突然の出来事ですが、愛車の窓が故障した場合、驚くことでしょう。
窓の故障は不便なだけでなく、安全上の問題を引き起こす可能性もあります。
そこで、この記事では、車の窓が動かなくなる原因と、動かなくなったときにやるべきことについて解説します。
また、パワーウィンドウは複数のパーツで構成されており、不具合のあるパーツ別で修理費用が異なるため、費用について紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
パワーウィンドウの構造
ここでは、パワーウィンドウの仕組みを理解しておきましょう。
パワーウィンドウの主なパーツは下記の5つです。
- ・ガラス
・ガラスランチャンネル
・レギュレーター
・モーター
・パワーウィンドウスイッチ
次は、作動する流れの確認です。
- 1.スイッチを操作
2.モーターが駆動
3.モーターの駆動でレギュレーターが動かされる
4.レギュレーターに組み合わされたガラスが、ガラスランチャンネルに沿って上下する
スイッチを操作すると上記のパーツが連動し、電動で窓が開閉する仕組みとなっています。
パワーウィンドウが動かなくなる8つの原因
ここからは、パワーウィンドウが動かなくなる原因について解説します。
パワーウィンドウには、主なパーツが5つありますが、これらのパーツに不具合が起きると、窓が正常に動かなくなります。
また、安全装置が作用して動かない場合や、メンテナンス状況、自然現象によるものもあります。
- ・スイッチの故障
・レギュレーターの故障
・モーターの故障
・ガラスランチャンネルの劣化
・ロックが掛かっている
・可動部のグリスが切れている
・凍結
・バッテリーの電圧が弱くなっている
以上の8つの原因について、ひとつずつ解説します。
スイッチの故障
パワーウィンドウスイッチは運転席に全窓集中型のものがひとつと、それぞれのサイドガラスを動かすためのスイッチが取り付けられています。
スイッチが故障する原因は主に、内部で起きた不具合によるものです。
内部で起こる不具合の原因は、以下の2つです。
- ・スイッチそのものと周辺部品の経年劣化
・スイッチ回路に過電流が流れてショート
周辺部品の劣化が、スイッチ故障の引き金になることを知っておいてください。
レギュレーターの故障
モーターの駆動によって、パワーウィンドウを動かすためのワイヤーやアームと関連しているのがレギュレーターです。
よくあるトラブルとしては、以下のようなことがあります。
- ・ワイヤーが切れる
・ワイヤーを巻き取るローラーがうまくワイヤーを巻き取れていない
・ワイヤーがローラーから外れている
このため近年では、故障原因となるワイヤーを使わないギアタイプが多く採用されており、ワイヤーのトラブルは減少するようになりました。
モーターの故障
モーターが動かないとレギュレーターやアームが動作せず、パワーウィンドウに不具合が生じるのは、想像するに難しくないでしょう。
モーターの故障は、モーターの摩耗や劣化によるもので、原因のほとんどは経年劣化ですが、レギュレーターの不具合がモーターに影響を及ぼし、劣化を早める原因にもなります。
ガラスランチャンネルの劣化
ガラスランチャンネルとは、ガラスの周囲部分にあるゴム素材のものを指します。
このガラスランチャンネルに沿ってガラスが上下する構造になっており、ゴムが劣化することが、スムーズな動きを妨げる原因です。
また、スムーズな動きを妨げている状態を放置しておくと、モーターに負荷がかかり、モーターを故障させる原因にもなりかねません。
ガラスの開閉スピードが遅くなったり、途中で止まったり反転するなどの症状が見られる場合には、ガラスランチャンネルの劣化が疑われるため、早めの整備が望ましいです。
ロックが掛かっている
ウィンドウロックがかかっている場合も、パワーウィンドウが動かない原因です。
パワーウィンドウは、小さなお子さんが誤って操作するのを防止する、ペットがスイッチを触れた際に開かないようにするなどの目的で、ロックをかけられます。
ロックをかけたことを忘れてしまうことが、パワーウィンドウが動かない原因です。
故障を疑う前に、まずはロックがかかっていないか確認しましょう。
可動部のグリスが切れている
可動部とは、レギュレーターの可動部を指します。
グリスはレギュレーターの動きを良くするために塗布されますが、グリスが切れると動きが悪くなり、モーターや他のパーツに負荷をかけてしまい、故障を誘発させる原因となるでしょう。
グリス切れの要因は経年によるため、グリスが切れた場合にはすでに他のパーツに負担がかかった状態が長く続いていることが想像されます。
以降も長く乗り続けるのであれば、パーツ交換がおすすめです。
凍結
窓ガラスが凍りつくのも、パワーウィンドウが動かなくなる原因の一つです。
冬場に雪が降り、窓を覆った状態で一夜を明かすと、窓ガラスは凍ってしまいます。
ガラス部分とガラスランチャンネルの間を氷がつなげてしまうと、パワーウィンドウは動きません。
この場合は、まずガラスの氷や雪を取り除き、エンジンをかけ、車を室内から温めます。
フロントガラスの曇り取りを行う吹き出し口からの送風をさせ、窓ガラスを温め氷を溶かし、パワーウィンドウを作動させると動きます。
注意点としては、ガラスにお湯をかけることはしないでください。
急な温度変化により、ガラスが割れてしまう恐れがあります。
重要なのは、エアコンなどでゆっくり温め、氷を溶かすことです。
バッテリーの電圧が弱くなっている
バッテリーの電圧が弱くなってしまった場合にも、パワーウィンドウは動かなくなります。
パワーウィンドウを動かしているのはモーターで、モーターを動かすには電源が必要です。
車の電源といえば”バッテリー”で、このバッテリーには寿命があります。
ここでは、バッテリーの寿命について確認しましょう。
車のバッテリーの平均寿命は、2〜3年です。
バッテリーの寿命を知るには、バッテリーの電圧チェックが不可欠で、車の定期メンテの項目にも含まれています。
電圧の正常値としては、12.5ボルト(V)とされており、通常時の電圧が12.5Vを下回るようだと、バッテリーの寿命がきた、と言えるでしょう。
バッテリーの寿命を知らせるサインを、見逃さないことが重要です。
バッテリーの電圧が下がってくると、パワーウィンドウが動かなくなることの他に、次のような症状が表れます。
- ・エンジンがかかりにくい
・ヘッドライトが暗い
・バッテリー液の液量が減っている
・アイドリングストップをしなくなった
上記のような症状が見られた場合には、バッテリー交換をおすすめします。
バッテリーは、温度の影響を受けやすいパーツのため、暑い夏や寒い冬が来る前に、バッテリーの点検を行い、必要であれば交換してください。
パワーウィンドウが動かなくなったときにやるべきこと
パワーウィンドウが動かなくなってしまうと非常に焦ってしまいますが、ここで、いざというときにやるべきことを確認しておきましょう。
動かなくなると修理を依頼するのですが、修理を依頼する前に試して欲しい処置として以下の3つが挙げられます。
・スイッチの動作確認
・ドアの内側から物的ショックを与える
・安全装置の確認
スイッチの動作確認
まずは、スイッチの動作確認をお願いします。
スイッチに不具合や劣化があると、押したり引いたりしても窓が動かなくなることがあります。
その場合は、まずエンジンを切ってください。
エンジンを切り、スイッチを中間の位置に戻してから再度エンジンをかけると、パワーウィンドウが動くようになるかもしれません。
運転席のスイッチは、少しだけ押す(引く)と窓が少し開く(閉まる)、全て押す(引く)と窓が全開(全閉)する仕組みになっていますので、スイッチの位置には十分注意してください。
ドアの内側から物的ショックを与える
ドアの内側から物的ショックを与えると、モーターが一時的に動くようになる可能性があります。
モーターが取り付けられている位置は、ドアの中央部分であることが多いです。
エンジンをかけスイッチを押し下げる、または引き上げながら、中央部分を叩いてみましょう。
モーターに衝撃が加わり、動くようになることがあります。
安全装置の確認
安全装置(ロック)の確認も行ってみましょう。
特に運転席以外の窓は、ロックする場面も少なくありません。
たとえば、小さなお子さんを乗せる場合ですが、お子さんは目の前にあるスイッチに興味が
湧き、押してみたり引き上げてみたり遊び始めるかもしれません。
ロックのスイッチも忘れず確認しておきましょう。
動かないパワーウィンドウを放置してはいけない
パワーウィンドウが動かなくても、車を走らせるだけであれば影響ありません。
しかし、決して望ましくない状況であることと、次に挙げる3つの不具合が予想されます。
- ・車検に通らなくなる
・「窓落ち」が起きると修理費用が高くなる
・日常使いができない
車検に通らなくなる
パワーウィンドウが故障したままで車検は通るのでしょうか。
その答えは、「運転席側と助手席側が完全に閉まらないと車検は通らない」です。
車検の検査項目に、車の前側の窓に装飾やアクセサリーが貼り付けられていないかを確認する項目があるためです。
車の機能として窓がスムーズに開閉することは望ましく、車検に通る通らないだけではなく、日常でも求められる機能でしょう。
パワーウィンドウに不具合がみられるなら、早めに修理依頼するのがおすすめです。
「窓落ち」が起きると修理費用が高くなる
「窓落ち」とは、その名の通り窓ガラスが落ちてしまうことです。
原因は、窓を支えているレギュレーターやワイヤーが経年劣化によって切れるなどの不具合によって発生します。
窓落ちが起きると窓ガラスが割れてしまう危険があり、割れた窓ガラスは交換しなければなりません。
そのために、修理代が高くなります。
日常使いができない
この記事の冒頭で解説したように、車の窓が動かないことは非常に不便です。
窓が閉まった状態だと、駐車チケットを取るにも、ドアを開けて降りるしか方法はありません。
また、ドライブスルーを利用するにも、ドアを開けて降り、注文や支払いをすることになります。
開いたまま閉まらない状態であれば、雨や風、ほこりや虫なども車内に入り込むことが予想されます。
さらに、防犯上でも窓が開いたままの状態は危険です。
このように、日常使いで大変不便なため、動かないパワーウィンドウを放置するのはデメリットが多く、早めに修理に出すことをおすすめします。
パワーウィンドウの修理費用についてパーツ別に解説
パワーウィンドウは、主に5つのパーツから構成されていると冒頭で解説しました。
そのうち、ガラス以外の4つのパーツにひとつでも不具合が出ると、パワーウィンドウは動かなくなります。
それぞれ重要なパーツですが、修理費用はそれぞれ異なるため、おおよその修理費用を把握しておきましょう。
さらにモーターを駆動させる電源であるバッテリー、基盤トラブルが見られるパワーウィンドウアンプについても解説します。
以下は修理費用の一覧表です。
パーツ名 | おおよその修理費用 |
スイッチ | 1万5000円〜3万円 |
レギュレーター | 1万円〜4万円 |
モーター | 1万5000円〜3万円 |
ガラスランチャンネル | 1万円〜2万円 |
バッテリー | 5000円〜3万円 |
パワーウィンドウアンプ | 1万2000円〜 |
スイッチ
スイッチに故障がみられると、スイッチの交換を行います。
スイッチパーツの費用は車種ごとに異なりますが、費用を抑えたい場合は中古のパーツを使うのも選択肢のひとつです。
中古パーツの取り扱いが可能か、問い合わせるのも良いでしょう。
レギュレーター
レギュレーターが動かなくなっている原因によって、修理費用が大きく異なります。
動きが悪くなっているだけであれば、分解とグリスアップで解消可能です。
しかし、パーツの欠けや摩耗が発生している場合では、パーツの交換が必要になります。
モーター
モーターが動かない場合は、パワーウィンドウの動作に影響するためモーター交換が必要です。
レギュレーターに支障があって動きにくくなり、無理に動かしたためにモーターも壊れてしまったという場面では、レギュレーターとモーターの両方を交換しなければならなくなり、修理費用は高額になります。
ガラスランチャンネル
ガラスランチャンネルは、ゴム素材のパーツです。
ゴムは経年劣化する素材のため、グリスアップやシリコンスプレーなどで一時的に動きを良くする方法もありますが、固くなったゴムは柔らかくならないため、最終的にはパーツ交換しなければなりません。
一箇所固くなっているのであれば、他の箇所も同様に固くなっているため、すべてのガラスランチャンネルを交換するとなると、修理費用がかさばると考えられます。
バッテリー
バッテリーには寿命があることを解説しました。
バッテリー購入後2〜3年経過、あるいは電圧が12.5V以下になることです。
車の車種によって適合するバッテリーが異なり、それぞれ価格が変わります。
パワーウィンドウアンプ
聞き慣れないパーツですが、パワーウィンドウアンプに不具合が発生すると、パワーウィンドウは動きにくくなり、最終的には動かなくなります。
原因は、基盤に処理されているハンダ付けに割れが生じ、接触不良になることです。
ドアの内側から物的ショックを与えると、パワーウィンドウが動く可能性があると解説しましたが、衝撃によって一時的に接触不良が解消されるパーツが、パワーウィンドウアンプです。
上記の修理費用は、新品パーツをディーラーで取り寄せた部品代を記載しています。
車好きな方や長く同じ車に乗り続けている方だと、自分でドアの内張りを外し、アンプを取り出して基盤をハンダ付けし直す、という方法もあります。
電気回路の知識と細かいハンダ付けの技術をお持ちでない限り、修理を依頼するのがおすすめです。
パワーウィンドウを故障させないための予防方法
動かなくなると大変不便を感じるパワーウィンドウですが、故障させないための予防方法をご存知ですか?
ここからは必要な手入れと予防方法について解説します。
車の手入れとして当然行うことは、パワーウィンドウにとっても長持ちさせることにつながり、窓の構造を知って使うのも、故障予防の一つです。
3つの予防方法を紹介します。
- ・洗車・掃除
・定期的にメンテナンスを実施
・ドアの開閉をするときは窓を完全に閉める
洗車・掃除
洗車や掃除を頻繁に行うことは、車の故障を防ぐために重要です。
窓ガラスは、ガラスランチャンネルに沿って上下します。
このガラスランチャンネルに汚れがたまると、窓の開閉がスムーズに行われず、故障の原因となります。
風が強く吹く日には、窓にも多くの砂や汚れが付着します。
この汚れが溜まったまま窓を開閉すると、ガラスランチャンネルに汚れが入り込み、故障のリスクが高まります。
したがって、洗車や掃除を怠らず、ガラスランチャンネルを清潔に保つことが、パワーウィンドウの故障を防ぐために重要です。
定期的にメンテナンスを実施
定期的なメンテナンスは、パワーウィンドウを故障させないための重要な予防策の一つです。
定期的な車両点検では、車の小さな異変を早期に発見することができます。
整備士による点検の際には、車の調子について尋ねられたときに、日常の使用で気になる点があれば、整備士に伝えることで早めに問題を解決できます。
小さな問題でも、放置すると他のパーツに悪影響を及ぼす可能性があるため、定期的な点検とメンテナンスが重要です。
定期的なメンテナンスを通じて、パワーウィンドウを含む車全体の故障を予防することができます。
また、同じ整備工場に定期的に依頼することで、整備士が車両の状態を把握しやすくなります。
これにより、走行距離や劣化、メンテナンスの状況などを適切に管理することができます。
ドアの開閉するときは窓を完全に閉める
ドアの開閉時には、車に大きな衝撃が加わります。
開閉時に、パワーウィンドウを少し下げた状態で開閉するのは、ガラス部分に強い負担がかかるため、故障につながりかねません。
実際に窓を少しだけ開けた状態でドアを閉めると、ガラスが揺れたりするのが見て取れます。
それだけの強い衝撃が窓ガラスを含め、パワーウィンドウの構造に衝撃を与えてしまうのです。
パワーウィンドウ故障予防のため、ドアの開閉時は窓ガラスは全閉状態で、できるだけ優しく行ってください。
まとめ
パワーウィンドウが故障する最大の原因は、新車登録から一定以上の期間が経過していることが挙げられます。
複数のパーツから構成されており、そのうちのひとつに不具合が出ると、他のパーツに負担をかけてしまい、修理箇所と費用を増加させる要因となるでしょう。
修理費用と照らし合わせ、今後も乗り続ける車として愛着のある車であれば修理し、乗り続けるのに心配が大きいのであれば、乗り換えを考えるのも一つの案と言えます。