車の購入時に最も悩むのが、購入金額の支払い方法です。
金額によっては現金一括支払いを選択する方もいるかもしれませんが、多くの方は「自動車ローン」を組んで、少しずつ返済をするのではないでしょうか。
そんな「自動車ローン」の一種にあたる「残価設定型クレジット(以下「残クレ」)」は、月々の支払い金額を抑えられる新しいローンとして注目されています。
しかし、いざ「残クレ」を利用して車を手に入れても、急な転勤や引越しなどでやむを得ず車を手放さなければいけないことも出てくるかもしれません。
そこで本記事では、「残クレ中」に車を売却する方法や、把握しておきたい注意点などを詳しく解説していきます。
残クレとは?
「残クレ」は、これまでのローンと仕組みが異なるため、内容を把握しておく必要があります。
まずは「残クレ」の仕組みについて見ていきましょう。
◯残クレとは?
「残クレ」とは、車の購入時に下取り金額(残価)をあらかじめ決めておき、その下取り金額を引いた金額をローンで返済する支払方法です。
たとえば300万円の車を購入する場合、残価設定を100万円に設定すると、残りの200万円をローンで返済することになります。
一般的な「自動車ローン」を組む場合は、見積もり金額の総額に対してフルローンを組まなければいけません。
そのため「自動車ローン」と「残クレ」の違いは、残価が設定できるかどうかだと言えるでしょう。
また、「残クレ」は販売店によって「残価設定型クレジットや」「残価設定型ローン」と呼ばれることもありますが、すべて同じものを指しています。
◯残クレを利用するメリット
「残クレ」を利用する1番のメリットは、月々の支払い金額を大幅に抑えられることでしょう。
「残クレ」であれば、あらかじめ下取り金額が残価として差し引かれているため、新車のように価格が高い車であっても、「フルローン」より月々の支払い金額を大幅に抑えることができます。
また、「フルローン」だと頭金が必要である場合がほとんどですが、「残クレ」であれば頭金の必要がありません。
このように「残クレ」を利用すると金額面での負担が大きく減るため、新車価格が高い車を選んだり、ワンランク高いグレードを選んだりすることもできます。
さらに「残クレ」だと、購入時に先に下取り金額を設定しておくため、将来的な下取り金額が保証されているメリットもあります。
一般的に車を下取りに出す場合、そのときの需要や状態によって下取り金額が大きく下がる可能性があります。
いざ車を手放すときに、下取り金額がほとんどつかないなんてケースも少なくありません。
「残クレ」であれば需要や状態に左右されないため、車を手放すときもお得だと言えるでしょう。
◯残クレを利用するデメリット
金銭的な負担が抑えられる「残クレ」ですが、もちろんデメリットも存在します。
「残クレ」で購入時に下取り金額を決めておくということは、手放すときにその車の価値を保っていなければいけません。
そのため、次のような制限が設定されていることがあります。
- ・走行距離
- ・車体の状態
車の価値は走行距離によって大きく変わるため、走行距離制限が設定されています。
多くの場合、「残クレ」契約時に月間走行距離を設定し、それを超過すると精算時に追加料金を支払わなければいけません。
また、事故を起こして車体に傷が付くと車の価値が大きく下がるため、その分追加料金を支払う必要もあります。
「残クレ」利用時にもし廃車にしてしまったら、その時点で一括支払いを求められることもあるので注意が必要です。
残クレを利用して購入した車を売却する方法とは?
自動車ローンの一種である「残クレ」を利用して購入した車は売却することができるのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
◯残クレ途中の車を買取に出すことはできる?
結論から言えば「残クレ」途中の車を買取に出すことは可能です。
ただし「残クレ」中は車の所有者がディーラーもしくはローン会社となっているため、まずは残債と車の残価金額を一括支払いし「残クレ」自体を終了させる必要があります。
◯残クレ途中の車を売却する方法とは?
基本的に「残クレ」を終了するには一括支払いをする必要がありますが、中には「まとまったお金が用意できない」という方もいるかもしれません。
そんなときは、「残クレ」中の車を買取業者に売却してしまうのも1つの方法です。
買取業者に車を売却してしまえば、まとまったお金が手に入るため、その分を一括査定の支払いに充てることができます。
ただし、買取金額がローン残債を上回る場合と下回る場合でその後の手続きが変わるため、注意が必要です。
車の買取価格がローン残債を上回る場合
買取金額がローン残債を上回っていれば、残債分を差し引いた金額が手元に入ってきます。
たとえば、ローン残債が100万円残っている車の買取査定が180万円だとすると、100万円がローン会社に一括支払いされ、残りの80万円が手元に入ります。
車の買取価格がローン残債を下回る場合
買取金額がローン残債を下回るのであれば、不足分を一括で支払わなければいけません。
たとえば、ローン残債が100万円残っている車の買取査定が80万円だとすると、不足分の20万円を一括で補い、「残クレ」を終了させる必要があります。
◯買取業者へ売却するメリット
「残クレ」中の車を買取業者へ売却するメリットは、次の2つがあげられます。
- ・「残クレ」終了後の下取りより高く売れる可能性がある
- ・ローンを終了するときの手続きは買取業者が行ってくれる
買取業者での買取額はディーラーの下取り額よりも高く査定される可能性があるため、少しでも高く売りたいと考えている方におすすめです。
また、買取金額を「残クレ」の一括支払いまで代行してくれる業者に買取を依頼すれば、自分で面倒な手続きをする必要もありません。
◯買取業者へ売却するデメリット
反対に買取業者へ売却するデメリットもあります。
- ・ローン中の車を買取れない業者もある
- ・他店で買い替える場合は手間がかかる
規模の小さな買取業者だと、そもそもローン中の車が買取できないというところも存在します。
利用する買取業者がローンの車を査定してくれるかの確認は必ず行いましょう。
また、別の販売店で車を買い替える場合、「残クレ」の終了手続きをしながら、購入先の販売店で購入手続きを行わなければいけないため、かなりの手間がかかります。
ただし、買取業者で販売されている車を購入すれば、手続きは1つの業者で完結するため、大きな負担となることは少ないと言えるでしょう。
◯残クレ返済中に売却する判断基準とは?
「残クレ」返済中に車を売却するかどうかの判断基準は、以下の3つにまとめられます。
- 1.売却金額とローン残債金額どちらの方が多いか
- 2.売却金額がローン残債金額を下回る場合に補える資金があるのか
- 3.売却した場合と返済を続けた場合の支払どちらが多いのか
1.売却金額とローン残債金額どちらの方が多いか
まずは売却金額とローン残債金額のどちらの方が多いかを調べましょう。
とにかくローンを終了させたいと考えているのであれば、車の価値が下がる前になるべく早く買取ってもらい、その金額をローンの返済に充てる必要があります。
2.売却金額がローン残債金額を下回る場合に補える資金があるのか
売却金額がローン残債を下回るのであれば、不足分を補える資金が用意できるのかどうかを確認しましょう。
もし不足分を補えるだけの資金が手元にない場合、その分の資金が貯まるまで「残クレ」の期間を延ばすのも1つの方法です。
3.売却した場合と返済を続けた場合の支払どちらが多いのか
早急に車を手放す必要がないのであれば、「月々の返済額」に「残債返済期間」を掛けた「残債金額」と「買取業者の査定額」を比べ、売却した場合と「残クレ」の返済を続けた場合でどちらがお得なのかを判断しましょう。
◯残クレ途中で車を買取に出す注意点
「残クレ」途中で車を買取に出すときは、次の注意点も頭に入れておく必要があります。
- 1.少しでも高く売却する
- 2.買取業者のローン返済サービスも検討してみる
1.少しでも高く売却する(一括査定サイト利用)
車の買取金額は「残クレ」の支払いに充てるため、少しでも高く売却できる買取業者を選ばなければいけません。
買取額は業者によって大きく異なるため、1社だけに頼ると大きく損をしてしまうこともあります。
とは言え、多くの業者をはしごするのは手間も時間もかかるため、あまりおすすめできません。
そのため、ネットで一括査定サイトを利用し、1度になるべく多くの買取業者から見積もりをとるようにしましょう。
2.買取業者のローン返済サービスも検討してみる
買取業者によっては残債や残価の支払いを立て替えてくれるところも存在するため、もし買取金額がローンの残債を下回るのであれば、利用するのも良いかもしれません。
その場合は、買取業者が立て替えた金額から買取金額を差し引いた後の不足金額を支払うことになります。
残クレ契約後の車を売却する以外の方法とは?
「残クレ」契約が終了した車は買取に出すのも1つの方法ですが、それ以外にも次の方法があります。
- 1.ディーラーへ車を返却する
- 2.同じディーラーで新車に買い替える
- 3.そのまま車に乗り続ける
- 4.買取業者へ売却する
1.ディーラーへ車を返却する
「残クレ」の期間が終了したら、ディーラーへ車を返却します。
その場合、市場価値が残価を上回っているのであれば、その分払い戻されることもあります。
反対に市場価値を下回っている場合は契約時に残価の設定が保証されているため、不足分を支払う必要はありません。
ただし、設定走行距離を超過していたり、車の状態が悪かったりすれば、その分追加費用を支払う必要があります。
2.同じディーラーで新車に買い替える
同じディーラーであれば、契約時に決めた残価で下取ってもらい、新しい車に買い替えることができます。
同じメーカーの車に乗らなければいけないという制約はありますが、支払い期間を短く設定すれば、定期的に新車に乗り換えられるメリットがあります。
3.そのまま車に乗り続ける
残価金額まで完済すれば、継続して乗り続けることができるため、残価を一括で支払うという方法もあります。
一括で完済できなければ、再度ローンを組むこともできるため、手元にまとまったお金がない方でも、選択肢として考えることができます。
4.買取業者へ売却する
「残クレ」自体は終了しているため、ディーラーが所有権の解除をしていれば、別の買取業者へ売却することもできます。
ディーラーでの買い替えではないため、好きなメーカーや中古車の選択もできるようになります。
ただし、ディーラーによっては別の買取業者への売却ができない契約とされていることもあるため、契約前に必ず確認するようにしましょう。
残クレローンを利用する際の注意点とは?
「残クレ」を利用して車を購入すると、月々の経済的な負担を減らすことができますが、利用する前に把握しておかなければいけないこともあります。
◯途中解約すると違約金が発生する場合がある
ディーラーによっては途中で「残クレ」を解約すると違約金が発生することもあります。
違約金が発生する場合は、必ず契約書に詳細が書かれているため、契約書をしっかり読んでおきましょう。
◯残価価値を保たなければいけない
残価価値は、必ずしもその価格を保証してくれるものではありません。
万が一天災や事故により車の価値が著しく低下してしまった場合、残された価値と設定残価金額の差額分は購入者が支払わなければいけないこともあります。
◯残価金額を支払い終わってもすぐに所有者は自分にならない
残価金額をすべて支払い終わっても、所有者であるディーラーやローン会社が所有権の解約手続きを取らなければ、自分のものになりません。
また、ローン期間が終わっても残価が残っているため、所有者はディーラーやローン会社のままとなります。
まとめ
月々の支払い金額を抑えることができる「残クレ」は、上手く活用すればお得に新車に乗れる支払い方法だと言えるでしょう。
しかし、ローンの返済期間が終わっても残価が残っているため、所有権が自分のものではないことを頭に入れておく必要があります。
また、やむを得ず「残クレ」中に車を売却するときは、残債と残価の両方を一括で支払わなければいけません。
ただし、本記事内でご紹介したように、買取業者によってはローンを立て替えてくれるところも存在します。
「残クレ」利用時は、買取金額も含め、自分に合った買取業者を選ぶようにしましょう。