実は「全損」というレベルで破損した車でも高価買取してもらえる可能性があります。
この記事では、事故で全損になった車を高価買取してもらう方法についてご紹介していきます。
そもそも全損の定義とは?
言葉だけをとらえると、”全てを損失した”ように聞こえますが、実際の意味はそうではありません。
全損の意味は「全面的に損失となること」であり、自動車保険では以下の3つに定義しています。
・物理的な全損
どこの車屋さんでも修理が不可能なほど、車自体が事故で大破している状態
(例:車の骨組み全体が大きく曲がってしまい、修理も交換もできない)
・経済的な全損
車の価値よりも、修理費が上回っているため乗り換えたほうが良いと判断される状態
(例:時価80万円の車のエンジンが破損し、修理するのに工賃込み150万円かかる)
・盗難
上記以外に全損扱いとなるケースに、盗難があります。
この場合も車そのものがなくなってしまうため全損扱いとなります。
・冠水車
災害などで水没してしまい、エンジンや車内に水が入ってしまった車両も、破損内容によっては全損扱いとなります。
高級輸入車では、台風で車の内部の精密なコンピューターに水が入り故障、交換できないものなので全損となった、といった事例があります。
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全損扱いでも買取してもらえる3つの理由
事故で全損となった車を引き取った業者は、その後どうやって利益を得ているのでしょうか?
その仕組みの中に答えがあります。
では、なぜ全損の車でも買取りしてもらえるのかご説明します。
①金属資源として需要があるため
どんなに破損していても古くて需要がない車でも、車は金属のかたまりです。
金属は資源であり、リサイクルされて生まれ変わることができます。
自動車には希少なレアメタルが何種類も使われているため、お金に変えることができるのです。
市場価値のない古い車が全損となった場合、この資源としての時価が買取相場に直結します。
②部品に需要があるため
全損とはいえ、破損が激しいのは前後左右の一部分の場合がほとんどです。
例えば、新車のクラウンが大型トラックに追突されて修理不可能となったとしても、フロントにあるエンジンが無事だったり内装のシートやカーナビは無事である可能性が高いです。
ドアやホイールを含め、そういった部分的に生きているパーツには価値があるのです。
年式の新しい車や人気車種ならなおさら部品には価値があり、多少古い車でも修理工場や板金屋、カスタムショップからのニーズがあります。
また、クラシックカーやスポーツカーの類も同様に部品のニーズが高いため、全損となった車でも無事な部分には価値が残り、高額査定になりやすい傾向があります。
③輸出需要があるため
輸出の需要は特殊で、動かない車や事故現状車輛でも関係なく価格がつく場合があります。
これはノックダウン輸出「車としてではなく、一度すべてを分解して部品として輸出する」という手法の影響で、輸出業者はこの方法で輸出することにより、関税を安く抑えることができます。
その後は発展途上国のオフロードなどで更に酷使されるため、また部品としての需要があるため特定の車種は事故現状車でも高価買取してもらえることがあるのです。
全損車の買取価格とは?
・新車状態に近い車両
年式の新しい車両であれば、買取金額が全くつかないといったことはほぼありません。
なぜなら新しい車は修理後にも国内・海外で需要があり、修理するための部品も豊富だからです。
全損のままの状態でも車種によっては数十万円の価値が残ることが珍しくないため、3年落ち以内の車両であれば廃車専門の買取店ではなく、まずは一般の中古車買取業者に相談してみてはいかがでしょうか。
また、新車の場合は車両保険を新車価格に近い水準に設定している方が多いため、数百万円の保障を受けて修理するといったパターンが多いです。
まずはご自身の自動車保険の内容を確認してみましょう。
・低年式の車両
10年落ち以上の低年式の車両が全損となった場合、修理費が時価総額を上回ることが多く、仮に修理をしたとしても低年式・過走行に加えて修復歴ありとなると、どうしても市場価値は低くなってしまいます。
しかし、低年式でも市場価値が高い車種はありますので、低年式の車両が全損となってもまずは一旦中古車買取業者に相談し、どうしても買取が難しいということであれば海外輸出に強い買取業者や廃車専門の買取業者に相談してみましょう。
・海外需要が高い車両
全損車に適した海外輸出の手法のひとつに「ノックダウン輸出」というものがあります。
通常、中古車を輸出する場合には高額な関税を徴収されるのですが、このノックダウン輸出は一度車をバラバラに解体し、パーツとして安い関税で輸出して現地で再度組み立てるという方法になります。
一度解体されますし、補修が必要な個所は現地で別のパーツと組み合わせて車にすればいいという意味で、全損となった車両はこのノックダウン輸出に最適です。
特にトヨタ車全般、左ハンドル車、SUV、ハイブリッド車はこの傾向が強いため、全損の車を売りたいときはかならず輸出に強い買取業者に相談することをおすすめします。
全損車の処分費用を請求されないためには?
中古車販売店やディーラーにとっては、全損となった車を引き取ることも仕事の一つであり、その仕事の中でしっかりと利益を生まなければなりません。
そこで、少しでも利益を大きくするために買取り金額は0円どころか、さらに手数料が発生するというパターンがよくあります。
そこであなたが損をしてしまわないように、代表的な例と対策についてご紹介します。
・引き取り手数料・レッカー代の請求とその対策
確かにお店から遠くに車がある場合、積載車やレッカーで引き取りにきてもらうのは
ガソリン代や人件費がかかります。
しかし実際には、よほど遠方でない限り引取り費用を無料にしてでも買取業者は利益を出せるのです。
費用は全て無料で全損車・事故車を買い取ります!と謳っている専門店は多いです。
引き取り手数料やレッカー代がかかると言われた場合は、専門業者と比較検討したいという気持ちを伝えましょう。
・廃車手数料がかかるといわれたときの対策
ディーラーや中古車買取店の場合、全損の車の処分はスクラップ業者に委託します。
例えば、完全に自走できないほど大破した車を移動させ処分するためにはクレーン車が必要になりますが、買取店は基本的にクレーン車を持っていませんし、高価なクレーン車を所有したりその都度レンタルしても利益を生み出すことができません。
つまり、スクラップ専門の業者に全て委託するわけですから手間はかかっていないと言えます。
上記同様、手数料がかからない専門店と比較検討しますと伝えましょう。
・名義の抹消手続きに手数料がかかると言われたときの対策
車を廃車にする際には”名義の抹消手続き”が必要となります。
これは県の陸運局に必要書類を提出し、ナンバープレートを返納して名義登録を消すという作業になり、車買取業者にとっては時間のかかる面倒な業務のひとつです。
車買取業者は大体週1回ほど陸運局に出向き、一度にまとめて複数人の名義の登録や抹消を手続きすることが多いです。
急がないので、他の方の手続きのついでで良いので手数料は無しにしてほしいと交渉してみましょう。
・各種還付金の説明がない場合の対策
全損の車を廃車にした場合、買取金額とは別に戻ってくるお金があります。
<自動車税>
4月1日から1年分をまとめて納税しているので、余った期間分のお金が月割り計算で還付されます。
- 例:2000ccの普通車 自動車税39,500円 7月で廃車手続きした場合
39,500円÷12か月=月3,291円 4~7月の4か月分が課税対象となるため、
39,500円-(3,291円×4か月)=26,336円が返ってくる計算となります。
これは特に申請の必要はなく、廃車手続き後1~2か月で還付通知書が自宅に届きますので金融機関でお金を受け取ってください。
※残念ながら軽自動車税には還付金の制度がありません。
<重量税>
全損となった車を廃車にした場合、残りの車検期間に対する月割りの重量税が還付されます。
これは車検を受けた際に前払いした税額÷12か月×経過していない月数で算出されます。
国税庁:重量税還付制度について
廃車手続きを行う際に、あなたの名義から買取業者の名義に変更→その場ですぐ名義抹消
という流れで手続きすることで、重量税の還付金をあなたではなく買取店が受け取ることができるのです。
買取に出す際は、交渉してみると買取金額が少し上がるかもしれません。
<自賠責保険料>
通常の買取では、車の車検・保険料は次のユーザーにそのまま引き継がれるため、自賠責保険料の還付金は受けられませんが、全損となった車を廃車する場合は、名義を抹消することで還付金を受けることができます。
自賠責保険料は車検時に24か月分まとめて支払っている強制保険です。
これも月割り計算で、残りの月数によって定められた金額を受け取ることができます。
重量税同様、この還付金も買取業者の利益の一部ですので、交渉の材料に使えるかもしれません。
自動車税・重量税・自賠責保険料、この3つの還付金制度を説明してくれるお店は信頼のおける優良店だと言えるでしょう。
反対に何も説明がない場合は、どのような内訳で買取金額を算出しているのか確認したほうが良いでしょう。
全損になった車を高価買取してもらう方法
では、具体的にどうすれば事故で全損になった車を高価買取してもらえるのでしょうか?
それではその具体例をご紹介いたします。
①全損状態に合わせて買取業者を選択すること
・フレームまで損傷していない場合(経済的な全損)
車のフレーム(外装ボディの内側にある骨組みの部分)に損傷がない経済的全損の場合は、自動車保険の観点から見ると全損の車でも、中古車市場の観点から見ると修理すればまだまだ使用可能な車という評価になります。
フレームまで損傷していない場合は、一般的な中古車買取業者に買取を依頼することで、全損ではない車と同じ価値基準で買い取ってくれる可能性があります。
・フレームまで大きく損傷した場合(物理的な全損・経済的な全損)
車のフレームに歪み、曲がり、ひずみなどの損傷が発生した時点で、車としての評価は「事故車」となってしまいます。
日本国内では事故車・修復歴のある車は価値が暴落してしまいますが、海外輸出相場においてはその影響が少ないです。
フレームまで損傷がある場合は、国内相場ではなく海外相場で金額を付けてくれる海外輸出に強い業者に相談することで、高価買取してもらえる確率があがります。
・修復することができない大きな損傷をした場合(物理的な全損)
車のフレーム全体の損傷、大部分の欠損、エンジン等の高額部品に損傷があり、どうしても物理的に修理ができない場合は車両としてではなく部品取りや金属資源としての相場になります。
この場合、通常の買取店やディーラーに相談すると手数料がかかる可能性が高いため、廃車・スクラップに強い専門業者に相談することをおすすめします。
②各種還付金と買取金額を混同させない
前述した自動車税・重量税・自賠責保険料、この3つの還付金はあくまで「買取金額とは別物」です。
これを知らないと、提示される買取金額がうやむやになってしまいます。
例えば、買取金額3万円(重量税還付金含む)と買取金額3万円+重量税還付金
では、受け取る金額に数千円の違いが出てきます。
車検が残っていれば還付金があるので、金額を提示された際にその内訳をよく確認し担当者と話し合うことで各種還付金を含めた高価買取に繋がります。