車を運転する上でブレーキは生死にかかわる重要な部分ですが、突然壊れてしまう可能性も考えられます。
ブレーキの故障による事故を防ぐためには、交換するタイミングを把握しておく必要があります。
そこで本記事では、ブレーキの効きが悪くなる原因や部品を交換するタイミング、交換費用について解説します。
ブレーキの効きが悪くなってきたとお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
ブレーキの重要性と効かなくなった場合の対処方法
ここでは、ブレーキの役割や仕組み、種類、点検する方法について解説します。
ブレーキの役割と仕組み
ブレーキはスピードが出ている車を止めるための重要な保安部品のひとつです。
ドライバーがブレーキを踏むと、タイヤの内側にあるブレーキローターの両側に設置されたブレーキパッドがブレーキローターの両側から強く挟み、ブレーキパッドの摩擦を利用してタイヤの回転を止めて車を停止しています。
ブレーキの種類
ブレーキはいくつもの種類があり、フロント、リア、パーキングとそれぞれの場所に合った種類のブレーキが採用されています。
主なブレーキの種類は、以下のとおりです。
- ・ドラムブレーキ
・ディスクブレーキ
・サイドブレーキ
それぞれの特徴を解説します。
ドラムブレーキ
ドラムブレーキとは、主に普通自動車のリアブレーキや大型車に使われています。
車輪の内側に設置されたドラムの内部にブレーキシューが装着され、それを内側から外側へ圧着させることで制動力を生み出します。
構造が簡易であり、低コストな点がメリットである一方で、熱がこもりやすいのがデメリットです。
ドラムブレーキには、リーディングトレーリングタイプ、ツーリ―ディングタイプ、ディスクサーボタイプの3種類のタイプがあり、それぞれの特徴に合わせて自動車の各ブレーキに配置されています。
ディスクブレーキ
ディスクブレーキは、主に高級車やスポーツカーに使用されています。
走行中に車輪と一体になって回転するディスクローターにブレーキパッドを擦りつけ、その摩擦によって制動力を生み出します。
安定した制動力を確保できる上に、放熱性にも優れており、水分や汚れをはじきやすいのがメリットです。
サイドブレーキ
サイドブレーキは後輪のブレーキに対して作動するもので、駐車場などで停車している際に、自動車が動くのを防ぐ役割を果たしています。
サイドブレーキにはステッキ式、足踏み式、電子式、レバー式などの多数の種類があり、最近ではモーターを活用したブレーキの作動や解除を行う電子式タイプのサイドブレーキが増えています。
ブレーキの点検を自分で行う方法
ブレーキの点検は自分でも行うことができます。
自分で定期的に点検することで、ブレーキの不具合に早く気付くことができるでしょう。
ここでは、ブレーキの点検を自分で行う方法を解説します。
ブレーキフルードのチェック
ブレーキフルードとは、一般的な自動車に搭載されているオイルです。
マスターシリンダーに付属するリザーバータンクを見ると、容量や色を確認できます。
ブレーキフルードが減っている場合は、ブレーキパッドの残量も減っている可能性が高いのが確認しましょう。
ブレーキフルードは、2年おきの交換を推奨されているため、車検時に交換するのがおすすめです。
ブレーキパッドのチェック
ブレーキパッドの残量をチェックする方法は、以下のとおりです。
- 1.車体をジャッキで上げる
2.ホイールを外す
3.ブレーキパッドを挟んでいるブレーキキャリパーの点検口から残量を確認する
残量が4mmになったときが交換の目安といわれており、2mm以下であれば早急に新品に交換するべきです。
異音や振動に日常的に注意を払う
異音や振動にも日常的に注意を払う必要があります。
車の走行中にキーという異音が聞こえる場合は、センサーがディスクローターと接触しており、ブレーキパッドの摩擦が限界を迎えているケースが多い傾向にあります。
また、高速道路の走行中にブレーキをかけた際に、ステアリングの振動を感じた場合はディスクローターの摩擦が原因です。
異音や振動を感じたら、すみやかに業者に点検を依頼しましょう。
車のブレーキの効きが悪い原因
ここでは、車のブレーキの効きが悪い原因を解説します。
ブレーキオイルの劣化
車はブレーキオイルの油圧を利用して停止しているため、ブレーキオイルはブレーキに不可欠な要素です。
ブレーキオイルは吸湿性があり、長年交換していないと劣化してしまいます。
また、水分によってできたサビが原因でブレーキオイルが漏れてしまうこともあります。
このようなリスクを防ぐために、ブレーキオイルは4年おきに交換するようにしましょう。
ブレーキパッドの不具合
ブレーキパッドの不具合には、さまざまなものがあります。
ブレーキパッドの不具合が出る前に、以下のタイミングで交換が必要です。
- ・ブレーキパッドの厚さが薄い
・ブレーキから異音がする
・警告灯が点灯した
・ブレーキフルードの残量が少ない
・走行距離が長い
それぞれの交換目安について解説します。
ブレーキパッドの重要な役割I
ブレーキパッドがなくなると、ブレーキが効かなくなってしまうため、ブレーキが効かなくなる前に交換が必要です。
また、ブレーキパッドの消耗程度次第では、ブレーキローターの交換も必要になる可能性があるため、ご注意ください。
ブーキパッドの厚さが薄い
ブレーキパッドは新品の状態で10mm程度あり、4mm以下になると交換の目安だといわれています。
ただし、使用状況によって寿命が異なり、急ブレーキを頻繁にかける方は、一般的にブレーキパッドの消耗が早いでしょう。
ブレーキから異音がする
ブレーキパッドから、「キー」「カラカラ」「ゴー」といった異音が聞こえることがあります。
「キー」という音がした場合には、ブレーキパッドの残量が少なくなり、センサーとディスクローターが接触して異音を発しています。
ただし、スポーツ走行向けのメタル配合率の高いブレーキパッドは、残量にかかわらず元々キーという音がしやすいのが特徴です。
「カラカラ」といった異音が聞こえる場合は、ブレーキパッドが割れて均一にブレーキローターに挟めなくなっている可能性があります。
「ゴー」という異音が聞こえる場合は、ブレーキパッドの金属プレートがブレーキローターと接触していたり、高温で溶けた摩材などが付着していたりする可能性があります。
警告灯が点灯した
ブレーキパッドには、パッドウェアインジケーターという機能がついているものもあります。
パッドウェアインジケーターとは、ブレーキパッドの残量が少なくなってきた際に、ランプや音で警告してくれる機能です。
機械式と電子式のタイプがあり、国産車では機械式タイプを取り入れている傾向にあります。
ブレーキフルードの残量が少ない
ブレーキフルードとは、ブレーキペダルを踏んで発生した圧力をブレーキキャリパーに伝えるためのオイルです。
ブレーキパッドを直接見なくとも、ブレーキフルードの残量が少ない場合は、ブレーキパッドの残量も少ないことがわかります。
ブレーキフルードの残量を確認する方法は、以下のとおりです。
1.ボンネットを開ける
2.エンジンルーム内にあるリザーバータンク(黄色の液体が入ったカップ)を探す
3.リザーバータンクのMINとMAXの間に液体があるか確認する
液体がMINに近い場合は、ブレーキパッドの残量が少なくなっているという合図です。
ブレーキパッドの残量が少なくなると、ブレーキキャリパーのピストンがその分押し上げられ、ブレーキキャリパーに流れます。
よって、リザーバータンク内のブレーキフルードの液面が下がる仕組みです。
ただし、ブレーキパッドとブレーキフルードを同時に交換している場合にのみ有効な方法であるため、ご注意ください。
走行距離が長い
ブレーキパッドの交換目安は、走行距離からも割り出すことが可能です。
走り方や車種によって多少差がありますが、基本的にブレーキパッドは1万kmにつき1mm減るといわれています。
新品で10mmあるブレーキパッドは、5万km走るとブレーキパッドの残量が5mm程度になるため、走行距離が5kmを超えた頃にブレーキパッドの残量を確認し、4mm程度になっていたら交換しましょう。
ブレーキキャリパーの不具合
ブレーキキャリパーとは、ブレーキパッドをブレーキローターに押し付けて油圧ピストンを行うための部品です。
ブレーキキャリパー本体の交換が必要になることはほとんどありませんが、以下の症状がある場合にはブレーキキャリパーを確認しましょう。
・ブレーキの効きが悪い
・発進のときに違和感のある重さを感じる
ブレーキの効きが悪い
ブレーキキャリパーによくある不具合として、ブレーキキャリパーの固着があります。
ブレーキキャリパーが固着したまま走り続けると、ブレーキがかかったままの状態で走っていることになり、ブレーキの片方だけがロックされたり、ブレーキ周辺が高音になったりするなど大変危険です。
ブレーキキャリパーの固着は、機器をパーツ単位で分解して点検や修理を行うオーバーホールで改善することができます。
オーバーホールはディーラーでキットを依頼することも可能ですが、素人が修理するのは難しい上に安全性に関わるため、プロに任せましょう。
発進のときに違和感のある重さを感じる
発進のときに違和感のある重さを感じる場合は、ブレーキキャリパー本体の交換が必要になります。
ブレーキキャリパーの修理にかかる時間は、1ヶ所あたり1時間〜1.5時間程度です。
サイドブレーキの不具合
サイドブレーキとは、駐車する際に使用するブレーキで、パーキングブレーキとも呼ばれます。
以下のような症状があらわれた場合には、サイドブレーキの交換が必要です。
・サイドブレーキの効きが悪い
・思い切りサイドブレーキを引かないと効かない
サイドブレーキにはワイヤー式と電動式の2種類があり、近年ではワイヤー式を採用している車種が多い傾向にあります。
ワイヤー式サイドブレーキは、ずっと使用していると伸びて緩んでしまい、効きが悪くなってしまうのです。
違和感がある場合には速やかに交換しましょう。
ブレーキディスクの劣化
ブレーキディスクとは、ディスクブレーキを構成する部品のひとつです。
ブレーキディスクは経年劣化する消耗品であるため、交換しなければなりません。
交換目安は、走行距離が10万kmで交換といわれていますが、車の使用頻度やブレーキの仕方によってブレーキディスクの摩擦度合いは変わるため、直接ブレーキディスクの残量を確認するのがおすすめです。
車のブレーキ系統部品の修理・交換費用
ここでは、車のブレーキ系統部品の修理・交換費用を解説します。
ブレーキオイル
ブレーキオイルの交換費用は、部品代が2,000円程度、工賃が2,000円程度で、総額4,000円程度かかります。
法定点検時に交換すると安くなりますが、ブレーキは安全性に関わるため、違和感を感じたら法定点検を待たず、すみやかに交換しましょう。
ブレーキパッド
ブレーキパッドの交換費用は、軽自動車であるか、普通自動車であるか、輸入車であるかによって異なります。
それぞれの交換費用は、以下のとおりです。
車の種類 | 費用 |
軽自動車 | フロント&リア本体:14,000円程度
工賃:1ヶ所あたり3,000〜1万円程度 |
普通自動車 | フロント&リア本体:16,000円程度
工賃:1ヶ所あたり3,000〜1万円程度 |
輸入車 | フロント&リア本体:15,000〜2万円程度
工賃:1ヶ所あたり3,000〜1万円程度 |
ブレーキディスク
ブレーキディスクは、ブレーキパッドの交換2回につき1回程度のペースで交換が必要です。
何ヶ所交換するかによって費用が異なりますが、1ヶ所であれば4,000円程度です。
4ヶ所交換が必要な場合は、最低でも1万円以上はかかるでしょう。
ブレーキフルード
ブレーキフルードの交換目安は、色またはリザーバータンクの液体量によって判断可能です。
元々は透明な黄色をしていますが、劣化が進むごとに黄色から茶色、茶色から黒へと変化していきます。
黒に近い色になっている場合は、完全に劣化しているため、早急に交換しなければなりません。
ブレーキフルードは、1Lあたり1,000〜2,000円程度で、工賃はカー用品店で3,000円〜、指定整備工場で5,000円、ディーラーで1万円程度かかります。
安いカー用品店で済ませたいと思う方が多いかもしれませんが、修理内容が異なる場合があるため注意が必要です。
ディーラーや整備工場では、リザーバータンク、マスターシリンダー、ブレーキキャリパーなどすべてのブレーキフルードを交換してくれますが、カー用品店ではリザーバータンク内のブレーキフルードの交換のみで済ませているケースがあります。
そのため、ディーラーや整備工場に依頼した方が安全性が高いといえるでしょう。
ブレーキキャリパー
ブレーキキャリパーの修理費用の相場は、1万円〜5万円程度です。
ブレーキキャリパーは滅多に交換することはありませんが、違和感を感じたらすみやかに交換しましょう。
サイドブレーキ
サイドブレーキの交換費用は、ワイヤーのみの交換で3,000円〜7,000円程度です。
工賃は車種によって異なり、1万円以下で済む車種もあれば、2万円以上かかる車種もあります。
その理由は、車種によって1本のワイヤーで取り付けられているものもあれば、左右に1本ずつ取り付けられているものもあるためです。
ブレーキホース
ブレーキホースは、車の点検やメンテナンスの際に交換するのがおすすめです。
ブレーキホースの交換費用には、以下のものが含まれます。
交換部品
費用
ブレーキホース
1本あたり2,500円程度
エア抜き
4,000円〜5,000円程度
ブレーキフルード
4,000円〜6,000円
工賃
1輪あたり2,000〜3,000円程度
総額
4輪交換で26,000〜33,000円程度
ブレーキホースを交換する際には、ブレーキフルードの抜き取りが必要であるため、必然的にブレーキフルードの交換費用もかかります。
車のブレーキパッドの交換費用を抑える方法
ここでは、車のブレーキパッドの交換費用を抑える方法を解説します。
ディーラーではなくカー用品店や修理工場を利用する
ディーラーではなく、カー用品店や修理工場を利用すると交換費用を抑えられます。
ディーラーでは純正製品への交換しかできませんが、カー用品店や修理工場であれば社外品への交換も可能です。
純正製品の半額程度で済むこともあるため、部品代が安く済むでしょう。
また、ブレーキパッドの交換に関しては、ディーラーはブレーキパッドの面取りやグリスアップなど、ブレーキ周りのメンテナンスも行ってくれるため、安心感は高まるもののその分費用も高くなります。
一方、カー用品店や修理工場では、ブレーキパッドの交換のみを行うため、ブレーキパッドの交換費用だけで済むことがほとんどです。
ただし、ブレーキパッドの交換は、国の認証・指定工場でしか整備できないためご注意ください。
点検時にあわせて交換してもらう
車検や12ヶ月点検、タイヤ交換時に合わせて交換してもらうと、安く済ませられます。
ブレーキパッドを交換するには、車体をリフトアップしてタイヤを外さなければなりませんが、車検や12ヵ月点検、タイヤ交換では元々それらの作業を行います。
そのため、ブレーキパッド交換は付帯作業となり、工賃を無料あるいは安くしてもらえるケースがあるのです。
自分で交換する
自分で交換すると、工賃がかからないためその分安く済みます。
大幅な節約にはなりますが、ブレーキは安全性にも関わるため整備に不安がある方は、プロに任せるのがおすすめです。
純正品以外を利用する
ブレーキパッドの交換費用を抑えるには、社外品を持ち込んで、交換を行ってもらうのもひとつの手です。
なかには、車検に通りやすい純正同等品もあるため、「安く抑えたいけど車検が心配」という方は、純正同等品を選びましょう。
自分でブレーキパッドを交換するにはどうすれば良い?
ここでは、自分でブレーキパッドを交換する場合の方法と注意点を解説します。
自分でブレーキパッドを交換する方法
自分でブレーキパッドを交換する手順は、以下のとおりです。
- 1.ブレーキキャリパーを開く
2.ブレーキパッドを外す
3.ブレーキキャリパー内のピストンを押し込む
4.ブレーキ内部を掃除する
5.ブレーキパッドを装着する
6.ブレーキキャリパーを元の位置に戻す
7.ブレーキペダルを踏んで正常に作動する確認する
自分でブレーキパッドを交換する際の注意点
自分でブレーキパッドを交換する際は、以下の注意点に気をつけましょう。
・テスト走行をする必要がある
・他人の車のブレーキパッドは触らない
それぞれの注意点を解説します。
テスト走行をする必要がある
テスト走行は、安全な場所でゆっくり車を走行し、ブレーキが今までのように効くか確認しましょう。
少しでも感覚が変わるならば、レッカーサービスを利用して近くの整備工場に運んでもらい、ブレーキの検査を受けましょう。
他人の車のブレーキパッドは触らない
道路運送車両法にて、ブレーキパッドの交換を含む車の分散整備は、使用者または委託を受けた認定工場や指定工場以外は行ってはならないと決まっています。
万一安価な値段や無償でやってもらえる場合でも、ブレーキパッドの交換は頼まないようにしましょう。
また、違法になってしまうため、自分の車以外はブレーキパッドの交換はしないようにしてください。
まとめ
車のブレーキは命に関わる大事な部品ですが、故障してしまうこともあります。
走行中に故障や不具合が現れないように、日頃から点検しておくことが大切です。
点検は自分でもできますが、ブレーキは安全性に関わるため、整備に自信のある方以外は修理や交換はプロに任せることをおすすめします。
また、自分の車以外のブレーキパッドの交換を行うと違法になってしまうため気を付けましょう。