日本では、定期的に車両の安全性を確保するため、厳格な保安基準に基づいて車両の検査を行う車検制度が義務付けられています。
しかし、海外ではこの制度が異なる場合が多く、一部の国では車検自体が存在しないこともあります。
そこで本記事では、日本と外国における車検制度の違いについて詳しく解説し、費用や年数、そして各国の事情を徹底比較していきます。
さらに、2024年6月から変更される日本の車検制度についても触れていきますので、ぜひご参考にしてください。
車検がない国もある!?海外の車検事情について
日本では、車検が法律で定められた義務として存在し、定期的な検査を通じて車両の安全性や環境基準を確認しています。
しかし、世界に目を向けると、すべての国で車検制度が実施されているわけではありません。
実際には、車検が不要な国や簡単な車両検査を行うだけで済む国もあり、対応は国ごとに大きく異なります。
ここでは、各国の車検事情をご紹介していきます。
車検制度がない国がある!
世界各国には、日本と同様に厳しい車検制度を設ける国もあれば、まったく車検制度が存在しない国もあります。
たとえば、アメリカやカナダ、オーストラリアといった国では、基本的に車検制度がなく、ある程度の安全基準を維持するために独自の方法で車両の点検が行われています。
例として、アメリカでは車検制度が全国一律ではなく州によって独自の車検制度はあるものの、安全点検のルールが厳しい地域とそうでない地域が存在します。
ただし、整備不良車が発見された場合、高額な罰金が科せられることもあるため、定期的にメンテナンスをする必要がありますが、もともと自分で整備する文化が浸透しているため、車検制度に頼らず自発的に車の点検・整備を行うケースが多いことが特徴です。
車検制度がない理由
日本では当たり前の車検制度ですが、車検制度がない国もあります。
なぜ、車検が不要な国が存在するのでしょうか。
実は、この背景には「各国の整備文化」や「国の法律に対する考え方」が関係しています。
たとえば、アメリカでは車の整備や点検は個々の所有者が自己責任で行う文化が根強く、車検制度の必要性が低いため車検制度はありません。
また、中国のように急速な車社会の発展により法整備が追いついていない国もあり、こうした国では車検制度そのものが存在しないこともあります。
その他にも、イタリアでは新車購入後10年間は車検が不要であったり、フランスやスイス、北欧諸国では、車の使用頻度が比較的少ないため、厳格な車検が不要とされており簡単検査で車両の維持が認められているのです。
車検制度が厳しい国もある!
日本では1951年に普通自動車に対して車検が義務化され、1973年には軽自動車にも適用されるようになりました。
以来、すべての車両が法的に定められた車検を受けなければなりません。
この制度は年々改正が重ねられ、安全性と環境保護の観点から厳格な運用が続けられています。
そんな日本と同様に、ドイツでも厳しい車検制度が導入されています。
車両の電気系統や機械的な部品、さらには排気ガスの基準に対して厳密な検査が行われており、期限内に車検を受けない場合には罰金が科せられるというのがドイツの車検制度の特徴です。
このように厳しい検査を行い、車両が常に安全かつ環境に配慮した状態を保つことが求められているのです。
また、イギリスでは新車を購入した場合、最初の車検は4年後に実施されますが、それ以降は毎年「MOT検査」と呼ばれる車検が義務付けられています。
このMOT検査に合格しなければ、車両の使用が認められず、合格しない場合は費用をかけて改修する必要があります。
このように、車検制度が厳しい国では、車両が常に基準を満たしていることを保証するための仕組みが整っています。
日本やドイツ、イギリスでは、車検制度がそれぞれの国の安全や環境保護を支える重要な役割を担っており、社会にとって不可欠な制度となっています。
海外の車検制度と日本の車検制度の違い
世界各国の車検制度は、日本と比べてさまざまな点で違いがあります。
ここでは、日本と海外の車検費用と年数の違いについて詳しくみていきましょう。
費用の違い
日本の車検費用は高額だと感じる方も多いかもしれませんが、検査そのものの手数料は他国と比べてそれほど高くはありません。
日本国内での検査手数料は3,000円未満で、海外と比較してもかなり安い部類に入ります。
たとえば、イギリスやフランスでは検査手数料が1万円以下ですが、日本と同様に厳しい検査を受ける必要があるため、一定の費用負担が伴います。
その他の国でも、韓国やオーストラリア、ドイツなどは日本と同水準の3,000円前後が目安となっており、シンガポールでも約4,000円の手数料が必要です。
日本の車検費用が高い理由
日本の車検費用が他国に比べて高いと感じられるのにはいくつかの理由があります。
特に大きな負担として挙げられるのが税金と自賠責保険の費用です。
車検を受けるたびにこれらの費用が加算されるため、車を所有するためには一定の費用がかかり、車検費用全体が高くなります。
ここでは、税金と自賠責保険の費用について詳しくみていきましょう。
税金が高い
日本の車検費用が高額になる大きな理由の1つが「自動車重量税」です。
自動車重量税は、車両の重量に基づいて税額が決められるもので、軽自動車から大型車に至るまで、その重量に応じて異なる金額が課せられます。
新車購入時に一度支払うだけでなく、車検ごとに繰り返し支払いが必要なため、車検のたびに税金がかかることで、トータルの費用が大きく膨らむ要因となるのです。。
自動車重量税は道路維持や環境保護のために用いられるとされますが、実際には維持費の高騰につながっている側面もあります。
さらに、自動車重量税の納付は法律で義務付けられているため、納税を怠ると脱税行為とみなされます。
自賠責保険が高い
車検費用の負担を増大させるもう1つの要因が「自賠責保険」です。
自賠責保険は、強制保険として日本のすべての車両に加入が義務付けられている保険で、万が一の事故の際に、被害者を保護するための制度として運用されています。
また、未加入の状態での車両運転は違法とされ罰則の対象となるため、車検時には自賠責保険の更新が必要となり、車検費用に上乗せされる形になります。
また、自賠責保険は一般的な自動車保険とは異なり、自己のためではなく被害者救済を目的としています。
年数の違い
日本では、新車購入時には3年間、その後は2年ごとに車検を受けることが義務付けられています。
2回目以降は「継続検査」として、定期的なメンテナンスと安全基準を維持するため、車検証に記載された期限内に検査を受けなければいけません。
海外における車検の有効期間は、日本と異なる場合が多く、国によって新車の初回検査は4年の有効期間が設定されている場合もあります。
たとえば、フランスやイタリア、アメリカの一部(カリフォルニア州など)では、初回の車検が4年間有効で、その後の継続検査は2年または1年ごとに定められており、イギリスやドイツ、スウェーデンでは初回が3年間と設定されています。
特にイギリスではその後1年ごとにMOT検査が義務付けられるため、頻繁に車両の状態が確認される仕組みが特徴です。
ドイツも同様に、車検期間の厳格さでは日本と同等の基準を持ち、道路交通の安全確保を目的に、厳しい基準で車両管理が行われています。
国産車と外車の車検費用の違いについて
日本と世界各国の車検制度における違いを紹介してきましたが、日本国内の車検でも、国産車と外国産車でさまざまな差が存在します。
日本で車検を受ける際、国産車と外車では費用に違いが生じることが多く、特に外車の方が高額になる傾向があります。
これは単に車検の法定費用だけではなく、車両の重量や部品、ディーラーの運営費用など、さまざまなことが関係しているためです。
ここでは、外車が国産車よりも車検費用が高くなる主な理由についてみていきましょう。
国産車と比べて外車の車検費用が高い理由
国産車と比べて外車の車検費用が高い理由は、以下の4つが挙げられます。
- ・車両重量が重い
・部品代が高い
・研修がかかる
・土地代が高い
それぞれ詳しく解説していきます。
車両重量が重い
外車の多くは、同等のボディサイズであっても国産車に比べて車両重量が重くなる傾向があります。
車検時には、この重量に基づいて「自動車重量税」を支払わなければならないため、外車の場合は税金が高額になりやすいのです。
日本の重量税は500kgごとに区分されており、たとえば500kg以下で8,200円、1,000kgを超えると2万4,600円、2,500kg以上では4万9,200円と重量が増すごとに課税額も増加します。
外車では、特に大型のSUVや高級車が多く、重量税が国産車よりも高くなるケースが多く見られます。
部品代が高い
外車の車検費用が高くなるもう一つの大きな要因は、交換部品の調達コストです。
日本で販売される外車には、故障や消耗による交換に備えて部品が一部ストックされていますが、ほとんどの部品は必要に応じて海外から輸入するケースが多くなります。
これは、国内で製造される国産車とは異なり、外車の部品が海外に依存しているためです。
輸入には高額な輸送費がかかるうえ、為替レートの影響も受けやすいため、部品費用が割高になる場合が多いです。
研修がかかる
外車の販売や整備を行うディーラーでは、車種ごとの特徴やメンテナンスに関する知識を提供するため、従業員に向けた専門的な研修を定期的に実施しています。
新しいモデルが導入されるたびに、メカニックや営業スタッフが最新の技術や製品特徴を学ぶ必要があり、このような研修には高額なコストがかかります。
たとえば、自社の車種に特化したトレーニングを行い、最新技術や特有のメンテナンス方法をスタッフが習得できるようにするなど、こうした研修にかかる費用は車両価格や車検費用に反映されることが多く、整備費用や車検料金の一部に上乗せされているケースが多いのです。
外車の車検費用が高額になる背景には、ディーラーの技術サポートに関する費用負担が影響しているといえます。
土地代が高い
日本の正規ディーラーは、アクセスの良い立地に店舗を構えることが多いため、土地代が高額になりやすい傾向にあります。
特に都市部やアクセスが良い場所では競争率が高く、土地の賃料も相応に高くなるため、営業や整備のコストに反映せざるを得ません。
外車ディーラーの多くは、ショールームや整備工場を併設しているため、大きなスペースを確保しなければならず、その分の土地代も運営費用としてかさみます。
こうした立地の維持にかかる費用が、外車の車検費用に影響を与えており、正規ディーラーで車検を受ける際にはその影響を受けやすいのが現状です。
車検費用を抑えたいなら国産車が無難!
車検費用を可能な限り抑えたい場合は、国産車を選ぶことで部品の調達や整備が容易になり比較的安価な車検費用で済ませられるでしょう。
さらに、「ユーザー車検」を利用すれば、業者に依頼せず自分で車検を通すことができます。
代行手数料や整備費用を節約でき、10万円以上の節約につながるケースも少なくありません。
ただし、自ら点検や整備を行うためには知識や技術が必要で、整備経験がないと車検に通らないリスクもあります。
安全で確実に車検を通したい方は、プロに任せることも検討しましょう。
2024年6月に日本の車検制度が変わった?
2024年6月25日、国土交通省は道路運送車両法施行規則を改正し、車検を受けられる期間の延長を発表しました。
これまで車検証の有効満了日から1ヶ月前までしか受検できなかった車検が、今後は2ヶ月前から受けられるようになります。
この改正によって旧車検証の残存有効期間が失われることはなく、これまでどおりに新しい車検証が交付されるため、安心して利用できます。
この改正の背景には、年度末に車検が集中して整備士の負担が増加する問題があり、予約が取りづらい状況を改善する目的があります。
この改正は2025年4月1日から施行され、より円滑な車検対応を可能にすることが期待されています。
まとめ
車検制度がない国もある中で、日本では車検が義務付けられており、車両の安全性を確保するための重要な役割を担っています。
日本の車検費用は高いと感じられることが多いものの、手数料自体は他国と比較してそれほど高額ではありません。
日本での車検費用が大きくなる要因には、税金や自賠責保険の費用が含まれています。
しかし、車検制度のおかげで私たちは日々安全に車を運転することができるため、しっかりと車検を受け安全運転を心がけましょう。