車を売却すると予想外の現金を入手できる場合もあります。
そこで得た所得に対して、税金が課されるか気になる方が多いと思います。
特に、高級車を売却した場合は金額が大きくなるため、税金の問題が気になるでしょう。
実際に車を売却した際にはどのような税金がかかり、どのような場合に確定申告が必要なのでしょうか。
この記事では車を売却する際の税金についてと、確定申告が必要な場合、不要な場合について詳しく解説します。
車を売却する際に押さえておくべき税金の基礎知識と、確定申告の必要性を理解することで、スムーズな取引を実現しましょう。
確定申告とは
まずは、確定申告について解説していきます。
確定申告とは、1年間の所得を報告し、必要な税金を計算・納付するための手続きです。
毎年2月1日〜3月15日が手続き期間として設けられており、この期間内に手続きを行う必要があります。
ではどのような方が確定申告を行うのでしょうか。
確定申告が必要なのはどんな方?
確定申告が必要な方とは、主に個人事業主や法人など、仕事用に車を購入して売却による損益がある方々です。
年間の所得や損益を自ら申告し、適切な税金を納める必要があります。
一方で、給与収入のみの方は通常は会社が年末調整を行うため、確定申告の必要はありません。
しかし、給与以外に一定額以上の所得がある場合は、確定申告が必要です。
車の売却が所得に該当するかどうかは、その価格や状況によって異なります。
働き方や車の用途で変わる
車の売却に関する税務処理は、その車の使い方や所有者の働き方によって異なります。
一般的な給与所得者が通勤・通学などで使う車を売却する場合、基本的に確定申告の必要はないです。
しかし、趣味やレジャー目的での購入・売却は、異なる税務処理が必要になります。
仕事用に使用していた車の場合は資産として扱われ、必要経費になります。
そのため売却による利益は、譲渡所得として処理されるのです。
ただし、個人事業主であっても車が仕事と関連していない場合は、給与所得者と同様の扱いを受け、確定申告は不要です。
このように確定申告は働き方や車の用途によって大きく異なります。
確定申告が必要な場合
ここでは実際に確定申告が必要な3つのパターンについてみていきましょう。
確定申告が必要な場合は以下の3つのパターンです。
- ・スポーツカーや輸入車などの高級車を売る場合
・レジャー目的車を売る場合
・個人事業主が事業で売る場合
それぞれ詳しく解説します。
スポーツカーや輸入車などの高級車を売る場合
スポーツカーや輸入車、クラシックカーの売却から生じる譲渡益は、原則として税金の対象になります。
通常の乗用車は「生活に必要な動産」として非課税です。
しかしスポーツカーや輸入車などは贅沢品と見なされ、譲渡益に対する税金が適用される可能性が高いです。
特に、クラシックカーなどの希少車は譲渡益が高い傾向なので、税務上の注意が必要です。たとえ日常生活で使用していたとしても、これらの車種は贅沢品と分類されます。
しかし、譲渡益が50万円を超える場合に課税の対象となります。
つまり、譲渡益が50万円以下であれば、確定申告の必要はありません。
この点を踏まえ、高級車を売却する際は売却価格と購入価格の差額を正確に把握し、必要に応じて確定申告を行うことが大切です。
レジャー目的の車を売る場合
レジャー目的の車を売却する際、譲渡益が50万円を超えると確定申告が必要になります。これは、週末のドライブやアウトドア活動、釣りなどのための車は「生活に必要な動産」に該当しないと考えられるためです。
クラシックカーやスーパーカーのように高額な譲渡益を生む車種ではない場合でも、この原則は適用されます。
しかし、実際のところレジャー用途の車が購入価格を上回る額で売却されるケースは稀です。
そのため、この種の車を売却した際に確定申告を行う必要性は少ないでしょう。
ただし、譲渡益が予想外に大きくなる場合もあり得るので、売却する際には売却価格と購入価格の差を確認することが重要です。
個人事業主が事業で売る場合
個人事業主が事業用として所有していた車を売却する場合、所得として扱われるため確定申告が必要です。
個人事業主は年間の収支を帳簿に記録し、税金を計算するために確定申告を行います。
この際、車の売却による譲渡益も適切に計上する必要があります。
譲渡益の計算は、売却価格から減価償却費を考慮した価格、譲渡費用、特別控除を差し引く形で行われる場合が多いです。
得られた譲渡益は、他の所得と合わせて総合課税の対象となります。
個人事業主の場合、譲渡損失が生じたとしても他の所得との合算により税額を減らすことができるため、売却損があっても節税効果をもたらすことが可能です。
たとえ古くなった車が無価値とされても、売却することで税務上利益になることもあります。
個人事業主が事業用車両を売却する際には、このような税務処理の機会を最大限活用することが重要です。
確定申告が不要な場合
確定申告が不要な場合はどのような場合でしょうか。
以下で解説していきます。
- ・普段使いの車を売った場合
・通勤で利用した車を売った場合
それぞれ詳しく解説します。
普段使いの車を売った場合
日常で普段使いの車は、「生活に通常必要な動産」と見なされるため売却した場合、確定申告は通常不要になります。
一般的に日常使いの車の売却で大きな利益は発生せず、売却益が非課税とされることが多いです。
ただし、例外的に売却価格が購入価格を上回る場合は、その差額に対して確定申告が必要になることがあります。
特に、プレミア価値のある車種や限定モデルの車などの売却では、譲渡益が発生する可能性があるため、売却時には注意が必要です。
通勤で利用した車を売った場合
通勤で利用した車を売った場合も、確定申告は不要になります。
これは、国税庁の定義により通勤用車を含む「生活に必要な動産」の売却が非課税対象とされるためです。
ただし、例外的に貴金属や宝石など特定の高価な品目のように、売却価格が購入価格を大きく上回る場合は課税の対象となります。
通常の通勤用車では、このような高額な譲渡益が発生することは少ないため確定申告の必要性は低いです。
しかし、貴金属や骨董品などの場合、売却価格が30万円を超えると課税の対象となるため注意しましょう。
確定申告を行う手順
車の売却で確定申告を行う手順は、以下のとおりです。
- 1.書類を揃える
2.申告書に記入する
3.申告書を提出する
4.納付する
それぞれ詳しくみていきましょう。
書類を揃える
確定申告を行う際の最初のステップは、必要書類の準備です。
正しい税額を計算するためには、その根拠となる書類が不可欠になります。
確定申告書を作成するためには、以下の書類を揃えましょう。
- ・源泉徴収票
・私的年金がある場合
・各種領収書・受領書
・社会保険料控除証明書
・生命保険料控除証明書
・地震保険料控除証明書
・添付書類台紙
また、申告内容によっては、付表や計算書などの追加書類が必要になることもあります。
書類を準備する際は、見落としがないかどうかを徹底的にチェックし、スムーズに進めるための準備をしましょう。
申告書に記入する
必要書類が揃えば、申告書を作成しましょう。
日々の帳簿データを基に、正確な情報を反映させることが重要になります。
申告書は手書きでの作成も可能ですが、国税庁のウェブサイトを利用すると簡単かつ効率的です。
また、会計ソフトを使用する方法もあり、特に複雑な帳簿を持つ場合には有効です。
申告書作成が難しいと感じる場合は、税理士に相談することも検討しましょう。
専門家に依頼すると費用はかかりますが、申告書作成の負担が軽減されより確実な申告が可能になります。
申告書を提出する
申告書の作成が完了したら、次はその提出です。
提出方法は大きく分けて3つあります。
1つ目は、所管の税務署に直接持参する方法です。
直接対面で提出することで、必要に応じて直接相談する機会も得られます。
次に、郵便や信書郵送を利用して税務署に送る方法です。
この場合は郵送による遅延のリスクを考慮する必要があります。
最後に、e-TAXを利用した電子申告です。
この方法は政府が推奨しており、特に青色申告者には節税効果があるなど多くのメリットがあります。
電子申告は迅速かつ簡単に処理でき、申告期間中の混雑を避けることができるため便利です。
利便性と精度を考慮するとe-TAXを利用するのが最適な選択と言えるでしょう。
納付する
最後は、納付期限内に税金を納付します。
納付期限を過ぎてしまうと追加の税金が課される可能性があるため注意が必要です。
もし納付期限をうっかり過ぎてしまった場合でも、速やかに対応すれば問題なく納税ができます。
ただし、長期間納付を放置してしまうと、滞納と見なされ督促状が発行される可能性があります。
そのため、納付期限が近づいている場合や過ぎてしまった場合はできるだけ早く納税するようにしましょう。
納税は国民の義務であり、期限内に正確な金額を納付することで、税務上の問題を避けることができます。
支払う必要がある税金の種類と金額
ここでは、支払う必要がある税金の種類と金額について解説します。
支払う必要がある税金の種類
車売却による利益に適用される税金は、所得税、復興特別所得税、住民税です。
特に、個人事業主が事業用資産として利用していた車を売却する場合、さらに個人事業税も加わります。
支払う必要がある税金の額
- ・所得税(所得に応じて5~45%)
・復興特別所得税(所得税×2.1%)
・住民税(10%)
・個人事業税(個人事業主で車の売買で一定の収益を上げている3~5%)※青色申告特別控除とは別に、事業主控除あり
車の売却によって生じた利益に対する税金の額は、その利益の大きさによって異なります。たとえば、車を100万円で購入し150万円で売却したとします。
この場合、50万円の利益が発生しており、所得税はこの利益に対して5%から45%の範囲で課税されます。
つまり、所得税率が10%だと仮定すると、50万円の利益に対して5万円の所得税が課せられます。
さらに、復興特別所得税が所得税の2.1%として加算されるため、1,050円が追加されます。住民税は利益に対して一律10%となるため、この例ではさらに5万円が課税されます。
個人事業主の場合、個人事業税も適用され3%から5%の範囲で適用されます。
したがって、車を売却して得た利益に対する具体的な税金の額を把握するためには、売却価格、購入価格、その他必要経費を含めた詳細な計算が必要です。
これらの計算が複雑な場合は、税理士や確定申告相談センターに相談し、正確な納税額のシミュレーションを行うと良いでしょう。
確定申告をしないとどうなる?
車を売却して利益が生じた際に、確定申告を怠るとどのような結果になるのでしょうか?
ここでは、無申告の場合と申告が遅れた場合、そして脱税に伴う刑事罰について詳しく解説します。
無申告の場合
確定申告が必要なにもかかわらずこれを行わない場合、無申告加算税が課される可能性があります。
これは、税務当局によって後から課税される税金に加えて、追加で支払わなければならない税金です。
無申告加算税は、本来支払うべき税金に対して一定の割合で計算されます。
さらに、故意に無申告をした場合は、重加算税が課されることもあります。
重加算税は、無申告加算税よりも高い割合で課せられ、故意または重大な過失による無申告に対するペナルティです。
このような無申告による追加税金の負担を避けるためにも、納税義務を遵守し適切な手続きを行うことが求められます。
申告が遅れた場合
確定申告の納税が遅れた場合に課される税金が延滞税です。
この延滞税は、本来の納付期限を過ぎてからの日数に応じて増加し、年率最大14.6%まで上がる可能性があります。
この延滞税の具体的な割合は、延滞税特例基準割合によって決定され年によって異なることが多いです。
納税期限を過ぎてから2ヶ月間は比較的低い割合で計算されますが、2ヶ月を過ぎた翌日からは割合が大幅に上がります。
そのため、確定申告が遅れてしまった場合でもできるだけ早く納税することが重要です。
速やかな納税は、高額な延滞税を避けるための最善策といえます。
脱税に伴う刑事罰
脱税行為が刑事罰の対象となる場合、所得税法に基づき、以下のような罰が科される可能性があります。
- ・意図的でない一時的な所得の無申告
所得税法第241条により懲役1年以下または罰金50万円以下のいずれか
- ・悪質な隠蔽や虚偽記載が認められる場合
所得税法第238条に基づき、より重い刑罰、すなわち懲役10年以下または罰金1,000万円以下
これらの刑罰は、無申告加算税や延滞税とは別に適用されます。
また、逮捕されるかどうかは、未納税額の金額だけで決まるわけではありません。
証拠隠滅や逃亡の可能性がある、税務調査に反抗的な態度をとるなどに当てはまる場合は、無申告の個人であっても逮捕されるリスクがあるでしょう。
税務調査の通知を受け取った場合は、反抗することなく指示に従うことが重要です。
まとめ
今回は、車を売却する際の税金と確定申告が必要な場合、不要な場合について解説しました。
確定申告や税金に関する知識は、非常に重要です。
適切な納税を怠ると、無申告加算税や法的問題に直面する可能性もあります。
そのため、税に関する必要な情報を理解し、正しく納付することが大切です。