高齢になると反応速度が鈍くなったり、身体の柔軟性が低下したりするため、自動車事故のリスクが高くなります。
また、足腰が弱くなってくることを考慮すると、乗り降りが容易な車に乗り換える方が良いでしょう。
そこでこの記事では、高齢者の方が車を乗り換える際の10のポイントや高齢者におすすめの車を解説します。
高齢者の自動車事故の現状
日本では高齢者人口の増加に伴い、高齢ドライバーの方による交通事故も大きな社会問題となっています。
2022年時点で、日本の高齢者人口は全体の約30%を占めています。
警察庁の統計によると、2022年には65歳以上の免許保有者が全免許保有者の約23.8%を占めており、その数は約1,946万人です。
また、免許を持っている人の死亡事故数では、75歳以上の高齢者は75歳未満と比較して2倍高い状況になっています。
さらに、高齢ドライバーの方によって引き起こされた事故は、「安全不確認備」「前方不注意」「ハンドルやブレーキの操作ミス」などが原因として挙げられます。
このような高齢運転者による交通事故は、高齢者自身だけでなく、他の人にとっても大きなリスクとなります。
高齢者のドライバーの方が関与する事故の数とその重大性を考えると、車を乗り換える際の選択は非常に重要といえるでしょう。
高齢者が車を乗り換える際の10のポイント!
事故のリスクを考えると、高齢ドライバーの方はより安全な車に乗ることが大切です。
ここでは、高齢ドライバーの方が車を乗り換える際に考慮すべき10のポイントを解説します。
以下の10個のポイントを押さえながら車を選びましょう。
適切な買い替え時期に買い替えを
車の乗り換えは、適切な時期に行うことが大切になります。
車の買い替え時期に関しては、いくつかの目安があります。
たとえば、新車の場合は初回車検前の3年目やメンテナンスの必要性が高くなる5年目や7年〜8年目、税金の負担が増える12年目が目安です。
これらの時期に乗り換えると、維持費も抑えられるため良いタイミングといえるでしょう。
しかし、高齢ドライバーの方の場合は、車を買い替えるかどうかの判断に加え、運転を続けるべきかどうかも重要です。
日本では、70歳前後を目安に免許返納をする方が増えています。
また、70歳になると免許更新の際には高齢者講習を受ける必要があり、75歳以上では認知機能検査も義務付けられています。
日本の法律には運転の年齢制限はありません。
しかし、安全のためにも、自身の運転能力や健康状態を考慮したうえで、運転を継続するかどうかを判断しなければなりません。
少しでも運転に自信がない場合や不安な場合は、免許を返納を検討すると良いでしょう。
安全装備が装着されている車を選ぶ
高齢者の方が運転する際の安全性を高めるためには、安全装備が充実した車を選ぶことが非常に重要です。
特に、高齢ドライバーの方の事故には、「ブレーキとアクセルの踏み間違え」や「ハンドル操作の誤り」「確認不足」などが主な原因として多くみられます。
このような事故は、近年の自動車技術によって防げることも可能です。
後ほど解説しますが、「ペダル踏み間違い急発進抑制装置」は、アクセルとブレーキの踏み間違えによる事故を防ぐことができます。
特に、低速で駐車する際は踏み間違えが多いため、非常に役立ちます。
このような装備は、高齢ドライバーの方にとって安心につながるだけでなく、実際の安全性の向上にも直結するでしょう。
セーフティ・サポートカーS(サポカーS)を選ぶ
セーフティ・サポートカーS(サポカーS)は、高齢ドライバーの方を含む全てのドライバーがより安全に運転できるように、国によって推奨されている車です。
これは、運転者の安全運転を積極的に支援する安全技術を搭載しており、交通事故の発生防止と被害の軽減を目的としています。
サポカーSには、以下のような安全機能が備わっていることが特徴です。
サポカーSに搭載されている機能
- ・衝突被害軽減ブレーキ
・ペダル踏み間違い急発進抑制装置
・車線逸脱警報装置
・先進ライト
これらの安全技術はあくまでサポート的な役割になります。
そのため、最終的にはドライバーの意識と行動が安全運転をするうえで大切といえるでしょう。
運転のしやすさを重視する
高齢者の車選びにおいて、運転のしやすさも非常に重要なポイントです。
たとえば、小回りが利く車は狭い道路を容易に走ったり、壁などにぶつかるリスクが大幅に減ります。
また、駐車もしやすくなるため、日常の運転において運転時のストレスを大幅に軽減可能です。
小回りが効くコンパクトな車でも、安全機能がたくさん装備されている車種もあるので、安心して運転できます。
視界が広い車を選ぶ
視界が広い車は、運転がしやすく事故のリスクを下げます。
交通事故の多くが「安全不確認」によって引き起こされることを踏まえれば、運転中に周りを十分に確認できる車は、事故を予防するために不可欠です。
また、視界が広い車は見た目だけではわからないため、実際に試乗してみることも大切です。
試乗では、運転席からの前方視界がしっかりと確保されているか、ダッシュボードの形状や高さが視界を遮らないかなどを確認しましょう。
さらに、ミラーの位置や後方確認のしやすさもチェックし、運転がしやすく広い視界が確保できているかも重要です。
操作性の良い車を選ぶ
高齢ドライバーの方にとって、軽くて扱いやすいステアリングや、手元で直感的に操作できるギアの配置は、運転の負担を軽減して安全運転につながります。
試乗では、視界の広さだけではなくこれらのポイントを感覚で確かめ、快適に操作できる車を選びましょう。
乗り降りが楽な車を選ぶ
高齢者が日常的に車を利用するうえで、乗り降りのしやすさは重要なポイントです。
特に足腰の弱い方にとっては、床が高い車では乗り降りが困難でしょう。
そのため、スムーズに乗り降りができるように設計されている低床フロアの車を選ぶことをおすすめします。
また、ドアやシート近くにアシストグリップが付いていると、さらに乗り降りしやすくなり、使い勝手が向上します。
これらの特徴を持つ車を選ぶことで、高齢者の方でも毎日の運転を楽に、そして安全に行えるようになるでしょう。
わかりやすいボディカラーにする
車のボディカラーを選ぶ際には、周囲の人々が認識しやすい色を選ぶことが、事故防止につながります。
特に、暖色系の色彩である赤やオレンジは、車体が大きく目立つため、他のドライバーや歩行者から早く認識されやすいです。
目立つ色を選ぶことで、万が一の際に周囲が素早く反応しやすくなり、交通事故のリスクを減らすことが期待できます。
維持費を抑えられる車種にする
高齢者の方が車を選ぶ際には、維持費を抑えることができる車種を選択することが賢明です。
年金生活をされている方が多い中で、経済的な負担を最小限に抑えることは重要なポイントとなります。
特に、自動車税は車の排気量によって異なるため、排気量が小さい車を選ぶことで年間の税負担の軽減が可能です。
また、燃費の良い車を選ぶことも、ガソリン代の節約につながります。
ただし、快適性や安全性を考えると軽自動車が必ずしもすべての方に適しているわけではないので、利用目的を考慮したうえで選びましょう。
できれば新車を購入しよう
高齢者運転者の交通事故の多くが単独事故であることや操作ミス、認知・判断の不足による事故が多いです。
こうした事故は、最新の運転支援システムや安全装置を備えた車であれば、防げる可能性が高くなります。
先進の安全技術が装備された新車の購入をおすすめします。
新車ならではの最新の安全装備や支援システムは、事故のリスクを軽減してくれるでしょう。
高齢者に必要な安全装備
安全装備は、運転中の危険を予測し、事故を防ぐために不可欠です。
特に、以下の5つは、高齢者に必要な安全装備になります。
高齢者に必要な安全装備
- ・自動ブレーキシステム
・ペダル踏み間違い急発進抑制装置
・車線逸脱防止システム
・オートマチックハイビーム
・ブラインドスポットモニタリング
それぞれ詳しくみていきましょう。
自動ブレーキシステム
自動ブレーキシステムは、車両に取り付けられたセンサーやカメラを通じて、前方の障害物や車両、歩行者を検知します。
検知した情報を元に、システムは衝突の可能性が高まる状況を予測し、ドライバーが反応するよりも先に自動でブレーキをかけてくれます。
高齢ドライバーの方にとって、反応が遅れがちな状況でも事故のリスクを大幅に減少させてくれる重要なシステムです。
追突しやすい高速道路を利用する方は装備されている方が良いでしょう。
ペダル踏み間違い急発進抑制装置
ペダル踏み間違い急発進抑制装置は、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いを検知するために設計されたシステムです。
特に停車中や駐車時の低速運転で、ドライバーがアクセルペダルをブレーキペダルと間違えて踏み込んだ際の急加速を防ぎます。
センサーやカメラは、前方や後方の障害物や歩行者を検知します。
そして、異常な加速があった場合には即座に抑制するか、警告を発してドライバーに注意を促してくれる仕組みです。
駐車場での衝突事故や誤発進による事故など、高齢ドライバーの方が起こしやすいペダルの踏み間違いによる事故を減少させることができます。
車線逸脱防止システム
車線逸脱防止システムは、道路上の車線を認識し、ドライバーが無意識に車線をはみ出そうとした際に警告を出すシステムです。
さらに、一部のシステムでは、ドライバーが手を加えない状況で自動的に車両を車線内へ誘導する機能もあります。
このシステムは、長距離運転や夜間運転での注意力散漫や疲労によるふらつきを防ぐのに効果的です。
対向車との衝突事故を防ぐこともできるため、必要な安全装備の1つといえるでしょう。
オートマチックハイビーム
オートマチックハイビームは、周囲の光の状況を自動で判断し、ハイビームとロービームの切り替えを自動で行うシステムです。
この機能によって、夜間や暗い道路での運転時に、対向車や先行車に対して光量を調整し、視界を最適化します。
高齢者の方に多い手動での切り替えを忘れるリスクを減らし、夜間運転の安全性を大きく向上させることが可能です。
ブラインドスポットモニタリング
ブラインドスポットモニタリングは、ドアミラーだけでは見えにくい部分を監視し、見落としやすい箇所に他の車両が接近している際に警告を発するシステムです。
車線変更や合流時に有効で、ドライバーの限られた視野を技術的に補助し、より安全な車線変更が行えます。
高齢者でも安心して運転できるおすすめの車
ここでは、実際に高齢者でも安心して運転できるおすすめの車種を紹介します。
高齢者でも安心して運転できるおすすめの車は以下の5車種です。
- ・日産ノート
・トヨタクラウンクロスオーバー
・スバルレガシィアウトバック
・トヨタヴォクシー
・トヨタシエンタ
それぞれ詳しくみていきましょう。
日産ノート
日産ノートは、360°セーフティアシスト機能を搭載し、全方位からの安全をサポートします。
特に、インテリジェントエマージェンシーブレーキは、夜間の歩行者の検知ができ、未然に衝突を防ぐための警告や自動ブレーキなどもあります。
その他にも、14種類の運転支援システムが高齢ドライバーの方の安全運転を強力にバックアップしてくれる1台です。
トヨタクラウンクロスオーバー
トヨタクラウンクロスオーバーは、JNCAP(日本で実施されている自動車の安全性の評価)の最新性能評価試験で高い評価を受けています。
また、トヨタ自動車が展開する予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」をはじめとする高度な運転支援機能が充実しており、予防安全性能100%、衝突安全性能91%でAランクという髙位評価も獲得しています。
外装だけではなく内装も非常に高級感があり、高齢者の方でも満足できる1台です。
スバルレガシィアウトバック
スバルレガシィアウトバックは、アドバンストセーフティパッケージ「アイサイトX」を搭載しています。
このシステムは、運転の支援だけでなく、車両の周囲の安全を全方位から守ってくれるため、高齢者にとっては欠かせないシステムです。
また、アイサイトXは先行車や歩行者への衝突回避支援、車線内での自動調整運転、さらには交差点での衝突回避など高度な運転支援機能が備わっています。
これらの機能は、高齢ドライバーの方が事故を起こしやすい場面でも安心して運転できる環境を提供してくれています。
ヴォクシー
ヴォクシーは、その広い室内空間と高い乗降性で高齢者のみならず、さまざまな世代で人気の車種です。
特に、メーカーオプションで追加できる「ユニバーサルステップ」は、乗り降りの際の負担を軽減し、より快適な移動が実現可能です。
安全面ではトヨタセーフティセンスが標準装備されており、ドライバーをサポートしてくれます。
さらに、パーキングサポートブレーキも標準装備されており、より安全な駐車ができるでしょう。
シエンタ
シエンタは、330mmの低いフロア地上高と段差のないフラットフロアが特徴で、乗り降りしやすい設計になっています。
さらに、トヨタセーフティセンスが標準装備され、衝突回避支援や車線維持支援など、ドライバーをサポートしてくれます。
ウェルキャブ(福祉車両)仕様も用意されており、車いすユーザーや高齢者など、さまざまなニーズに合わせたカスタマイズも可能です。
まとめ
この記事では、高齢者が車を乗り換える際の10のポイントや高齢者におすすめの車を解説しました。
高齢ドライバーの方には、安全機能が充実した車が非常におすすめです。
近年の車は、安全技術が高いため、事故のリスクを大幅に減らすことができるでしょう。
この記事で解説したポイントを参考にして自分のニーズに合った安全装備が備わっている車を見つけていただければ幸いです。