会社で車を購入する際に、「仕訳の方法が分からなかったり」「節税することができたらいいのに」と感じた方は多いと思います。
そこで、この記事では「仕訳方法を知りたい」「節税する方法を知りたい」といった方に向けて、以下の内容を紹介しています。
・車の売却は「法人」と「個人事業主」で扱いが変わる?
・中古車を売却する際の仕訳ポイント
・仕訳の方法は全部で8種類ある
・中古車の買取は節税になる
・中古車の買取で節税対策をするポイント
この記事を読むことで少しでも損失を少なくすることができ、仕訳方法を知ることができます。
ぜひ参考にしてください。
車の売却は「法人」と「個人事業主」で扱いが変わる?
車を売却する際は、「法人」と「個人事業主」で扱いが変わってきます。
法人
法人が車を売却する際は「課税取引」扱いとなり、その名の通り消費税が課税されます。
課税取引の対象となるのは以下4つです。
- ・国内で行う取引
- ・事業者が事業のために行う取引
- ・対価を得る取引
- ・資産の譲渡、資産の貸付、サービスの提供
車の場合は「対価を得る取引」に値します。
個人事業主
個人事業主の場合も車は資産ですが、売却したのではなく譲渡扱いとなります。
そのため、「譲渡所得」として処理することになります。車を売却した際の損益は損益通算することができますが、事業所得と別で記入しなければなりません。
また、個人事業主の場合は特別控除が50万円まで考慮されます。
中古車を売却する際の仕訳ポイント
中古車を売却する際の仕訳するポイントについて紹介していきます。主な仕訳ポイントは以下の5つです。
- ①法人事業主と個人事業主いずれか確認
- ②直接法と間接法いずれか確認
- ③税込処理と税抜処理いずれか確認
- ④減価償却と耐用年数の確認
- ⑤リサイクル預託金の仕訳を確認
上記5つのポイントについて解説していきます。
法人事業主と個人事業主いずれか確認
中古車を売却する際の仕訳ポイントとしては、法人事業主と個人事業主のどちらかであるかを確認する必要があります。
法人事業主
法人事業主が車を売却した際に発生した利益や損失は事業上の支出・収入でもあります。
そのため、利益は「固定資産売却益」、損失は「固定資産売却損」の鑑定科目に記入します。
固定資産売却益
固定資産売却益は、売却時の帳簿価格より実際の売却価格が多い場合、車を売却することによって得た利益として仕訳されます。
売却時に記載する帳簿価額は、売却時の車の価値を記入します。
売却時の車の価値を決めるために、減価償却費が必要です。
減価償却費は、車の耐用年数によって計算することができます。
新車購入時の減価償却費の計算方法は「購入時の価格÷耐用年数」で計算することができますが、中古車を購入した際は耐用年数を計算することが必要です。
中古車購入時の耐用年数の計算方法は「法定耐用年数-経過年数+経過年数×20%」です。
中古車の耐用年数が2年以下になった場合は耐用年数を2年とし、小数点以下は切り捨てて計算します。
新車と中古車を購入する際で、減価償却費の計算方法が違ってくるため注意しましょう。
固定資産売却損
固定資産売却損は、売却時の帳簿価格を実際の売却価格が下回っていた場合、車を売却することによって出た事業支出とし仕訳します。
売却時の帳簿価格の計算方法は、固定資産売却益の算出方法と同じです。
個人事業主
中古車を個人事業主が売却した際は、「免税(消費税)事業者」か「課税(消費税)事業者」かを確認する必要があります。
免税(消費税)事業者
免税事業者とは、消費税の納税義務が免除されている事業者のことです。
以下の条件を満たさない場合は、免税事業者に当てはまります。
・納税義務を判定する年の前々年度の課税売上が1000万円を超える
・特定期間の課税売上が1000万円を超える
・特定期間の給与等支払額が1000万円を超える
上記3つの項目を満たさない場合は免税事業者となります。
特定期間とは、納税義務の判定をする年の前年の1月1日から6月30日までです。
課税(消費税)事業者
免税事業者に当てはまらなかった事業者は、課税事業者に当てはまり納税が義務付けられます。
課税事業者が消費税を納める場合は、二重課税を避けるために消費税の仕入税額控除があります。仕入税額控除とは、消費税を算出する際に「売上の消費税額」から「仕入れや経費等にかかる消費税額」を差し引く仕組みです。
直接法と間接法いずれか確認
中古車を売却する際の仕訳ポイントとして「直接法」と「間接法」のどちらかを確認しておく必要があります。
どちらの方法を使用しても問題はありませんが、記帳方法を統一していなければミスを起こす可能性が高くなるため注意が必要です。
直接法とは、減価償却累計額を使わずに仕訳を行う方法です。
減価償却費勘定を借方に記入、当該固定資産勘定は貸方に記入し帳簿価額を直接減らします。
帳簿価額は固定資産の残高になります。
間接法とは、減価償却累計額を使って仕訳を行う方法です。
減価償却費勘定を借方に記入、減価償却累計額を貸方に記入し、直接減らすのではなく帳簿上で計算を行います。
間接法は、減価償却累計額勘定を別で作る必要があり、直接法に比べて詳しい情報を記載する方法と言えます。
税込処理と税抜処理いずれか確認
中古車を売却する際の仕訳ポイントとして「税込処理」と「税抜処理」のどちらで処理するのかを確認しなければなりません。
どちらを使用しても問題ありませんが、課税事業者の場合は消費税の納付や還付金を受け取ることもあります。
そのため、税抜処理で記帳することがおすすめです。
税込処理を使用する際のメリットとしては、消費税込みで処理をするため処理が分かりやすく簡単です。
そのため、ミスを防ぎやすいとも言えます。
反対に、税抜処理のメリットとしては、消費税額がすべて「仮受消費税」と「仮払消費税」の科目になるため、数字の把握がしやすいことが挙げられます。
減価償却と耐用年数の確認
中古車を売却する際の仕訳ポイントとして、「減価償却」と「耐用年数」の確認をすることが大切です。
減価償却とは、固定資産の価値を耐用年数に応じて分割することで会計処理する方法です。例えば、会社が所有している車は「固定資産」であり、長期的に使用していると購入時の価値よりも下がっていきます。
そこで、車を購入した時点での取得原価のすべてを経費として計算するのではなく、耐用年数で分割し年数に応じた取得原価で経費を計算します。
耐用年数とは、対象となる資産を使用できる「期間」のことです。
使用開始日から使用期限までを耐用年数とし、毎年、決められた経費を処理していきます。対象の資産が、耐用年数が6年の場合、6年間をかけて減価償却費を計算していきます。
耐用年数は資産によって年数が決まっており、新車を購入した場合、「普通自動車:6年、軽自動車:4年」です。
リサイクル預託金の仕訳を確認
中古車を売却する際の仕訳ポイントとして、リサイクル預託金の仕訳も確認しておきましょう。
リサイクル預託金とは、車を購入した際に発生する費用で車はいつかは廃車となるため、廃車にするときにかかる費用を所有者が事前に払っておく費用のことです。
リサイクル預託金の仕訳は、その他の資産に「リサイクル預託金」と鑑定科目を新設すると分かりやすいです。
仕訳の方法は全部で8種類ある
上記では、中古車の売却する際の仕訳のポイントについて紹介しました。ここからは、仕訳の方法について解説していきます。仕訳方法は以下の4種類です。
- ・法人✕直接法
- ・法人✕間接法
- ・個人✕直接法
- ・個人✕間接法
上記の4つの方法について解説していきます。
法人の場合の仕訳
法人事業主が車を買取した際の仕訳方法を、直接法と間接法に分けて解説していきます。
以下の条件で解説していきます。
- ・3年乗って車を売却
・購入金額:2,160,000円
・売却額:864,000円
・3年間の減価償却累計額:1,080,000円
・期首の車の帳簿価額:1,080,000円
・リサイクル預託金:18,000円
・消費税:8%
直接法
直接法の税込・税抜きの仕訳方法について表にまとめています。
・直接法✕税込
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現預金 | 864,000円 | 車両運搬具 | 1,080,000円 |
車両売却損 | 234,000円 | 預託金 | 18,000円 |
合計 | 1,098,000円 | 合計 | 1,098,000円 |
「現預金」は売却額を記入、「車両運搬具」は購入額から減価償却累計額を引いた額を記入する。
・直接法✕税抜き
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現預金 | 864,000円 | 車両運搬具 | 1,000,000円 |
車両売却損 | 218,000円 | 仮受消費税 | 64,000円 |
預託金 | 18,000円 | ||
合計 | 1,082,000円 | 合計 | 1,082,000円 |
「仮受消費税」は売却額の消費税を記入する。
間接法
間接法の税込・税抜きの仕訳方法について表にまとめています。
・間接法✕税込
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現預金 | 864,000円 | 車両運搬具 | 2,160,000円 |
減価償却累計額 | 1,080,000円 | 預託金 | 18,000円 |
車両売却損 | 234,000円 | ||
合計 | 2,178,000円 | 合計 | 2,178,000円 |
「減価償却累計額」は固定資産から差し引かず仕訳する。
・間接法✕税抜き
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現預金 | 864,000円 | 車両運搬具 | 2,000,000円 |
減価償却累計額 | 1,000,000円 | 仮受消費税 | 64,000円 |
車両売却損 | 218,000円 | 預託金 | 18,000円 |
合計 | 2,082,000円 | 合計 | 2,082,000円 |
間接法では、減価償却累計額と仮受消費税を記載する。
個人事業主の場合の仕訳
個人事業主の仕訳方法を直接法・間接法に分けて紹介します。個人事業主の場合は、個人から法人へ資産を譲渡したという扱いになるため、「車両売却損」の項目は「事業主貸」に変更する必要があります。
直接法
直接法の税込・税抜きの仕訳方法について表にまとめています。
・直接法✕税込
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現預金 | 864,000円 | 車両運搬具 | 1,080,000円 |
事業主貸 | 234,000円 | 預託金 | 18,000円 |
合計 | 1,098,000円 | 合計 | 1,098,000円 |
・直接法✕税抜き
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現預金 | 864,000円 | 車両運搬具 | 1,000,000円 |
事業主貸 | 218,000円 | 仮受消費税 | 64,000円 |
預託金 | 18,000円 | ||
合計 | 1,082,000円 | 合計 | 1,082,000円 |
間接法
間接法の税込・税抜きの仕訳方法について表にまとめています。
・間接法✕税込
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現預金 | 864,000円 | 車両運搬具 | 2,160,000円 |
減価償却累計額 | 1,080,000円 | 預託金 | 18,000円 |
事業主貸 | 234,000円 | ||
合計 | 2,178,000円 | 合計 | 2,178,000円 |
・直接法✕税抜き
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現預金 | 864,000円 | 車両運搬具 | 2,000,000円 |
減価償却累計額 | 1,000,000円 | 仮受消費税 | 64,000円 |
事業主貸 | 218,000円 | 預託金 | 18,000円 |
合計 | 2,082,000円 | 合計 | 2,082,000円 |
引用元:カーセンサー
中古車の買取は節税になる
「中古車を買取することで節税することができる」と聞いたことがある方もいると思います。今回はどのような車が節税に適しているのかを紹介します。節税に適している車の特徴としては以下の2つです。
- ①減価償却額を高くする
- ②4年落ちの中古車がおすすめ
上記2つの内容を解説していきます。
減価償却額を高くする
減価償却費が高くなる場合は大幅な節税ができます。
減価償却費は、購入した車を耐用年数で分割して経費として計上できます。
減価償却費は経費として扱うため、減価償却費が高くなれば、その分利益が少なくなり節税効果が増すというわけです。
4年落ちの中古車がおすすめ
節税に適している車の特徴としては、4年落ちの中古車がおすすめです。
理由としては、4年落ちの中古車は耐用年数が2年であり、定率法をという計算方法を使用すると1年で100%の償却が可能になります。
そのため、「今年は利益が多く出そうだ」という年には、4年落ちの中古車を購入すれば、全額を減価償却費に計上することが可能です。
中古車の買取で節税対策をするポイント
中古車の買取で節税をするポイントを2つ紹介します。
今回紹介するポイントは以下の2つです。
- ①定額法か定率法か判断する
- ②後付けオプションを経費計上する
上記2つの内容について解説していきます。
定額法か定率法か判断する
減価償却の計算方法は、定額法と定率法の2つがあります。
会社の利益の大きさに応じて計算方法を選ぶことで効果的な節税ができます。
利益が大幅に見込める年は、初年度の減価償却費が大きい定額法を選ぶことがおすすめです。
また、毎年平均的に節税をしたいと考える場合は、定率法を選ぶことがおすすめです。
後付けオプションを経費計上する
車を購入する際に、後からカーナビ等を設置することで経費計上できるため、節税に繋がります。
これは、少額減価償却資産の特例によるもので、30万円未満のオプションであれば年間合計300万円まで計上可能です。
上手に使用しましょう。
まとめ
会社が車を購入する際は、法人事業主と個人事業主で取り扱いや仕訳方法に違いがあります。
また、中古車を売却する際の仕訳ポイントも「法人事業主と個人事業主、直接法と間接法、税込処理と税抜処理、減価償却と耐用年数、リサイクル預託金」と細かくあるため注意して確認していきましょう。
節税を考えている方は、「減価償却額を高く」「4年落ちの中古車」を購入することで節税を効果的に行うことができます。