車を購入する際に、廃車預託金を支払っているのをご存知でしょうか。
廃車預託金とは、リサイクル預託金とも呼ばれ、車を購入すると廃車時にかかる費用を先に支払っておく必要があります。
この記事では、廃車預託金の概要や目的、返金の有無など、廃車時に直面する疑問について解説していきます。
ぜひ最後までお読みください。
廃車預託金とリサイクル預託金の違いとは?
支払い済みの廃車費用は、廃車預託金またはリサイクル預託金と呼ばれています。
では、廃車預託金とリサイクル預託金にどういった違いがあるのでしょうか。
詳しくみていきましょう。
廃車預託金とリサイクル預託金の違い
結論から言うと両者は同じ意味で使われており、廃車預託金よりもリサイクル預託金と呼ばれることの方が一般的です。
リサイクル預託金とは廃車時にリサイクルすることを前提に、あらかじめ支払っておく廃車費用のことを言います。
リサイクル預託金と自動車リサイクル法の関係
リサイクル預託金は2005年に施行された自動車リサイクル法によって制度化されました。
自動車リサイクル法によって、車の製造業者や関連業者は廃車となる車に含まれている有用金属や部品が適切に再利用されるよう義務付けられています。
一方で、車の所有者に対しては、廃車となる車の廃棄処理による環境への負荷を考慮して、廃棄費用を負担することが義務付けられました。
この車の所有者が負担する廃棄費用のことをリサイクル預託金と呼びます。
リサイクル預託金は車種によって変動する
リサイクル預託金は車種によって金額が変わります。
理由は、車を解体した後にはシュレッダーダストやエアバッグ類、フロン類などの廃棄物が発生し、車種によって廃棄物の分量や取り外しにくさが異なるためです。
リサイクル預託金の支払い対象ではない車もある
自動車リサイクル法によって、基本的にはすべての車がリサイクル預託金を支払う必要がありますが、なかには支払い対象外の車が存在します。
具体的には以下の車が、リサイクル預託金の支払い対象とされています。
・被けん引車
・二輪車(原動機付自転車、側車付のものを含む)
・大型特殊自動車、
・小型特殊自動車
上記以外でも、農業機械、林業機械、スノーモービル、公道を走らないレース用自動車、自衛隊の装甲車、ホイール式高所作業車、無人搬送車など政省令で定めるものは対象外となります。
リサイクル預託金の項目
リサイクル預託金は目的に応じて、以下の5つの項目に分けられています。
ここからは、リサイクル預託金の料金構成を解説していきます。
シュレッダーダスト料金
シュレッダーダスト料金は、自動車を解体しリサイクルする過程で生じる金属や破片を適切に処理するための料金です。
金属やゴム、ガラス、プラスチックなど自動車部品に含まれる廃棄物を、環境に負荷をかけずに処理するために必要な費用です。
新車購入時に支払うのが一般的で、車種や排気量、重量によって金額が異なります。
エアバッグ類料金
エアバッグ類料金はエアバッグやプリテンショナーなど、自動車に搭載されている特定の安全装置のリサイクルに必要な費用です。
エアバッグインフレータやエアバッグモジュールなど、エアバッグ類の部品は危険物に該当するケースがあり、専用の処理施設でのリサイクル費用が発生します。
フロン類料金
フロン類料金は、自動車のエアコンなどに使用されているフロンガスを適切に処理するために必要な費用です。
フロン類とはカーエアコンに利用される冷媒のことで、オゾン層破壊や地球温暖化を進行させるなど環境に悪影響があるため、大気放出を防ぐ必要があります。
環境省の規定により、自動車メーカー・輸入業者はフロン類を回収した後、高熱で分解して無害化しなければならず、フロン類料金はそのための費用です。
情報管理料金
情報管理料金は、自動車がリサイクルされる過程の情報管理にかかる費用で、料金は全車種一律で130円です。
リサイクル預託金の運用や対応窓口の運営資金、各種コンピュータの維持管理費、人件費などに使われています。
資金管理料金
資金管理料金は、リサイクル預託金の管理業務全般に利用される費用です。
これはリサイクル預託金を管理・運用するための費用として計上され、消費税の課税対象になるので注意が必要になります。
シュレッダー料金、エアバッグ類料金、フロン類料金、情報管理料金は廃車時のリサイクル費用を前払いしているため、実際に廃車するまでは非課税です。
リサイクル預託金の証明書(リサイクル券)の内訳
リサイクル預託金の証明書、通称リサイクル券はA券からD券までの4つの書面で構成されています。
リサイクル券の内訳とその役割をご覧ください。
【A券】預託証明書(リサイクル券)
【A券】預託証明書(リサイクル券)は、リサイクル預託金を支払ったことを証明する書面です。
リサイクル預託金の料金構成として
- ・シュレッダーダスト料金
・エアバッグ類料金
・フロン類料金
・情報管理料金
以上が記載されています。
【B券】使用済自動車引取証明書
【B券】使用済自動車引取証明書は、廃車になる車を引き渡す際、引取業者に対して渡します。
【C券】資金管理料金受領証
【C券】資金管理料金受領証は、自動車リサイクル促進センターにリサイクル預託金を管理・運用するための資金管理料金を支払ったことを証明する書面です。
【D券】料金通知書兼発行者控
【D券】料金通知書兼発行者控は、リサイクル預託金の総額が記載され、リサイクル券を発行した事業者が控えとして保管します。
リサイクル預託金の証明書(リサイクル券)を紛失した時の対処法
リサイクル券は、リサイクル預託金の支払いを証明する大切な書類ですが、万が一紛失した場合はどのように対処すれば良いのでしょうか?
ここでは、リサイクル券を紛失した場合の対処法をお伝えします。
リサイクル券は再発行できない
結論から言うとリサイクル券は紛失すると再発行ができません。
しかし、リサイクル預託金が支払い済みかどうかは、システムに履歴として残っているため紛失したとしても心配はいりません。
リサイクル預託金が支払い済みかどうか確認する方法
リサイクル預託金が支払い済みかどうかは、自動車リサイクルシステムというサイトにアクセスすることで確認することができます。
一般のユーザー様でもアクセス可能で、登録ナンバーや車台番号など必要情報を入力すると預託状況や料金が検索できます。
車を売却する際リサイクル券がない場合は、こちらのサイトからリサイクル料金の預託状況を印刷して、リサイクル券に代わる証明書として代用可能です。
リサイクル預託金を支払うタイミング
リサイクル預託金は廃車時のリサイクル費用を前払いするシステムなので、車を購入するタイミングで諸経費として支払います。
支払いは購入時の一度だけで、自動車税や重量税のように定期的に支払う必要はありません。
リサイクル預託金は実際に廃車にするまでは使用しないので、廃車にならない限りは次のオーナー様に引き継がれていき、新しく車を購入した所有者が負担する仕組みです。
リサイクル預託金は返金される?
車の購入時に支払ったリサイクル預託金は返金されるのでしょうか?
返金の有無は廃車か売却か、車を手放すときの状況によって異なります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
車を廃車にする場合は返金されない
車を廃車にする場合はリサイクル預託金は返金されません。
廃車費用を前払いしている制度なので、車を廃車したときの所有者が最終的に負担することになります。
車を売却する場合は返金がある
車を廃車せずに売却したり下取りに出したりする場合、リサイクル預託金は返金されます。
リサイクル預託金を負担するのは廃車時の所有者になるので、廃車以外の手段で車を手放した時点で返金の権利が生まれるのです。
車の売却や下取りの際は、買取価格や下取り価格にリサイクル預託金が含まれているかを確認しましょう。
買取業者によってはリサイクル預託金込みの価格になっていることがあり、返金の有無によって1〜2万円損をしてしまうこともあります。
リサイクル預託金には消費税がかかる?
リサイクル預託金は車を購入する際、支払いが義務付けられていますが、消費税はかかるのでしょうか?
それは購入・売却・廃車、いずれかの状況で課税・非課税が変わってきます。
一つずつ解説していきます。
車を購入する際は非課税
新車を購入する際はリサイクル預託金に消費税は課税されません。
リサイクル預託金を支払うと、自動車リサイクル促進センターに管理・運用は委託されるものの、実際にサービスを利用したわけではないので非課税になります。
中古車購入の場合はリサイクル預託金が「金銭債権の譲渡」という扱いになり、非課税取引として消費税は課税されません。
これは車の購入者が売却者にリサイクル預託金を支払ったというかたちになるためです。
車を売却する際も非課税
車の売却時においてもリサイクル預託金に消費税は課税されません。
上記で説明したように、購入者が売却者にリサイクル預託金を支払い、売却者から購入者に金銭債権の譲渡が行われるため非課税になります。
車を廃車する際は課税対象になる
車を廃車にする際、リサイクル預託金は消費税の課税対象になります。
廃車時には車を解体してリサイクルするといった、自動車廃棄のためのさまざまなサービスを受けることになり、税制上の区分が「課税仕入」に分類されるためです。
適用される消費税率はリサイクル預託金を支払ったタイミングではなく、廃車にしてリサイクルを行うタイミングになる点は注意が必要です。
リサイクル預託金の会計処理では注意が必要
リサイクル預託金は一般的な資産とは扱いが異なるため、会計処理では注意が必要です。
購入・売却・廃車、それぞれの会計処理を見ていきましょう。
車を購入した場合の仕訳
車を購入した場合の仕訳から解説していきます。
仮に新車購入価格2,200,000円、リサイクル預託金11,000円だった場合の仕分けをしてみます。
資金管理料金は290円、税率10%で計算します。
借方科目 | |
車両運搬具 | 2,200,000円 |
リサイクル預託金(投資その他資産) | 12,000円 |
支払手数料 | 264円 |
仮払消費税 | 26円 |
合計:2,211,290円 |
貸方科目 | 金額 |
普通預金 | 2,211,290円 |
資金管理料金は消費税の課税対象となり、リサイクル預託金の管理・運用費用として購入者が支払わなければなりません。
新車購入時は290円、中古車購入などの使用済み自動車引取時は410円です。
リサイクル預託金は投資その他資産、資金管理料金は支払い手数料として計上しています。
車を売却した場合の仕訳
続いて、車を売却した場合の仕訳を解説していきます。
帳簿価格1,600,000円、購入時のリサイクル預託金11,000円の車を1,800,000円で売却したとします。
借方科目 | 金額 |
普通預金 | 1,800,000円 |
貸方科目 | |
車両運搬具 | 1,600,000円 |
リサイクル預託金(投資その他資産) | 11,000円 |
固定資産売却益 | 189,000円 |
合計:1,800,000円 |
車を売却した際のリサイクル預託金は、売却者から購入者へ譲渡することになり、金銭債権の譲渡に該当するため非課税売上となります。
法人が車を売却して損益が出た場合の計上は、それぞれ「固定資産売却益」「固定資産売却損」となるのです。
ただし、個人事業主が売却して損益が発生した場合、売却益や売却損は譲渡所得に該当するため、「事業主貸」「事業主借」として計上する必要があります。
車を廃車した場合の仕訳
最後に車を廃車にした場合を見ていきましょう。
帳簿価格1,600,000円、購入時のリサイクル預託金11,000円の車を1,800,000円で売却したとします。
借方科目 | |
車両廃棄損 | 1,600,000円 |
支払手数料 | 10,000円 |
仮払消費税 | 1,000円 |
合計:1,611,000円 |
貸方科目 | 金額 |
車両運搬具 | 1,600,000円 |
リサイクル預託金 | 11,000円 |
リサイクル預託金11,000円に対して課税されているのが分かります。
車を廃車にした時点で自動車の廃棄サービスを受けたことになり、リサイクル預託金は全額課税仕入れに該当します。
まとめ
リサイクル預託金の制度と仕組みについて解説してきました。
リサイクル預託金の料金構成や支払いのタイミング、返金の有無などは、購入・売却・廃車といった車の状況次第で異なります。
消費税の課税対象か否かも状況によって変わりますので、正しい仕訳ができるよう本記事を参考にしてみてください。