車検に通ると交付される車検シール(検査標章)は、フロントガラスに貼り付けることが義務付けられています。
貼り付けずに公道を走行すると、50万円以下の罰金が科せられるため、注意が必要です。
しかし、令和5年7月3日から車検シールの貼る位置が変更となったため、どこに貼ればよいか分からない方もいるでしょう。
また、車検シールを貼り付ける際に破損してしまった場合、どうするべきなのか分からないかもしれません。
そこで本記事では、車検シールの貼り方や貼る位置、再発行方法について解説します。
車検シールについてお困りの方は、ぜひ参考にしてください。
車検シールとは
車検シールには、貼る位置や発行されるまでの代わりに貼っておくシールなど、ルールが細かく決められています。
はじめに、車検シールの役割や交付時期、必要性をご紹介します。
役割
車検シールは、車検ステッカーと呼ばれることもありますが、正式名称を「検査標章」といいます。
車検証の有効期間満了日が記載されているステッカーで、車のフロントガラスに貼ることが義務付けられています。
見えやすい位置に貼ることで、車検切れで運行するのを防止する役割を果たしています。
交付時期
車検シールは車検に合格した際に、車検証と一緒に普通自動車は陸運支局または軽自動車検査協会から交付されます。
しかし、車検を依頼する業者によって、車検シール発行のタイミングが異なるため注意が必要です。
特に、指定工場に車検を依頼する場合は、車検シールを受け取るまでに時間がかかる傾向にあります。
なぜなら、指定工場で車検を受けた場合は、陸運支局を介する手続きが必要だからです。
指定工場では車の検査自体は行えるものの、正式な車検証や車検シールは陸運支局で発行されるため、発行までに時間がかかります。
なお、指定工場で車検に通ると、車検シールの交付前に「保安基準適合証」が交付されます。
保安基準適合証は仮シールとも呼ばれており、正式な車検シールが届くまでに代用できます。
発行されてから15日間は有効で、この間に車検シールと車検証が届く流れです。
保安基準適合証はシールではなく一枚の紙片のため、フロントガラスの見えやすい位置に両面テープなどで貼り付けてください。
車検シールが届いたら、保安基準適合証から車検シールに張り替えてください。
一方、認証工場に車検を依頼する場合は、車検シールが即日交付される傾向にあります。
なぜなら、認証工場は独自に検査ラインを持っておらず、車検を完了させるために陸運支局まで車を持っていかなければならないためです。
そのため、認証工場で車検を受けた場合は、保安基準適合証は交付されません。
必要性
車検シールは車が国の保安基準に適合しており、その有効期間を示す重要な役割を持つステッカーです。
公道を走行する際には車検証を所持していなければなりませんが、車検シールも貼られていないと道路運送車両法違反となり、50万円以下の罰金が科されます。
したがって、車検シールは車検の有効期間を忘れないように防止する働き以外にも、公道を走っても良い車だという証明にもなります。
高速道路の入り口や一般道の検問などで引っかからないよう、車検シールを交付されたら、すみやかに貼り付けましょう。
車検シールの種類
車には、車検シール以外にもステッカーが貼られていたり、色が違ったりします。
ここでは、車検シールの種類の違いについて解説するので、整理しておきましょう。
普通自動車・軽自動車との違い
車検シールは普通自動車用と軽自動車用があり、形や貼り付け方は同じですが、シールの色と発行する場所が異なります。
普通自動車用の車検シールは青色の背景に黒文字で、発行場所は陸運局です。
一方、軽自動車用の車検シールは黄色(オレンジ色)の背景に黒文字で、発行場所は軽自動車検査協会です。
特に、発行場所について間違えないように注意しましょう。
丸いシールとの違い
車のフロントガラスには正方形の車検シール以外に、丸いシールも貼られていることがあります。
丸いシールは正式名称を「点検整備済ステッカー」といい、定期点検の整備が実施されたことを示すステッカーです。
丸いシールの中央には次回の定期点検整備の「年」を、その周りに記載された背景色が白色の箇所が、次回の定期点検整備の「月」を表しています。
定期点検には「1年定期点検」と「2年定期点検」があり、どちらも実施することが義務付けられています。
なお、2年定期点検は車検と一緒に行うのが一般的です。
それぞれのステッカーで次回の実施日を確認できるものですが、車検証と違い剥がしても問題はありません。
車庫証明シールとの違い
車庫証明シールも、車に貼るステッカーの1つです。
車庫証明シールとは、車のイラストと「保管場所標章」との文字が記載されたステッカーで、車庫証明の手続きを行うと発行されます。
車両の保管場所が確保されていることを証明するもので、主に駐車違反の取り締まりに利用されてきました。
しかし、2025年5月までにこの車庫証明シールは廃止される方針が決まっています。
これは、デジタル化や行政手続きの簡素化を進める一環であり、車庫証明の手続きがオンライン化されるなど、利便性向上が期待されています。
廃止後はシールを貼る必要がなくなるため、見た目のシンプルさも向上すると考えられています。
車検シールの貼り方
ここでは、車検シールの貼り方や、貼る位置などをご紹介します。
誤った位置に貼ってしまわないよう、事前にチェックして正しく貼りましょう。
貼る位置
以前まで車検シールは、前方から見やすい位置に貼るように義務付けられていました。
しかし、令和5年7月3日から自動車検査業務等実施要領の改定により、前方かつ運転者席から見やすい位置へ貼り付け位置が変更されました。
ドライバーの目に入りやすい場所に貼る位置を変更することで、車検への意識を高めて無車検走行を防ぐことが目的です。
運転席側の上部で目にはしやすいものの、できる限り車の中心から離れた位置、つまりフロントガラスの右上端に車検シールを貼り付けてください。
なお、左ハンドル車の場合には、フロントガラス左上端に貼り付けましょう。
ただし、ドライバーの視野を妨げてしまう場合は、別の場所にずらすことが認められています。
なお、令和5年7月3日よりも前に車検シールが貼られている場合は、わざわざ貼り替える必要はありません。
貼り方
車検シールを貼るときは、表面と裏面を貼り合わせ、1枚のシールにして貼り付ける必要があります。
まず、車検シールの表面と裏面を貼り合わせてください。
続いて、シールまで折れてしまわないように気を付けつつ、台紙の真ん中だけを谷折りにします。
浮き上がった左側のシールを右側の透明シールに重ね合わせて、台紙を抜き取るとスムーズに貼れるのでおすすめです。
この際、浮きが出ないように、きちんと押さえましょう。
次に、車検シールの貼る位置を確認して、フロントガラスの内側から貼り付けます。
前面ガラスの上部が着色されており、外側から車検シールを確認できない場合は、確認できる下方にずらして貼り付けましょう。
また、カメラなどが取り付けられている場合も、その部分を避けて前面から見やすい場所に貼り付ける必要があります。
車検シールは一度剥がすと、粘着力が弱くなって貼り直すのが困難になったり、破損してしまったりします。
貼り直すことがないよう、事前に貼る位置をよく確認してから、丁寧に貼り付けるように注意しましょう。
貼る位置を間違えた場合は?
貼る位置を間違えてしまった場合には、丁寧に剝がしてから貼りなおすとよいでしょう。
スクレイパーと呼ばれるシールを剥がす平らな道具や使用して、少しずつ剥がします。
破損してしまった場合には再発行しなければなりませんが、粘着力や破損度合いに問題がなければ、早めに貼り直しましょう。
車検シールを紛失したら?
車検シールは小さいため、紛失してしまうこともあるかもしれません。
前述のように、車検シールを貼っていない状態で公道を走行すると違反になるため、すみやかな対応が必要です。
ここでは、車検シールを紛失してしまった場合の対処法について解説するため、なくしてしまった方は参考にしてください。
再発行が可能
車検シールを紛失してしまった場合には、再発行が可能なため安心してください。
また、貼り直そうとして破損してしまった場合にも、再発行して新たな車検シールを用意する必要があります。
再発行できる場所
車検シールを再発行できる場所は、普通自動車と軽自動車で異なります。
それぞれに分けて紹介するので、参考にしてください。
普通車
普通車の車検シールの再発行場所は、陸運支局です。
陸運支局には地域の管轄が存在しますが、車検シールの再発行手続きに管轄は関係ないため、どこの地域でも再発行することができます。
営業時間は、一般的に月曜日から金曜日の午前8時45分~11時45分と13時~16時までです。
ただし、地域によって多少時間は異なるため、お近くの陸運支局の情報を確認してください。
なお、毎年12月29日から翌年1月3日は営業していないため、注意が必要です。
軽自動車
軽自動車の車検シールの再発行場所は、軽自動車検査協会です。
軽自動車検査協会は、軽自動車の新規登録や車検の手続きなどを国に代わって行う特別民間法人です。
車検シールの再発行以外にも、車検証の再発行や名義変更などを行っています。
軽自動車の場合も普通自動車と同様に、管轄に関係なくどこの地域でも再発行することが可能です。
営業時間は月曜日から金曜日の午前8時45分~11時45分と、13時~16時までで、毎年12月29日から翌年1月3日は営業していません。
ただし、地域や手続き内容によって営業日時が変わることもあるため、事前に確認しておきましょう。
方法
車検シールの再発行方法は、以下のとおりです。
- ・窓口で手数料分の印紙(300円)を購入する
・窓口で配布された申請書を記入する
・窓口で必要書類を提出する
・新しい車検シールを受け取る
再発行先は平日の限られた時間しか営業していないケースが多いため、仕事などの都合により手続きに行けないという方もいるでしょう。
車検シールの再発行手続きは、委任状さえあれば誰が代行しても問題ありません。
手続きが面倒に感じる方や行く時間が取れないという方は、車検を受けた整備工場やディーラー、行政書士などに依頼するのもおすすめです。
ただし、業者によっては代行手数料がかかり、特に行政書士に依頼すると手数料が高額になる可能性もあるため注意しましょう。
再発行時に必要な書類
普通自動車の車検シール再発行時に必要な書類は、以下のとおりです。
- ・再交付申請書
・理由書
・手数料納付書
・委任状もしくは申請依頼書
・車検証
軽自動車の車検シール再発行時に必要な書類は、以下のとおりです。
- ・再交付申請書
・車検証
再交付申請書は、陸運支局または軽自動車検査協会の窓口で配布または、ウェブサイトからダウンロードできます。
理由書は、申請書に車検シールを再発行する理由を記入してあれば、提出する必要はありません。
車検証はコピーではなく原本が必要で、手数料納付書は陸運支局の窓口で配布されます。
車検シールは手元にあるものの、破損が理由で再発行したい場合は、捨ててしまわずに一緒に持参しましょう。
代理人など第三者が手続きをする場合には、委任状の提出も必要です。
必要なものを揃えて、車検証の再発行手続きをしましょう。
まとめ
車検シールは車が国の保安基準に適合していることを証明するステッカーで、車検証と一緒に交付されます。
車検シールは前方かつ運転手席から見やすい位置に貼り付けることが義務付けられており、車検の有効期間を忘れることを防止する役割も果たしています。
車検シールを貼り付けていないと、道路運送車両法違反となり、50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
もし紛失してしまったり、破損してしまったりした場合には、すみやかに再発行手続きを行わなければなりません。
車検シールの再発行は、普通自動車と軽自動車で再発行場所や必要書類が異なるため、注意してください。
車検シールを正しい位置に貼って、車検のタイミングを逃さないようにしましょう。