パワステは自動車のハンドルをわずかな力で回せるよう補助する機構のことで、故障してしまうと正確なハンドル操作ができなくなり、非常に危険です。
この記事ではパワステが故障してしまった時の対処法や、修理にかかる費用の目安について解説をしていきます。
最近パワステの調子がおかしいと感じている方はぜひ参考にしてみてください。
パワステ(パワーステアリング)とは
ここではパワステの仕組みや基本的な機能について解説していきますので、ぜひ読んでみてください。
パワステの仕組み
一般的な自動車の重量は1~2トン程度であり、これだけの重量がある車体をハンドルでコントロールするのは極めて難しいことです。
そのため、パワステはフルードと呼ばれるオイルの圧力やモーターの力を使ってハンドル操作を補助する仕組みとなっています。
パワステの機能
現在パワステは電動式が主流となっているため、ハンドルの操作性も非常に繊細に調整できます。
例として低速時では曲がりやすいようハンドルを軽くし、反対に高速時ではハンドルを重くすることで安定して直進できるようにするなど、ドライバーが快適かつ安全に運転できるようにするための補助が行われます。
パワステの種類
ここではパワステの種類やパワステが動作するのに必須のパワステフルードについて解説していきますので、ぜひ読んでみてください。
パワステの種類
パワステには油圧式、電動式、電動油圧式の3つの種類がありますが、一般的なのは油圧式と電動式で、電動油圧式は限られた車種にしか搭載されていません。
また油圧式も古い車種や大型車に搭載されることが多いため、これから自動車を買う場合、電動式を使用する機会がもっとも多くなるでしょう。
油圧式
油圧式は1920年頃に実用化された歴史の長い技術で、名前の通りオイルの圧力によってハンドルの操作を補助します。
確立された技術のためコストが安く、大型車の重量にも負けない大出力が出せるというメリットがあります。
しかし、部品の経年劣化によってオイル漏れが発生したり、油圧ポンプを動かすためにガソリンを消費してしまうといったデメリットもあります。
電動式
電動式はモーターの力でハンドルの操作を補助する方式で、普及したのは2,000年代に入ってからです。
油圧式に比べて歴史は浅いですが、ガソリンを消費せず省スペース化が可能で、さらに車両間でパーツの共有ができるといったメリットがあります。
一方で油圧式よりも出力が小さく、大型のバッテリーを搭載する必要があるといったデメリットもあります。
電動油圧式
電動油圧式は基本構造は油圧式と同じなのですが、油圧ポンプをエンジンではなくモーターで動かすことから電動油圧式とよばれています。
油圧式と比べて繊細な制御が可能で、大出力かつ高燃費を実現しています。
パワステフルード(パワーステアリングフルード)について
パワステフルードは油圧式と電動油圧式のパワステで使用されるオイルのことで、劣化するとさまざまなトラブルを引き起こすため交換についての正しい知識を身に着けておく必要があります。
パワステフルードの役割
パワステフルードは油圧を発生させるために必要なオイルであり、ハンドル操作の際に発生する熱によって少しずつ劣化していきます。
パワステフルードの劣化が進むとハンドルが重くなり、事故に繋がる可能性もあるため適切なタイミングで交換しなければなりません。
パワステフルードの交換目安
パワステフルードの交換目安ですが、走行距離4万~5万キロごとに交換するのが一般的です。
ただしカーブや高低差が多い道を頻繁に走る場合はその分パワステにかかる負荷も大きくなるため、より短い間隔での交換も検討すべきでしょう。
オイル漏れに注意を払う
油圧式や電動油圧式のパワステのトラブルでもっとも注意しなければならないのがオイル漏れです。
パワステフルードが漏れてしまうと油圧が下がり、ハンドル操作がし辛くなります。
加えて漏れたパワステフルードが正常な部品に入り込み、故障させてしまうことも考えられますので、異音がするなどオイル漏れの兆候が出た際は速やかに修理する必要があります。
パワステが壊れた時の症状と対処方法
ここではパワステが壊れた時に出る代表的な症状や壊れた時の対処法について解説していきますので、ぜひ読んでみてください。
パワステが壊れたときに出る症状
パワステが壊れた時に出る4つの症状について解説していきますので、もしこれらの症状に心当たりがある場合は速やかに修理をすることをおすすめします。
警告灯が点く
電動式のパワステの場合、なんらかの異常を検知すると警告灯が点きます。
この時点でハンドルに特に異常がなくても、突然パワステが停止してハンドルの操作が困難になる危険性がありますので、警告灯が点いたのを確認したらできるだけ早く停車しましょう。
異音がする
ハンドルを操作した時に異音がする、というのもパワステが壊れた時によく表れる症状です。
異音の原因ですが油圧式の場合はオイル不足、電動式の場合はベルトの故障などが原因であることが多いです。
この異音を放置すると、より深刻な症状に発展してしまいますので早急に点検してもらうことをおすすめします。
オイルが漏れる
油圧式や電動油圧式のパワステで特に注意しなければならない症状がオイル漏れです。
オイルが漏れてしまうとハンドルの操作が困難になるだけでなく、正常だった部品もオイルが入り込むことによって故障してしまう可能性がありますので、ハンドルに少しでも異常を感じたらオイル漏れを疑うようにしましょう。
ハンドルが重くなる
運転をしていてハンドルが重いと感じた場合、既にパワステになんらかの故障が発生していると考えた方が良いでしょう。
特に油圧式や電動油圧式の場合はオイル漏れのせいで出力が下がり、その結果ハンドルが重くなることが多いため、放置をせずに整備工場で点検をしてもらうようにしてください。
症状が出たときはどうすれば良い?
自動車を運転中、パワステに何らかの異常が起きてしまった時の対処法について解説していきますので、正しく対処できるか不安な方は参考にしてみてください。
安全な場所へ停車
パワステに異常を感じた場合、まず最初に行わなければならないのは安全な場所への停車です。
この時慌てて自動車を停車するとかえって危険ですので、落ち着いて停車場所を探すようにしましょう。
整備工場などへの連絡
安全な場所に停車できたら次は普段利用している整備工場に連絡しましょう。
パワステに異常がある状態での走行は非常に危険ですので、整備工場のスタッフと相談して必要であればJAFのロードサービスなどを利用するようにしてください。
パワステの故障以外でもハンドルに異変が起こることはある?
ハンドルに異常が起きた場合、必ずしもパワステの故障が原因とは限りません。
ここではパワステの故障以外でハンドルに異常が起きる4つの可能性について解説していきますので、最近ハンドルの調子がよくないと感じている方は参考にしてみてください。
タイヤがパンクしている可能性
パワステに異常がないのにハンドルが重いと感じる場合、タイヤのパンクが原因であることが考えられます。
タイヤがパンクした状態での走行は非常に危険ですので、早急に安全な場所に停車した上でタイヤ交換を行うか、それが難しい場合はJAFのロードサービスなどを利用しましょう。
タイヤの空気圧が少なくなっている可能性
タイヤがパンクしていなくても空気圧が少なくなっていると、ハンドルが重く感じられることがあります。
タイヤの空気圧は自分で行うこともできますが、無料で行ってくれるガソリンスタンドも多いため、1ヵ月に1回を目安にチェックすることをおすすめします。
ハンドル自体のトラブルの可能性
ハンドルのトラブルで意外に多いのが、ハンドルの軸部分に物が挟まって上手く動かせなくなってしまうケースです。
特にスマホの充電ケーブルのような細長い物は挟まりやすいため、運転席の側に置いている方は注意した方が良いでしょう。
センターアームが劣化している可能性
センターアームは自動車のステアリング装置を構成するパーツのひとつで、ブッシュとよばれるゴムでできた部分が劣化するとハンドルが重くなることがあります。
ブッシュだけを交換することもできますが、それほど高価なパーツではないため症状が治らない場合はセンターアーム全体を交換することも検討してみてください。
パワステの修理費用
ここではパワステを修理する時にかかる費用の目安や修理費用を抑える方法について解説していきますので、ぜひ読んでみてください。
油圧式の場合
油圧式のパワステの故障の主な原因はオイルです。
オイルが劣化しているだけなら交換で済みますが、オイルが漏れているのであれば最悪の場合、部品交換を行う必要があります。
オイルの劣化
パワステフルードとよばれるオイルは運転すればするほど劣化していくため、定期的な交換が必要になります。
交換費用の目安ですが自動車用品店に依頼した場合でも3,000円程度と安価のため、できるだけこまめに交換することをおすすめします。
オイル不足
パワステフルードは水と違って蒸発しないため、本来不足することはありません。
よってパワステフルードが不足している場合、どこかから漏れているということになります。
にじむ程度の漏れであれば、漏れ止め剤で修理でき、費用も1万円程度で済みます。
パワステポンプ内でのオイル漏れ
パワステの油圧ポンプからパワステフルードが漏れてしまっている場合、漏れの程度にもよりますが基本的には交換する必要があります。
油圧ポンプの交換費用の目安ですが、部品代と工賃を合わせると安くても6万円、高ければ10万円を超える場合もありますので、交換が必要になったタイミングで慌てないよう、日頃から交換用の資金を準備しておくと良いでしょう。
パワステポンプ内のベルトが劣化や破損している
パワステの油圧ポンプ内のベルトが破損している場合、交換が必要になります。交換費用の目安ですが車種によって異なるものの、概ね1万円前後となります。
ベルトは安価なパーツですので、点検で異常が見つかったらすぐに交換することをおすすめします。
電動式の場合
電動式のパワステですが、油圧式のパワステと大きく異なる点としてパーツごとの交換が基本的にできません。
そのため1ヵ所の故障であってもパワステ全体を交換しなければならず、修理費用が高額になってしまう傾向があります。
電動モーターの故障
電動モーターは電動式パワステの動力となる重要なパーツであり、故障してしまった場合はパワステ全体の交換となります。
交換費用の目安ですが20万円~30万円と高額であり、長期間電動モーターを交換していない場合は交換用の資金を準備しておいた方が良いでしょう。
ECUの不具合
ECUは自動車を制御するための電子部品のことで、電動モーターと並んで重要なパーツです。
修理費用の目安ですが、交換せずに修理することができた場合は33,000円程度で済むこともあります。
トルクセンサーの故障
トルクセンサーはハンドルを操作するのに必要な力を検出するためのパーツです。
交換費用の目安は13万円程度と高額な費用がかかってしまいます。
ステアリングコントロールユニットの故障
ECUにはさまざまな種類があり、ステアリングの制御をするためのものをステアリングコントロールユニットと呼びます。
ステアリングコントロールユニットが故障してしまった場合、交換費用の目安は55,000円になります。
リビルト品の部品を使用すれば修理費用は抑えられる
油圧式や電動油圧式のパワステが故障した場合、交換するパーツにリビルト品を使用することで修理費用を抑えることができます。
リビルト品とは使用済みのパーツをメンテナンスした上で組み立てたもので、中古品よりも品質が高く価格は新品の半額程度というコストパフォーマンスに優れたパーツです。
パワステが故障したままでも車検は受けられる?
パワステが故障した状態で車検を受けた場合、通過することはできません。
またハンドルの操作に違和感がなくても、パワステの警告灯が点灯していると通過することができませんので、車検を受ける前に必ず整備工場でメンテナンスをしてもらうようにしてください。
パワステの故障と乗り換え
ここではパワステが故障した車を乗り換えるべきかについて解説していきますので、ぜひ読んでみてください。
ポンプやモーターの修理は高額
パワステの重要なパーツであるポンプやモーターが故障してしまった場合、工賃を含めると修理費用が10万円を超えることも珍しくありません。
よって、ポンプやモーターの故障を乗り換えのひとつの目安とするのもおすすめです。
年数が経過するほどリスクも上がる
自動車は年数が経過すればするほど、パワステだけでなくそれ以外の部分で故障が起きるリスクも上がっていきます。
現在の自動車は耐用年数も上がっていますが、それでも10年を超えたら乗り換えを検討するようにしてください。
走行距離にも注意
それほど年数が経っていなくても、走行距離が多いとそれだけ自動車の劣化は早まります。
また、乗り換えを検討する走行距離の目安は一般的に10万キロとされており、このタイミングでパワステをはじめとした各種部品の寿命がきてしまうのです。
そのため、この走行距離を目安に交換を視野に入れておくと良いでしょう。
まとめ
パワステは自動車のハンドル操作を補助する極めて重要な機能であり、異常を放置したまま走行することは大事故にも繋がりかねません。
もし少しでもハンドル操作に違和感を覚えたら、パワステに異常がないか早急に検査してもらうようにしましょう。