車を購入した後に、やむを得ない理由でキャンセルしたいと思ったことはありませんか?
しかし、車購入後のキャンセルは基本的にはできません。
本記事では、車の購入を取り消す際の条件や違約、注意すべきポイントを詳しく解説していきます。
車購入を検討している方や契約解除について不安を感じている方は、ぜひ最後まで読んでください。
車購入はキャンセルできない?できなくなるタイミングについて
新車でも中古車でも、契約が成立すると原則としてキャンセルは不可とされています。
一般的に商品の売買契約は、契約書に解除できる旨の記載がなければ「署名・捺印した時点で契約成立」となるからです。
では、車購入の契約が成立してキャンセルができなくなるタイミングはいつ頃なのでしょうか?
車購入がキャンセルできなくなるタイミング
「一般社団法人日本自動車販売協会連合会(自販連)」と「一般社団法人日本中古自動車販売協会連合会(JU中販連)」の「自動車注文書標準約款」によると、キャンセルできなくなるパターンは3つあると記載されてあります。
(参考:JU中販連「自動車注文書標準約款」)
そして、自販連とJU中販連に加盟している販売店は、この「自動車注文書標準約款」に記載されている内容に基づいて、売買契約を行っています。
「自動車注文書標準約款」によると、キャンセルできなくなるパターンは以下の3つでした。
- ・登録完了したとき
・修理・改造・架装が開始したとき
・納車したとき
上記のいずれか1つが完了または開始されれば、契約成立となり契約解除できなくなります。
それぞれ詳しく解説していきます。
登録完了したとき
ここでいう登録完了とは、名義変更(移転登録)ことをいい、車の所有者を購入者に変更する手続きを行うことです。
登録手続きが完了すると車の所有者が販売店でなくなるため、キャンセル不可、もしくはキャンセル料を支払う必要があります。
修理・改造・架装が開始したとき
修理・改造・架装の開始は、車に対して作業を始めたということになるため、そこにはもちろん費用が発生することになります。
そのため、キャンセルは不可です。
車に対して作業を始めると、完了するまで作業を止められないことがほとんどです。
また、作業を開始してからキャンセルしようとすると、追加費用も支払わなければならない可能性があります。
納車したとき
車を納車するときは、手続きや車のメンテナンス、配送など、さまざまな工程が終わった状態です。
納車する際にはもちろん費用が発生しているため、契約成立とみなされ、キャンセル不可となります。
自販連やJU中販連に非加盟店の場合
ここまで、自販連やJU中販連に加盟している販売店のキャンセルが認められなくなるタイミングについて紹介してきましたが、非加盟店はどうなのでしょうか?
自販連やJU中販連に加盟していない販売店は、独自に定めたルールにより決められています。
販売店によっては、独自に定めたルールがないところもありますが、その場合は民法により規定したルールによって決められます。
もし、非加盟店で購入するならトラブルを避けるためにも、その店舗の契約書をしっかり確認しましょう。
なお、自分が車を購入する販売店が、自販連やJU中販連に加入しているかどうかは、それぞれのサイトで確認できます。
車購入をキャンセルできる場合とできない場合
車購入は原則としてキャンセル不可と述べましたが、実際には認められる場合とそうでない場合があります。
それでは、どのようなときに車購入の契約解除となるのでしょうか。
以下で詳しく紹介していきます。
車購入をキャンセルできる場合
以下の7つのいずれかに当てはまるとき、契約解除が可能です。
- ・約書の規定に当てはまる
・販売店が合意した場合
・契約確定前
・不備があった
・18歳未満の契約
・ローンが組めない
・キャンセル料を支払った
それぞれ詳しく紹介していきます。
契約書の規定に当てはまる
車を購入するときは、売買契約書にしたがって売買されます。
売買契約書には規定が決められており、記載されてある条件に当てはまれば、キャンセルが可能です。
ただし、無条件でキャンセルできるということはほぼありません。契約書の規定に当てはまるときは、キャンセル料や違反金が発生する場合が多いということを覚えておきましょう。
販売店が同意した場合
先ほど、購入者と販売店の同意があれば契約成立と紹介しましたが、反対にお互いの同意があれば契約解除も可能になります。
注意しなければならないのが、購入者側の自分勝手なキャンセルです。
あくまでお互いが同意したときなので、自分勝手なキャンセルをしようとすると訴えられる可能性がありますので注意しましょう。
契約確定前
契約確定前は、自販連やJU中販連もしくは非加盟店が定めた契約のルールに当てはまらないので、キャンセル可能です。
自販連やJU中販連に加入している販売店かそうでないかで、契約期日が異なるので注意が必要です。
心配な方は購入を決める前に確認しておきましょう。
不備があった
ここでいう不備とは、機能や外装に加えて販売店側が虚偽の説明をしていたことも含まれます。
たとえば、以下のことが当てはまります。
- ・車にあるべき機能がない、もしくは正常に動かない
・購入前になかった傷がある
・事故車なのに購入前に説明がなかった
・中古車なのに新車といわれた
上記の場合、契約が不当と判断され無料キャンセルでき、加えて損害賠償が請求できることも民法で決まっています。
18歳未満の契約
18歳未満の契約は、法律上できないと決まっており、親権者の同意がなければ購入できません。
付け加えると、このときの親権者の同意は口約束では契約は不可とされています。
親権者の同意を得るには、必要書類を提出する必要があることを覚えておきましょう。
ローンが組めない
車を購入するときにローンを組む方も多いと思いますが、ローンが組めないときは強制的に契約できません。
ローンが組めないということは、支払いできないと判断されるため販売店も販売することはできません。
つまり契約自体ができなくなるため、キャンセルせざるをえなくなります。
キャンセル料を支払った
一般的な売買契約書には、「キャンセル料を支払えば契約解除可能」と記載されています。
これは、キャンセルしたい場合に最も効率的な契約解除方法です。
購入者側は、売買契約書に記載されている料金を支払わなければなりませんが、お互いの同意のもと行われるため、それ以上のトラブルにもなりません。
ここでの注意点は、販売店側は「過剰な料金は要求できない」というところです。
キャンセル料の相場は、あとで詳しく紹介しますが、一般的には車購入価格の10%とされています。
車購入をキャンセルできない場合
次に車購入をキャンセルできないケースについて紹介していきます。
口約束で購入した
口約束は契約成立とみなされる可能性があります。
あくまでも契約成立は、自販連やJU中販連の「自動車注文書標準約款」に従う、もしくは販売店が定めたルールによって決まります。
口約束でルールに当てはまることを依頼した場合、契約成立とみなされます。
たとえば、購入者側が「早急に修理してほしい」など、口頭で修理を依頼したときは、修理が開始されたこととなるため、契約成立してしまいます。
つまり、購入者側と販売店側で同意されれば、契約成立とみなされ契約解除は不可ということです
また、口約束の場合は、言った言っていないでトラブルに発展する可能性があるため、特に注意する必要があることを覚えておきましょう。
クーリングオフは対象外
車の購入時に、クーリングオフができると思っている方も多いと思います。
しかし、車に関しては新車や中古車に限らず適用されません。
そのため、車の購入はしっかり決めてからにしましょう。
納期が遅い場合のキャンセルはできる?
新車を購入するときに「納車日まで半年以上」「納車日が未定」など、納期が遅いときも多々あります。
納期が遅いときのキャンセルは、納期予定日が決定していればできません。
納期予定日が決まっているということは、販売店が部品などの注文を行い、車を作る作業を開始している状態です。
費用も発生しているということなので契約解除できません。
一方、納期予定日が未定ならキャンセルできます。
この場合は、部品が不足していたり購入者が多かったりするなどの理由で、車を作る作業を開始していません。
そのため、費用も発生しておらず契約も成立していない状態ですので、契約解除できます。
ただし、キャンセルできても、いつ車の作業が開始されるかはわかりません。
どちらにせよ早めに販売店に確認するようにしましょう。
キャンセル料が発生した場合の相場
キャンセルしたい場合に最も効率的な方法が、契約に基づいた料金を支払うことです。
では、その相場はどれくらいなのでしょうか。
ここでは、キャンセル料が発生する場合の相場や、発生しない条件について詳しく解説していきます。
キャンセル料が発生した際の相場
キャンセル料が発生した際の相場は「車の購入価格の10%程度」です。
500万円で購入したとすると、50万円程度となります。
実は、相場が10%程度となるのに明確な理由はなく、実際には販売店が損した分の料金だけが請求されます。
その請求される金額が、「車の購入価格の10%程度」となっているようです。
ただし、販売店側は料金を請求できるからといって過剰な料金要求はできません。
これは、消費者契約法で定められており「販売店が損した分の料金のみ」と決められています。
そのため、購入者側も過剰な料金と思えば、根拠の提示を求めることができます。
キャンセル料が発生しない条件
料金を支払えば契約解除できるからといっても、「できれば無償でできないか」と考えるのは自然なことです。
しかし、実はキャンセルするときでも料金が発生しない条件がいくつかあります。
クレジットの審査が完了する前
クレジットで支払う場合やローン支払いを設定してするときは、審査が完了する前に契約解除すれば料金を支払う必要はありません。
また、事前に頭金を支払っていても返金されます。
クレジットの審査に通らなかったとき
審査が完了する前と同様に、審査が通らなかったときも料金を払う必要はありません。
こちらも、事前に頭金を支払っていても返金されます。
18歳未満が契約したとき
車の売買契約のところでも紹介しましたが、18歳未満の契約は法律上できないと決められています。
未成年者が契約を結びたいときは、親権者の同意が必要であり、同意がない場合は契約自体が無効とされます。
そのため、車の購入不可となるとともに、料金も支払う必要はありません。
不当な購入をさせられたとき
不当な購入をさせられたときというのは、販売店側が嘘をついて販売していたり、車両に何かしら不具合があったりした場合です。
この場合は、契約不当と判断されるため、契約解除とともに料金を支払う必要もありません。
また、購入者側は不当な取引をされたとして、損害賠償を求める権利があることが民法で規定されています。
販売店が損しないとき
基本的にキャンセル料を支払わなければならない理由は、販売店側が損してしまうからです。
そのため、販売店に損害額がないときや、具体的な損害額を提示できないときは、料金を支払う必要はありません。
これは売買契約書にも記載されており、「具体的な損害がないときはキャンセル料を支払う必要はない」と定められています。
キャンセルするときにトラブルが発生したら
キャンセルするときに、トラブルが発生する可能性も0ではありません。
もし、キャンセルをめぐるトラブルが発生した場合は、消費者生活センターに相談するのが良いでしょう。
ただし、何も考えずに「販売店が応じてくれない」とだけ伝えるのはおすすめしません。
当然ですが、キャンセル料を免除するには、理由と根拠が必要です。
理由と根拠がないまま相談しても、消費者生活センター側も手立てがありません。
また、販売店側も不当なキャンセルをされると損してしまう可能性が高いので、簡単に承諾してくれるわけではありません。
理由と根拠を整理するとともに、売買契約書に記載されてある規約もしっかり確認するなど、それなりの準備をしてから相談するようにしましょう。
車購入をキャンセルするときの手続き方法
ここでは、具体的な手続き方法について紹介していきます。
具体的といっても、その手続きは簡単です。
注意すべき点は、契約完了前と後で手続き方法が異なることです。
以下で解説していきます。
契約完了前
契約が完了する前であれば、キャンセルを決めた時点で販売店に連絡しましょう。
このときの伝える方法は、店舗訪問でも電話でも、どちらでも対応可能です。
今後の関係性も考えて丁寧に伝えたい方は、店舗に訪問して伝えるようにしましょう。
ただし、時間が経つと契約が完了してしまう恐れがあるため、早急な対応が必要です。
心配な方は事前に、契約完了を聞いておくと安心できます。
契約完了後
契約が完了した後は、キャンセル不可ということをわかった上で手続きしましょう。
このときは、必ず販売店の同意が必要となりますので、店舗に訪問し伝えるようにしてください。
また、キャンセル料を支払う必要があることも忘れず、販売店側と購入者側で、しっかり確認したうえで同意するようにしましょう。
車購入をキャンセルするときの注意点
車購入をキャンセルするときは、事前に知っておきたいいくつかの注意点があります。
キャンセルを検討している方は、損しないためにも紹介する注意点もしっかり確認してくださいね。
キャンセルの決断は慎重にする
車を購入することもキャンセルすることも、いつもの買い物と違って大きな金額を支払うことになります。
何も考えずに判断してしまうと、大きく損をしてしまうため、決断は慎重に行うことが重要です。
心配な方は、契約を結ぶ前に友人や家族に相談するなど、自分が納得してから決断するようにしましょう。
基本的にキャンセル不可であることを覚えておく
はじめに紹介したとおり、よほどのことがない限り車の購入の契約解除はできません。
契約成立後に「やっぱりやめる」といった簡易な判断は、購入者側の自分勝手な都合となるため、キャンセルできないことを忘れないようにしましょう。
キャンセル料や違約金を確認する
車購入後に、どうしてもキャンセルしなければならない状況もあると思います。
そのときは、必ずキャンセル料や違約金を確認しましょう。
契約書を確認すれば「購入価格の◯%を支払う」などと記載されていますので、しっかり目を通して、対応することが重要です。
消費者契約法に必ず目を通す
消費者契約法は、販売店側の過剰なキャンセル料の請求や、購入者側の自分勝手なキャンセルなどのトラブルを避けるために定められたものです。
買うと決めたときは必ず目を通し、不正と思ったときは消費生活センターに相談するようにしましょう。
販売店に早く伝える
先ほども紹介しましたが、キャンセルを決断したときは販売店に早く伝えましょう。
契約した後であっても、規約に当てはまらないときは、契約解除できたり無償でキャンセルできたりする可能性もあります。
なお、キャンセルの条件は販売店によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。
必要以上のキャンセル料はいらない
紹介した通り、キャンセル料が発生しても、購入者側に過剰な料金の請求はできないと決められています。
これは法律上で定められていることなので、もし過剰な料金を請求されたと思ったら、消費生活センターに相談しましょう。
自販連かJU中販連に加盟している販売店を選ぶ
トラブルを避けたい方は、自販連かJU中販連に加盟している販売店を選ぶようにしましょう。
加盟店であれば、「自動車注文書標準約款」に基づいた契約が可能なので安心して売買できます。
ローン契約後のキャンセルはローンの種類によって異なる
車を購入する際にローンを利用する方も多いと思いますが、ローン契約後の取り消しはタイプによって異なります。
しかし、原則としてローン契約後の取り消しはできません。この場合も、手数料やキャンセル料を支払うことがほとんどなので、事前に販売店やローン会社に確認しておくと良いでしょう。
まとめ
本記事では、車購入のキャンセルに関して、認められるときや認められないとき、キャンセル料について解説していきました。
車購入は基本的にキャンセルが認められていません。
しかし、契約のタイミングに当てはまらなければキャンセルが認められます。
キャンセルの際は必ず販売店に連絡し、条件や手続きを確認してください。
適切な手続きを踏むことで、無用なトラブルを避けることができます。
安心して車を購入するためにも、事前の確認と対応を心がけましょう。