車を廃車にする際の会計処理は個人か法人かで異なります。
この記事では廃車の仕訳や勘定科目について解説をしていきます。
廃車の会計処理をする予定がある方はぜひ参考にしてみてください。
廃車の仕訳と勘定科目について
ここでは廃車の仕訳が法人と個人でどのように異なるのか、また自動車税や重量税の還付を受けた場合の処理の方法について解説していきます。
法人の場合
まず法人が廃車を行った際の仕訳ですが、この場合事業で使用していた自動車を廃車にすることになりますので、帳簿価額分の取崩処理を行います。
この時の勘定科目ですが、借方が固定資産除却損、貸方が車両運搬具となります。
また消費税の処理ですが自動車を廃車にすること自体は消費税の対象外ですので、不課税扱いになります。
ただし廃車を行う時に発生した費用については課税取引扱いとなりますので注意が必要です。
廃車費用の勘定科目については固定資産除却損に含まれるものとして考えますので、個別に設定する必要はありません。
その代わり廃車費用にかかる消費税は個別の仕訳が必要ですので、借方を仮払消費税等、貸方を現預金として記載するようにしてください。
個人の場合
次に個人が廃車を行った際の仕訳ですが、個人所有の自動車の場合、家事消費の割合について考えなければなりません。
例として使用割合が事業とプライベートで50%ずつの自動車を廃車した場合、借方は固定資産除却損が帳簿価額の50%、そして事業主貸が同様に50%となります。
このような処理を行う理由ですが、自動車が必要経費として認められるのは事業使用分のみのため、家事消費分の勘定科目を経費に含まれない事業主貸にする必要があるのです。
また貸方の項目については車両運搬具のみでよく、金額も帳簿価額をそのまま記載すれば問題ありません。
損害賠償金等を受け取った場合
交通事故で損害賠償金等を受け取った際の廃車の仕訳について解説していきます。
この場合、法人と個人で仕訳方法が異なり、まず法人は借方を固定資産除却損、貸方を車両運搬具とした通常の廃車の仕訳を行ったあと、損害賠償金を受け取った時点で借方を現預金、貸方を損害賠償金(雑収入)とした仕訳を行います。
この際、記載する金額は廃車になった自動車の帳簿価額に損害賠償金を加えたものになります。
また法人が交通事故による損害賠償金を受け取った場合、全額が益金として扱われ、消費税も不課税となることを覚えておいてください。
次に個人ですが、最初に通常の廃車の仕訳を行うところまでは法人と同じですが、損害賠償金を受け取った時点で借方を現預金、貸方を固定資産除却損と事業主借とした仕訳を行います。
記載する金額は自動車の帳簿価額に損害賠償金を加えたもので、損害賠償金を事業主借として個別の勘定科目を設定する点が法人と異なっています。
また家事消費分については、プライベートで使用した割合だけ事業主借の金額を増やすことで対応しましょう。
自動車税の還付を受けた場合の仕訳
自動車税の還付を受けた場合の仕訳について解説していきます。
自動車税は毎年4月1日時点で自動車を保有している方に課される税金ですが、廃車にした日から残りの期間分が月割りで還付されるという仕組みになっています。
自動車税の還付金は収入(益金)として計上する必要があるため、勘定科目は借方が現預金、貸方が雑収入となります。
また消費税についてですが、自動車税の還付金は不課税として処理する必要がありますので注意してください。
重量税の還付を受けた場合の仕訳
重量税の還付を受けた場合の仕訳について解説していきます。
重量税は車検を受ける際に納付する税金で、廃車にした日から車検の残存期間に応じた額の還付金を受け取ることができます。
重量税の還付金も自動車税と同様に収入(益金)として計上する必要があり、勘定科目についても借方を現預金、貸方を雑収入とすれば問題ありません。
また消費税も自動車税と同じで不課税として処理してください。
リサイクル料金の仕訳について
ここではリサイクル料金や資金管理料だけでなく、車を売却しない時の仕訳方法についても解説していきますので、是非読んでみてください。
リサイクル料金の仕組み
まずリサイクル料金の仕組みについて解説していきます。
リサイクル料金とは自動車を廃棄する際にかかる様々な費用のことで、新車を購入した時か車検の時に徴収されます。
具体的な内訳ですが、自動車を解体した時に出るシュレッダーダストと呼ばれるゴミの処理費用や、エアバッグやカーエアコンといった車載装置の処理費用、中古自動車の取引に必要な情報管理料金等が含まれます。
徴収されたリサイクル料金は資金管理法人である財団法人自動車リサイクル促進センターに預託され、自動車を売却した際に返金されます。
よってリサイクル料金を最終的に負担するのは自動車の最後の所有者ということになります。
資金管理料について
リサイクル料金の仕訳で特に注意しなければならない資金管理料について解説していきます。
リサイクル料金のうち、処理費用や情報管理料金は廃車時に使用されるため、預託金や長期前払費用、リサイクル預託金といった勘定科目で処理することができます。
しかし資金管理料だけはリサイクル料金を支払った時点で財団法人自動車リサイクル促進センターに渡りますので、支払手数料の勘定科目で処理しなければなりません。
また支払手数料は必要経費であると判断され、課税の対象になることも覚えておいてください。
仕訳方法を分ける条件
自動車を売却する際の仕訳方法を分ける条件について解説していきます。
もっとも大きな条件として法人と個人のどちらの立場で仕訳をするかが挙げられます。
法人が自動車を売却して利益を得た場合、勘定科目は固定資産売却益を使用し、逆に損失を出してしまった場合は固定資産売却損を使用します。
一方で個人が自動車を売却して利益を得た場合、勘定科目は事業主借を使用し、逆に損失を出してしまった場合は事業主貸を使用します。
また特殊な例として自動車販売業を営んでいる場合は固定資産ではなく、商品の仕入として処理をしなければならないので注意しましょう。
車を売却しない時の仕訳方法
自動車を売却せず、廃車にした時のリサイクル料金の仕訳方法について解説していきます。
まず自動車を購入した際に支払うリサイクル料金は有価証券として扱い、借方に記載します。
この時、資金管理料だけは支払手数料として分けて記載しておくことを忘れないでください。
そして自動車を廃車にする際に、今度はリサイクル料金を支払手数料として扱い、貸方に記載します。
購入時と廃車時で借方と貸方が入れ替わるためややこしく思えますが、あらかじめ預けておいたリサイクル料金を廃車時になって使用する、と考えることで理解しやすくなります。
車を売却する時の仕訳について
ここでは車を売却する時の仕訳を減価償却が終わっているかどうか、また一括償却資産に計上している場合などに分けて解説していきますので、ぜひ読んでみてください。
減価償却が終わっている場合
減価償却が終わっている自動車を売却した際の仕訳ですが、勘定科目は借方が現金、貸方が車両運搬具と預託金となります。
車両運搬具の金額ですが、減価償却が終わっていますので1円と記載しましょう。
また自動車の帳簿価額よりも高値で売却した場合、得られた利益は事業主借として貸方に記載します。
逆に自動車の帳簿価額よりも安値で売却した場合、発生した損失は事業主貸として貸方に記載します。
注意点として個人事業主が自動車のような減価償却資産を売却して出た損益は事業所得ではなく、譲渡所得として扱われることを覚えておいてください。
減価償却が終わっていない場合
減価償却が終わっていない自動車を売却した際の仕訳ですが、勘定科目については借方が現金、貸方が車両運搬具と預託金と変わりませんが、車両運搬具の金額が異なります。
車両運搬具の金額ですが、購入価格を耐用年数で割り、乗車年数をかけた金額を記載するようにしてください。
一括償却資産に計上している場合
自動車を一括償却資産に計上している場合の仕訳ですが、勘定科目は借方が現金、貸方が雑収入と預託金となります。
これは一括償却資産の売却は帳簿価額による損益感情が全くないためで、計上していない場合と比べて仕訳処理がシンプルなものになります。
車のローンが残っている時の仕訳について
ここでは車のローンが残っている時の仕訳を借入方法ごとに解説していきますので、ぜひ読んでみてください。
銀行借入の場合
ローンが銀行借入の場合、完済しない場合は車両売却の仕訳のみでかまいません。
ただしローンを一括精算する場合は個別に仕訳をする必要がありますので、仕訳の手間を減らしたいという場合はローンを継続して支払う方がよいでしょう。
ローンを一括精算する際の仕訳ですが、勘定科目は借方が借入金と利子割引料、貸方が事業主借となります。
また借入の際に担保契約等を結んでいた場合は完済前の売却ができなくなりますので、どうしても完済前に売却したいというのであれば銀行の担当者と相談する必要があります。
クレジットカードの場合
非常に珍しいパターンですがクレジットカードを使ったローンの場合、完済前の売却は基本的に問題になりません。
そのため仕訳も銀行借入と同様に車両売却の仕訳のみでかまいません。
またローンを一括精算した場合の仕訳も銀行借入と同様ですので、特に注意が必要な点はないでしょう。
信販会社の場合
自動車販売店が取り扱う信販会社の自動車ローンの場合、完済前の売却は基本的に不可能となっています。
そのためもし売却したい場合はローンを一括精算する必要がありますし、一括精算の仕訳も必要になります。
また一括精算が必要になるのは自動車が所有権留保されている場合に限りますので、信販会社に相談して所有権留保を解除してもらうことができれば売却することも可能です。
ただし所有権留保を解除してもらえるケースは極めて少なく、よほど特別な事情がない限り解除してもらえることはない、と考えておいた方がよいでしょう。
廃車による節税
ここでは廃車を行うことで車に関するどのような税金を節税できるのかを解説していきますので、ぜひ読んでみてください。
自動車税
廃車を行うことで節税できる税金その1は、自動車税です。
自動車税は毎年4月1日の時点で自動車を所有している方に課される税金であり、財産税としての性質を持っています。
自動車税の税額ですが、所有している自動車の種類や排気量、用途などで決まります。
税額の傾向としてはエコ性能が低い年式の古い自動車や排気量の大きい自動車ほど高くなり、エコ性能が高い年式の新しい自動車や排気量の小さい自動車ほど安くなります。
廃車を行うと手続きが完了した翌月から3月までの自動車税が月割で還付されるため、乗らない自動車を所有している場合は一日も早く廃車を行うことをおすすめします。
重量税
廃車を行うことで節税できる税金その2は、重量税です。
重量税も自動車を保有している方に課される税金ですが、こちらは車検を受ける際に納付する必要があります。
車検の有効期間が1カ月以上残っている状態で廃車を行うと、重量税の還付を受けることができます。
また廃車手続きには永久抹消登録、一時抹消登録、解体届出の3種類がありますが、重量税の還付が受けられるのは永久抹消登録を行った時のみである点に注意が必要です。
自賠責保険料
廃車を行うことで節税できる税金その3は、自賠責保険料です。
自賠責保険料は正確には税金ではありませんが、自動車を運転するのであれば必ず支払わなければなりません。
廃車を行った際に自賠責保険の契約期間が長く残っていれば、解約手続きを行うことで月割で保険料が返戻される可能性があります。
また自動車税や重量税と異なり、返戻の条件は保険会社によって異なりますので、廃車を行う前にあらかじめ保険会社に問い合わせておくことをおすすめします。
まとめ
廃車費用の勘定科目は法人か個人だけでなく、交通事故による損害賠償金を受け取ったかどうか等さまざまな要因によって変わってきます。
特に複雑なのがリサイクル料金に関する仕訳ですが、最初は資金管理料だけは支払手数料の勘定科目で処理することと、購入時と廃車時で借方と貸方が入れ替わることの2点を覚えるようにしましょう。
廃車費用の正しい会計処理を学ぶことは事業を営む上で確実に役に立ちますので、減価償却が終わっていない場合やローンを払い終えていない場合など、さまざまなケースを想定した上で知識を深めていってみてください。