車検前の点検で提案される傾向にあるのが、冷却水の交換や補充です。
実際に冷却水の交換・補充を行わないと、車検には通らないのでしょうか?
本記事では、車検で冷却水交換を提案された場合に、どう判断すべきか解説していきます。
冷却水強化剤や冷却水以外の消耗液についても解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
冷却水の役割と成分
冷却水はクーラント液とも呼ばれる、車のエンジンに必要不可欠な消耗品です。
まずは冷却水の役割と成分から解説していきます。
冷却水がエンジンのオーバーヒートを防ぐ
冷却水の役割は、エンジンの熱を奪ってオーバーヒートを防ぐことです。
熱を奪って高温になった冷却水は、ラジエーターで冷却された後、再びエンジン内部へ戻っていきます。
エンジンが稼働している間は内部で冷却水が循環し続けるため、発生する熱を効率よく抑えることが可能です。
冷却水は不凍液・防腐剤・防錆剤を含む
一般的な冷却水は、不凍液・防腐剤・防錆剤の3種類を含んでいます。
不凍液を含んでいるため、氷点下になるような気温の低い地域でも、エンジンの冷却水が凍ることはありません。
エンジンの部品劣化を抑えるために、防錆剤がサビの発生を、防腐剤がカビの発生を防ぎます。
冷却水は徐々に劣化・減少していく
冷却水はエンジンの稼働時間に応じて、徐々に劣化・減少していきます。
エンジンの熱を奪う際に、わずかですが蒸発していくからです。
冷却水の量が減ってしまうと全体的な効果も減少していくため、定期的な交換が必要になってきます。
車検の検査項目に冷却水は含まれない
車検の際に交換を提案されることが多い冷却水ですが、車検の検査項目には含まれていません。
なぜ交換を提案されることが多いのか、車検における冷却水の取り扱いについて解説していきます。
交換や補充の必要性は判断しやすいが車検には影響しない
冷却水の劣化は色により判断できるため、目視で簡単に確認できます。
冷却水の量も、樹脂タンクの目盛りですぐに判別が可能です。
車検前の整備で交換や補充が必要かどうかすぐに判断できるため、メンテナンスの提案もされやすい傾向にあります。
車検には影響しないものの、不具合を見つけやすいという背景から、結果的に交換・補充の提案をされる頻度が高くなっています。
冷却水の漏れがあると車検は通らない
車検の項目に冷却水の状態は含まれていませんが、冷却水の漏れが確認されると車検は不合格です。
冷却水の漏れは、循環経路にある部品の劣化を示している可能性があり、ゴムや樹脂部分のひび割れ、金属部分の腐食などが疑われます。
このような状態だと安全上の懸念があるため、冷却水まわりの再整備が必要です。
冷却水の不足で予想されるトラブル
ここからは、冷却水の不足で予想されるトラブルを紹介していきます。
冷却水の不足で起こるトラブルは、最終的にエンジンのオーバーヒートを引き起こします。
エンジンのオーバーヒートは大事故に繋がるリスクがあるため、できる限り防がなければなりません。
トラブルが発生するまでのメカニズムを理解して、迅速な対応を心がけましょう。
エンジンの熱が下がりにくくなる
冷却水は、稼働中に高温になるエンジン内部を循環し、熱が上がりすぎることを防ぐ役割があります。
したがって冷却水が劣化・不足していくと、エンジンの熱は下がりにくくなる一方です。
エンジンの熱が下がらないまま走行し続けると、部品の劣化は加速度的に進みます。
やがてエンジンが破損し、走行不能に陥ってしまいます。
冷却水が通過する場所にサビが発生する
冷却水が劣化・不足していくと、サビを抑える効果も減少します。
その結果、冷却水が通過する場所にサビが発生してしまうので注意が必要です。
サビの発生も、エンジンの熱を下げる効果に影響します。
エンジンの熱が下がらない状態を、さらに後押しする要因と言えます。
冷却水を交換すべきタイミング
冷却水の劣化や不足で起こるトラブルを防ぐには、不具合が出る前に冷却水を交換する必要があります。
ここからは冷却水を交換すべきタイミングについて解説していきます。
一般的な冷却水は車検ごとの交換を推奨
「LLC」と呼ばれる一般的な冷却水の場合、ベストな交換タイミングは2年~3年ごとだとされています。
車検を受けるタイミングと重なるため、車検ごとに交換しておくことをおすすめします。
寿命が長い冷却水は7年、16万km走行を目安に
冷却水の一部には、寿命を長くした「スーパーLLC」と呼ばれる商品もあります。
そのような冷却水だと、新車登録時から7年、または16万km走行を目安にした交換で問題ありません。
2回目以降は4年、または8万kmの走行距離が目安となっています。
整備士に提案された場合は要相談
交換時期に当たらないタイミングで整備士に交換を提案された場合は、しっかりと相談して対処の方法を決めましょう。
すでに解説したとおり、冷却水の劣化や不足は簡単に判別可能です。
不具合を放置したまま車を走らせていると、予想だにしない事故を引き起こす恐れがあります。
整備士の意見をよく聞いて、慎重に検討する必要があるでしょう。
冷却水のトラブルを早く察知する方法
冷却水の不具合を発見することは、ドライバーが行う日常点検でも可能です。
ここでは冷却水のトラブルを早く察知する方法を解説していきます。
冷却水の量を確認する
最初の確認ポイントは冷却水の量です。
エンジンルーム内にある樹脂製のリザーバータンクには、冷却水の量を知るための目盛りが付いています。
最大量と最低量を示す目盛りがあり、この間に冷却水の表面があれば、現時点で問題はありません。
最低量に近い、もしくは下回っているという場合は冷却水の補充が必要です。
また、短期間で極端に減っている場合は、エンジンルーム内の損傷を疑った方が良いでしょう。
なお、冷却水の温度が高いままだと、正確な残量を測ることができないため、エンジンを切ってしばらく経ってから確認を行いましょう
冷却水の色を確認する
次の確認ポイントとなるのが、冷却水の色です。
一般的な冷却水の色は赤や緑、スーパーLLCの色は青やピンクに着色されています。
冷却水の色が暗く濁った色になっていた場合、冷却系統のサビやエンジンオイルの混入が疑われます。
このような状態だと、なんらかの異常が考えられるため、専門業者への点検を依頼しましょう。
水温メーターを確認する
水温メーターを確認すれば、運転席で冷却水の不具合を察知できます。
冷却水の劣化や不足が顕著になった場合、エンジンルームの温度が上昇し、水温メーターの表示として見られるからです。
通常はHOTとCOOLの中間に指針がありますが、HOTに近づいた状態になると注意が必要になります。
水温メーターの上昇に気付かずに、エンジンから煙が上がる状態になってしまったら、かなり危険な状態です。
ただちに安全な場所で車を停止させ、JAFや保険会社などのロードサービスに連絡しましょう。
冷却水強化剤を車検時に提案されることもある
車検前に整備で、冷却水強化剤の投入を提案されることがあります。
応じるべきかどうか判断できない方に向けて、冷却水強化剤の意味やメリットを解説していきます。
冷却水強化剤とは
冷却水強化剤は、クーラント復活剤とも呼ばれるものです。
冷却水に投入することで、エンジン内部の防錆・防腐・耐摩耗性能をアップさせます。
次の交換時期まで故障のリスクを抑えられる
冷却水強化剤を投入するメリットは、次の冷却水交換時期まで故障のリスクを抑えられる点にあります。
一般的な冷却水の交換タイミングは2年~3年と言われていますが、冷却水強化剤を投入することで交換時期を延ばすことが可能です。
実際の使用方法としては交換時期を延ばすのではなく、次にくる交換時期まで故障する確率を下げたいといったときに投入されます。
状況によっては効果が得られない場合もある
冷却水の性能が大幅に低下した状態では、冷却水強化剤の効果は得られません。
冷却水強化剤はエンジン内部の防錆・防腐・耐摩耗性能をアップさせますが、冷却水自体の不純物は取り除けません。
冷却水強化剤を連続で投入しても冷却水自体は劣化していくだけなので、交換時期を過ぎている場合は早めの交換を検討しましょう。
車検時に冷却水以外で交換・補充を提案される消耗品
車検時には、冷却水以外で交換・補充を提案される消耗品があります。
それぞれの消耗品を正しく理解して、無駄のない適切な対応ができるよう解説していきます。
エンジンオイル
エンジンオイルも、エンジンを稼働させるのに必要不可欠な消耗品液です。
正しく管理しておかないと、重大事故に結びついてしまう恐れがあります。
基本的な役割
エンジンオイルは潤滑・冷却・洗浄・密封などの役割を持ち、エンジンの状態を良好に保ってくれる消耗品です。
車検への影響
エンジンオイルを交換していなくても、車検の合否には影響ありません。
ただし、オイル漏れが確認された場合は別で、車検は不合格となり再整備の必要性が出てきます。
交換の目安
エンジンオイルの交換は、車の走行距離や使用期間で検討します。
一般的な交換の目安は以下のとおりです。
- ・交換してから3,000km~5,000km走行
・交換してから3か月~6か月が経過
・エンジンオイルに汚れが見られる
・オイル量が下限以下まで低下している
ブレーキオイル
ブレーキオイルは、ブレーキを正しく作動させるために必要な消耗品液です。
車を使用していく過程で、徐々に劣化していきます。
基本的な役割
ブレーキを踏んだときに、ブレーキオイルを使ってパッドを押さえつけるピストンを動かします。
車検への影響
ブレーキオイルを交換していなくても、車検の合否には影響ありません。
安全性能に問題がなければ車検に通りますが、オイル漏れがある場合は不合格です。
交換の目安
ブレーキオイルの交換時期も、走行距離や使用した期間で判断します。
一般的な交換の目安は以下のとおりです。
- ・1万kmの走行
・ブレーキオイルの色が濁った茶色
・ブレーキオイルの量がゲージの下限に近い
オートマオイル
オートマオイルはAT車のみに使用されている消耗品液です。
オートマチックトランスミッションの潤滑油として使用されています。
基本的な役割
オートマチックトランスミッションの動力伝達・シフト制御・洗浄・冷却の役割を持っています。
車検への影響
オートマオイルを交換していなくても、車検の合否には影響ありませんが、オイル漏れは不合格となります。
交換の目安
オートマオイルの交換目安は、メーカーや車種により変動します。
一般的に推奨されている交換時期は、走行距離が2万km~3万kmに達したタイミングです。
6万km~7万kmなど、中途半端に推奨時期を超えたタイミングで交換すると、逆に不具合を起こしてしまう傾向にあります。
オートマオイルを交換して不具合が発生した場合、再度オイルを交換しても状況が好転するケースは少ないため、定期的な交換を続けるやり方がおすすめです。
まとめ
車検の点検に冷却水の項目はないため、冷却水の劣化や不足で車検に落ちることはありません。
一方で車の状況を良好に保ち、安全に乗り続けるためには、しっかりとした管理が求められます。
トラブルを防ぐ観点からも、冷却水の交換は車検のタイミングがおすすめです。
日頃から冷却水の状態に注目しておけば、異常を見つけた際も素早く対応できるでしょう。