自宅の場合、仕事と私生活で光熱費が必要になります。
その光熱費を家事按分で処理すれば、私生活でも使用していたとしても経費として計上可能です。
車でも家事按分の処理が可能になります。
ただし、仕事で使用している費用分のみが計上できるため、仕事用として使用した証拠が必要となります。
具体的には、走行距離や使用した目的、駐車場代やETC代などの走行記録を残さなければなりません。
注意点③個人事業主は車両名義を原則自分にしなければならない
個人事業主で仕事に使用する車を経費で落としたい場合、車両名義は基本的に自分でなくてはなりません。
ただし、生計が一緒である夫もしくは妻、祖母や祖父名義の場合は認められています。
注意点④購入年に全額を計上できるわけではない
一度に全額計上してその年の節税金額を大きくしたいと思うかもしれません。
しかし、車を買った年に全額を経費にすることはできません。
減価償却のもと、何年かに分けて計上するためです。
どうしても節税のために一括で計上したい場合は、30万円未満の中古車を買うしかありません。
注意点⑤個人事業主はリサイクル預託金ではなく事業主貸扱いになる
個人事業主は、残念ながらリサイクル預託金を経費にできません。
個人事業主は売却して得た利益は「事業主貸」として計上しなくてはならないためです。
誤ってリサイクル預託金として計上しないように気をつけましょう。
注意点⑥節税対策のためなら新車はおすすめしない
車の購入年に全額一括で経費にして節税対策したい方にとって、新車は節税対策にならないためおすすめできません。
100万円以上と必ず高額で、一括計上ができないためです。
注意点⑦節税対策をしたいなら青色申告を選ぶ
中古車を購入する方法以外に、節税対策になるのは青色申告です。
青色申告にすると65万円の控除が受けられるほか、家事按分の事業割合が50%以下でも経費になります。
白色の場合は事業割合が50%以上でなければ経費にできないため、節税を優先するなら青色がおすすめです。
まとめ
車を購入した場合、確定申告をする際は車両本体からオプション、保険料など全体的にかかった取得費用を経費として申告できます。
しかし、個人事業主や法人で若干取り扱いが異なる部分があるため、混同しないよう注意が必要です。