車検は2年に一度必ず受ける必要があり、費用は大きな負担になることもあります。
そのため、自分で車検を行って費用を抑えられる「ユーザー車検」に興味を持つ人もいるでしょう。
ユーザー車検は業者を通さないため車検費用を節約できますが、手間と時間がかかるため事前の知識が重要です。
本記事では、ユーザー車検の概要からメリット・デメリット、具体的な手順までを詳しく解説していきます。
ユーザー車検をスムーズに終えるためにも、ぜひ最後までご覧ください。
自分で車検をする「ユーザー車検」とは?
車検とは、車を業者に預けて点検や整備、検査の手続きまで、すべてを任せるイメージを持つでしょう。
まずは、業者を通さずに車検をする、ユーザー車検について詳しく解説していきます。
自分で車を持ち込んで車検を通すこと
ユーザー車検では、自分で車を運輸支局や軽自動車検査協会に持ち込み、車検を受ける方法です。
以下の手続きを自分でするため、ある程度の時間と手間がかかりますが、車検費用を抑えられる点が魅力です。
- ・車検の予約
・必要書類の準備
・車検場での手続き
・検査ラインでの検査
コストを抑えたい場合は、計画的に準備を進め、ユーザー車検に挑戦しましょう。
ユーザー車検にかかる費用
ユーザー車検にかかる費用は、普通自動車で5万円程度といわれています。
一般的に車検では「法定費用」「整備費用」の2つがかかりますが、ユーザー車検は「整備費用」は必要ありません。
それぞれの費用の内訳を、以下で詳しく解説していきます。
法定費用
法定費用には以下のものが含まれます。
- ・自賠責保険料
・自動車重量税
・印紙代
2024年度の自賠責保険料は昨年から据え置きであり、普通自動車の場合は24ヵ月分で17,650円、36か月契約で23,690円です。
自動車重量税は車種や経過年数によって異なるのが特徴で、2024年から以下が変更されました。
- ・エコカー減税の適用基準が引き上げ
・新たな燃費基準の設定により軽減率の変更
印紙代は、手数料を支払うために必要な収入証紙や収入印紙の代金です。
印紙代(手数料)は「自動車登録印紙代+自動車審査証紙代」で、費用は以下のとおりです。
種別 | 持込検査(継続) | 指定工場(継続) |
普通自動車 | 2,300円 | 1,800円 (OSS1,400円) |
軽自動車 | 2,200円 | 1,800円 |
小型自動車 | 2,200円 | 1,800円 (OSS1,400円) |
印紙代は、2023年1月1日から引き上げられており、軽自動車は1,800円から2,200円に値上げしました。
指定工場で車検を受ける際は、保安基準適合証を交付できるため証紙代がいりません。
また、OSSを導入している指定工場であれば、印紙代は少し安くなります。
OSSとは「自動車保有関係手続のワンストップサービス」を指しており、一部の手続きを電子化することです。
指定工場事業者が、任意で取り入れているのが特徴です。
ユーザー車検の場合でも、法定費用は必要であることを、覚えておきましょう。
整備費用
整備費用とは、車検に合格するために実施する点検や修理にかかる費用を指します。
部品や車体に不具合が見つからなければ、整備費用は発生せず、法定費用のみで車検を通すことが可能です。
そのため、ユーザー車検は車検費用を抑えられます。
ただし、ユーザー車検では整備不良を見逃さないよう、事前にタイヤやブレーキパッドなどの基本的なメンテナンスを済ませておくことが推奨されます。
安全性を確保しながら、車検をスムーズに通過しましょう。
自分で車検をするメリット
ユーザー車検のメリットは、次のとおりです。
- ・費用を大幅に節約できる
・愛車の状態を把握できる
・整備知識がつく
・時間の融通が利く
それぞれの内容を、詳しく見ていきましょう。
費用を大幅に節約できる
ユーザー車検の大きなメリットは、費用を節約できる点です。
前述していますが、業者に依頼する場合と異なり整備費用を抑えられるため、車検費用の節約に繋がります。
業者ごとの車検費用の相場を表にまとめたので、ご覧ください。
依頼先 | 費用相場 |
ユーザー車検 | 3万円~6万円 |
車検専門店 | 6万円~10万円 |
整備工場 | 6万円~12万円 |
ディーラー | 8万円~15万円 |
ガソリンスタンド | 6万円~10万円 |
上記の金額は車種や車体の状態によっても異なりますが、ユーザー車検は安めであることがわかります。
軽自動車の車検にかかる費用は、こちらの記事で詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。
愛車の状態を把握できる
ユーザー車検では、自分で整備することで、愛車の状態を深く理解できる点もメリットです。
点検や整備を自分の手で行うことで、車の知識が身に付き、普段のメンテナンスや安全運転にも役立ちます。
たとえば、車両の異常に早めに気づけると、大きなトラブルを未然に防ぐことが可能となります。
自分で整備するスキルを高め、愛車を安全に保ちましょう。
時間の融通が利く
通常の車検では車の預かり期間が必要ですが、ユーザー車検では自分の都合に合わせて車検を受けられます。
運輸支局の営業時間内であれば、いつでも車検を受けられる点はメリットだといえるでしょう。
スムーズに進めば、2時間~3時間程度で完了します。
ただし、運輸支局は土日祝日は休業のため、平日に車検を受ける必要があります。
自分で車検を通す際の注意点
費用を抑えて車検を受けられる点は魅力ですが、ユーザー車検にはいくつかの注意点があります。
- ・事前準備を徹底する
・整備不良やトラブルは自己責任となる
・ある程度の知識や技術が必要となる
・土日は受けられない
・不合格となる可能性も
以下で、具体的な注意点を詳しくみていきましょう。
事前準備を徹底する必要がある
ユーザー車検では、車検に必要な書類や事前の整備をすべて自分で準備しなければなりません。
また、書類だけでなく事前の点検整備も必要です。
事前準備を怠らず、車検基準を満たした状態で検査に臨むようにしましょう。
整備不良やトラブルは自己責任となる
ユーザー車検では、整備不良やトラブルが発生した場合、すべて自己責任で対応する必要があります。
車検を通過した時点では問題がなくても、その後に不具合が見つかるリスクがあるため、注意が必要です。
たとえば、車検後にブレーキの不調が発覚した場合は、その対応も自分で行わなければなりません。
知識が不十分なまま進めると、整備不良による事故のリスクが高まるため、点検と整備は慎重に行いましょう。
ある程度の知識や技術が必要となる
ユーザー車検では車の構造や整備に関する知識が求められるほか、車検場での検査手順なども理解している必要があります。
とくに、以下の内容はしっかり頭にいれておきましょう。
- ・車の基本的な構造と仕組み
・日常点検の項目と方法
・車検の検査項目と基準
・車検場での検査手順
車検場では検査員から検査内容や手順について説明を受けるものの、ある程度の知識がなければ、説明内容を理解できません。
知識や技術に自信がある方でも、車検場では検査員の話をしっかりと聞くことが大切です。
また、ユーザー車検ではある程度の整備技術も必要です。
ブレーキランプの交換やタイヤの空気圧調整など、簡単な整備もありますが、ブレーキパッドの交換やエンジンオイルの交換など、ある程度の技術が必要な項目もあるからです。
もし車の知識や技術に自信がない場合は、事前に整備工場で点検を受けるようにしましょう。
土日は受けられない
ユーザー車検は、運輸支局や軽自動車検査協会が営業する平日のみ受け付けています。
そのため、土日祝日や年末年始は利用できない点に注意が必要です。
平日に時間を確保できない場合は、ディーラーや整備工場に車検を依頼するのが良いでしょう。
また、新生活をきっかけに車を購入する人が多く、例年3月~4月は混雑が予想されているため、注意が必要です。
さらに月末や連休前後は混雑が激しく、希望する日時に予約が取れないこともあるため、計画的にスケジュールを組み、余裕を持って予約しましょう。
不合格となる可能性も
ユーザー車検では、車両の状態によって不合格になる可能性もあります。
たとえば、ブレーキの効きが不十分だったり、ランプが点灯しなかったりする場合は、その場で不合格と判定されます。
不合格となった場合でも、指摘箇所を修理・調整することで再検査を受けることが可能です。
ただし、1日の検査レーンへの入場は3回までと制限されており、再検査のチャンスは2回に限られます。
再検査回数を超えた場合は1,200円の手数料で「限定自動車検査証」を取得する必要があり、15日以内であれば再検査を受けられます。
不合格になっても慌てず、計画的に対応して再検査を受けましょう。
自分で車検を通す5つのステップ
自分で車検を通す場合は、以下の5つの手順を踏みましょう。
- ・インターネットで車検を予約する
・必要書類を準備する
・事前点検を行うは検査場に依頼するのも良い
・書類作成や手数料などの事務手続きをする
・車検場で検査を受ける
ユーザー車検を初めて行う方でも、スムーズに手続きを進められるよう、具体的な手順を分けて解説していきます。
①インターネットで車検を予約する
まずは、国土交通省のウェブサイトから車検の予約を行いましょう。
予約の際には車検証を用意して、以下の情報を入力します。
- ・車両番号
・車台番号
・使用の本拠の位置
・所有者の氏名または名称
・検査希望日時
・検査希望場所(運輸支局)
ぎりぎりに予約すると、希望する日時がすでに埋まっている可能性があるため、余裕を持って予約するようにしましょう。
②必要書類を準備する
ユーザー車検に必要な書類は、次のとおりです。
- ・自動車検査証(車検証)
・自動車損害賠償責任保険証明書
・自動車検査票
・継続検査申請書
・手数料納付書
・自動車重量税納付書
・点検整備記録簿
・納税証明書
なお、納税証明書は電子化された影響で、原則不要となりました。
ただし、電子化が導入されていない地域や、納税してすぐに車検を受ける場合は納税証明書が必要です。
事前に準備が必要な書類を確認しておき、スムーズに当日を迎えましょう。
車検に必要なものについては、以下の記事も参考にしてください。
③事前点検を行う
車検に合格するためには、事前に車の状態をしっかり点検することが重要です。
点検項目は多岐にわたるため、整備工場に依頼すれば効率的に対応できますが、費用を抑えたい場合は自分で点検する方法もあります。
もし点検に不安がある場合は、運輸支局にある「予備検査場」を利用するのも、ひとつの方法です。
予備検査場では、検査員が車検に通るかどうかを事前にチェックしてくれるため安心です。
④書類作成や手数料などの事務手続きをする
車検当日は、まず窓口で以下の手続きを行いましょう。
1.自動車検査票、継続検査申請書などの必要書類を記入する
2.窓口で検査手数料と自動車重量税を支払う
不明点は担当の方に聞き、漏れがないように記入しましょう。
⑤車検場で検査を受ける
事務手続きが完了したら、いよいよ車検場の検査ラインに入る段階です。
検査ラインでは検査員の指示に従って車を操作し、以下の検査を受けます。
- ・外観検査
・排気ガス検査
・ブレーキ検査
・スピードメーター検査
・ヘッドライト検査
・下回り検査
検査に合格したら、検査員から合格印をもらえます。
詳しい検査内容や検査基準は、国土交通省のサイトを確認してください。
まとめ
本記事ではユーザー車検の概要やメリット・デメリット、必要な準備や具体的な手順などを解説しました。
ユーザー車検は、ディーラーや整備工場に依頼するよりも費用を抑えられるため、コストを削減したい方には有効な方法です。
さらに、愛車の状態を自分で点検することで、車両の知識を深められる点も大きな魅力です。
しかし、事前準備や車の知識が求められるだけでなく整備技術も必要なため、安易に挑戦するのはリスクを伴います。
ユーザー車検を選択するかどうかは、自分のスキルと時間を考慮することが大切です。
もしもユーザー車検に挑戦する場合は、本記事で紹介した準備や手順を参考にしつつ、しっかりと計画を立てて進めることが重要です。
事前の準備が整っていれば、費用を抑えつつスムーズに車検を通すことができるでしょう。