「車の板金塗装ってなに?」
「板金塗装の依頼はどこにしたらいいの?」
「板金塗装の修理費用は?」
車に傷やへこみができてしまった経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
塗装を剥がれたまま放置しておくと、サビが発生して車体内部に広がったり、酸化したりする恐れがあります。
そこで本記事では、車の板金塗装修理から業者ごとの特徴や修理費用について徹底解説します。
板金塗装の基本
まずは、板金塗装の手順・必要なタイミングについて解説します。
板金塗装は「板金」と「塗装」
板金とは、車のへこんだ部分を叩いたり、専門の工具を使用して外側から引っ張ることで元の形状に修復する作業を指します。
また損傷部分の塗装を剥がす、歪んだフレームを修正する、パネル交換・パーツ交換する作業なども板金に含まれます。
一方、塗装作業は修復した場所に塗料を塗ることで元の姿に近づける作業を指します。
ただし、熟練の職人でも100%同じ色にするのは難しいとされています。
塗装作業は単に塗装するだけではなく、パテで下地を整える・塗料を調色する・凹凸やゴミを除き仕上げるなど、複数の工程が含まれています。
板金塗装が必要なタイミング
板金塗装が必要になるタイミングは、車にひっかき傷・すり傷やへこみができた際、または色褪せした際などがあげられます。
このような傷やへこみがつく原因は事故だけに限りません。
たとえば、走行中に小石が飛んでくる、またはガードレールに接触した際や乗車の際に荷物をぶつけたりすることで傷やへこみが生じる可能性があります。
板金塗装に使う塗料は2種類
板金塗装に使用される塗料は、大きく分けて水性塗料とウレタン塗料に分けられます。
一口に塗料といっても特徴がそれぞれ異なり、双方にメリット・デメリットがあります。
水性塗料とはシンナーなど有機溶剤を使わない、または有機溶剤の使用料を大きく減らして水を主成分としている塗料です。
環境への配慮から、油性塗料に代わって新車に採用されることが増えています。
しかし、「耐久性で劣る」「乾燥まで時間がかかってしまう」のがデメリットです。
ほかにも経年劣化しやすく、保管環境を整える必要があるという繊細な面があります。
一方、ウレタン塗装は耐久性に優れて、美しく仕上がるのが特徴です。
比較的安価で、長い間使用されてきたこともあり、多くの職人が扱い慣れている塗料でもあります。
しかし、塗料作業時にシンナーの臭いが漂ってしまうのがデメリットです。
シンナーは 一般的に危険なイメージがありますが、混合溶済や単体溶済に名前を付けただけのものを指しています。
板金で行う作業は3種類
板金は大きく分けると3種類の作業に分けられるため、下記で詳しく紹介していきます。
外板板金
外板板金とは、車両の外側にある金属を元の状態に戻す作業です。
たとえば、ドアの場合1枚の金属板ではなく、枠となるフレームを挟んで外側のパネルと内側のパネルに分かれています。
この外側のパネルを修理する作業が、外板板金です。
外側パネルの内側からハンマーを叩く、または外側から引っ張ることで元の形にしていきます。
内板骨格修正
内板骨格修正はフレーム修正やボディ修正と呼ばれることもあります。
衝突事故などで車両の損傷が激しい際に、外側のパネルだけでなくフレーム(骨格部分)の修理まで行う作業です。
ボディ修正装置やフレーム修正機などの特殊な機械を使用し、車体の骨格部分を正確に修復・調整します。
パネル取り替え
パネル取り換えは、文字通りパネルそのものを取り外して新しいパネルと交換する作業を指します。
通常、パネルを取り替える必要があるのは、損傷が激しい場合や修理費用がパネルの交換費用よりも高額になる可能性がある場合などに行われます。
パーツはボルトオンで取付可能なものや溶接が必要な場合などさまざまで、車の種類やグレードによって作業方法が異なることがあります。
車の板金塗装におけるメリット・デメリット
車の板金塗装におけるメリット・デメリットを解説します。
板金塗装のメリット
板金塗装はフレームが変形するほどの激しい損傷も、元の形に修復しやすいのが大きなメリットです。
塗装を剥がさずに修復するデントリペアに比べると修復が広範囲で、車のへこみや歪みを治したい際におすすめの作業方法です。
板金塗装のデメリット
板金塗装は、一度塗装を剥がしてから修復作業を行うため、作業期間が長くなる可能性があります。
このため、対応する業者や技術力によって仕上がりに差が出やすい傾向があります。
したがって、業者の実績や口コミをみて、実績が豊富で口コミが好評な店舗を選ぶことが重要です。
また、業者の中には外注依頼を別の業者にして中間マージンの費用がかかる場合があるので、自社で見積もりから板金塗装まで対応できる業者を選びましょう。
板金塗装の流れは以下の通りです。
- 1.板金作業:傷の大きさ・深さを確認して、専用工具でボディのへこみを引き出します。
2.下地作業:へこみ部分の塗装を剥がしてパテを埋め込みます。
3.塗装作業:パテを埋め込んだ下地・中塗り・上塗りと塗装を重ねていき、場合によってクリア塗装で仕上げます。
4.塗装が乾いたら、コンパウンドで磨いて最終的な仕上げをします。
車の板金塗装を依頼する業者と特徴
車の板金塗装が依頼できる業者は4種類あります。
特徴もあわせて紹介します。
ディーラー
ディーラーは、板金作業を安心して依頼できる業者の選択肢の一つです。
ディーラーは、純正部品を用いて自社のメーカーに精通しているほか、塗料など品質も担保されます。
ただし、ディーラーが契約している自動車修理工場に外注する場合があり、中間マージンの費用が発生する恐れがあるため、依頼先の中で費用が高額になる傾向にあります。
自動車修理工場
自動車修理工場は板金塗装の専門家のため、高い品質を誇ります。
ディーラーを経由せずに業者と直接契約をすると、中間マージン費用がかからないため、価格を抑えて依頼できます。
ただし、適切な業者を見つけるためには調査や検索をする必要があるため、手間と時間がかかるのがデメリットです。
安心して依頼できる業者を探すためには、SNSで口コミがあるのか、マップで実店舗が存在するのかを確認することが重要です。
カー用品店
カー用品店でも板金塗装ができる場合があります。
費用は比較的安価で修理ができますが、傷の大小によって価格が変動するため、見積もりを取ってほかの業者と比較をして決めましょう。
また、カー用品店は全国にチェーン展開をしている場合が多く、どこでも利用できる利便性があります。
利便性を求めて気軽に相談をしたい方にとっては、カー用品店の利用が良いでしょう。
ガソリンスタンド
一部のガソリンスタンドでは板金塗装に対応している場合もあります。
日頃から利用しているガソリンスタンドであれば、気軽に相談ができる上、営業時間が長いのでいつでも利用できるというメリットがあります。
ただし、一部の店舗によっては外注依頼をするケースもあるため、費用が高額になる場合があります。
また、ガソリンスタンドが提供する板金塗装は簡易的なものが多く、複雑な修理には対応できない可能性があるため注意が必要です。
板金塗装の修理費用と期間
板金塗装の修理費用と修理期間は依頼する業者によって異なります。
修理業者はディーラー・カー用品店・板金業者の順に価格が低くなります。
表に傷の大小と値段をまとめているので、確認していきましょう。
バンパー
車のバンパーは他のパーツに比べると、安価で修理できます。
施工期間は約3時間〜と比較的短いです。
バンパー | 10㎝以内 | 10㎝~20㎝以内 | 20㎝以上 |
ディーラー | 15,000円~25,000円 | 25,000円~40,000円 | 40,000円~50,000円 |
カー用品店 | 10,000円~20,000円 | 20,000円~30,000円 | 30,000円以上 |
板金業者 | 3,300円均一 | 3,300円均一 | 30,800円均一 |
※修理費用は傷の状況や具体的な修理内容、地域によって変動します。
ドア
車のドアを板金塗装する費用は、バンパーに比べて高くなる傾向にあります。
塗装を乾かす時間も発生するため、少し期間が長くなる可能性があります。
施工期間は1日〜3日程度が目安です。
ドア | 10㎝以内 | 10㎝~20㎝以内 | 20㎝以上 |
ディーラー | 30,000円~40,000円 | 40,000円~60,000円 | 100,000円以上 |
カー用品店 | 10,000円~25,000円 | 25,000円~50,000円 | 80,000円 |
板金業者 | 19,800円均一 | 25,300円均一 | 30,800円均一 |
※修理費用は傷の状況や具体的な修理内容、地域によって変動します。
バックドア
バックドアの板金塗装の相場は約50,000円から始まり、交換の場合は約100,000円以上が一般的です。
施工期間は約3日〜程度が目安とされています。
バックドアは意外と傷やへこみなどがつきやすい部分であり、交換の際にはガラス部分を取り外す必要があるため、手間と時間がかかり、費用が高額になる傾向にあります。
ボンネット
ボンネットの板金塗装をする際の相場は、最低30,000円からとなります。
施工期間は1日〜3日程度が目安です。
また、へこみや修理をする際には、さらに10,000円〜20,000円の追加料金が発生することがあります。
ボンネットは、エンジンなど車の心臓となる部分を守っている重要な部分です。
板金塗装せず放置してしまうと最悪の場合、エンジンに支障をきたして事故を引き起こす可能性も考えられます。
そのため、ボンネットにへこみや傷がないかを、プロの業者にチェックしてもらい、適切な修理を検討しましょう。
フェンダー
フェンダーの板金塗装は、ほかの部分に比べて難易度が高いため、全体的に費用も高くなっています。
施工期間は約1日〜3日程度が目安となっています。
フェンダー | 10㎝以内 | 10㎝~20㎝以内 | 20㎝以上 |
ディーラー | 40,000円~50,000円 | 50,000円~60,000円 | 60,000円以上 |
カー用品店 | 30,000円 | 40,000円 | 50,000円以上 |
板金業者 | 19,800円均一 | 25,300円均一 | 30,800円均一 |
※修理費用は傷の状況や具体的な修理内容、地域によって変動します。
ドアミラー
ドアミラーを板金塗装する際にかかる費用は、1箇所あたり約7,700円均一です。
施工期間は約3時間〜程度が目安とされています。
ただし、傷やへこみの状態によっては、追加の費用や施工期間が発生する可能性があるため、まずは見積もりの相談をしてみましょう。
車の板金塗装の費用を抑える方法
車の板金塗装の費用を抑える方法を解説します。
自分で行う
車の板金塗装は、業者に依頼するほかに自分で行うことも可能です。
メリットは、事前にタッチアップペン(小さな傷用の塗装ペン)とコンパウンド剤(研磨剤)などを用意するだけで、価格を抑えることができる点です。
ただし、自分で行う場合は下地処理不足による凹凸や、塗装後にムラが発生する可能性があり、修理する前に比べて目立ってしまう場合もあります。
板金塗装をした後に修復をするのは困難であり、「最初から業者に依頼しておけば良かった…。」と後悔する前に、高い費用が発生してもプロである業者に依頼するのが安心です。
交換より修理を優先する
パネルのへこみを交換する際に修理ができるのであれば、確実に費用を抑えることが可能です。
実際に交換と修理で発生する工程を比べてみましょう。
交換の場合は、以下の費用が発生します。
- ・新品部品
・部品交換工賃
・塗装工賃
修理の場合は、以下の費用が発生します。
- ・修理工賃
・塗装工賃
新品パネルの交換部分は、色が塗られていないため、車に合わせて色を塗る必要があります。
また、色によっては隣り合うパネルにぼかし塗装を施工しなければならないため、費用は高くなる傾向があります。
また 、パネル内側のへこみが全体の1/3以上になる場合は修理ではなく交換が必要となります。
交換部品はリサイクル品を使用する
部品を交換する場合、同じ色やグレードの車から外した部品で取り替えをすると、新品に比べて費用をかなり抑えることができます。
また、色付きの場合には塗装費用も発生しないため、さらに費用が抑えられるでしょう。
リサイクル部品を集めるコツとしては、登録から5年過ぎたあたりから少しずつ出回ることが多いため、定期的にチェックするのが良いでしょう。
修理の範囲を小さくする
修理の範囲を小さくすると、塗装費用や修理代の費用を抑えることができます。
また、使用する塗装の種類によっても費用は異なります。
たとえば、ブラックやホワイトの場合は20,000円〜30,000円程度で済むことがありますが、メタリックやパールの場合は、40,000円〜70,000円程度の費用が必要です。
板金塗装に車両保険が適用される条件と利用する注意点
自動車保険の車両保険に加入していると、車が事故などで破損した際に修理代として保険金が支払われるケースがあります。
本記事では、適用される条件と利用する際の注意点を紹介します。
車両保険が適用される条件
板金塗装をする場合、車両保険を利用して費用をカバーすることができます。
車両保険とは、損害があった際に車に対して修理代や損害金が支払われる保険です。
どういう場合に車両保険が適用されるのか、下記にケース別でまとめてみました。
- ・当て逃げ
・自損事故
・自然災害
・相手が確認できない事故
注意点として、上記はエコノミー型のプランに加入している方は補償対象外のため、適用されません。
このように、車両保険は加入しているプランの補償範囲内で適用されるので、自分のプランを確認してみましょう。
車両保険を利用する注意点
車両保険を使用して保険金を受け取る場合は、翌年度から等級が下がってしまいます。
この等級が下がった期間を、事故あり係数適用期間と呼びます。
事故にあった契約者はこの期間中、ほかの無事故の契約者に比べて保険料が高くなる傾向にあります。
板金塗装の修理代は業者によって異なりますが、小さい傷やへこみであれば費用を抑えることができます。
この際に車両保険を利用すると、支払いするトータルコストが高くなる場合がありますので、車両保険の利用を考える方は、翌年度からの保険料と板金塗装の修理代を比較して、どちらが高くなるのかを見積もりしましょう。
まとめ
車の板金塗装について、各業者の特徴や修理費用について徹底解説しました。
大切な車を守るためにも板金塗装は重要です。
たとえば、車をぶつけて傷やへこみが出来てしまった際に、塗装を剥がれたまま放置してしまうとサビが発生する可能性があります。
また、板金塗装は自分で行うこともできますが、プロに修理を依頼した場合と比べると目立ってしまう場合があります。
車の傷やへこみが気になる方は本記事を参考に、 実績のある業者に早めに相談しましょう。