車が事故したときの修理に利用できる「車両保険」は、車両の傷や盗難があったときにとても役立ってくれます。
しかし、事故以外の場合は車両保険は適用されるのでしょうか?
車両保険が利用できると思っていたいのに、利用できないとなると大きな損失となってしまいます。
本記事では、事故以外の車の修理は保険適用されるのかについて解説します。
できる場合とできない場合、補償できる特約についても紹介していますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
車の修理は事故以外で保険適用される?
車を事故や故障で修理する経験をされた方は、少なくないと思います。
そんなときに「車両保険」を使用して修理する方が大半だと思います。
しかし、車両保険はどんな事故や故障でも適用となるのでしょうか?
はじめに、車両保険で修理できる範囲をケース別に表でまとめてみました。
ケース | 一般型 | エコノミー型 |
ほかの車との事故 | ◯ | ▲ |
単独事故 | ◯ | × |
落雷・台風・竜巻・洪水・高潮・雹 | ◯ | ◯ |
盗難・火災 | ◯ | ◯ |
物が飛来してきての破損 | ◯ | ◯ |
いたずら・落書き | ◯ | ◯ |
津波・地震・噴火 | × | × |
劣化による故障 | × | × |
上記の表のとおり、車両保険は「一般型」と「エコノミー型」で修理できる範囲が変わってきます。
どちらのタイプも外的要因が関わる事故で修理が必要となった場合は、保険適用されます。しかし、エコノミー型は、単独で起こした事故の保険適用はされません。
そのほかにも自然災害や劣化による故障には、保険適用されない場合があります。
保険が適用されないケース
保険が適用されないケースは以下の4つです。
- ・地震や津波、噴火
・経年劣化での故障
・バッテリーなどの消耗品
・違法行為で起こした事故
それぞれ詳しく解説します。
地震や津波、噴火などは適用されない
車両保険は、自然災害で生じてしまった故障や傷に関しては、基本的に保険適用されます。ただ、先ほどの表からもわかるように「津波・地震・噴火」に関しては適用されません。
しかし、日本は津波や地震がいつ起こるかわからない国です。
できれば、「津波・地震・噴火」の補償もして欲しい方もいらっしゃると思います。
あとで紹介しますが「津波・地震・噴火」による故障でも保険適用できる特約というものがあります。
もし心配な方は保険会社に相談してみましょう。
経年劣化での故障も適用されない
車両保険は、経年劣化での故障は適用されません。
経年劣化とは、エアコンの故障やカーナビの故障、窓の開閉ができなくなるなどのことを言い、これらの故障はメンテナンス不足とみなされるからです。
「自分が故意でなったことではないから適用される」と思っていれば、大きな損失になる場合もあるため、日々のメンテナンスはしっかり行ないましょう。
バッテリーなどの消耗品も適用されない
バッテリー、チューブ、冷却水、オイル等などの消耗部品も保険適用されません。
基本的に車両保険は車の故障や傷の修理などで適用されます。
また、消耗品はあくまで自分が使うことで減っていくものなので、なくなれば補充するのが一般的です。
そのため、消耗品はメンテナンスと同様に日々のチェックを怠らないようにしましょう。
違法行為で起こした事故も適用されない
以下の違法行為や違法運転をした場合の事故でも保険適用されません。
- ・飲酒運転
・麻薬服用時の運転
・無免許運転
・故意の事故
・改造車
基本的に保険は、正しい運転や行為のもと適用されるものです。
故意に起こした事故や、違法行為が関わった事故の場合は保険適用されませんので気をつけましょう。
ただし、被害者への保険は適用されます。
違法行為を起こした方が保険適用されないのはわかりますが、被害者へも保険適用されないのは不当です。
被害者への対人および対物などの損害はしっかり補償されますので、安心してください。
保険が適用されるケース
適用されるケースについても確認しましょう。
適用されるケースは以下の3つです。
- ・車を運転中に車が故障し、その影響での事故は適用される
・レッカー移動費用・代車費用は適用される
・全損事故の買い替え費用は適用される
以下でそれぞれ詳しく解説します。
車を運転中に車が故障し、その影響での事故は適用される
車を運転中に車が故障し、その影響で事故を起こした場合は保険適用されます。
たとえば、運転中に何らかの原因でエンジンが壊れてしまい事故を起こしてしまったといった場合です。
こういった場合は、メンテナンス不足だったとしても適用されます。
また、先ほど経年劣化による故障は保険適用されないとお伝えしましたが、経年劣化による「事故」で起こった故障の場合は、運転中の故障とみなされ保険適用されます。
ただし、事故による損傷などは直せても、事故の原因となったもの(劣化などで故障したもの)については、適用されませんので気をつけましょう。
レッカー移動費用・代車費用は適用される
車が事故や故障を起こした場合、車の移動ができず困ることもあるでしょう。
そのような場合のレッカー移動費用は、保険費用でまかなえます。
代車に関しても同様です。
車の修理が必要となった場合、部品の取り寄せや修理期間が必要となってきます。
そのような場合で代車を借りるときの費用も保険適用されることがほとんどです。
ただし、加入している保険によっては、代車費用がオプションの場合もありますので、気になる方は保険会社に問い合わせしましょう。
全損事故の買い替え費用は適用される
事故で車が全損した場合、車両保険の支払い可能な最大金額まで受け取れます。
このときの支払い可能な最大金額とは、持っていた車が事故を起こしたときの時価価格のことで、新しい車両代が受け取れるわけではありません。
そのため、車の年式が古い場合などは数十万程度しか受け取れず、買い替え費用が足りないことも起こる可能性があります。
心配な方は「全損時諸費用特約」「新車特約」など、時価価格に関係なく修理補償してくれる特約への加入をおすすめします。
保険適用となる場面がそのほかにもある
ここまで、車両保険の適用範囲やケースについて紹介してきましたが、あまり知られていない保険適用となる場面もあります。
それが以下の3つです。
ロードサービスが利用できる
ほとんどの自動車保険にはロードサービスが付いています。
ロードサービスは、レッカーサービスのほかに、ガス欠やバッテリ上がりなどにも対応しています。
また、保険によっては宿泊費や帰宅費用、レンタカー費用なども補償されることがあります。
さらに、ロードサービスを利用しても保険の等級が下がることはなく、翌年度の保険料に影響しません。
車が動かなくなったときには積極的に利用しましょう。
ただし、保険会社によっては一部補償されない場合もあります。
気になる方は保険会社に問い合わせし、補償される内容を確認しておきましょう。
タイヤの交換をしてくれる
車を運転していると、クギなどの異物が刺さりパンクすることもあるでしょう。
そのような場合、スペアタイヤを積載している車に限りタイヤ交換もロードサービスで対応してくれます。
ただし、タイヤの応急修理は行なってくれませんので注意しましょう。
メーカー保証
車の修理で利用できるのは車両保険だけではありません。
よく知られているのは、新車購入時に付けられる「メーカー保証」です。
メーカー保証は、期間内であれば修理や部品交換を無料で行なってくれるサービスです。
新車購入時にはメーカー保証の有無や内容を確認しておくことが重要です。
また、メーカー保証には「一般保証」と「特別保証」の2種類があります。
一般保証は、新車が登録されてから3年間、走行距離6万キロまで補償される、各メーカー共通の保証です。
そして、特別保証は、車のエンジンや重要な部品など、走行に不可欠なものも補償されるものです。
ただし、メーカー保証の内容はメーカーによって異なるため、新車を購入する際には具体的な内容をよく確認することが大切です。
特約に加入していれば補償される範囲が広がる
車両保険には、オプションとして加入できる特約があります。
特約に加入していれば、補償される範囲が広がりますので、より事故や故障で損することが少なくなります。
特約は以下のとおりです。
故障運搬時車両損害特約
先述しましたが、経年劣化で故障してしまった車は保険適用されません。
しかし、「故障時運搬時車両損害特約」に加入していれば、経年劣化で故障した車の修理費用をカバーできます。
故障時運搬時車両損害特約は「損保ジャパン」が2019年に新設した保険で、加入や支払いには以下の条件があります。
- ・ご契約の⾃動⾞が故障により⾛⾏不能となり、レッカーけん引された場合
・ご契約の⾃動⾞の故障損害に対して、車両保険金額または100万円のいずれか低い額を限度に保険⾦をお⽀払い
・ご契約の⾃動⾞をレッカーけん引することについて、損保ジャパンへ事前連絡した場合
契約期間の初日の月が、初度登録年月(または初度検査年月)の翌月から60ヵ月以上経過の車(参考:損保ジャパン)
年式の古い車をお持ちの方は、加入しておくと安心です。
地震・津波・噴火車両全損一時金特約
自然災害で故障した車は車両保険で補償できますが、「地震・津波・噴火」は補償されません。
しかし、「地震・津波・噴火車両全損一時金特約」に加入していれば、地震や津波、噴火であっても補償されます。
補償内容は、保険会社によって異なりますが、ほとんどのところが以下のような内容です。
- ・地震や津波、噴火で車が全損となった場合に、50万円を記名被保険者にお支払い
・車両保険金額が50万円未満の場合は車両保険金額と同額をお支払い
地震や津波、噴火は、防ぐことが不可能です。
心配な方は加入しておきましょう。
車両積載動産特約
車両積載動産特約とは、事故や盗難などで車内に置いてあったものが壊れた、もしくは盗まれた場合に積載物を補償してくれる特約です。
たとえば、「車内に置いてあったカメラが事故で壊れた」「ゴルフ道具を積載していた車が盗まれた」などに適用されます。
ただし、全損事故の買い替え費用と同じで、事故や盗難にあった日の時価価格を限度に支払われます。
また、盗難の場合は車が盗まれたときに限られ、車上荒らしや部品の盗難は対象外となりますので注意しましょう。
全損時諸費用特約
全損時諸費用特約とは、事故や災害などによって車が全損した場合に、車両保険だけではカバーしきれない買い替え費用や廃車費用を補償する特約です。
この特約では、車両保険金額の10%を限度額とし、最大で20万円までが支払われます。
通常、車両保険は車の時価で補償されるため、新車に買い替える費用が不足することがあります。
そんなときに全損時諸費用特約を利用することで、一定の費用を補填することができます。
ただし、この特約を利用するためには、事故発生日の翌日から1年以内に新しい車を購入する必要があります。
そのため、特約を利用する際には、早めの手続きが必要です。
⾞両全損修理時特約
⾞両全損修理時特約とは、車両保険金を支払う対象となっている車に対して、修理費用が足りない場合に費用をカバーしてくれる特約です。
全損時諸費用特約と同様に、保険適用期間が事故発生日の翌日から1年以内に自動車を買い替えた場合に限りますので使用する際は早めに行ないましょう。
車両保険を使う・使わないの判断基準は?
車両保険を使う、使わないの判断基準はあるのでしょうか?
通常、車両保険は等級が関係しており、使用することで翌年の保険料が上がってしまいます。
修理費と比較しないと大きな損となる可能性があるため、注意する必要があるでしょう。
ここからは、車両保険を使うデメリットや判断基準について紹介します。
車両保険を使うデメリット
車両保険を使うと「等級」が下がるというデメリットがあります。
自動車保険に関する等級とは、事故歴に応じて保険料の割増引率を定めるための区分のことです。
1〜20段階で区分されており、はじめは6〜7等級から始まります。
そして、保険期間内で事故がなかった場合に等級が1つ上がり、等級数が上がるたびに保険料が割引されるということです。
しかし、保険期間内に事故を起こしたり、修理などで保険を利用してしまった場合に、その理由に応じて等級が下がってしまいます。
たとえば、車同士がぶつかっての事故や、単独でガードレールへぶつかって事故した場合は3等級ダウンですが、いたずらや盗難、飛来物によってできた傷の場合は1等級ダウンです。
どちらにしても、車両保険を使用した場合に等級は下がってしまうため、翌年の保険料の増加と修理費用を比較して、適切な選択をすることが重要です。
なお、1〜4等級は割増になります。
翌年からの保険料が上がる
車の修理に保険を利用すると、等級がダウンし翌年の保険料が増加することをお伝えしましたが、事故の有無によっても保険料の増減が変わります。
この事故の有無によって割引率を決めるのが「事故有係数」と呼ばれるものです。
事故有係数は、同じ等級であっても事故歴の有無によって割引率が異なってきます。
たとえば、同じ12等級でも事故がある場合の割引率は22%ですが、ない場合は50%となっており倍以上の差が出てきます。
ただし、事故有係数による保険料の割引率の計算はとても難しく、また時と場合によって大きく変わってくるため、どのように変動してくるかは未知数です。
つまり、車両保険を使用したときの翌年の保険料は、等級ダウン数と事故有係数によって決まるということです。
自己負担額と保険料を比較することが重要
車両保険を使うか使わないかの判断基準は、自己負担額と保険料を比較することが重要です。
ここまでお伝えしたとおり、車両保険を使用した場合、翌年の等級数ダウンと事故有係数によって保険料が決まります。
そのため、保険を利用して修理ができたとしても、翌年の保険料が上回っていれば大きな損となります。
保険を利用して修理する場合、増額した保険料と修理費用を比較して選択することが良いでしょう。
自賠責保険は車両保険の代わりにならない
自動車の保険には、任意で加入できる「車両保険」と、強制加入の「自賠責保険」があります。
「自賠責保険を車の修理に利用できるのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、自賠責保険は車両保険の代わりになりません。
自賠責保険は「対人補償」のみの保険で、あくまで交通事故の被害を受けた方のケガや、精神的苦痛などに支払われるものです。
加えて、被害者の車の修理費や、建物の修理代などにも利用できません。
自賠責保険の対人補償は、ケガをした場合120万円、死亡した場合3,000万円、後遺症が残った場合4,000万円が限度額として補償されます。
車両保険の使い方・手続きの流れ
ここまで、車両保険の使えるケースと使えないケース、オプションで加入できる特約などを紹介してきました。
ここからは、修理が必要になった場合、車両保険をどのように使うのか、また手続きの流れについて紹介します。
車両保険の使い方、手続きの流れは以下のステップで行なわれます。
①警察へ連絡する
車両保険を使うときは、ほとんどが事故や事件が起こったときです。
私たちが事故や事件を起こしたときの警察への連絡は義務となっているため、はじめにすべきことは警察への連絡です。
警察は、事故や事件の状況を確認すると同時に「事故証明書」を作成します。
事故証明書とは、その名のとおり事故が起きたことを証明するものです。
保険会社へ保険の利用を申し込みするとき、この事故証明書がないと保険は使用できません。
そのため、警察への連絡をすると同時に事故証明書の発行も忘れないようにしましょう。
②保険会社へ連絡する
警察へ連絡した後は、保険会社へ連絡します。
保険への連絡はできるだけ早くすることをおすすめします。
なぜなら、保険を利用するとき、いくつかの書類を準備する必要があるからです。
修理寸前で連絡するとなると、必要な書類が準備できなくなり、最悪の場合保険が利用できなくなることもあります。
また、レッカーサービスが必要となったときでも、保険会社経由でレッカー依頼しないと保険適用されない場合もあります。
そのため、警察へ連絡したあとすぐに保険会社へ連絡するのが良いでしょう。
③ディーラーやカーショップに修理見積もりを出してもらう
修理が必要となった車は、大抵の場合レッカーにより運ばれます。
このとき運んでもらう場所については、決まっているのであればそちらに運んでもらいましょう。
決まっていない場合は、自分で修理工場やディーラーを探すか、保険会社に相談して決めてもらいましょう。
運び終えた後は、ディーラーやカーショップに修理見積もりを出してもらいます。
このときにすぐに修理を依頼することはしないでください。
大きな損をしないために、翌年度の保険料と修理費を比較してから決めるようにしましょう。
④必要書類を保険会社へ提出する
最後に必要書類を保険会社に提出します。
必要な書類は、主に以下のとおりです。
- ・保険金請求書
・交通事故証明書
・事故発生状況報告書
・修理費の見積書
・事故車両の写真 など
ただし、必要な書類は保険会社や事故の状況によって異なる場合があります。
わからないときは、必ず保険会社に確認をしてください。
また、提出後のキャンセルはできません。
まとめ
本記事では、車を修理するとき保険適用できる場合とできない場合を紹介しました。
また、補償範囲が広がる特約や、保険を使用する判断基準まで紹介しました。
適用されるケースとされないケースは以下のとおりです。
保険適用されるケース | 保険適用されないケース |
車を運転中に故障し、その影響での事故 | 地震や津波、噴火 |
レッカー移動費用・代車費用 | 経年劣化での故障 |
全損事故の買い替え費用 | バッテリーなどの消耗品 |
また、保険適用されないケースでも、補償範囲を広げることができる特約に加入していれば安心できます。
保険を使用するときに大切なことは、翌年の保険料と修理費を確認し比較することです。
場合によっては、大きく損することも考えられますので必ず確認するようにしましょう。