自賠責保険は公道を走行するすべての車やバイクに加入が義務付けられている強制保険です。
車検のタイミングで保険料を前払いするのが一般的ですが、中古車を購入するときにも自賠責保険への加入手続きは必要なのでしょうか。
この記事では、自賠責保険に関する基礎知識や加入手続きの流れについて解説しています。
自賠責保険料や加入しない場合のリスクについても解説しているため、中古車の購入を検討している方はぜひチェックしてみてください。
自賠責保険に関する基礎知識
そもそも自賠責保険とはどのような保険なのでしょうか。
まずは中古車を購入する前に知っておきたい自賠責保険の基礎知識を解説します。
自賠責保険とは
公道を走行するすべての自動車やバイク(原動機付自転車、電動キックボードも含む)に、法律によって加入が義務付けられている強制保険です。
加入していない場合は運転ができません。
自動車事故の被害者を救済する目的で加入します。
自賠責保険の正式名称は、自動車損害賠償責任保険及び自動車損害賠償責任共済です。
自賠責保険と任意保険の違い
自動車の保険は自賠責保険の他に任意保険があります。
ふたつの保険の最大の違いとしてあげられるのが、任意保険(自動車保険)は加入が強制されていないことです。
また、自賠責保険は事故被害者を救済する保険ですが、任意保険は被害者に加えて運転者自身のケガや対物への補償があります。
自賠責保険だけでは補償が十分とはいえないです。
そのため任意保険の加入率は約7割と高めになっています。
自賠責保険の補償内容
自賠責保険の具体的な補償内容は、次のとおりです。
- ・ケガ
・後遺障害
・死亡
補償には上限があり、ケガの場合はひとりにつき120万円、後遺障害の場合は等級に応じて75万円〜4000万円、死亡の場合は3000万円まで被害者に対する保険金が支払われます。
被害者に重大な過失がない限り損害賠償額が減額されることはありません。
被害者の過失割合が70%未満で、ケガの損害補償額が120万円以下の場合は、減額なしで全額支払われることになります。
自賠責保険の保険料
自賠責保険の保険料は、契約期間や年度によって異なります。
2024年4月時点の保険料は、下記の表をご確認ください。
契約期間 | 普通自動車 | 軽自動車 |
12か月 | 11,500円 | 11,440円 |
13か月 | 12,010円 | 11,950円 |
24か月 | 17,650円 | 17,540円 |
25か月 | 18,160円 | 18,040円 |
36か月 | 23,690円 | 23,520円 |
37か月 | 24,190円 | 24,010円 |
保険料は車種や地域によっても異なります。
詳しい金額を知りたい場合は、加入する保険会社に問い合わせてみましょう。
中古車購入時に自賠責保険への加入は必要なのか
中古車を購入した場合も自賠責保険への加入は必要なのでしょうか。
加入の必要性や支払いのタイミングについて解説します。
中古車購入の場合は加入(名義変更)が必要
自賠責保険の名義は、車の所有者や使用者です。
中古車を購入する場合は名義を変更する必要があります。
自賠責保険は車検時に更新するため、車検切れの中古車を購入する場合は加入手続きが必要です。
自賠責保険は加入していれば問題がないため、法律でも名義変更は義務化されていません。
名義変更をせずに事故を起こした場合でも保険金は支払われますが、手続きが複雑になります。
しかし契約内容に変更がある場合は保険会社への通知義務があるので忘れずに変更しましょう。
自賠責保険料の未経過相当額の支払いについて
自賠責保険の名義変更を行った場合、未経過相当額の請求が発生する可能性があります。
未経過相当額とは、前の所有者の代わりに新しい所有者が保険料を負担することです。
前の所有者は車を売却した段階で、業者から自賠責保険料の払い戻しを受けています。
新しい所有者は、購入した月から未経過相当額を負担しなければなりません。
車検が切れている場合は自賠責保険も切れています。
この場合は自賠責保険への加入と車検が購入時に行われるため、未経過相当額が請求されることはありません。
加入するタイミングは購入時
自賠責保険の加入や名義変更を行うタイミングは、中古車の購入時です。
車検が切れている場合は、納車日までに自賠責保険の加入を済ませてください。
自賠責保険は加入日から補償が適用されます。
車検が残っている車も、納車日までに名義変更を済ませておきましょう。
所有している車を売却する場合は解約する
中古車を購入する際に車の売却も並行して行う場合、自賠責保険を解約すれば返戻金を受け取ることができます。
返戻金が発生するのは、自賠責保険の解約日から保険期間の末日まで1か月以上ある場合です。
解約しない場合でも、業者との交渉によって返戻相当額を車の売却代金にプラスしてくれる可能性があります。
保険期間が3か月以上残っている場合は、売却査定がプラスになりやすいです。
中古車購入時に自賠責保険へ加入する方法
中古車購入時に自賠責保険に加入する方法を解説します。
加入手続きが可能な場所
自賠責保険の加入手続きが可能な場所は、次のとおりです。
- ・保険会社の営業所
・保険会社の代理店
・ディーラー
・自動車販売店
・整備工場
ディーラーや自動車販売店で中古車を購入した場合は、自賠責保険への加入手続きを代行してもらえます。
なお、自賠責保険の加入をオンラインで申し込むことはできません。
保険会社の窓口まで行くか、車を購入した販売店に相談してください。
加入手続きに必要な書類
自賠責保険の加入に必要な書類は、次のとおりです。
- ・車体番号や登録番号がわかる書類(自動車検査証など)
・満期を迎える自賠責証明書(契約がない場合は不要)
自動車検査証は車体番号や登録番号の確認に使用されるため、コピーや写真でも問題ありません。
加入手続きでは書類の他に保険料を現金で納める必要があります。
加入手続きを代理人が行う場合
加入手続きは代理人でも行うことができます。
自賠責保険の加入手続きを代理人に依頼する場合、委任状と代理人の本人確認書類の提出が必要です。
委任状は代理人に契約者の権限を託すことを証明する書類になります。
委任状は中古車販売業者や保険会社で手に入れることが可能です。
郵送してもらえる場合もあります。
加入手続きの流れ
自賠責保険の加入手続きの流れは、次のとおりです。
- ①必要書類を準備する
②保険会社の窓口で提出する
③保険料を現金で支払う
④自賠責保険証明書が交付される
契約期間は車検に合わせて選択できます。
車検を受ける時期によっては切れてしまう恐れがあるため、1か月程度長めの期間にすると安心でしょう。
交付された自賠責保険証明書には携行義務があるため、自動車検査証と一緒に車内で保管してください。
自賠責保険に加入していない場合の罰則やリスク
自賠責保険に加入しないまま中古車に乗り続けてしまうとどうなるのでしょうか。
罰則やリスクについて解説します。
厳しい処罰を受けることになる
自賠責保険に未加入の状態で車を走らせた場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
さらに違反点数が6点の免許停止処分です。
自賠責保険証明書を所持していないだけでも30万円以下の罰金が科せられます。
自賠責保険に加入せずに事故を起こしてしまった場合、賠償金がすべて自己負担になってしまうため、無保険で公道を走るのは絶対にやめましょう。
重要な通知が届かなくなる
中古車の購入後に自賠責保険の名義変更を行わない場合、更新などの重要な通知が届かなくなってしまいます。
契約満期の通知がないと更新に気が付かず、自賠責保険の期限が切れてしまう可能性が高いです。
名義変更しなくても罰則はありませんが、重要な通知を見逃す恐れがあることを理解しておきましょう。
手続きが複雑になる
中古車の購入時に自賠責保険の名義変更を怠ると、事故を起こした際に名義人の名前が違うことを保険会社に指摘される可能性があります。
名義人が異なる場合でも保険金は支払われますが、自賠責保険に関する手続きに時間がかかってしまうため注意が必要です。
自賠責保険の名義変更期間中に運転することはできません。
手続きが長引けば長引くほど車が使えず不便になってしまうため、名義変更手続きは中古車の購入時に済ませておきましょう。
個人情報が漏洩する可能性がある
車を手放す際に名義変更を行わないと、前の所有者の情報が第三者に漏洩してしまう可能性
があります。
自賠責保険証には保険契約者の名前や住所が記載されているため、第三者に譲渡してしまうと個人情報が筒抜けになり危険です。
特にネットオークションや個人売買で面識のない方に車を売却する際は、十分に注意しましょう。
車検が受けられない
自賠責保険に加入していない場合や期限が切れてしまっている場合は、車検を受けることができません。
車検時に自賠責保険の有効期間内でなければ、車検に受かっても車検証は発行されないので注意が必要です。
車検と自賠責保険の期限が切れてしまった場合は、車検よりも先に自賠責保険の加入手続きを行うか、仮ナンバーを申請してから車検を受けるようにしましょう。
自動車任意保険の加入について
中古車を購入するときは自賠責保険の加入だけでなく任意保険の加入も検討しましょう。
任意保険に加入するメリットやデメリット、選び方について解説します。
任意保険に加入するメリット
自賠責保険は加入が強制されますが、任意保険は自分の意思で加入するかを決めることができます。
任意保険に加入するメリットは、次のとおりです。
- ・自賠責保険では補償されない部分を補える
・補償範囲や補償内容が自分で決められる
・独自のサービスが受けられる
任意保険には対物や対人への補償だけでなく、保険会社独自のサービスが付帯しています。
事故対応サービスやロードサービスなど、カーライフをサポートするサービスの種類はさまざまです。
任意保険に加入するデメリット
メリットが多い任意保険にも欠点があります。
任意保険に加入するデメリットは、次のとおりです。
- ・補償を手厚くすると保険料が高額になる
・等級によって保険料が高くなる
・年齢によって保険料が高くなる
・無事故の場合は損をする
任意保険は運転経歴や年齢によって保険料が異なります。
高齢者や若年層は保険料が高めです。
事故を起こして保険を使用してしまった場合は等級がダウンしてしまうため、元に戻るまで保険料が高くなってしまいます。
任意保険の選び方
任意保険を選ぶときは、以下のポイントに注目してみましょう。
- ・ダイレクト型(通販型)であるか
・補償内容や補償金額は足りているか
・自然災害に対応できるか
ダイレクト型の保険はインターネットで加入することが可能で、代理点で加入するよりも保険料を安く抑えることができます。
事故の被害者に対する対人・対物補償があるのは基本で、補償金額は無制限がおすすめです。
自然災害に遭った場合の補償が手厚いのも任意保険の特徴なので、住んでいる地域や車の使用頻度に合わせて任意保険を選びましょう。
まとめ
今回は中古車購入時に自賠責保険が可能なのかについて解説しました。
自賠責保険は交通事故の被害者を守るため、車を運転するすべてのドライバーに加入が義務付けられています。
中古車を購入する際は、自賠責保険の名義変更または加入の手続きが必要です。
怠ると罰則が科せられたり、車検が受けられなくなってしまったりします。
加入手続きや名義変更をしない状態で車を運転するのはやめましょう。
自動車保険には自賠責保険だけでなく、任意保険もあります。
自賠責保険では補償できない範囲をカバーできるので、必要な方は自賠責保険の加入も検討してください。