廃車委任状とは、本来は自分で行うべき廃車手続きを、本人以外の第三者に委任したことを証明する文書です。代理人が本人に代わり、法律上の手続きを行う際に必要になります。家族や知人の自動車を廃車にする際や、買取業者に廃車の手続きを依頼する際には、廃車委任状を作成しなければなりません。
この廃車委任状は、公式に正確な書式が定められている訳ではありません。しかし、必ず抑えるべきポイントや注意すべき点があります。
本記事では、廃車委任状がどういった場合に必要なのかに加え、記入方法や注意すべきポイントまで、廃車委任状について徹底解説します。
「廃車委任状がどういうものなのかいまいちよく分からない」
「廃車委任状を準備しなければいけないのは分かったけど、どう書けば良いか分からない」
と考えている方は、是非当記事をご参考にしてください。
廃車委任状とは
前述した通り、廃車委任状とは、本来は自分で行うべきである廃車手続きを、本人以外の第三者に委任したことを証明する文書です。一口に廃車委任状と言っても、いくつか種類があり、普通自動車と軽自動車で名称が異なります。
自分に必要な委任状はどれなのかをしっかり確認して、種類を間違えないように気を付けましょう。
廃車委任状の種類
廃車委任状は、普通車の場合、「廃車申請(一時抹消)の委任状」と「廃車申請(永久抹消・解体届出)の委任状」の2種類があります。また、軽自動車の場合、廃車委任状に代わる「申請依頼書」が必要となります。
ここでは、普通車・軽自動車別に、廃車委任状にはどんな種類があるのかについて解説していきます。
普通車の場合
普通車の場合、「廃車申請(一時抹消)の委任状」と「廃車申請(永久抹消・解体届出)の委任状」の2種類があります。
一見似た名前ですが、意味は全く異なります。
では2種類の違いについて詳しく解説していきます。
<廃車(一時抹消)申請の委任状>
廃車(一時抹消)申請の委任状は、一時抹消登録の手続きを本人以外の第三者に委任する際に必要となります。
一時抹消登録とは、一時的に自動車を使わなくなった際に行う手続きです。この手続きは、自動車の住所を管轄する運輸支局で行います。なお、運輸支局は平日のみの対応となります。
つまり、「今は乗らないが、いつかもう一度車検を取って乗りたい」「譲り先が見つかるまでは一時的に抹消登録をしておきたい」と考える方が行う必要のある申請です。
<廃車(永久抹消・解体届出)申請の委任状>
廃車(永久抹消・解体届出)申請の委任状は、永久抹消登録の手続きを、本人以外の第三者に委任する際に必要となります。
永久抹消登録とは、これから先永久的に自動車を使わなくなった際に行う手続きです。この手続きは、一時抹消登録同様、自動車の住所を管轄する運輸支局で行います。また、この手続きは、解体業者から解体終了の報告を受けてから、15日以内に行わなければならないと定められています。
つまり、災害や事故によって自動車を使えなくなったり、もう使用しない自動車を廃棄することになった時に必要となる手続きです。この手続きを行うことで、その自動車はもう二度と公道を走行することは出来ません。
軽自動車の場合
軽自動車の場合、廃車委任状に代わり、「申請依頼書」の準備が必要です。また、軽自動車を廃車する手続きは、自動車の住所を管轄する軽自動車検査協会で行います。なお、軽自動車検査協会は平日のみの対応となります。
軽自動車の場合は、一時抹消と永久抹消によって区別することはなく、どちらの手続きにも同じ申請依頼書を使用します。
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廃車委任状の入手・手続き方法
ここでは、実際の廃車委任状の入手方法から記入に必要な準備、手続き方法までの詳細を解説します。
廃車手続き関係の資料はすべて運輸支局、軽自動車検査協会まで取りに行く必要があると思われがちですが、そんなことはありません。自宅や会社で簡単に入手することが出来ますので、なるべく手間を省いて入手することをおすすめします。
1.廃車委任状の入手
個人や買取業者を問わず廃車手続きを第三者に依頼することに決まったら、まず廃車委任状の入手が必要です。廃車委任状を入手するには、自分でインターネットからダウンロードする方法と、買取業者から委任状を受け取る方法の主に2つの方法があります。
ここでは、それぞれの方法について詳しく解説していきます。
自分でダウンロードする
普通自動車の廃車委任状は、手続きを行う運輸支局で受け取ることもできますが、国土交通省の公式ホームページ、または下記から簡単にダウンロードを行うことができます。
軽自動車の申請依頼書は、軽自動車検査協会の公式ホームページ、または下記からダウンロードを行うことができます。
自宅にプリンターがない場合にも、コンビニなどで印刷可能です。運輸支局、軽自動車検査協会に出向く手間が省けるので、是非、積極的に自分でダウンロードして入手しましょう。
買取業者から受け取る
買取業者に廃車手続きを依頼する場合、廃車委任状は買取業者が用意するため、基本的に自分で準備する必要はありません。
2.廃車委任状記入の準備
廃車委任状を入手したら、次は記入に必要なものの準備をします。
まずは、消えないボールペンを準備します。シャープペンシルや鉛筆、消せるボールペンを使用した廃車委任状、申請依頼書は受理してもらえませんので、必ず消えないボールペンの準備をしましょう。
次に、印鑑登録証明書と同じ実印が必要です。これも、実印以外の印鑑では受理してもらえませんので、必ず事前に実印の準備をしておきましょう。
3.廃車委任状の記入
記入の準備ができたら、実際に廃車委任状を記入をしていきます。記入例を参考に、間違いのないよう丁寧に書いていきましょう。
ここでは、各委任状ごとに、記入方法を解説していきます。
廃車(一時抹消)申請の委任状
廃車(一時抹消)申請の委任状の記入例を参考に、下記の手順で記入します。
- 1.「受任者」記入欄に受任者の氏名・住所を記入
2.「権限委任」記入欄に「一時抹消登録」と記入
3.「自動車登録番号又は車台番号」記入欄に車検証に記載のある自動車登録番号か車台番号(ナンバー)を記入
4.「委任者」記入欄に委任者の氏名・住所を記入
5.「印」押印欄に印鑑登録証明書と同じ実印を押印
6.「日付」欄に委任状の作成日付を記入
廃車(永久抹消・解体届出)申請の委任状
廃車(永久抹消・解体届出)申請の委任状の記入例を参考に、下記の手順で記入します。
- 1.「受任者」記入欄に受任者の氏名・住所を記入
2.「権限委任」選択欄に「永久抹消登録申請」の番号に〇をつける
3.「自動車登録番号又は車台番号」記入欄に車検証に記載のある自動車登録番号か車台番号(ナンバー)を記入
4.「委任者」記入欄に委任者の氏名・住所を記入
5.「印」押印欄に印鑑登録証明書と同じ実印を押印(解体届出の場合は、認印で可)
6.「日付」欄に委任状の作成日付を記入
申請依頼書
申請依頼書の記入例を参考に、下記の手順で記入します。
- 1.「氏名」「住所」の欄に受任者の氏名・住所を記入「
2.「9.解体の届出」など、該当項目の番号に〇をつける
3.「車両番号又・車台番号」記入欄に車検証に記載のある自動車登録番号か車台番号(ナンバー)を記入
廃車委任状の訂正方法
もし誤って記入してしまった場合、間違えた箇所に二重線を引き、その上に印鑑登録証明書と同じ実印で押印します。
実印でない印鑑は使用できないため、ご注意ください。
廃車委任状の有効期間
廃車委任状に法律で定められた有効期間はありません。
しかし、作成日から日数が経過しすぎると思わぬトラブルに発展する可能性があるため、作成日から三か月以内の廃車委任状を求められる場合もあります。そのため、手続きをする少し前(早くても手続きから三か月以内)に準備をすることをおすすめします。
また、廃車委任状の効力は、手続きが終了した時点で失われます。
廃車委任状を記入するときの注意点
ここでは、廃車委任状を記入するときの特に注意すべきポイントについて、詳細を解説します。
廃車委任状が必要な手続き
ここでは、具体的にどんな場合に廃車委任状が必要となるのか確認していきます。
代理人に手続きを行って貰う場合
まず一つ目は、家族や友人などの代理人に手続きを行って貰う場合です。
廃車の手続きは運輸支局または軽自動車検査協会の行政機関で行うため、平日しか手続きができません。そのため、平日に仕事がある方は、平日が休みの家族や友人に手続きを依頼することも一つの選択肢となります。この場合、廃車委任状が必要です。
ここで注意すべきは、代理人が例え同居している家族だとしても、本人以外の全ての場合に廃車委任状が必要ということです。代理人に廃車手続きを行って貰う場合は、廃車委任状を忘れずに準備しましょう。
廃車買取業者に手続きを依頼する場合
次に、買取業者に廃車手続きを依頼する場合です。
買取業者を通した手続きであれば委任状は必要ないと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、買取業者に代理で手続きを依頼する場合にも、必ず廃車委任状が必要です。この場合、廃車委任状は、買取業者が準備してくれる場合がほとんどですが、念のため買取業者に準備が必要かどうか確認しておくと良いでしょう。
譲渡証明書が必要な場合がある
廃車手続きの際に、廃車委任状と併せて、譲渡証明書を提出するよう要求される場合があります。譲渡証明書とは、古い所有者から新しい所有者へ自動車を譲渡することを証明する文書です。中古車の購入や、自動車の個人売買等で名義変更をするときに必要となります。
譲渡証明書の書式は、国土交通省のホームページまたは下記からダウンロード可能です。
それでは、どんな場合に譲渡証明書の提出が必要なのでしょうか。
中古車として販売する場合
買取業者が、まだ中古車として価値があると判断すれば、廃車ではなく中古車として再度販売することがあります。この場合、譲渡証明書の提出が必要となります。
もし、廃車・解体を希望する場合は、事前にその旨を買取業者へ伝えましょう。
都道府県を跨いだ廃車手続きの場合
廃車手続きは、各都道府県それぞれの運輸局または軽自動車検査協会で行われます。ここで注意すべきは、運輸局または軽自動車検査協会が扱えるのは、管轄する各都道府県のナンバープレートのみということです。
例えば、大阪にある買取業者が、東京ナンバーの自動車の廃車手続きを行う場合、譲渡証明書が必要となります。そのため、もし他府県に引越した後廃車手続きを行う場合などは、譲渡証明書の提出が必要となりますので、注意しましょう。
委任者・受任者両方の直筆署名が必要
記入事項の中で、委任者、受任者両方の氏名・住所がありますが、これはどちらも直筆署名が必要となります。廃車委任状は、廃車の手続き代理を依頼する正式な書類のため、面倒だからといって代筆することはできません。必ず委任者、受任者両方が直筆署名を行いましょう。
廃車委任状に不備があった場合
ここでは、作成した廃車委任状に不備があった場合どうなるのか、また、どういった時に不備とされるのかを解説していきます。
不備があった場合どうなるのか
提出した廃車委任状に不備があった場合、廃車手続きが却下される可能性があります。
せっかく作成した廃車委任状が不備にならないためにも、どんな場合に不備とされるのか、しっかり確認していきましょう。
不備になる場合
廃車委任状が不備になるよくあるパターンとして、誤記の訂正方法が正しくないことがあります。
正しい訂正方法は、誤記した部分に二重線を引き、その上から印鑑証明書と同じ実印を押印という手法です。
修正テープ、塗りつぶしによる訂正
修正テープ、塗りつぶしによる訂正は、典型的な不備になる訂正方法です。
誤記を訂正する場合は、誤記した部分に二重線を引き、その上から印鑑証明書と同じ実印を押印して修正を行いましょう。
委任者のものではない印鑑での訂正
訂正印に委任者のものではない印鑑を使用することはできません。
訂正印だからといって他の印鑑を使うのではなく、必ず委任者の実印を使用してください。