公道を走行するには、定期的に車検を受けなければなりません。
車検にはさまざまな項目があり、ブレーキの効きも車検項目の点検項目の1つです。
そのため、車検でブレーキパッドを交換した方がいいのか気になる方もいるでしょう。
そこで本記事では、車検でブレーキパッドは交換すべきか、交換費用や費用を抑える方法をご紹介します。
車検でブレーキパッドの交換を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
車検時のブレーキパッドの合格基準
ここでは、ブレーキパッドの必要性や車検時のブレーキパッドの合格基準について解説します。
ブレーキパッドの必要性
ドライバーがブレーキを踏むと、タイヤの内側にあるブレーキローターの両側に設置されたブレーキパッドがブレーキローターを両側から強く挟み、ブレーキパッドの摩擦を利用してタイヤの回転を止めて車を停止しています。
ブレーキパッドはブレーキを機能させるための重要な部品です。
ブレーキパッドの合格基準
ブレーキパッドは新品の状態で7mm~10mm程度の厚みがありますが、車検にブレーキパッドの厚みは関係ありません。
車検では、ブレーキが効くかどうかのみを確認します。
ブレーキがきちんと効けば、ブレーキパッドの厚みがたとえ1mmしかなくとも車検に通ります。
しかし、ブレーキパッドの厚みが薄くなると、ブレーキの効きが悪くなるため大変危険です。
車検の合否に関わらず、安全に乗るためにはブレーキパッドを定期的に交換する必要があります。
ブレーキパッドを交換せずに乗るリスクと消耗を抑える方法
ブレーキパッドの交換には、費用がかかります。
そのため、できればブレーキパッドの交換を控えたいという方もいるかもしれません。
しかし、ブレーキパッドを交換せずに乗るには、リスクがあります。
ここでは、ブレーキパッドを交換せずに乗るリスクと消耗を抑える方法について解説します。
ブレーキパッドを交換せずに乗るリスク
ブレーキパッドを交換せずに乗るリスクは、以下のとおりです。
- ・ブレーキの効きが悪くなる
・ほか他の部品に悪影響を及ぼす
それぞれのリスクについて解説します。
ブレーキの効きが悪くなる
車のブレーキは、ブレーキパッドの摩擦を利用して機能しています。
ブレーキパッドが摩擦を起こすことで摩擦部分が熱を帯びますが、高温になりすぎると制御力が低下するフェードという故障につながります。
ブレーキパッドの厚みが減るほど、温度が上昇してフェードが起きやすくなるため、長い下り坂や勾配が激しい道でブレーキが効かなくなるかもしれません。
そのため、追突や速度オーバーでカードを曲がり切れないなどの事故の発生率が高くなります。
ほかの部品に悪影響を及ぼす
ブレーキパッドの厚みが少ないまま使い続けると、ほかの部品にも悪影響を及ぼします。
ブレーキはディスクローターをブレーキパッドで挟むことで作動する仕組みです。
そのため、摩擦したブレーキパッドを使い続けると、挟まれるディスクローターにも傷が付き、ヒビ割れや破損につながるかもしれません。
また、フェードが起こりやすくなると、摩擦熱によりディスクローターの劣化も進みます。
ほかに、ブレーキキャリパーの不具合も発生しかねません。
ブレーキキャリパーとは、ブレーキパッドの動きを制御する部品です。
荒い運転をしていると、ブレーキパッドが八の字型に偏って摩擦します。
すると、ブレーキパッドとディスクローターの接触面積が狭くなり、摩擦力が低く、ブレーキキャリパーが開いた状態になってしまいます。
そうすると、結果的にブレーキの効きの悪さにもつながるでしょう。
さらに、摩擦熱がブレーキキャリパーにも伝わってしまうと、ブレーキフルードの液漏れのリスクが発生します。
ブレーキフルードとは、ブレーキを踏んで発生した圧力をブレーキキャリパーへ伝えるためのオイルです。
このように、ブレーキパッドの厚み1つで次々と影響が出てしまう可能性があります。
ブレーキパッドの消耗を抑える方法
ブレーキパッドは消耗品ですが、いくつかのポイントに気を付けることで、ブレーキパッドの消耗を少しでも抑え、交換回数を減らすこともできます。
ブレーキパッドの消耗を抑える方法は、以下のとおりです。
- ・急ブレーキを控える
・車両間隔をあける
・勾配の急な道路での運転に気を付ける
それぞれの方法について解説します。
急ブレーキを踏まないようにする
ブレーキパッドの消耗を抑えるには、急ブレーキを控える方法が有効的です。
ブレーキパッドに負担がかかるほど、消耗は早くなりますが、急ブレーキは高速で回転しているタイヤを瞬時に止めるために、ブレーキパッドに非常に大きな負担をかけてしまいます。
ブレーキをかけたい場合には、アクセルを緩めたり、シフトチェンジをしたりしてエンジンブレーキを効率的に効かせ、フットブレーキの使用を最低限に抑えられるように運転するのがおすすめです。
緊急時以外には急ブレーキを控え、軽くブレーキを踏むように心がけましょう。
車両間隔をあける
ブレーキパッドの消耗を抑えるには、車両間隔をあけて運転することも大切です。
急いでいる場合や、高速道路から降りた直後は、車両間隔が短くなってしまうことがあります。
しかし、車両間隔が短いと、前の車がアクセルを緩めたり、急に止まったりした場合に、急ブレーキをかけなくてはなりません。
思うようにブレーキが効かなければ、追突事故が発生する恐れもあります。
特に、雨の日には急ブレーキを踏んでも制限距離が長くなり、すぐに止まることはできません。
車両間隔を余裕を持ってあけておくことで、ブレーキパッドに負担をかけることなく前の車の減速や急ブレーキにも対応できます。
普段から適切な車両間隔を守って運転するように気をつけましょう。
急勾配の道路では慎重に運転する
勾配の急な道路では、フットブレーキを利用すると、ブレーキパッドの消耗が早くなってしまいます。
このような道を走行する場合は、フットブレーキの使用率が高くなってしまうため、ブレーキパッドを消耗せず利用できるエンジンブレーキを活用しましょう。
エンジンブレーキは、マニュアル車だけでなく、オートマ車でも利用できます。
オートマ車でエンジンブレーキを利用する場合は、低いギアにシフトチェンジしましょう。
ブレーキパッドを交換するタイミングを見極めるコツ
ブレーキパッドの残量が少なくなっても使い続けるのは大変危険であるため、交換タイミングを見極める必要があります。
ここでは、ブレーキパッドの交換時期を見極めるコツについて解説します。
ブレーキフルードの残量から推測する
ブレーキフルードの残量は、ブレーキパッドの消耗に比例します。
なぜなら、ブレーキパッドがすり減ると、その分ブレーキキャリパーも押し上げられ、ブレーキフルードが流れるためです。
したがって、ブレーキフルードの残量を確認すると、ブレーキパッドの減り具合も予想することができます。
ブレーキフルードの残量は、エンジンルーム内にあるタンクの黄色の液体量で確認可能です。
タンクには、ブレーキフルードの残量が少ないという意味を表す「MIN」、ブレーキフルードの残量が多いという意味を表す「MAX」という目印があります。
ブレーキフルードが「MIN」に近くなっていると、ブレーキパッドの消耗が進んでいることも推測できます。
ただし、ブレーキパッドの交換とブレーキフルードの補充を一緒に行っていた場合にしか活用できない方法であるため、ご注意ください。
走行距離から判断する
走行距離から、ブレーキパッドの残量を判断するのも1つの手です。
自家用車の場合、一般的に走行距離1万kmにつきブレーキパッドが1mm消耗するといわれています。
ブレーキパッドの厚みは5mm程度で交換が推奨されているため、走行距離が5万kmあたりから交換を検討するのがおすすめです。
ブレーキパッドの厚みが5mm以下になると、ブレーキをかけた際にブレーキパッドとブレーキローターに熱が発生しやすくなります。
ブレーキパッドの厚みが3mm~4mm以下になると、ブレーキの効きが悪くなるため、その前に交換しておきましょう。
ただし、走行距離から判断できるブレーキパッドの残量は目安に過ぎません。
運転の仕方によっては消耗が早まる可能性もあるため、注意しましょう。
厚さを目視する
ブレーキパッドの厚さを目視すると、正確なブレーキパッドの交換目安が分かります。
ブレーキパッドは車体をジャッキアップしてホイールを取り外し、ブレーキキャリパーの点検窓から目視で確認できます。
最も確実な方法ではあるものの、ジャッキアップを行う専用工具が必要な上に、慣れていない場合は重大な事故につながりかねません。
車に関する知識や経験がない方は、プロに依頼して確認してもらうのが良いでしょう。
走行時に異音が発生するか確認する
国産車のほとんどには、ブレーキパッドにパッドウェアインジケーターと呼ばれる金属部品が付いています。
ブレーキパッドの残量が減ると、金属部品が異音を出し、ブレーキパッドの摩耗を知らせる仕組みです。
ブレーキを踏んだ際に、通常と違う音が聞こえたらブレーキパッドの残量が少なくなっている合図かもしれません。
ブレーキパッドの異音が聞こえたら、すみやかな交換が必要です。
警告灯ランプが点灯する
一部の高級車や輸入車の場合は、パッドウェアインジケーターが付いていない代わりに、自動的に電線を切断し、ブレーキ警告灯ランプを点灯させて知らせるものもあります。
ブレーキ警告灯ランプが点灯したら、早めにブレーキパッドを交換しましょう。
ブレーキパッドの交換費用
ここでは、ブレーキパッドの交換費用と交換費用を抑える方法について解説します。
ブレーキパッドの交換費用相場
ブレーキパッドの交換費用の相場は、6,000円〜10,000円以上です。
ブレーキパッド交換費用には、ブレーキパッド本体の価格と交換工賃が含まれます。
ブレーキパッド本体は、フロントとリアの左右両輪分で1セットとなっています。
軽自動車の場合は1セット7,000円以上、普通自動車の場合は1セット8,000円以上かかるのが一般的です。
ブレーキパッドの交換費用を抑える方法
ブレーキパッドは車の安全性に関わるため、メンテナンスコストを過剰に削減することは困難です。
しかし、工夫することで安全性に影響がなく、費用を抑えるともできます。
ブレーキパッドの交換費用を抑える方法は、以下のとおりです。
- ・車検や点検時に交換してもらう
・ブレーキパッドを持ち込む
それぞれの方法について解説します。
車検や点検時に交換してもらう
車検や点検時に一緒に交換してもらうと、交換工賃を節約できます。
ブレーキパッドの交換を行うには、車をジャッキアップし、タイヤを取り外す作業が必要です。
そのため、タイヤの整備と同時に行うことで、作業工程を減らし、最低限の交換工賃で交換してもらえるでしょう。
ブレーキパッドを持ち込む
業者によっては、純正部品だけでなく、社外品のブレーキパッドの持ち込みを許可しているところもあります。
比較的安価なブレーキパッドを持ち込むと、ブレーキパッド本体価格の節約につながります。
まとめ
ブレーキパッドは、車の安全性に関わる消耗部品の1つです。
車検では、ブレーキパッド本体に関する項目はなく、ブレーキの効きのみで合否が判断されます。
そのため、ブレーキパッドの残量が非常に少なくとも、ブレーキが効きさえすれば、車検には合格してしまいます。
ただし、ブレーキパッドの残量が少ないまま乗っていると、ブレーキの効きが悪くなったり、ほかの部品にまで悪影響を及ぼしたりして、大変危険です。
ブレーキパッドの残量が少ない場合には、車検の合否に関わらず、すみやかに交換しましょう。