車を輸出するときは、輸出抹消登録が必要です。
海外への転勤や廃車にして海外で売りたいと考えたときに、車を海外へ輸出する手続きを
知らないという方もいるでしょう。
そこで今回は、輸出抹消登録のやり方、主な輸出先や人気の車種などを解説いたします。
車の輸出を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
廃車した車はどうなるの?
廃車した車がどうなるのか気になる方もいるでしょう。
特に長年愛用してきた車ほど、廃車後にどうなってしまうのか気になるものです。
廃車した車は、以下の3つの方法で再利用されています。
- ・構内専用車として活用
・国内でリサイクル
・海外へ輸出
それぞれの活用方法について解説いたします。
構内専用車として活用
廃車後の車は、構内専用車として活用されることがあります。
構内専用車とは、公道以外の私有地のみの運行に使われる車です。
公道を走るには、道路運送車両法に基づいて定期的に車検やメンテナンスを受けなければなりません。
しかし、廃車になった車であれば、登録も抹消されているため公道は走れませんが、車検やメンテナンスの義務もないのです。
構内専用車は、基本的に広い敷地を持つ個人や法人が移動や業務用に使用します。
国内でリサイクル
廃車された車は、鉄スクラップやシュレッダーダストとなり、国内でリサイクルされることがあります。
海外と比較すると、日本は新しい部品を比較的容易に入手できますが、リサイクルした部品の方が修理や交換の費用を安く抑えられるためです。
2005年に施行された「自動車リサイクル法」により、近年では解体された車の9割以上がリサイクルされているといわれています。
鉄スクラップ(金属部分)
鉄スクラップとは、ボディなどの金属部分が剛鉄や地として再利用されることです。
金属部分は車体の約8割を占めているため、大部分が鉄スクラップになります。
廃車した車を解体し、金属類をスクラップし、鉄製品として再利用するのです。
シュレッダーダスト
シュレッダーダストとは、ゴム、ガラスの破片などの老廃物など金属以外の樹脂を発電所や路盤材などの熱エネルギーや車のガラスに再利用することです。
車体の金属部分を除いた約2割がシュレッダーダストとなります。
鉄スクラップと同様に、廃車した車を解体して再利用するのです。
海外へ輸出
廃車した車の多くは、海外へ輸出されています。
海外では年式が古かったり、走行距離が10万キロを超えていたり、修復歴があったりしても関係ありません。
日本自動車販売協会連合会の「輸出抹消登録台数」によると、2023年は1〜11月までで137万台以上もの車が海外へ輸出するための手続きを行っています。
輸出抹消登録の方法
輸出抹消登録とは、輸出するために運輸支局で行う手続きです。
輸出抹消登録は、一時抹消登録の有無によって手続きの方法が異なります。
一時抹消登録済の車と一時抹消未登録の車に分けて、輸出抹消登録の方法を解説いたします。
一時抹消登録済の車を輸出抹消する手続き
ここでは、一時抹消登録が既に済んでいる車の輸出抹消手続きに必要な書類と手続きの流れについて解説いたします。
必要書類
一時抹消登録済の車の輸出抹消登録に必要な書類は、以下のとおりです。
- ・所有者の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)
・車検証
・輸出予定日を記した書類
・前後2枚のナンバープレート
・所有者の実印
・手数料納付書
・輸出抹消登録申請書
・輸出予定届出証明書
・委任状(代理人が手続きする場合)
輸出予定届出証明書は、運輸支局で手続きを行う際にもらえます。
手続きの流れ
輸出抹消登録の手続きは、輸出予定日の6ヶ月前から運輸支局で行うことができます。
運輸支局の受付時間は平日午前8時45分〜11時45分、午後13時〜16時で、土日は開いていないためご注意ください。
輸出抹消登録の手続きの流れは、以下のとおりです。
- ・運輸支局の窓口で手数料納付書と輸出抹消登録申請書を受け取る
・輸出抹消登録申請書を記入する
・輸出予定届出証明書の印紙(350円)を購入して貼付する
・ナンバープレートを変更する
・運輸支局の窓口に必要書類一式を提出する
・運輸支局の窓口で輸出予定届出証明書の交付を受ける
・税関に輸出予定届出証明書を提出する
税関の許可がおり、輸出事実を国土交通省が確認したら、輸出抹消は完了です。
一時抹消未登録の車を輸出抹消する手続き
ここでは、一時抹消登録を行っていない車の輸出抹消手続きに必要な書類と手続きの流れについて解説いたします。
必要書類
一時抹消未登録の車の輸出抹消登録に必要な書類は、以下の通りです。
- ・所有者の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)
・車検証
・輸出予定日を記したもの
・前後2枚のナンバープレート
・所有者の実印
・手数料納付書
・輸出抹消登録申請書
・輸出抹消仮登録証明書
・委任状(代理人が手続きする場合)
一時抹消登録済の車とは違い、一時抹消未登録の場合は、輸出予定届出証明書ではなく、輸出抹消仮登録証明書を交付してもらう必要があります。
輸出抹消仮登録証明書は、運輸支局で手続きする際に入手可能です。
手続きの流れ
一時抹消未登録の車を輸出抹消登録する手続きは、以下のとおりです。
- ・運輸支局の窓口で手数料納付書と輸出抹消登録申請書を受け取る
・輸出抹消登録申請書を記入する
・輸出予定届出証明書の印紙(350円)を購入して貼付する
・ナンバープレートを変更する
・運輸支局の窓口に必要書類一式を提出する
・運輸支局の窓口で輸出抹消仮登録証明書の交付を受ける
・税関に輸出抹消仮登録証明書を提出する
一時抹消登録済の車と同様に、税関の許可がおり、輸出事実を国土交通省が確認したら、輸出抹消は完了です。
輸出抹消登録後に輸出をしなかった場合は?
輸出抹消手続きを行ったにもかかわらず、輸出しなかった場合は輸出抹消仮登録証明書または輸出予定届出証明書の有効期限が切れてから15日以内に輸出抹消仮登録証明書または輸出予定届出証明書を返納しなければなりません。
期限を過ぎないようにご注意ください。
輸出抹消登録証明書または輸出予定届出証明書を返納すると、対象車の一時抹消登録証明書が交付されます。
日本車が海外で人気の理由
日本車は海外で人気が高いという印象を持っている方もいるでしょう。
実際に、日本車は海外で人気を集めています。
日本車が海外で人気の理由は、以下のとおりです。
- ・メンテナンスされているから
・日本の道路が整っているから
・価格が安いから
・外装が綺麗だから
それぞれの人気の理由について解説いたします。
メンテナンスされているから
日本では新車購入から3年、それ以降または中古車は2年ごとに車検を受けることが義務付けられています。
定期的に車検を受け、メンテナンスを行うことで、重大な故障につながる前に修理したり、大きな破損をする前に消耗品の定期的な交換を行なったりすることが可能です。
しかし、海外では日本ほど車検の期間が短くなく、車検自体がない国もあります。
そのため、海外の方にとって日本車は壊れにくく、安全に乗れるというイメージが定着しているのです。
日本の道路が整っているから
日本の道路は世界的に見ても整っています。
道路が整っている分、車にかかる負担が少なく、足回りの重要な部品も損傷が少ない傾向にあるのです。
そのため、長い年月乗られていたとしても、海外の中古車に比べると状態がよく、長持ちしやすい傾向にあります。
価格が安いから
日本では車に対して新車購入から10年、走行距離が10キロを超えたら寿命というイメージが定着しています。
世界から見ると日本車は買い換える頻度が高く、きちんとメンテナンスをすればまだまだ乗れる車であっても、車としての価値がないとして廃車されています。
そのため、海外では品質の良い日本車を安い価格で入手できるのです。
外装がきれいだから
世界的に見て日本人は車を大事にする方が多い傾向にあり、定期的に洗車をしたり、傷がつかないように気をつけて乗ったりしています。
一方、海外では車を移動するための道具とみなし、傷や汚れを気にせずに乗る方が多い傾向にあるのです。
そのため、海外の中古車に比べて日本の中古車は外装がきれいに保たれており、海外から高い評価を得ています。
どんな車をどこの国へ輸出しているの?
日本車は廃車後、海外へ輸出されることが多いことはわかりましたが、どんな車をどこの国へ輸出しているのか気になる方もいるでしょう。
実は、どこの国でも輸出できるわけではありません。
ここでは、主な輸出先と輸出できない国について解説いたします。
主な輸出先
日本中古車輸出業協同組合によると、2023年10月の日本車の輸出先ランキングは以下のとおりです。
順位 | 輸出先 |
1位 | アラブ首長国連邦 |
2位 | ロシア |
3位 | モンゴル |
4位 | タンザニア |
5位 | ニュージーランド |
6位 | ケニア |
7位 | タイ |
8位 | 南アフリカ共和国 |
9位 | チリ |
10位 | ウガンダ |
ランキングを見ると、アジアからの需要が大半を占めており、アフリカや中南米からの需要もあることがわかります。
2位のニュージーランドや6位のケニアは、日本と同じく左側通行であるため、日本車は乗りやすく人気が高いのです。
また、輸出先によって人気の車も異なり、1位のアラブ首長国連邦と2位のニュージーランドは富裕層が多いためスポーツカーや高級車の需要が高い傾向にあります。
3位のモンゴルはプラグインハイブリッドの車、2位のニュージーランドでは電気自動車も人気を集めております。
輸出ができない国
海外で日本車は高い人気を集めていますが、一部の国へは輸出ができません。
輸出ができない主な国は、以下のとおりです。
- ・中国
・タイ
・パキスタン
・インドネシア
・アルゼンチン
・ブラジル
・コロンビア
・メキシコ
・ベネズエラ
・ネパール
中国やパキスタン、タイは商業目的での輸出はできません。
中国は長期滞在駐在員用の個人用として輸出することは認められているものの、左ハンドルの新車に限られています。
また、タイやパキスタンは中古車ビジネスとしての輸出は禁止されていますが、個人用やギフト用などの目的での輸出は可能です。
インドネシアやネパールなどのように、日本車そのものが輸出できない国もあります。
輸出できない理由は、日本車を輸入すると自国の車が売れなくなってしまったり、右ハンドルが認められていなかったりと、国によってさまざまです。
輸出におすすめの車種とは?
日本車の中でも輸出におすすめの車種とそうではない車種があります。
ここでは、輸出で人気の車種と輸出に向かない車を解説いたします。
人気の車種
海外で人気の車の特徴は、積載量が多い車です。
輸出国の中には交通網が発達していない国が多いため、より多くの物を運べる車種が人気を集めています。
また、世界的に有名なトヨタ車は知名度とブランド力から特に需要が高い傾向にあります。
なかでも、以下の車種が人気です。
- ・ハイエース
・ランドクルーザー
・アルファード
・ヴェルファイア
上記の車は多くの人や物を載せることができ、足回りが丈夫なため整備されていない道路でも走行できるためです。
また、日産車もトヨタ車と同じくらい人気があります。
日産車で人気の車種は、以下のとおりです。
- ・エクストレイル
・マーチ
・キューブ
・エルグランド
・スカイライン
・GTR
輸出に向かない車
廃車された車がすべて海外で需要があるわけではありません。
軽自動車は規格が日本独自のものであり、国ごとに設定されている安全基準を満たしていないケースが多いため、輸出の対象外になっています。
また、ハイブリッド車も故障しても自国で直せないという理由から人気がありません。
まとめ
廃車した車は、構内専用車として活用されたり、国内でリサイクルされたり、海外へ輸出されたりして再利用されています。
海外ではメンテナンスが行き届いている点、道路が整備されている点、価格が安い点、外装がきれいに保たれている点から日本車は高く評価されており、2023年の11ヵ月で137万台以上もの中古車が輸出されています。
ただし、廃車された車すべてが海外で需要があるわけではありません。
軽自動車やハイブリッド車は需要が低く、積載量の多い車は需要が高い傾向にあります。
また、輸出できる国とできない国もあるため、海外への輸出を考えている場合は注意しましょう。