廃車になった車は、全てスクラップや解体されるわけではありません。
実は、これらの車は再利用されたり、リサイクルのための貴重な資源となるのです。
そこでこの記事では、廃車後の車両や廃車からリサイクルされるまでの具体的な流れについて詳しく解説します。
廃車後の車は99%再利用される!
あまり知られていませんが、廃車になった車は、99%が再利用されています。
特に注目されるのは、車が製造される段階から「解体を前提とした設計」が取り入れられていることです。
たとえば、トヨタの車では、2003年に発売された「ラウム」からこの考えが取り入れられており、解体が容易でリサイクル効率を高める設計が施されています。
これにより、廃車となった車からは銅や希少金属などを効率良く回収が可能です。
また、残りの1%についても無駄にすることなく利用されています。
たとえば、ミックスゴムは燃料として、またその燃焼時に出る灰は道路の路盤材として再利用されることが多いです。
このように、廃車はそのほとんどが資源として有効に活用されており、持続可能な社会づくりに貢献しています。
廃車にする2つの方法
廃車にするためには、主に以下の2つの方法があります。
廃車にする2つの方法
- ・時抹消登録
・永久抹消登録
それぞれの手続き方法や必要な書類について詳しく解説します。
一時抹消登録
一時抹消登録は、車の登録を一時的に取り消す手続きです。
この方法は、転勤や長期旅行などで一時的に車を使用しない場合に適しています。
一時抹消を行うことで、その期間の自動車税や自賠責保険の支払いを免除でき、再登録を行えば車は再び公道で走ることが可能です。
一時抹消登録の手続き方法
一時抹消登録を行うには、ナンバープレートを運輸支局に返却し、必要な書類を提出するだけです。
手続きは比較的簡単で、350円の手数料が必要になります。
この手続きにより、車は正式に一時的に登録抹消さすることが可能です。
一時抹消登録で必要な書類
一時抹消登録の手続きを行うためには、以下の書類が必要です。
一時抹消登録で必要な書類
- ・一時抹消登録申請書(運輸局でもらうかダウンロードができます)
・車検証
・印鑑証明書(所有者のもので、発行日から3ヶ月以内のもの)
・所有者の印鑑
・ナンバープレート
これらを揃え、運輸支局に提出することで手続きが可能です。
永久抹消登録
永久抹消登録は、車を再び使用する予定がない場合に行う手続きです。
この手続きを行うと、車は二度と公道を走ることができなくなります。
解体車や走行不能の車がこの方法で登録抹消されます。
また、永久抹消登録では、既に支払っている自動車税や自賠責保険料は、月割りで還付されます。
そのため、永久抹消登録後は、必ず還付手続きを行いましょう。
永久抹消登録の手続き方法
永久抹消登録を行うには、まず車を解体しなければなりません。
解体業者を選び、車を引き渡した際に「解体通知書」と「ナンバープレート」を受け取ります。
そして必要書類を揃えたら、ナンバープレートを運輸支局の返納窓口に返却します。
最後に、税金の還付を受ける場合は、税申告窓口に「自動車税・自動車取得税申告書」を提出してください。
これにより、前払いで支払った自動車税が後日還付されます。
永久抹消登録で必要な書類
永久抹消登録の手続きを行うためには、以下の書類が必要です。
永久抹消登録で必要な書類
- ・印鑑証明書
・所有者の印鑑
・車検証の原本
・ナンバープレート
・移動報告番号と解体報告記録が行われた日付けの書類
・手数料納付書
・永久抹消登録申請書
・自動車税・自動車取得税申告書
必ず全て揃えてから運輸局に提出しましょう。
廃車後の車両はどのように再利用される?
全損事故や永久抹消登録された廃車は、どのように再利用されるのでしょうか。
ここでは、廃車後の車両がどのように再利用されているのか詳しく解説します。
廃車後の車両は主に以下のような方法で再利用されます。
- ・部品として再利用される
・金属として再利用される
・家具や展示品と再利用する
・中古車として再び市場に出回る場合も
・廃オイルも利用可能
それぞれ詳しくみていきましょう。
部品として再利用される
自動車には耐久性の高い部品がたくさんあるため、廃車になった後も十分に性能を発揮します。
特に、国産車は日本国内では使用されなくなった部品でも、海外の市場ではまだ需要があります。
これは、日本の自動車部品は高い耐久性と信頼性で知られており、国外で高く評価されているからです。
たとえば、自動車のラジエーターはエンジンの冷却に不可欠で、非常に壊れにくい部品です。
このように、一部の部品は廃車となった車から取り外され、整備された後に部品として中古車市場に流れます。
また、バンパーやホイール、ボンネットなども同様に、再利用されることが多い部品です。
金属として再利用される
自動車は、構造の大部分が金属で構成されているため、解体された後の金属はリサイクル産業において重要な資源となります。
自動車からは主に銅やアルミニウム、ステンレスなどの金属が車から回収されます。
これらの金属は解体業者によって別の業者に販売されたり、リサイクルを経て新たな製品の材料として使用されることが多いです。
このようにして、廃車の金属は新たな製品の生産に貢献しています。
家具や展示品と再利用する
廃車は家具や展示品として再利用される場合もあります。
たとえば、廃車の車体を切断し、デザイン性の高い家具や装飾品として再利用することが多いです。
特にヴィンテージ好きな方に人気があり、独特の雰囲気を持つインテリアとして評価されています。
中古車として再び市場に出回る場合も
廃車として登録された車が、再び中古車市場に流通することもあります。
特に状態が良好である場合や希少な車種の場合は、中古車市場で価値が高いと評価されやすいです。
これらの車は、専門の業者によって買い取られ、必要な修理やメンテナンスを経て販売されます。
また、日本車は国外でも非常に人気があり、海外市場へ輸出されることが多いです。
特にアジアやアフリカ、中東の国々では、日本の中古車が高品質とされており、耐久性があると評価されています。
これらの国々では新車を購入するコストが高いため、コストパフォーマンスが良い中古車が好まれています。
廃オイルも利用可能
廃車時に抜き取られる車の廃オイルは、廃棄されるのではなく再利用される貴重な資源です。
エンジンオイルやミッションオイル、デフオイルなどはリサイクル業者によって、さまざまな用途で再利用できます。
たとえば、ビニールハウスでの暖房燃料や銭湯のボイラー燃料として利用されることがあります。
これらのオイルは、適切な処理を施して綺麗な状態に戻された後、再利用されるのです。
廃オイルの再利用は、新たな石油資源の採掘を減らすことにもつながり、持続可能な環境保全活動の一環として評価されています。
廃車からリサイクルされるまでの具体的な流れ
廃車からリサイクルされるまでの流れは以下のとおりです。
廃車からリサイクルされるまでの流れ
- ①車両とリサイクル券を業者に引き渡す
②フロン類回収業者に引き渡し熱処理される
③解体業者に引き渡され解体作業が行われる
④破砕業者によってプレス作業が行われる
⑤リサイクルされる
それぞれ詳しくみていきましょう。
車両とリサイクル券を業者に引き渡す
廃車は、車両とリサイクル券を業者に引き渡すところから始まります。
このリサイクル券は、車を購入する際にリサイクル料金として支払っており、車検証と合わせて所有しています。
車の所有者はリサイクル券を使って、自治体に登録されている引取業者に車を引き渡しましょう。
フロン類回収業者に引き渡し熱処理される
引き取り業者が車を受け取った後、フロン類回収業者がカーエアコンなどに使用されているフロンガスを回収します。
フロンは温室効果ガスのため、安全に処理し環境への悪影響を防ぐために、専門の処理施設で熱処理が行われる仕組みです。
解体業者に引き渡され解体作業が行われる
フロン類が回収された後、車は解体業者に引き渡され、車を基準に沿って適切に解体し、再利用可能な部品や材料を分別します。
エアバッグやバッテリー、ドア、エアコンなど、再利用可能な部品は中古市場で販売されることも多いです。
また、鉄などの金属は再利用できる素材として回収されます。
破砕業者によってプレス作業が行われる
再利用できる部品が取り除かれた車体は、破砕業者によってさらに処理されます。
車体はプレスやシュレッダーで細かく砕かれ、金属やその他の資源や材料が細かく分類されます。
リサイクルされる
プレスや破砕のプロセスを経て得られた資源や材料は、最終的に自動車メーカーや輸入業者によって回収され、新たな商品や燃料などにリサイクルされます。
このように、廃車はさまざまな工程を経て、リサイクルされるのです。
廃車を行う際によくあるトラブル
廃車を行う際にトラブルが発生する可能性もあります。
ここでは、廃車を行う際によくあるトラブルをいくつかみていきましょう。
廃車を行う際によくあるトラブル
- ・車検と自賠責保険の両方が切れている
・自動車税を納付していない
・ローンを完済していない
・悪質な業者のリスクがある
このようなトラブルに遭わないよう、知っておく方が良いでしょう。
車検と自賠責保険の両方が切れている
自動車の放置期間が長引くと、車検と自賠責保険が切れてしまうことがあります。
車検が切れている車でも廃車手続きは可能ですが、公道を走行できないため、業者の引取りが必要です。
また、車を一時的に動かす場合は、臨時運行許可と仮ナンバーが必要になり、その際には自賠責保険に再加入することが義務付けられています。
自動車税を納付していない
自動車税が未納の状態で廃車手続きを行う場合、未納の税金を支払わなければなりません。
廃車手続きを進めるには、廃車する月が属する年度までの自動車税を納付する必要があります。
自動車税は運輸支局内の税事務所、もしくは廃車後に送付されてくる納付書で納付しましょう。
ローンを完済していない
自動車のローンが残っている場合、所有権が信販会社やディーラー、販売店にあるため、廃車手続きができません。
ローン完済前に廃車を進めるには、ローンを完成させるか、金融機関と交渉してローン契約の条件を変更する必要があります。
そのため、廃車を行う前にローンを組んでいる信販会社やディーラー、販売店に相談してみましょう。
悪質な業者のリスクがある
廃車手続きを行う際には、信頼できる業者を選ぶことが重要です。
業者によっては、手数料を不当に高く請求したり、後々追加で費用を請求したりする悪質な業者もいます。
たとえば、見積もりでは低い料金を提示しておきながら、後からさまざまな理由をつけて追加料金を請求するケースです。
また、車両の引き取り後に適切なリサイクルや解体処理を行わず、不法に廃棄するケースもあります。
このようなトラブルを避けるためには、業者の評判や口コミをチェックし、実際の利用者の声を参考にすると良いでしょう。
また、見積もりを書面でもらえるかどうかも重要なポイントです。
見積りの内容が曖昧な業者は、悪徳業者の可能性があるためできるだけ避けましょう。
まとめ
この記事では、廃車後の車両や廃車からリサイクルされるまでの具体的な流れ、廃車手続きについて解説しました。
廃車になった車両は、廃棄物として扱われるだけではなく、中古車市場で再販されたり、エンジンやボンネットなどの部品が再利用されたりします。
さらに、金属資源としてリサイクルされることもあるのです。
また、廃車を行う際は、適切な業者選びが重要です。
悪質な業者を避けるためにも、この記事で解説したトラブルリスクも知っておきましょう。