車検の手続きは名義人以外でも行えるのはご存知でしょうか?
手続き自体は可能ですが、名義人本人が進める場合と異なる点も多いため注意が必要です。
本記事では、名義人以外が車検手続きを行う方法について解説していきます。
名義変更の手続きが煩雑になる、名義人が亡くなった場合も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
車検で名義人以外が手続きする方法
それでは車検で名義人以外が手続きする方法を解説していきます。
車検の手続きは原則的に名義人がすべきものです。
しかしながら、名義人以外でも車検の手続きが可能となる方法があります。
代理人としてなら手続きが可能
名義人以外が車検の手続きをする方法として、代理人として行うやり方があります。
代理人としてなら、他人名義の車であっても自身の手続きによって車検の依頼が可能です。
必要な書類も増加するため負担は大きくなりますが、手続き上での問題はありません。
必要書類を用意
代理人として車検の手続きを進めるには、以下の書類が必要になります。
通常の車検に加えて必要になるのは、名義人から委任されたことを示す「委任状」です。
委任状
委任状とは、手続きを代理人に進めてもらう際に、その手続きが間違いなく名義人の意志に基づくものだと証明する書面です。
委任状の記載内容としては、委任者(名義人)と受任者(代理人)双方の氏名と住所、押印、車のナンバーが必要です。
委任状の形式に関する明確なルールはないため、フォーマット自体はインターネットから入手できます。
国土交通省のWebサイトからダウンロードしたり、業者が準備してくれたものを使用したりしても構いません。
車検証
車検証とは自動車検査証の略で、前回の車検で合格したことを証明する書類です。
車検の通常手続きでも必要となるもので、名義人(車の所有者)・使用者・車体番号・車検の有効期限などが明記されています。
車を運転する際は必ず車内に携帯する必要があり、紛失した場合は車検を受けられません。
自動車納税証明書
自動車税や軽自動車税を納めていないと車検は受けられないため、自動車納税証明書も用意する必要があります。
自動車税や軽自動車税の正式名称は自動車税(種別割)と軽自動車税(種別割)で、毎年4月1日時点で車検証に記載された名義人(所有者)に対して課税されるものです。
2015年よりオンラインで納税情報が確認可能になったため、2023年1月以降から軽自動車も含めて自動車納税証明書の提示は原則不要となっています。
ただし納税情報が反映されるまでに一定時間を要するため、納税した直後に車検を受ける場合は、名義人に頼んで自動車納税証明書を送ってもらわなければなりません。
自賠責保険証
自賠責保険の加入時に発行されるのが自賠責保険証です。
車検では、自賠責保険の加入を証明するために必要となります。
車検証と同様に運転時の携帯義務があり、不携帯が発覚した場合には罰則もあるため車検場へいく前に確認しましょう。
何らかの理由で紛失した場合は保険会社に連絡すれば再発行が可能です。
代理人の印鑑と身分証明書も必要
代理人として車検手続きをする場合、これまで解説してきた書類に加えて「代理人の印鑑」と「身分証明書」が必要です。
代理人の印鑑は、名義人に代わり車検を受ける当日の事務手続きで必要になります。
代理人の身分証明書は、委任状に明記されている受任者が、代理人本人であるかの確認に使われる書類です。
特別な書類を用意する必要はなく、一般的には運転免許証で対応できます。
名義人以外が車を使用し続ける場合のデメリット
これまで解説してきたとおり、名義人以外が代理人として車検の手続きを進めることは可能です。
しかしながら、名義変更を怠ってそのまま車を使用し続けた場合、いくつかのデメリットが発生します。
自動車税の通知は名義人に届けられる
自動車納税証明書の項でも解説しましたが、自動車税は毎年4月1日時点で車検証に記載された名義人(所有者)に対して課税されるものです。
そのため、自動車税の納付書は名義人の住所へ送付されます。
名義人が自分以外だった場合、自分の意志ですぐに納税できない点がデメリットです。
もし納税から車検までの期間が短くなってしまった場合、自動車納税証明書の送付までお願いする必要があります。
交通違反に関する通知も届かない
交通違反に関する通知も名義人の住所へ届きます。
名義人が自分以外だった場合、他者に迷惑をかけてしまいますし、自分が名義人だった場合は、車の使用者が起こした違反通知をすべて受け取らなければなりません。
どちらの立場であってもデメリットしかないため、名義人以外が車を使用し続ける状況はできるだけ早く解消すべきでしょう。
任意保険の補償も受けられないおそれがある
名義人以外が車を使用し続ける状況でリスクが大きいと思われるのは、任意保険の補償も受けられないおそれがある点です。
名義人が以前の所有者のままだと、保険会社によっては保険の新規加入を断られるケースがあります。
万が一事故を起こした場合、任意保険に加入できていなければ補償も受けられません。
仮に名義人の保険が使えたとしても、運転者限定特約や他車運転特約の付帯状況によって、補償を受けられない恐れがあることを理解しておきましょう。
車検手続きのタイミングでも名義変更は可能
名義人以外でも車検の手続きは可能ですが、手続きを行うタイミングで名義変更することも可能です。
ここからは、車検手続きのタイミングで名義変更する方法を解説していきます。
陸運局(運輸支局)で並行して手続きを進めれば問題ない
陸運局は国土交通省に属する行政機関のひとつで、正式名称は地方運輸局です。
陸運局は車に関する手続きをする機関ですが、車検を受けられる場所でもあります。
したがって陸運局に車を持ち込み、並行して手続きを進めれば、車検手続きのタイミングで名義変更が可能です。
なお陸運局で車検を受けるには、国土交通省のWebページから予約しておく必要があります。
名義変更の手続きは、自宅を管轄する運輸支局や自動車検査登録事務所で行うため、それも踏まえて車検の予約を済ませましょう。
事前に用意すべき書類
名義変更を行うために用意すべき書類を解説します。
まずは事前に準備しておく書類です。
車検証
名義変更の手続きにも車検証が必要となります。名義変更の手続きは車検の有効期間内でなければならないため注意しましょう。
譲渡証明書
旧所有者から新所有者へ、車の譲渡を証明する書類です。
記載すべき項目は以下を参考にしてください。
車両情報 | メーカー名・形式・車体番号・エンジン型式 |
旧所有者の情報 | 氏名・住所・押印(実印) |
新所有者の情報 | 譲渡された日・氏名・住所 |
旧所有者の押印は必要ですが、新所有者の押印は必要ない点に注意が必要です。
譲渡証明書のフォーマットは、国土交通省のページからダウンロードできます。
委任状
新所有者が名義変更する場合、旧所有者からの委任状が必要です。
記載内容は先に解説した委任状と同じで構いません。
業者に手続きを代行してもらう場合は、自身が委任者になります。
旧所有者の印鑑証明
旧所有者の印鑑証明も用意します。
押印された印鑑が、本人のものであることを証明する書類です。
発行後3か月以内のものに限ります。
新しい所有者の印鑑証明
新しい所有者の印鑑証明も必要です。
こちらも旧所有者の印鑑証明と同様に、発行後3ヶ月以内のものと定められています。
新しい所有者の実印
運輸局で入手する書類に、新しい所有者の実印が必要になるため忘れずに用意しておきましょう。
新しい所有者の車庫証明
新しい所有者の自動車保管場所証明書、いわゆる車庫証明も用意しなければなりません。
車の置き場所を管轄する警察署で申請書をもらい、必要な情報を記載して提出すれば車庫証明を発行してもらえます。
名義変更に必要な車庫証明は、発行後1か月以内のものに限ります。
当日に用意する書類
ここから下は、手続き当日に運輸局内で入手する書類です。
必要事項を記入した後に、事前に用意した書類とあわせて窓口に提出します。
申請書
名義変更の際は、OCR申請書(第1号様式)と呼ばれる申請書を提出します。
申請書には実印による押印が必要です。
申請書は運輸局内で配布されていますが、国土交通省のページから事前にダウンロードすることもできます。
ただし申請書は電子機器で読み取るため、国土交通省のページに記載されている注意事項をよく読んで印刷する必要があります。
手数料納付書
手続きに必要な手数料を収めるための書類です。
手数料納付書に必要事項を記入し、収入印紙を貼り付けて提出します。
書類は運輸局の窓口で入手できます。
自動車税(種別割・環境性能割)申告書
名義変更の際は、各都道府県の税事務所に対しても申告が必要になるため、自動車税申告書を提出します。
自動車税申告書には、車検証に記載してある情報や新旧使用者の情報を記入します。
陸運局に併設してある税事務所で、書類の入手と提出が可能です。
必要な手数料
名義変更に必要な手数料は、ナンバープレートの有無や車両の状況によって変動します。
費用の内訳は以下のとおりです。
移転登録手数料 | 500円 |
ナンバープレート代
(変更する場合のみ) |
2000円前後 |
自動車税(種別割・環境性能割) | 新車時の価格や経過年数で変動 |
ナンバープレート代は地域差があり、希望ナンバーや図柄ナンバーの場合は高額になります。
代行業者に依頼する場合は追加の費用が必要
車検と名義変更の手続きを、代行業者に依頼することも可能です。
代行業者に依頼する場合は、必要な手数料以外に追加の費用が発生します。
追加費用は依頼する業者によって変わりますが、数万円程度は支払う必要があります。
自身の手間を省くことはできますが、しっかりと検討すべきでしょう。
軽自動車は名義変更の届け先が違うので注意
名義変更の手続き場所は、普通自動車と軽自動車で違います。
普通自動車は陸運局ですが、軽自動車の届け先は軽自動車検査協会です。
移転登録手数料は無料ですが、ナンバープレート代や環境性能割は支払わなければなりません。
車検が切れた状態での名義変更
車検が切れた状態での名義変更は、普通自動車と軽自動車で可否が異なります。
それぞれのケースに分けて解説していきましょう。
普通自動車の場合は名義変更不可
普通自動車の場合は、車検が切れた状態だと名義変更ができません。
名義変更の手続きを進めたい場合は、先に車検を通す必要があります。
車検切れの近い車を名義変更する際は、手続きの途中で車検が切れてしまった場合の対応策も打ち合わせしておきましょう。
軽自動車の場合は名義変更が可能
次に軽自動車の場合ですが、こちらは普通自動車と異なり、車検が切れた状態でも名義変更が可能です。
先に名義変更をすれば、代理人として車検手続きを進める必要もなくなります。
車検の際に用意すべき書類も通常どおりとなるため、名義変更から車検に進む手順がおすすめです。
名義人が亡くなった場合の名義変更手続き
車の名義人が亡くなった場合も、名義人以外が手続きを進める形になります。
名義人が亡くなった場合の名義変更手続きは、代表相続人による相続か、もしくは共同相続かで必要な書類が変わってくるため、しっかりとした理解が必要です。
それぞれのケースに分けて解説していきます。
新しい所有者が一人の場合に必要な書類
代表相続人による相続、つまり新しい所有者が一人で手続きをする場合から解説します。
必要になる書類は以下のとおりです。
車検証
名義変更の手続きには車検証が必要なため、事前に確認して用意しておきましょう。
戸籍謄本もしくは戸籍の全部事項証明書
戸籍謄本と戸籍の全部事項証明書は同じものです。
紙のものが戸籍謄本で、戸籍謄本を電算化したものが戸籍全部事項証明書と呼ばれます。
名義人が亡くなっていることの証明、および相続人全員を確認するために必要な書類です。
遺産分割協議書
遺産分割協議書とは、遺産分割の協議を経て相続人全員が合意した内容をまとめた書類です。
代表相続人も含めた全員が署名し、実印で押印する必要があり、未成年者を含む場合は、代わりとなる特別代理人が押印します。。
新しい所有者の印鑑証明
実印を使用しているため、代表相続人の印鑑証明も必要です。
発行後3か月以内のものに限ります。
新しい所有者の実印
書類と合わせて、代表相続人の実印も持っていく必要があります。
車庫証明
名義人変更の手続きを進める上で、車庫証明も必要です。
亡くなった名義人と代表相続人が同居家族の場合、車庫証明が不要となるケースもあります。
委任状
代表相続人に代わって、代理人が手続きする場合に必要な書類です。
代表相続人の実印による押印が必要です。
共同相続の場合に必要な書類
所有者が決まっていても、相続人全員で名義変更する場合は以下の書類が必要です。
- ・車検証
・戸籍謄本もしくは戸籍の全部事項証明書
・相続人全員の印鑑証明書
・相続人全員の実印
・譲渡証明書(新しい所有者以外)
・車庫証明
書類を持って手続き場所へ向かう
すべての書類を用意できたら、名義変更の手続き場所へ向かいます。
普通自動車の場合は陸運局、軽自動車の場合は軽自動車検査協会です。
当日に用意できる書類を一緒に提出して完了
それぞれの手続き場所に到着したら、当日に窓口で受け取れる書類へ記入します。
普通自動車の場合に用意する書類は以下のとおりです。
- ・OCR申請書(第1号様式)
・手数料納付書
・自動車税(種別割・環境性能割)申告書
事前に用意した書類と、当日に用意できる書類を一緒に提出したら、すべての手続きは完了です。
普通自動車と軽自動車で書類の数が異なるので注意
普通自動車と軽自動車では、提出する書類の数が異なる点に注意が必要です。
軽自動車の場合は、相続に関連する書類が不要となります。
必要な書類は以下のとおりです。
- ・車検証
・戸籍謄本または戸籍の全部事項証明書
・新しい所有者の住民票写し、または印鑑証明書(発行後3か月以内)
軽自動車は移転登録手数料が無料のため、当日に用意すべき書類も少なくなります。
- ・軽自動車検査証記入申請書(軽第1号様式または軽専用第1号様式)
・軽自動車税(種別割・環境性能割)申告書
まとめ
代理人としてならば名義人以外でも車検の手続きは可能です。
しかしながら名義人として手続きを進める場合と比較すると、提出すべき書類の数は増えてしまいます。
車検と同じタイミングで名義変更することも可能ですが、手続き途中に車検が切れてしまうとトラブルの基となるため注意が必要です。
自身の負担やトラブルのリスクが増えることを考えると、名義人以外が車検手続きを進めるような状況はなるべく避けておきましょう。