本記事は業務で使用している車の修理代やガソリン代など、車に関する経費を申告する際に役立つ情報を解説していきます。
「経費として申告したいけど勘定科目は「車両費」なのか「修繕費」なのか分からない」 といった方も多いと思います。
上記のような勘定科目について、仕訳の方法とともに解説しています。
また、プライベートでも同じ車を使用している場合、家事按分という手続きが必要です。
家事按分について知らない方は、本記事を参考にしてみてください。
車の修理代を経費にするには?
業務で使用している車の修理代であれば経費として計上できる場合があります。
考えられる勘定科目としては「修繕費」もしくは「車両費」となります。
ここではどのように仕訳るのか、押さえておきたいポイントを紹介します。
車の修理代を「修繕費」として計上する
車が故障したり修理の可能性がある場合の維持・管理に必要な経費を「修繕費」といいます。
維持費や部品の交換費用も間接的に車の維持・管理に含まれるため、修繕費の対象となります。
修繕費はオフィスの給水・排水整備の修理・ガラス交換・外壁の塗り替えなど、車の修理費用以外にも使用できます。
業務上必要な機器の修繕・保守点検の記帳に使用できる勘定科目です。
車のオイル交換代を修繕費で処理した際の仕訳例は、以下の通りです。
(仕訳例)
事業用車のオイル交換をしたので、3万円を業者に支払った
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
修繕費 | 3万円 | 普通預金 | 3万円 | オイル交換代 |
ここで注意点があります。
改造や新機能などを追加することで現状より車の性能を高める目的で支出した費用は、修繕費にしてはいけないということです。
性能向上のための費用は、資本的支出という扱いになります。
車の修繕と機能向上は同時に行われる場合が多いので混同する傾向にあります。
修繕費と資本的支出のどちらに該当するか分からない場合は、税理士に相談するのも良いでしょう。
以下に、判断に用いる形式的な基準をまとめました。
- ・一度の修理や改良にかかる金額が20万円未満の場合「修繕費」
・一度の修理や改良が、3年ごとを目安に周期的に行われる場合「修繕費」
・資産の価値を高める、もしくは耐久性を増やすものとして行われる場合「資本的支出」
・通常の維持管理のために要するもの「修繕費」
・60万円未満、もしくは修理した資産の前期末時点における取得価額の10%以下「修繕費」
・継続的に修繕費と資本的支出を7:3の比率で計上している(法人の場合)「修繕費と資本的支出にそれぞれ分けて計上」
・実質的に判断して資本的支出に当たる場合「資本的支出」
車の修理代を「車両費」として計上する
車両費は燃料代・洗車代・修繕代(定期的な点検・オイル交換・パンク修理・タイヤ交換・車両修理)・自動車保険料・車検費用・各種税金・高速道路代・コインパーキング料金など、車両に関する経費を幅広く記帳できる勘定項目なので便利です。
特別な理由がない限り、車に関わる支出は車両費で仕訳すると良いでしょう。
車のタイヤ交換費用を車両費として処理する場合の仕訳例は、次の以下の通りです。
(仕訳例)
摩耗した車両のタイヤの交換費用として8万円を拠出した場合
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
車両費 | 8万円 | 普通預金 | 8万円 | タイヤ交換代 |
修繕費も含め自動車に関する費用は、すべて車両費勘定で記帳したほうが良いでしょう。
その自動車に要した年間コストを容易に計算できる場合があるからです。
逆に車両の使用頻度や支出費用が少ない場合、わざわざ車両費を設定する必要性がないパターンもあります。
たとえば、自動車保険料は損害保険料、コインパーキング料金は旅費交通費で良いので、余計な勘定科目を設定する必要はありません。
車の経費を計上する際に押さえておきたいポイント
車の経費を申告する際の注意点をまとめました。
きちんと把握して、経費処理を行いましょう。
修理代として経費計上できない支出もある。
財務会計には、「継続性の原則」というルールがあります。
企業がひとつの会計方法を一旦採用した場合、同じ方法を継続して適用しなければならず、正当な理由なくむやみに変更してはならないとされています。
勘定科目を安易に変更してしまうと、財務諸表を前期と比較する際に複雑になってしまいます。
経費を集計して財務分析をする際に、正しい分析ができなくなる可能性があります。
一貫性を持たせるために、一度仕訳に使用する勘定科目を決めたのであれば、それ以降も同じ勘定科目を使用するようにしましょう。
また、車両を購入した際の仕訳も注意が必要です。
車両購入の代金は車両費ではなく、車両運搬具を使用して資産として計上します。
車両の取得に要した費用は、耐用年数に応じて減価償却し、費用として償却していくことになります。
車両費は損益計算書に記載し、車両運搬具は貸借対照表に記載します。
1つの勘定科目に課税・非課税の経費が混在するので注意
車の維持管理にかかる費用を車両費として記帳する際は、消費税計算に注意が必要です。
車両に仕訳される費用のなかには、課税取引と非課税取引があります。
たとえば、車両にかかる費用のうち、自動車税・軽油引取税等の税金は非課税です。
また、自動車保険の保険料と印紙代も非課税となります車両費としてまとめると、1つの勘定科目でも消費税がかかるものとそうでないものがあるということです。
消費税計算をする際に手間がかかるのがデメリットです。
車両費としてまとめる場合は、補助項目を設定し、取引内容を細分化して仕訳するのがいいでしょう。
経費として計上する費用の種類が多いほど記帳が難しくなる
車の洗車や視界を維持するためのガラスコーティング代などは、車両費で記帳することで経費として計上ができる場合があります。
ただし仕訳の際は一度使用した勘定科目は、その後も一貫して使う必要があります。
毎回異なる勘定科目を使用することは原則できません。
また、汚れた車両の洗車など車両の状態を回復させるものやスタッドレスタイヤなど、走行する上で必要な装備品の購入に関しては経費として記帳が可能です。
しかし単純に見た目をよくする目的や趣味の割合が大きいアルミホイールへの交換・車高の調整などに関しては経費にすることはできません。
車両のために使ったお金が何を目的としているのか、意識してみましょう。
経費計上=お得とは限らない
経費と聞くと少しお得のようなイメージがあります。
しかし経費にできるからといって闇雲に出費することは、単なる無駄遣いになってしまいます。
あくまで経費計上は所得を抑えることで、必要以上に所得税が課税されるのを防ぐことが目的です。
経費にしたからといってお金が戻ってきたり、経費にした額と同じだけ税金が安くなったりすることはありません。
ですので、手元にお金を残したいのであれば経費をたくさん計上するのではなく、まず出費を必要最低限に抑えましょう。
その出費の中から経費を計上し、課税金額を抑えることが良いでしょう。
事故の場合賠償金も経費になる場合がある
事業で使用している車で事故を起こしてしまった場合、その事故が業務に関連したものであれば、相手方への損害賠償も経費になる場合があります。
慰謝料・示談金・見舞金なども、業務に関係した事故であれば経費計上が可能です。
ただし故意・重大な過失がある場合は経費として認められない場合がある点に注意してください。
その事故が業務に関係していても「故意・重大な過失」があった場合は経費にならない可能性があるということです。
例えば、飲酒運転・無免許運転・スピード違反などの道路交通法違反による事故や、車検切れなどの整備不良の車両を運転していた場合に、起こしてしまった事故の損害賠償などは経費の対象外とされています。
車の修理代を経費にするための条件
車に関する費用を経費に計上する際の条件として「事業で使用している車であること」と「車の名義が法人名義であること」の2つが挙げられます。
詳しくみていきましょう。
事業で使用している車であること
修理代などの費用を経費計上する条件は「業務に使用しているかどうか」ということです。つまり、取引先への訪問・商品の運搬といった業務中に車を使用し、発生した費用のみが経費として計上することができます。
したがって、業務で使用していないプライベートの車にかかる諸費用を、経費として計上することはできません。
車の名義が法人名義であること
車両にかかる諸費用を経費として計上したいのであれば、車両を法人名義に変更することをおすすめします。
法人の名義で車を購入すれば、その諸費用・維持費などは経費として計上できる場合があります。
プライベートで使用している車を、仕事でも使用している場合「家事按分」が必要になってきます。
次の項目で詳しく解説します。
プライベートでも同じ車を使っている場合は注意
業務とプライベートで使っている車が同じということもあると思います。
ここで必要になってくるのが「家事按分」です。
家事按分の方法と注意点などを詳しく解説します。
家事按分が必要
業務で使用している車を、プライベートでも使用している方もいらっしゃると思います。
このような場合、業務で使用している割合とプライベートで使用している割合を計算し、経費を計上しなければなりません。
これを家事按分といいます。
業務で使用している車を1割でもプライベートで使用しているなら、必要となってきます。
たとえば業務用とプライベート用で使用している日数の割合が半分ずつであれば、経費に計上できる費用は業務で使用している半分程度となります。
業務でのみ使用している車であれば、全額経費として計上することができます。
ただし、行っている事業の内容やその他の車両の有無など、100%業務でのみ使用していると言い切れる状況でなければ税務署から指摘される可能性があります。
家事按分の仕方
では、車に関わる家事按分は、どのように行うのでしょうか?
業務で使用している割合とプライベートで使用している割合のことを按分率といいます。
ここではガソリン代を例に、按分率の算出の方法をご紹介します。
ガソリン代は走行距離と使用日数の2通りの計算方法があります。
走行距離で計算してみましょう。
例えば1か月の走行距離が30kmで、そのうち仕事で走った分が10kmだった場合、「10km(仕事での走行距離)÷30km(すべての走行距離)≒0.33」で33%となります。
これが按分率です。
確定申告するにあたっての注意点
過剰な経費計上は指摘を受ける場合も
過剰に経費を計上してしまうと、税務署から指摘を受ける可能性があります。
生活費を経費に入れたり、業務用の按分割合を不自然に多くしたりしないように注意しましょう。
税務調査で不適切な処理を指摘されると、追徴課税にもなりかねません。
家事按分を行う際は、少しでも経費が増えるような割合を設定してしまう傾向にあります。
その年の確定申告が受理されても、翌年以降に指摘を受ける恐れがあるので注意しましょう。
家事按分の比率が妥当なデータを残す
家事按分を行い計上を上げる際、自分で決めた比率が適正であるという根拠が必要です。
はっきりとした根拠を示せれば、合理性を主張できます。
金額や人数が関係する家事按分については、それらを証明できる領収書などを保管しておきましょう。
確定申告時の按分作業を意識し、日頃から走行距離やガソリン代などのデータを残すようにしておきましょう。
車両費を使わない場合に用いられる勘定科目と仕訳の具体例
車に関する経費の勘定科目は車両費以外にも、 存在します。
主な勘定科目と仕訳の方法をみていきましょう。
車両費を使わない場合に用いられる勘定科目の一覧
修繕費:修理代・点検費用・タイヤ交換代
修繕費は業務に必要とする固定資産の修理・改良等のために支払った金額のうち、資産の修繕に必要な費用を処理するための勘定科目です。
車両関係で言えば、洗車・定期点検・オイル交換・パンク修理・タイヤ交換・部品交換・車両修理・車検等の費用が該当します。
旅費交通費:ガソリン代・駐車場代・高速代
旅費交通費は、業務で必要な移動に関する支出を計上するための勘定科目です。
旅費には長距離の交通費やホテル代が含まれます。
また交通費は、近距離の移動に要する費用が含まれます。
車関係では、燃料費・コインパーキング代・高速道路代などが旅費交通費となります。
租税公課:自動車にかかる税金
国に納める税金(租税)と公共団体へ納める回避や罰金(公課) を処理する勘定科目です。
租税公課を使用する税金等は、消費税の課税対象外となります。
車関係では、自動車取得税・重量税・自動車税・車検の印紙代などが租税公課の勘定科目です。
支払保険料:自動車保険料
支払保険料は掛け捨ての生命・損害保険の保険料を処理する勘定科目です。
車関係の保険料としては、自賠責保険・任意の自動車保険があります。
ちなみに社会政策的観点から、これらの保険料は非課税となります。
仕訳の具体例
2つのパターンで、仕訳の具体例をみてみましょう。
・現金でレンタカー料金5000円を支払った場合
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
旅費交通費 | 5,000円 | 現金 | 5,000円 | レンタカー料金 |
・自動車保険料4万円を現金で支払った場合
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
支払保険料 | 4万円 | 現金 | 4万円 | 自動車保険料 |
車に関わる経費を計上する際の必要書類
個人で事業を経営している場合、車に関する経費を自分で申告する必要があります。
ここでは申告の際に必要になってくる書類を紹介します。
自動車検査証
自動車検査証(車検証)には車が最初に登録された日付、軽自動車なのか普通自動車なのかなどの情報が記載されています。
ダッシュボードの中に保管している方が多いと思います。
自動車検査証は車をいつ取得したのか、何年間で経費として計上していくのかを決める際に重要な資料となります。
新車の購入費用を経費として計上する場合、軽自動車であれば4年、普通自動車であれば6年を耐用年数として償却することになります。
ちなみに中古車の場合は別の計算方法になります。
自動車検査証は車を運転するときに必ず携帯しなければならないことが法律で定められているので、紛失した場合には速やかに再発行の申請を行いましょう。
車両購入明細書・自動車注文書
オプション料金やリサイクル料金、自動車税や自賠責保険料など、車を購入した際に発生した細かな費用が記載されています。
一枚の書類で細かな経費を把握することができます。
購入に関する会計データ作成に役立ちますので、大切に保管しておきましょう。
紛失した場合は自動車販売会社に依頼すれば、再発行してもらえます。
任意保険の契約書
業務で使用する車の保険料は、経費として計上できます。
支払方法はクレジットカードや口座振替で「1年分を支払う」または「毎月支払う」などさまざまです。
明細を見返したときに自動車保険料を見落とさないよう、任意保険の契約書は大切に保管しておきましょう。
まとめ
車に関する費用について、どのように計上すればよいか解説していきました。
どんな勘定科目を使えばよいか、家事按分の方法など複雑な部分もあるかと思いますが、本記事をしっかり見返して、スムーズかつ正確に申告を行えるようにしましょう。