車が好きな方にとって「好みの車にカスタム」することは、大きな魅力です。
しかし、カスタムの仕様によっては車検に通らない違法改造として見なされます。
また、違法改造ではなくても構造変更申請をせずに検査を受けた場合、改造車と判断され不適合となることもあるのです。
本記事では、車をカスタムしている、もしくはこれからカスタムする予定の方に向けて、車検構造変更の申請方法をお伝えします。
申請をしなければならない条件、費用、注意点などを詳しく解説していますので、ぜひ本記事を参考にして申請の準備を進めましょう。
構造変更とは?
本章では、構造変更とはどのようなものなのか、未申請で車検を受けるとどうなるのか、対象となる基準やベストな申請タイミング、手続き完了までの期間を解説します。
構造変更とは?
構造変更とは、安全運転ができる範囲で車両の構造を変更することです。
違法改造は構造変更の定義に背くため、申請しても許可されません。
構造変更の範囲となるのは、乗車定員数の変更やエアロパーツの取り付けによる寸法の変更、ローダウン・リフトアップなどです。
構造変更の申請では、これらの改造を行った車に違法性がないかチェックします。
検査に認定されると違法改造車ではないことを検査官に伝えられ、車検に通すことができます。
未申請で車検を受けると違法改造になる
もし、違反にならない基準に沿った改造であっても、構造変更の申請をしなければ違法改造になります。
安全な車の構造であると言い切れるのは、純正の状態のみだからです。
少しでも改造するだけでも荷重のバランスは変わりますし、ましてや車の知識がない方が改造すれば、故障や破損リスクが高まります。
このような背景もあり、改造した箇所に問題がないことをチェックしてもらう構造変更申請は必要です。
違法改造として検挙された場合、違法改造した箇所の原状復帰を15日以内に行い、陸運支局で改善確認検査を受けなくてはなりません。
ほかにもいくつか手続きが必要となりますので手間がかかってしまいます。
スムーズに事を進めるためにも、申請を済ませてから車検を実施しましょう。
申請対象となる基準
申請対象となる基準は以下のとおりです。
- ・リフトアップした車両
・オーバーフェンダーをつけた車両
・座席シートを改造した車両
・キャンピングカー・キッチンかーなど形状変更した車両
上記のように、形状や乗車定員、排気量、重量、外寸が変わる構造変更は、申請対象となります。
ベストな申請タイミング
申請を出すベストなタイミングは、車検を行う時期です。
理由は、車検証が変わることが挙げられます。
構造変更した車両であることが認証された場合、車検内容が変わることから新たな車検証が作られます。
申請時に残っている車検期間もそれに伴って無効となるため、車検時期と同じタイミングがおすすめです。
有効期間が残りすぎると費用面で損してしまいます。
車検の満了日を確認し、それに近い日程で申請を行いましょう。
なお、改造内容が軽く記載変更で済む場合、車検の有効期間は抹消されません。
記載変更は、構造変更とは異なる扱いとなります。
手続き完了までかかる期間
構造変更の手続きが完了するまでの期間は個人差が大きいといえます。
なぜなら、書類と実車に分けて別日に検査されるためです。
なお、書類検査が完了するまでには、7日間もしくは10日間かかります。
実車検査は検査当日に完了しますが、予約が必要です。
よって、全ての工程が完了するまでの期間は予約日に左右されるため、個人差が大きいという結論に至ります。
構造変更に必要な書類・費用・流れ
本章では、構造変更の申請に欠かせない書類やかかる費用、手続きの流れについて解説します。
申請方法を詳しく知りたい方は必見です。
必要書類
構造変更申請のために準備しなければならない書類は以下のとおりです。
- ・自動車検査証 (車検証)
・自動車検査票
・点検整備記録簿
・自動車損害賠償責任保険 (共済)証明書
・所有者もしくは使用者の委任状
・申請書
・手数料納付書
・自動車重量税納付書
・納税証明書
・事業用自動車等連絡書
他にも準備しなければならないものもあるため、他の準備物も含めて具体的に解説します。
取得方法も解説していますので、書類の情報を知りたい方は、しっかりと目を通しておきましょう。
自動車検査証 (車検証)
通称「車検証」と呼ばれているこの書類は、A4サイズの印紙で交付されています。
ダッシュボードなどの収納に大きめのケースが入っており、その中に車検証が収納されています。
ただし、軽自動車の車検証は例外です。
2023年1月4日から電子化され、従来の車検証とは異なります。
電子化車検証は、A6サイズに縮小され、ICタグが貼付されているのが特徴です。
なお、車検証に記載されている内容は「車検証閲覧アプリ」で確認可能です。
自動車検査票
この書類は、検査項目の結果を記録するための書類です。
問題なければ合格の印が入り、すべての項目において問題ないとなれば、車検証をもらえます。
検査票は運輸支局窓口で渡されます。
検査を受ける日に見本に沿って記入を進めてください。
点検整備記録簿
この書類は、車の点検と整備の記録が残されている書類で「メンテナンスノート」とも呼ばれています。
整備工場やディーラーで車検を依頼した場合は、車検証と一緒に保管されているのが一般的です。
なお、ユーザー車検の場合はご自身で用意し、記入する必要があります。
運輸支局の窓口やインターネットでダウンロードできます。
自動車損害賠償責任保険 (共済)証明書
この書類は通称「自賠責保険」とよばれるものです。
加入必須の保険であるため、失くしていなければ必ず持っています。
なお、多くは車検証入れに車検証と一緒に保管されています。
A5サイズの証紙で、パウチ付きの袋に入っているのが一般的です。
なお、紛失している場合は再発行が可能です。
再発行申請は、各加入している保険会社で行いますので、保険会社に連絡し案内してもらいましょう。
所有者もしくは使用者の委任状
委任状は必ずしも必要なものではありません。
車の所有者の代理人が申請を行う際に必要な書類です。
委任状は、必ず消えないボールペンで記入する必要があります。
記入内容は以下の大きく3つです。
- ・委任者と代理人の名前・住所
・自動車登録番号または車台番号
・申請内容
自動車登録番号 (ナンバー)や車台番号は、車検証に記載されています。
間違えないよう、確認しながら記入しましょう。
申請書
申請書は、ダウンロードしたあと印刷し入手できます。
国土交通省のポータルサイトからダウンロードでき、OCR申請書第2号様式を使用するようにと書かれています。
なお、OCRの用紙は、電子機器で内容を読み取るためのものとなっています。
よって、印刷方法や扱いに注意が必要です。
<印刷方法>
- ・印刷用紙の種類:コピー用紙・普通紙・PPC用紙など市販紙から選択
・印刷サイズ:A4
・白色度:80%以上
・基準マークの大きさ:縦・横3mm
<扱い>
しわや汚れ、濡れ、変色、めくれや強い折り目がつかないよう、ファイルに入れるなどして保管しましょう。
また、印刷時に異物混入がないように気をつけ、のりづけもしてはいけません。
手数料納付書
この書類は、検査の手数料を支払うための納付書です。
黒ボールペンを使って以下の5箇所を記入します。
- ・自動車登録番号または車台番号
・所有者または使用者の氏名または名称
・出頭者の氏名
・変更登録にチェック
・検査手数料の金額
なお、印紙の貼り付けは支払い完了後、確認印の押印とともに事務員が行います。
自動車重量税納付書
この書類は、重量税を支払うために使用する納付書です。
ご自身で構造等変更検査を行う場合、検査当日に運輸支局窓口でもらえます。
この納付書はご自身で記入する欄があります。
記入箇所は以下です。
- ・自動車登録番号または車台番号
・使用者の氏名または名称・住所
・日付
・自家用または事業用にチェック
・納付税額の金額
・自動車検査証の有効期間
・自動車の区分等
納税証明書
自動車税の支払いを証明する書類です。
「自動車税(種別割)納税証明書」または「軽自動車税(種別割)納税証明書」とよばれています。
納税証明書は、納税期間近くになると交付される納付書に付いている縦長の紙です。
支払いが完了すると、受付したスタッフから納税を証明した印鑑を押印した証明書を渡してもらえます。
事業用自動車等連絡書
この書類は、法人または個人で所有する車を事業のために使用する車両がある場合に準備するものです。
例えば、フリーランスでタクシーを経営している方などが該当します。
緑のナンバープレートに該当する車両の申請をする場合は用意しましょう。
その他
放置違反金を滞納して公安委員会から督促された方は、放置違反金を納付した証明書が必要です。
また、リコールがあった場合、改修した証明書が必要です。
かかる費用
申請にかかる費用は、1車両につき2,300円です。
2,300円に含まれているのは、検査手数料の1,900円と、技術情報管理手数料の400円となっています。
加えて、関係団体での手続きで別途費用がかかることがありますので、確認しておきましょう。
手続きの流れ
手続きの流れは以下となります。
- ①書類を準備する
②書類審査を受ける
③実車検査を予約する
④予約日に実車検査を受ける
⑤問題なければ車検証に「改」と記入される
書類審査は非常に厳しいとされています。
もし不安な方は、業者に代行依頼するといいでしょう。
業者に依頼する方法もある
業者に依頼したい場合は、カーショップに相談できます。
基本的に多くの店舗で受け入れられますが、場合によっては断られることもあるようです。
来店する前に、一度電話で問い合わせると良いでしょう。
なお、オークションや中古部品を使用して改造した場合は、ご自身で申請をしなければなりません。
構造変更する注意点
車両の構造を変える改造を行う場合は、以下3つに注意してください。
- ・公認車検が必要となる
・税金・保険料が高くなる可能性がある
・オプション変更であっても車検時は改造車扱いになる
では、一つずつ解説します。
公認車検を受けなくてはならない
申請の手続きは、書類を出すだけではなく「公認車検」も実施されます。
公認車検とは、違法改造を行った車両を合法の車両であるとして登録申請するために必要な検査です。
もし、基準から外れた違法改造をしている場合、未申請で車検を受けると不適合となります。
先ほど伝えた座席シートや外寸といった見た目の改造ではなく、走行にかかわるパーツを改造した場合に対象となります。
具体的には以下のパーツです。
- ・エンジン
・駆動系
・走行装置
・制御装置
・操縦装置
・緩衝装置
<エンジン>
検査対象となるのは、既存のエンジンとは異なる型式のエンジンに載せ替えた場合や、排気量が異なるエンジンに載せ替えた場合に該当します。
<駆動系>
検査対象となるのは、ドライブシャフトやプロペラシャフト、駆動軸数の変更、トランスミッションの変更に伴った改造です。
<走行装置>
検査対象となるのは、フロントアクスル・リアアスクルを変更しなければならない改造、軸数の変更を伴う改造です。
<制御装置>
検査対象となるのは、ブレーキ構造を変える改造です。
<操縦装置>
操縦装置とは、ハンドルやリンク装置が該当します。
検査対象となるのは、ハンドル位置・操舵軸数・リンク装置を変更する改造です。
<緩衝装置>
検査対象となるのは、サスペンションの種類を変える改造、懸架方式を変更する改造です。
許可されている指定部品
保安基準に沿った範囲で改造をすると申請する必要がない部品を「指定部品」と呼びます。
申請なしで許可されている部品は以下があります。
- ・外装パーツ:エア・スポイラー、デフレクター、ルーフラック、フォグライト、エアロパーツ類
・内装パーツ:オーディオ、空気清浄機、カーナビ、無線機など
・操作装置:変速レバー、ステアリングホイール、シフトノブなど
・緩衝装置:ストラット、コイル・スプリングなど
・走行装置:タイヤ・ホイール
・排気系パーツ:マフラーカッター、エギゾースト・パイプなど
・そのほかのパーツ:ミラー、火器類、身体障碍者用操作装置など
なお、これらは社外品を用いても許可されます。
税金・保険料が高くなる可能性がある
改造やカスタムにより車両重量が増加すると、税金が高くなるケースがあるため、注意しましょう。
また、排気量にかかわるパーツを改造し排気量が変わると、任意保険料が高くなる可能性があります。
改造する際は、このようなリスクを承知の上で行ってください。
もし、税金や保険料を抑えて固定費を安く済ませたい方は、改造せず純正のまま乗ることをおすすめします。
オプション変更も車検時は改造車扱いになる
車のオプション変更を行った際も、車検時は改造車扱いになり、車検に通らない可能性があります。
例えば、内装のパーツを別のものに変えたり、装飾を変えたりするカスタムです。
ただし、オプションであっても指定部品に該当する場合は違法改造とみなされることはありません。
オプション変更をする際は、改めて指定部品に該当するものとしないものを把握しておきましょう。
まとめ
改造を行った車両を車検に通すには、構造変更申請をしなければなりません。
書類審査と実車検査があり、もし問題なく通れば認定してもらえるため違法改造車の扱いとはなりません。
必要書類が多くあるため、不安な方や手間を省きたい方は業者に代行依頼をするといいでしょう。